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あまい気持ち 20

いきなり迎えに来たかと思えば
ダックスフンドみたいな車に乗せられて

途中で降りるって言ったのに…。
あのバカはあたしの話なんて聞いちゃいない。


『あまい気持ち』   第20話


目立つから嫌だと
途中で降ろしてと頼んだけれど

「歩いて登校する方が目立たねぇ?」
なんて不思議そうに首を傾げる道明寺に
何を言っても通じない気がして諦めた。

花沢類もそうだけどこの人達って
あまり自分が目立ってるって自覚はないみたい。

ほとんどが車通学の生徒で
門の前には高級車の列だって出来るのが
英徳学園の日常だけどこの人達は別。

まずその高級車の列に並ばなくても
専用の車寄せに停まるからたとえ車が変わっても
それに乗っているのがF4の誰かであることはわかるから
車が入ってきただけで周りの生徒は全員が注目する。

そんな所に
道明寺に手を引かれたあたしなんて現れたら…ねぇ?



そんなわけで
初日から道明寺との関係は
盛大に学園中に広まっちゃったわけで

出来れば穏便に平和に過ごしたいと
思っていたあたしの小さな希望は打ち砕かれて。

教室にいる間はクラスメイトが
遠巻きにあたしを見ていたり
時々媚を売るように話しかけてきたり。

この間は非常階段にまで
あたしの噂を聞いて見に来た人もいたりで
居心地が悪いったらありゃしない。

それでも別れる時も
「帰りも迎えに行くからな」
なんて言う道明寺は上機嫌で。
そんな顔を見ちゃったらダメなんて言えないし

目立つのは慣れなくても
一緒にいられるのはあたしだって嬉しい。
道明寺たちは小さな頃からこんな環境が普通で
だから注目を浴びる事も気にならないんだろうなぁ…。
なんて納得しちゃえばあたしが早く慣れればいいのかなって。


そして道明寺が意外と
心配性っていうか
つまらない嫉妬するタイプだと知ったのも最近。

ある日、お弁当を食べようと
道明寺と非常階段に行こうとすると
「牧野つくしがここで弁当食ってるってマジ?」
「あぁ。だから偶然装って知り合いになれば
 F4とも近づけるかもしんねぇだろ?」
なんて声が聞こえてきて
面倒くさそうなその雰囲気に
踵を返したあたしの代わりに扉を開いたのは道明寺で

「そんなに近づきてぇなら直接来いよ」
なんて言う道明寺の顔は
あたしからは見えなかったけれど
一気に青ざめて、謝りながら逃げて行く
あの人たちの後ろ姿でなんとなく想像できた。

「もー。
 別にあの人たちが何かしたわけじゃないでしょ」
小さくため息をつきながら文句を言えば
「あいつらがお前に惚れたらどうすんだよ」
なんて拗ねたような顔をする。

そんなのあり得ないし
万が一にそうなったとしても
道明寺の顔を見ただけで逃げて行く人に
何が出来るのか…なんて内心ツッコんでしまう。

だけどその日を境に
1人で非常階段に行くのはダメだと
道明寺が言い始めて結局お弁当は
F4専用のテラスでお弁当を食べるようになった。


「飲み物取ってきてやるから
 その辺適当に座って待ってろ」
ポンとあたしの頭を撫でる道明寺を

「へぇ?優しいじゃん」
「司もそういう事出来るんだな」
なんて西門さんと美作さんがひやかしていて

「まーきの。ここ空いてるからおいで」
なんて花沢類が手招きしていた所に座った。

だけど。

「…どうしてそこなんだ」
なんて戻ってきた道明寺の額には青筋が浮かんでいる。

「へ?どうしてって?」
空いてるって言うからから座っただけだし
あたしの隣に道明寺が座れる席も空いてる。

「俺の隣に座ってるのが気に入らないんだよ、きっと」
反対側に座っていた花沢類がクスクスと笑うと
道明寺の眉間のしわが深くなる。

「わかってんならどけよ」
「やだ」
「あっ!?」
たかがどこに座るかだけで
喧嘩になりそうな雰囲気の2人を
交互に見ながらため息をついたけれど
花沢類はそんなあたしにもクスッと笑う。

