クラッシュ 6

あれから牧野は
ろくにオレと目も合わせない。

類たちと話してる所に
入っていってみてもさっきまですげぇ笑ってたくせに
オレが来た途端に話しをやめてどっかに行っちまう。


『クラッシュ』   第6話


類たちにだけ「じゃあね」とか言うと
そのまま去って行く牧野の背中を見ながら

「完全に嫌われたな」
「そりゃそうだろ」
「司のせいで、牧野行っちゃったじゃん」
3人はため息をつく。

授業中なら逃げられねぇはずだ、と
後ろを振り返って
「なぁ、勝負しようぜ?
 次はお前が何で勝負するか決めていいからよ」
と声をかけてみても
「…やらない」
とノートに目を落としたまま言う。

「逃げんのか?」
「…それでいいよ」

「……」
「……」

__そのまま会話終了。


とり付く島もないまま修了式になっても
恒例になってた成績表の見せ合いをする事なく
気まずい空気だけを残して2年の1年間が終わった。



春休みに入ってもあいつらから
牧野とどこへ行ったとか話は聞くけど
オレの春休みにあいつの姿はない。

春休みの間も
あいつは学園の図書館へとよく通ってるらしい。

だから…ってわけじゃねぇが
オレも1度だけ図書館に行ってみた。

奥の机の隅に座ってノートやら本やらを広げて
鉛筆をあごにちょんちょんと押し付けている。

あれはあいつが問題を解いてる時の癖だ。

しばらくすると答えがわかったんだろう
ぱぁっと表情を明るくして嬉しそうにノートに書き込んでいく。

声をかけようかとも思ったが
オレに気付けばまた嫌そうな顔をして
勉強もやめてどっかに行くんだろうと思うと
邪魔してぇわけじゃねぇし、とそのまま図書館をあとにした。


大体あいつがいねぇからってなんだってんだよ。

オレだってちょっとやりすぎだったと思って
謝ろうとしたのに無視してんのはあいつじゃねぇか。

別にあいつがいなくたって
オレはオレでトップを目指せばいいだけだし
あんな貧乏人にオレがかまう必要だってないはずだ。



そんな思いを抱えたまま3年にあがってみれば
クラス替えでオレらはまた一緒のAクラスになったが
牧野は隣のBクラスになっていた。

「なんだよ。牧野は隣かよ」
「さっきのぞいたら、すでに馴染んでたぞ、あいつ」
「俺も牧野と一緒が良かったな…」

3人が話すのを聞きながら
今回もまた一番前の席に座るオレ。

あいつがこのクラスにいねぇなら
オレのトップは安泰だ。

本来のオレのあるべき姿に戻るだけだ。

オレは道明寺司で
勉強だってスポーツだって誰よりも出来る。

ライバルなんて存在しねぇし、必要もねぇ。





いつも応援ありがとうございます♡

★坊っちゃん、強がりもどこまで続くかな?★

クラッシュ 5

雷が落ちてからも
牧野は戻ってこねぇ。

…なんだよ。
マジで今ので腰でも抜かしたか?



『クラッシュ』   第5話



オレに助けを求めるでもねぇし
つまんねぇから様子を見に行ってみるかと
扉に手をかけた時、下から誰かが上がってくる足音が聞こえた。


「……類?」
階段を上ってきたのは類で

「牧野は?」
そう聞かれて思わず屋上へと視線を向けたオレ。

冷たい視線を一瞬だけ向けると
オレを無視するようにそのまま屋上へと出て行った。

その扉はすぐに閉められて
牧野がどうしてんのかは見えなかった。

しばらくして出てきた2人を見て
オレは言葉が出なかった。

類は牧野を背負っていて
牧野はぐったりとしていて意識がねぇみたいだったから。

「…司、ちょっとやりすぎ。
 牧野は女の子なんだよ?」
責めるような目で見られて
オレは漸くこの勝負をしかけた事を後悔した。

「……雷に打たれたのか?」
「あのね。打たれてたら死ぬから。
 ビックリして気を失っただけみたい。
 とにかく俺は牧野を保健室に連れて行ってくる」
それだけ言うとオレを残して去って行く類。


しばらくその場で立ちつくしたままだったオレも
牧野が気になって保健室へと足を向けた。

中に入ろうとすると
「あれ…?あたし…」
「司と勝負してて気を失ったみたいだよ」
そんな声が聞こえてきて
ちょうど牧野が目を覚ました事を知った。

「ケガはないみたいだけど。
 一応今先生が病院の手配してる。痛い所ない?」
「…ううん。大丈夫」

牧野が起きてるとなると
どんな顔して入って行けばいいのかわからなくて
扉にもたれながら中の様子だけうかがう事にした。

「なんであんなバカな勝負うけたの」
「だって…勝負って言われたらさー…」

「放っておけばいいのに」
「ごめんなさい……」

「別に怒ってるわけじゃないから」
「うん…」

「怖かったね」
「……ふぇっ。…うぇぇんっ」
類の言葉をきっかけに大声で泣きしだした牧野。


泣かしてやろうって思ってたんだ。


望んでた結果のはずなのに。

全部オレの思い通りになったはずなのに。

「……なんだよ、コレ」
胸がすげぇ痛くて
ちっともスカッとなんかしやしねぇ。



それから3日。
牧野は熱が出したとかで学校を休んだ。

学期ごとに成績順に並ぶ座席。
一番前のオレの席の後ろが牧野の席だ。
いつもなら聞こえてくる
一生懸命ノートをとってる鉛筆の音もしなけりゃ
時々、オレにわかんねぇとこを
聞こうとしたあいつに背中を突かれることもないし
振り向いてみたって、机を1つ挟んで総二郎がいるだけ。