「だから聞いたじゃん。
 牧野と仲良くしてていいの?ってさ」
「何言って…って、あっ!?」
何の話かはわからないけれど
道明寺はその言葉だけで何か思い当たったみたいで

「おー。
 言ってた言ってた。
 俺らも聞いたぜ、それ」
「っつーか、
 お前が類を責められた立場か?」
なんて西門さん達までゲラゲラ笑いだす。

その場に立ったまま
バツの悪そうな表情を浮かべていた道明寺は
「チッ」
そう吐き捨てるように舌打ちをすると席についた。



「ねぇ。
 昼間のって何だったの?」
その日の帰り道、
車の中で道明寺に聞いてみれば

「何でもねーよ」
なんて言いながら視線をそむけるあたり
それは嘘だと思う。

ま。言いたくないなら言わなくてもいいけどさ。

「花沢類は友達だよ?」
「わかってる」

「わかってるのに…やきもち?」
そう聞きながら顔を覗き込むと
ぐっと言葉に詰まって顔を赤くする。

「やきもちなんて妬く必要ないと思うけどなぁ」
だってあたしだよ?
なんておどけて見せたけど
道明寺は全然納得してないみたいで

「好きでたまんねぇんだから仕方ねぇだろ」
なんて拗ねた顔して言うからたまらない。

「道明寺ってさ。
 そういう事言わないタイプかと思ってた」
「あ?」

「ほら、クールっていうか
 あんまりベタベタしたがらないのかな〜って?」
「…ダメなのかよ」
言葉は不満気に発せられていても
その表情にはそれ以上に不安が浮かんでいる。

「まぁ、あたしも
 恋愛に向かないっていうか
 淡白な方だと思ってたんだけどねぇ」
「…けど?」

「案外、道明寺のそういうトコも好きかも」
「…っ」

好きな人に好きになってもらえるだけで
奇跡に近い幸せだと思ってた。

それはもちろんそうなんだけど
こうして想いが通じた後も
惜しみなく伝え続けてくれる道明寺は
あたしも知らなかった
あたしの中のあまい、あまい気持ちを膨らませる。

「万が一にもさ。
 誰かがあたしの事を好きになってくれたとしても。
 あたしが好きなのは道明寺だけだから。
 あんまり心配しないで?ね?」

あふれんばかりのそのあまい気持ちを
少しでも返せればいいと
道明寺の肩に手を置いて、頬にチュッとキスをした。



〜 fin 〜



いつも応援ありがとうございます♡

★今度こそぶった切りました(笑)!
  あとがきはまた近いうちに〜(・∀・*)★

あまい気持ち 19

「おや、坊ちゃん。
 今日は珍しく早いねぇ」

翌朝、部屋に入ってきたタマは
すでに着替えたオレを見て驚いていた。


『あまい気持ち』   第19話


早く起きたと言うか…眠れなかった。

“あたしにとっても
 道明寺は唯一無二で特別な存在だよ”

牧野のあの言葉が
ずっと頭の中で反芻していて
胸の中にふわふわとした
何とも表現出来ねぇ気持ちが広がって
1人でニヤけちまって手に負えねぇ。


「ところで坊ちゃん。
 今日はどこかへお出かけかい?」
「あ?学園に決まってんだろ。ついにボケたのか」

「ジャケットなんて着て
 なんとなくいつもより決め込んでるから
 何かあるのかと聞いてみただけですよ。
 今はそういうのが流行りなのかねぇ…?」
なんて言いながら
マジマジとオレを見るタマ。

確かにどちらかと言えば
カチッとした服装よりラフな格好を好むオレは
普段なら学園に行くのにジャケットはまず選ばねぇ。

だが、今日は違う。
ある意味大事な日なんだ。

「おいタマ。
 一般的にオレの格好は好感が持てるか?」
「はい?
 なにさね、急に」

「いいから答えろよ。
 例えば、娘の彼氏に初めて会う親なら
 こんな感じの男はどうだ?
 やっぱ初対面ならスーツで行くべきか?」
「…なんだい。
 もしかして坊ちゃん。彼女でも出来たのかい?」

「お。よくわかったな」
別に彼女が出来たくらいで
わざわざタマに報告するほどガキでもねぇが
隠す事でもねぇんだから否定もしねぇ。

…つーか、少しは自慢してぇ、だろ?