牧野が休んでる間、
類から事情を聞いた総二郎たちにも
最低だ、ちゃんと謝れ、と散々責められた。

うっせーな。
言われなくたってわかってるっつーの。


だけど3日ぶりに登校してきた牧野は

「よ、よぅ。この間は…」
__悪かった。そう続けようとした言葉は

「あ。さっちゃんおはよー!」
とオレを無視するように他のクラスの奴らの輪に
走って行くこいつに消されて言えなかった。





いつも応援ありがとうございます♡

★こっからこの悪ガキを更正させられるだろうか…(笑)★

クラッシュ 4

「ねぇ、道明寺。どこ行くの?」
「うっせ。いいからついて来い」

牧野の手をひいて
オレが勝負の場所に選んだのは屋上だった。


『クラッシュ』   第4話


屋上に出ると
牧野は高い所が苦手だと言ってただけあって
ドアからほとんど離れねぇ。

おまけに空もさっきより色が濃くなってきていて
オレにとって最高の状況が作れた。

「……教室帰ろうよ」
不安そうにオレの手を握る牧野。

こんなこいつを見るのは初めてで
オレの中の優越感が満たされていくのを感じた。

「勝負しようぜ。2年最後の勝負」
オレが得意気に言えば
「…勝負?」
と首をかしげる。

「あぁ、そうだ。
 この石をこの屋上の端っこに置くんだ。
 それで、より遠くに石を置けた方が勝ちだ」
そう言って指さしたのは屋上の柵。

「やだ。そんなのつまんない」
屋上の端っこなんて行けるわけがねぇこいつは
そう言って戻ろうとする。

「逃げんのかよ」
そう言ったのは、こいつもまた
オレと同じくらい負けず嫌いだって知ってるから。

「…逃げ、ないよ」
足を止めた牧野はすげぇ嫌そうな顔で振り向いた。

「よし。じゃあオレからな?」
そう言って石を拾うとスタスタと歩いて行って
石を柵の下に置いて戻ってくる。

ここに石を置けば
牧野は勝つために柵の所まで来る必要がある。

「…次はお前の番」
石を渡すと、牧野は受け取った石をじっと見つめてから
覚悟を決めたみてぇにオレが置いた石の方を睨みつけた。

そこから10歩くらいはサクサク歩いたが
進んだ事で下が少し見えたのか足が止まる。

「ギブアップか?」
オレが後ろから声をかけると
振り向いてオレを睨むとまたゆっくりと歩き出す。

オレが置いた所より手前に置こうとしたこいつに
「オレの石はもっと奥だぞ?いいのか?」
そんな声にまた恐る恐る足を進めるこいつ。

とっととギブアップして
オレの方がすげぇって言えばいいのに……。

ムカつく。マジでムカつく、この女。


その時、空がピカッと光って
数秒後にゴロゴロと鳴りだした。

「きゃっ…!」
耳を塞いでその場にしゃがみ込んだ牧野。

それと同時に雨もポツポツと降り出して
「さっさと置いて戻ってこいよ。
 オレ先に中入ってっからな!」
「え…やだっ!待ってよ、道明寺!!」
焦ったような声を出す牧野を無視してオレは中に入ってドアを閉める。

こうすればあいつは石はその場に捨てて戻ってくるからオレの勝ちだ。
その上、オレが高い所も雷も全然怖くねぇって言えば
あいつはオレのスゴさを認めるはずだ。

それなのに待てど暮らせど
あいつは戻ってこない。

その間も雷の音は鳴り響いている。
さっさとしねぇと雨も雷も強くなっちまうだろうが。

動けねぇほど怖いなら
オレに助けを求めればいいのに。

泣いて助けてって言うなら助けてやるのに。

そう小さくため息をついた、その時。

__ゴロゴロ…ドオォォンッ!!

と近くに雷が落ちたような
地響きがするほどでっけぇ音が鳴って
さすがのオレも肩を震わせた。





いつも応援ありがとうございます♡

クラッシュ 3

牧野の弱点は雷と高い所。

それを知ったオレは
どうあいつを泣かしてやるか作戦を練る。


『クラッシュ』   第3話


高い所ってだけならいつだって勝負を持ち込める。
だけど雷はいくらオレが道明寺司でも
簡単に用意なんてできるモンじゃねぇ…。

雷が鳴った時にすぐ何かを仕掛けないと
あいつを泣かしてやる事ができねぇな。


「雷と高い所で勝負するとしたら何がいいと思う?」
総二郎たちに聞いてみれば

「「「はぁ?」」」
3人そろって首をかしげてから

「高い所で勝負って言ったら
 バンジージャンプとかなくもねぇけどよ…」
「雷で勝負ってなんだそれ」
「……バカじゃないの?」
なんて口々に言葉を発しながら呆れ顔を向けた。

「牧野の弱点がその2つなんだよ!」
ムッとしながら言ったオレの言葉に

「相手の弱点狙って勝負かよ」
「女相手にハンデもらうのか?」
「……ダサ」
とまた口々に言いたいように言って

「いいじゃん、別に今のままでも」
と類。
「あ?オレ様が
 あんな貧乏人と同レベルでどこがいいんだよっ」

「だったら相手にしなきゃいいだろ」
と今度はあきら。
「それじゃオレが逃げたみてぇじゃねぇかよっ」

「じゃあ牧野に雷と高い所の何かで
 勝負したとしてそれで勝ってお前ホントに嬉しいわけ?」
と総二郎に言われた言葉には
何も返せなかった。


あいつらが言う方が正しいっつーのはわかってる。
それでもこれはオレのプライドの問題だっ!