「それだけニヤついてりゃわかるさね。
 そうかいそうかい。
 さぞ可愛いお嬢さんなんだろうねぇ。
 今度タマにも会わせてくださいな」
「おぅ。連れてくる。
 で?この格好で大丈夫か?」

「向こうのご両親にご挨拶でもするのかい?」
「別にオレはそれでもいいけどよ。
 アポ取ったわけじゃねぇし。
 ただ家に行けば会うかもしんねぇから…一応?」 

オレはあいつの彼氏なんだから
一緒に登校するためにこれから迎えに行くつもりだ。

そうなると、当然
あいつの親や家族に遭遇する可能性も高い。

それならもしかすると
牧野が嬉しそうにオレを紹介するかもしんねぇし?

そんな場面を想像して
またニヤけていたらしいオレに
心なしか冷ややかな視線を向けた。

「まぁ、それで十分じゃないのかい?」
「サンキュ。行ってくる」
それだけ言うと踵を返したオレの背中に

「服装よりも失礼な態度を取らないか心配だけどねぇ」
なんてため息をついたタマの声が聞こえたが
挨拶くらいできるっつーの。




「…えっ!?」
牧野の家の前まで着き
外で待ってるとLINEを入れると
10秒もしねぇうちに玄関から飛び出してきた。

「よぉ」
「よ、う?
 …って、そうじゃなくて!何してんの??」
でっけぇ瞳を何度も瞬きさせてオレをガン見してる。

「迎えに来た」
「は?」

「一緒に行こうぜ」
「…えーっと?」
そう不思議そうに首を傾げたが
家の中からかすかに声が聞こえた途端

「準備するから少しだけ待ってて!ね?」
そう慌てて言うと、パタンと扉を閉めた。

そんなに急がなくても
置いて行ったりしねぇのに。

中からはどれだけ慌ててるのか
時々ガタガタッと物音までしている。

オレが待ってるからって
そんな必死に準備するとか
だなんてあいつ可愛いすぎかよ。

しばらくすると
「行ってきまーす!」
と牧野の声が聞こえてまた扉が開く。

「お、お待たせ」
「おぅ…大丈夫かよ」
若干息を切らしている牧野にクッと笑う。

「道明寺がいきなり来たりするから…」
「っつか、挨拶とかしなくて良かったのか?」
もし迎えに来ている事に気付いていたとしたら
このままスルーなんて印象悪すぎだろ?

それなのにこいつときたら
「そんなのいいから」
オレの昨晩からの決意と緊張を
あっさりと切り捨てたかと思えば

「ほら、早く行こっ」
とオレの手首を雑に握って
グイグイと強引に引っ張りながら足早に歩き出す。

その様子は
若干怒ってるような態度で
まるで家族に会わせるのが嫌だとばかりで
予想していた反応とは程遠くて一瞬ムカついたが
よく見れば髪の隙間から見えている耳は赤い。

ただの照れ隠しだと悟ると
また胸にふわふわとした感情が溢れる。

「おぅ。
 挨拶はまた今度な」
そっと手首を掴んでいる手を振り払うと
今度はその手を握り返し体を寄せて顔を覗き込めば
その顔をやっぱり真っ赤に染まっていた。






いつも応援ありがとうございます♡

★やっぱり前回ぶった切っておけばよかった…(^^;)★

あまい気持ち 18

「…え〜っと。
 ごめん、ちょっと待って?」

道明寺の突然の言葉に
とてもじゃないけれど頭がついてこなかった。


『あまい気持ち』   第18話

待って。
ほんとに待って。

道明寺ったら何て言った?

「確認していい?」
耳に聞こえた言葉が
どうしても信じられなくて聞いてみる。

「おぅ」
そう頷いた道明寺を確認して

「えーっと…好きだって言った?」
「言ったな」

「それは…誰が誰を?」
「オレが、牧野を」

どうやら聞き間違いじゃなかったと
それは確認出来たんだけど…

当たり前みたいに答えるけどさ
おかしな事を言ってる自覚はないわけ?

あれほど花沢類との仲を取り持とうとしてたのは
他の誰でもない目の前のこいつなんだけど?

それを今さら…。
もしかしてふざけてる??

そんな疑念を持ちながら
ジト目で睨んでみれば、その意思が伝わったのか

「…し、しょうがねぇだろ。
 好きだって気付いたのが
 お前と会わなくなってからなんだよ」
なんて少しだけバツが悪そうに目を逸らした。

別に駆け引きのつもりで
距離をとったわけでなくて
これから先も道明寺と友達でいるためだ。

それなのに今さら好きだなんて
平気な顔で言う道明寺にイラッとする。

「それにしたって
 よくそんな事サラッと言えるよね?
 普通は少し間を置いたりするんじゃないの?」
少しは困ればいいと
意地悪を言ったつもりだった。

なのに…。

「さすがのオレも
 まさか今さら言えねぇと思ってたぜ?
 でも類と付き合ってねぇなら
 遠慮なんてする必要ねぇだろ?
 やっと堂々とお前を口説けるっつーのに
 タイミングなんて待ってられっかよ」

なんて不敵にニヤリと笑って
そんな事を言うから不覚にもドキッとしてしまう。

「で?」
「へ?」

「お前の好きな奴って誰だよ」
「……」

__しまった。

こんな展開になるなんて思ってなくて
どう答えたものかと悩んでいたのを
今度はどう勘違いしたのか

「そんなに好きなのか」
なんて不満そうな顔で聞いてくる。

「……うん」

道明寺の事は好きだけど
その先を期待なんてしてなかった。

だから少し距離を置けば
まだ友達に戻れると思ってたし
実際あたしはもう吹っ切ったつもりだった…。

隣にいてもあたしの事なんて全然見てなくて
花沢類の話ばかりしてたくせに
それを今さら好きだなんて
気持ちを振り回すのもいい加減にしてほしい。

そう思う気持ちも確かにあるのに

そんなの全く気にしてなさそうな態度も
真っ直ぐに向けられる視線も
嬉しいと思っちゃってる自分がいるのが悔しい。

…ほんとそういう所、ズルいなって思う。

なんて自分の気持ちがまだ
道明寺にしっかりある事も自覚してしまう。


すると、突然

「何点だ」
「は?」
真剣な顔で聞いてくるから
何の事かと首を傾げた。

「類でも敵わねぇほどの男なんだろ?
 相手が誰でも負ける気はしねぇが
 現時点ではオレのライバルになるなら
 知っておいて損はねぇだろ」
なんてそのライバルが自分自身だなんて
思ってないらしい道明寺の視線は鋭い。

…もしかして嫉妬してる、とか?
いやでも…やきもちとか妬くタイプじゃないか。
オレ様な道明寺からはあんまり想像出来ないし。

そんな事を考えてる間も
道明寺は返事を促すようにあたしを見てる。

だから
「…100点」
そう答えてみる。

「あ?」
「だから…100点?」

「マジかよ…」
なんて道明寺は
少し驚きつつも不満そうにしてるけど…。

この点数はあたしがつけたわけじゃなくて
いつか道明寺が自分で自分につけた点数だ。

「ねぇ。
 ちなみにあたしって今も40点なの?」
「バカ。んなわけねぇだろ」

「へぇ…。じゃあ何点?」

点数なんてつけるものじゃないし
長所も短所もあって当たり前。
その全部ひっくるめてその人なんだけど

それでも
好きになってくれたなら
もしかして100点なのかな〜
なんて少しだけ期待していた。

それなのに。
こいつときたら…。

「他と比べようがねぇんだから
 点数なんてつけらんねぇ。
 お前は唯一無二の特別な存在なんだよ」

そんな期待以上のあまい言葉を
恥ずかしげもなく堂々と言っちゃう。

「…そういうとこ、
 ほんとズルいよね。あんた」
なんだか色々耐えられなくて
テーブルに突っ伏した。

そしてゆっくりと深呼吸をして顔を上げると
あたしの中にもある このあまい気持ちが
少しでも伝わればいいと
真っ直ぐに道明寺を見つめた。

「あたしにとっても
 道明寺は唯一無二で特別な存在だよ」




いつも応援ありがとうございます♡

あまい気持ち 17

「ね、ねぇ!
 道明寺ってばっ!どこ行くの!?」

牧野の手を引いたまま歩き続けて
どれくらい経ったか。
牧野にそう言われてやっと我に返った。


『あまい気持ち』   第17話


どこと言われても
別にどこかを目指して歩いてたわけじゃねぇ。

立ち止まって振り返れば
牧野には歩くペースが早すぎたらしく
息を切らしていた。

「あ…わり」
「わ、悪いじゃないわよ。
 足の長さの差を考えなさいっての…はぁ」
肩で息をしながらも睨みつけてくるこいつを
こんなに近くで見るのも2週間ぶりで

睨まれてんのに
オレの心臓はバカみてぇに強く脈打って
つい握ってた手に力が入って
今度はその手が痛いとまた睨まれた。


近くのカフェに入ったオレたち。
「はぁ〜…生き返る」
オーダーした飲み物が来る前に
ただの水を美味そうに飲み干して息をつく牧野。

そんなこいつを見ながら
頭の中で状況を整理して行く。

付き合ってねぇって言ったよな。
類をフったってマジかよ。

だが類はまだ諦めたわけじゃねぇんだよな?
この場合…オレは言ってもいいのか。
それともやっぱ先に類と1度話すべきか…?

すると、
「…ねぇ。そう言えばさ
 何も言わずに帰っちゃって良かったの?」
「な、何がだよ…」
不意にそんな事を聞いてくるから
まさか言うも何もバレてんのかとドキッとした。

「え?その…合コン、だったんでしょ?」
「…は?」

「だから、合コン。
 奥にいた綺麗な女の子、道明寺の事見てたよ?
 もしかして約束とかしてたんじゃないの?」
一瞬何の事を言ってんのかわからなかったが
仕方なく付き合っただけのアレを
牧野にとんでもねぇ勘違いをさせている事に気づく。

「バッ…違ぇよっ!
 あれはそんなんじゃなくて…
 あいつらが勝手にやっただけだ!」
「…そう、なんだ?」

「つーか、
 合コンなんて興味ねぇぞ!」
「いや、でも…、うん。
 別にあたしに弁解する必要もないんだけどね?」

思わず声がデカくなったオレに
牧野は困ったように笑ってるが
オレとしては合コンに行くような男だなんて
こいつにだけは思われたくねぇ。

「マジで違ぇからな?」
念を押すように言えば
「わかったってば」
なんて軽い返事が返ってきて
ほんとにわかってんのか疑問だが
今はそんな事より…。

「お前こそどうなってんだよ」
「ん?何が」

「類と付き合ってねぇってマジ?」
「あ〜…うん」
気まずそうに視線を泳がせて小さく頷いた。

「考えるんじゃなかったのかよ?」
「もちろんちゃんと考えたよ?
 花沢類と付き合ったら楽しいんだろうなって思うし
 別に花沢類のどこがダメってわけじゃない。
 でも頭で考えたからって誰かを好きになったり、
 嫌いになれるほど気持ちって簡単じゃないでしょ?」
そう言ってまた水を飲もうとグラスを持ったが
さっき飲み干してんだから空だ。

「ほらよ」
仕方なくオレのを牧野の方へ滑らせれば
「ありがと…」
と受け取って一口飲んだ。

少し前のオレなら
類と付き合わねぇこいつを理解なんて出来なかった。
付き合うメリットならいくらでもあるが
デメリットなんてハッキリ言って1つもねぇ。

でも今ならわかる。
頭で考えてどうにかなるなら
オレだってこいつをとっくに諦められたはずだ。

相手が類で。
その類を推したのもオレで。
勘違いだったとは言えすでに付き合っていて
勝負以前の問題だと頭でいくら理解していても
やっぱすげぇ好きで。諦めるなんて無理だった。

類と付き合ってねぇと聞いて
確かに驚いたが
それ以上に嬉しさが上回った。

ただ…
喜んでばかりいられねぇのは
そんな相手がこいつの中にもいるっつー事。

「類でも敵わねぇ程好きな奴がいんのか?」
オレの質問にポッと赤く染まる頬も
照れくさそうに頷く仕草も気に入らねぇ。

「…えっと。だから、さ?
 道明寺が良かれと思って
 花沢類を勧めてくれたのも
 わかってるんだけど…もういいから。ね?
 そういうのナシで普通に友達でいたいっていうか…」
申し訳なさそうにそう言うこいつに
そんな気はねぇのはわかってても
告る前にフラれたような気分になる。

「ふざけんじゃねぇよ。
 んなモン、認められるわけねぇ」
ポツリと漏れたのは素直な不満。

オレは類だから諦めたんだ。
あいつなら…牧野を必ず幸せにすると信じられるから。
諦められねぇ気持ちを何とか抑え込んでやったんだ。

そうじゃねぇならもう遠慮する理由もねぇ。

「…は?
 勝手な事ばっか言わないでよ。
 あたしが誰を好きになるか、誰と付き合うか
 そんな事 道明寺にいちいち口出しされたくない」
ムッとして睨んでくるこいつの言い分が
間違ってねぇのはわかってる。

「勝手なのは生まれつきだ」
「うわ…開き直った」

「開き直りついでじゃねぇが
 これからもっと勝手な事言うから覚悟しろ」
「は?何言っ…」
怪訝そうな顔をするこいつの言葉を遮るように

「牧野が好きだ」
そう言い切れば
牧野は目を丸くして固まった。

「お前の好きな奴が誰かなんて知らねぇけどよ。
 そんな奴よりオレにしとけ。付き合おうぜ、オレ達」






いつも応援ありがとうございます♡

あまい気持ち 16

「よしっ。類!
 オレにまかせとけ!」

牧野に会ったと言う司が
そう言った時から何となく
こうなるような予感はしてたんだよね。


『あまい気持ち』   第16話


司に悪気なんてこれっぽっちもなくて
本気で俺の恋を応援してるつもりなのはわかってる。
だからこそタチが悪い…とまでは言わないけど。

司は昔からそうだ。

行動力がある、って言えば聞こえはいいけど
本能…ってやつ?考えるより先に体が動くタイプ。
暴走し始めたあいつを止められる奴なんていない。

ま、そういう所が司らしさでもあるし
少なくとも俺はあいつのいい所の1つだと思ってる。

だからなるようになると思ってたんだけど…
想定外だったのは司が恋愛に対してあまりに鈍かった事。

とっくに俺をダシにして
牧野に会いに行ってるくせに
当の本人がそれに全く気付いていない。

せっかく牧野も司を気にしてるのに
バカだな、本当に。

そんな状況に焦れて
行動に出たのは牧野の方だった。


「最近、司来てなくない?」
「あ〜…だね」
困ったように笑う顔は
その理由だってわかってるみたい。

何があったのか聞いてみれば
俺との事もちゃんと考えるから
会いに来なくてもいいなんて言っちゃったらしい。

司は極端だからね…
来なくていいと言われた途端に
本当に非常階段に来なくなって
牧野はそれが寂しくなったってところか。

呆れた…。
だけどすぐに笑いがこみ上げる。

「牧野ってさ。
 よく不器用って言われない?」
「も、もうっ!うるさいなっ
 あたしだって結構悩んだんだからねっ!?」
真っ赤になって
恥ずかしさをごまかすように
俺の横っ腹に拳を当ててくるその腕を掴んで

「…だったら俺と付き合っちゃう?」

答えがわかっていながら
そう聞いたのは 意地悪に紛れて本気も少しだけ…。




「残念ながらこの間フラれたとこ。
 だからまだ友達。ね?牧野?」

「「「はぁぁ!?」」」

「付き合ってねぇってどういう事だ?」
「そのままだけど?」

「仲良くしてるって言ってたじゃねぇかよ」
「仲はいいよ?」

問い詰めてくる総二郎とあきらの言葉に答えながら
チラリと司を見れば、まだ放心してる。

本当は司が自分で牧野に確かめるまで
勘違いさせててもいいかなって思ってたんだけどね。

自分の気持ちにだって気付いたくせに
どうして今回に限って本能で動かないのか
その理由もまたあいつらしいから、仕方ない。

「仲良いって…
 ただダチとして仲がいいって言うのか?」
「うん。そうだけど?」

「で、でも
 ”まだ”友達ってことは
 お前は諦めたわけじゃねぇって事か?」
「んー…。どうだろ。
 牧野も片思い中みたいでさ。
 もしそいつと上手くいかなかったら
 俺にもまだチャンスはあるのかも?…ね?牧野?」
司をボーッと見ていた牧野に声をかければ
「えっ?う、うん?」
ハッとしたように顔を上げて頷いた。
絶対聞いてなかったでしょ、今。

でもそれならそれでいい。
牧野はあの時の告白はただの冗談だと思ってるし
今の言葉は牧野じゃなくて司に言ったんだから。

「…と、とりあえず
 お前らも何か飲むだろ?座れよ」
納得はしてなさそうな顔をしながらも
あきらが話題を変える。

「いや、やっぱり帰るよ。
 3人だけだと思ったから来たんだけど
 どうもお邪魔だったみたいだしね?」

__これで動かないならもう知らないよ?

そんなメッセージを
視線だけで伝えれば司は立ち上がると
黙って俺が握ってた牧野の手を取って
連れ去るように店を出て行った。

その背中を見送りながら
「ほんと世話が焼けるんだから」
小さなため息が漏れた。


司が牧野を連れて帰っちゃって
帰るタイミングを逃した俺は結局店に残った。

「なぁ、類。
 牧野の好きな奴ってまさか…」
俺のドリンクを持ってきてくれたあきらが
遠慮気味に聞いてくるから無言で肯定しておく。

「…これで良かったのか?」
「良いも悪いも
 なるようにしかならないでしょ」

「そりゃそうかもしれねぇけどよ。
 一発くらい殴ってもよかったんじゃね?」
あきららしくない物騒な言葉にクスッと笑う。

「あの2人見てると面白いんだよね」

もしも司が絡んで来なければ
もっと牧野にハマってたかもしれないし
牧野だって俺に振り向いてくれたかもしれない。

でもあの2人はきっと
どこでどんな風に出会っていても
惹かれ合ったんじゃないかって、そう感じる。

「なんか俺さ、司が好きな物を
 司より先に見つけるのが上手みたい」

「…ん?何の話だ?」
「ううん。こっちの話」
怪訝そうに首を傾げたあきらに
クスクス笑いながら2人が消えた扉に視線を流した。



まだ司と出会ったばかりの幼稚舎の頃。

ハッキリと言いたい事を口にする司は
あの頃、普通に人と話す事さえ苦手だった
内向的な俺にとって自慢の友達でいつも一緒だった。
そんなある日に起こったちょっとした事件。

父さんがお土産に買ってきた
限定生産のテディベア。

貴重かどうか、そんな事に興味はなかったけれど
触り心地が好みで安心出来てすごく気に入った。

次の日には母さんが止めるのも聞かずに
幼稚舎に持って行くと、それに興味を示したのが司。

あの時、
別に貸すのが嫌だったわけじゃない。
自分の持ち物を司に羨ましがられたことが
俺の中の小さな優越感を満たして
手を離せなくなって引っ張り合いになった挙句壊れた。

「類が悪いんだぞ!
 類がいつまでも離さないからっ」
そう言った司の顔が
言葉とは裏腹に悲しそうで
どうしたらいいか分からなくなった。

「あら、簡単よ。
 明日またおはようって司君に挨拶なさい」
帰ってから母さんに話せば
壊れたテディベアを縫いながら笑った。

「類は司君に怒ってるわけでも
 謝ってほしいわけでもないんでしょう?
 ただ仲直りしたいだけなのよね?」
「うん」

「きっと司君も同じ気持ちよ。
 だから明日は類から笑顔で声をかけるの」


これから2人がどうなるのかは
それこそ本人次第なんだけど。

どっちにしてもきっと明日は
司はあの時みたいに
またバツが悪そうな顔で俺の前に現れるはず。

だから俺もあの時と同じように
また笑って「おはよう」って挨拶してみようかな。





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ラブコメ風味の
ゆる~いつかつく道を
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