オレの視線の先には
クラスの奴らと楽しそうに笑う牧野がいる。

そうだ。
オレばっかりがプライドを傷つけられて
あいつは何もねぇなんて、それこそ不公平じゃねぇかよ。

あいつだってちょっとは傷つけばいいんだ。

だから、1度でいい。

1度でいいからあいつを泣かして
オレの方がすごいんだって事を見せつけてやりたい。


それでも雷と高い所を結びつける勝負が思いつかず
どうしたものかと思い悩んでいたある日。


「なんか空が真っ暗だねぇ…」
「今日雨降るって言ってたっけ?」

なんてどこかから声に空を見上げてみれば
確かにどんよりと重たそうな空で。

その雲が小さくピカッと光ったのをオレは見逃さなかった。


この時期、雷なんてそうそう鳴るモンじゃない。
だったらこのチャンスは生かさないと
次はいつ牧野を泣かすチャンスがあるかわかんねぇ。

そう考えたオレは
とりあえずあいつを高い所へ誘い出そうと
「牧野!ちょっと来い」
とアイツの手を引いて教室を飛び出した。






いつも応援ありがとうございます♡

★小学生の男子ってホントろくな事しないイメージで書いてます(笑)★

クラッシュ 2

あんな庶民とオレが一緒なわけねぇ。
だったらクラスの奴らの声なんて無視すりゃいいのに

それが出来ねぇのは
誰よりもオレ自身がそう思ってるからなのかもしれない。


『クラッシュ』   第2話



負けてはなくても
これだけはあいつに勝ってるっつーモンもない。
勝ったり負けたりの繰り返し。

だからクラスの奴らの声が無視出来ねぇんだ。


だったら……1度でいい。

あいつを思いっきり泣かしてやればいいんだ。
オレの方が上だって事をあいつに思い知らせてやる。


そう考えたオレは
あいつの弱点を探る事にした。

まずは牧野は女なんだから、と虫を試してみる。

「牧野!」
「へ…?って、わっっ!!」
総二郎たちと話してる所に声をかけて
無防備に振り向いた瞬間にバッタを投げた。

バッタが牧野とあいつらの間に入った瞬間、

「ぎゃあああっ!」

そう叫び声を上げたのは
牧野じゃなくて…どうしてだかあきらで。

「何すんだよっ!」
珍しくマジギレしてるあきらの隣で
肝心の牧野と言えば

あきらが振り払ったバッタを
傷つけないように優しく持って
「へぇ~。おなかってこうなってるんだ」
なんてマジマジと観察を始めている。

「ねぇ、これなんて名前のバッタ?」
「…知るかよ」
その辺にいたの適当に持ってきただけで
種類なんて興味ねぇ。

そんなオレの返事にへぇ、とか言うと
ノートを開いてバッタの絵を描くと、
今度はどこが何色だとか、特徴を書きこんで行く。

「…何してんだ?」
そのノートを覗き込んで聞いてみれば
「帰ってから調べるの。
 でも捕まえたままだと可哀そうだから……よし、っと」
ノートに書き終えると教室の外へ出て
近くの草むらにバッタを放して
「ばいばーい」
とか言って手を振っている。

……お前、バッタにもフレンドリーなのかよ。
つーか、バッタとオレと態度が変わらねぇってありえねぇぞ。


虫作戦が失敗に終わって
だったらもう直接聞いてやれ、と

「…お前苦手な生き物ってねぇの?」
そう言ってみれば
「……いない、かなぁ?
 だってみんな可愛いじゃん」
なんてオレにとっては何の収穫にもなんねぇ答えが返って来る。

「嫌いな食べ物は?」
「…ない。何でも食べるよ」
あぁ、そんな気がした。
いつも何食ってもうまそうに食ってんもんな。

「苦手な科目は?」
「ん~…理科が苦手」
…こないだの小テストでオレ負けたじゃねぇかよっ!

「…もういい」
深くため息をついたオレが
牧野の弱点を知ったのは2年の終わり頃だった。

結局あいつが転校して来てから
これと言って勝ってるモンは見つからなかった。

このまま3年へと昇給すんのかと
悶々とした思いを抱えて過ごしていた冬のある日。


「昨日の雷スゴかったねぇ
 ゴロゴロ~、ドカンッ!って!落ちたのかな?」
「うん。あたし雷苦手だから怖かった…」

「つくしちゃんにも怖いものあるんだっ」
「あるよー。あと高い所も怖いよー」

オレは雷も高い所も平気だ。
これならあいつに勝てる。

牧野とクラスの奴が話してる声を聞いて
オレはほくそ笑んだ。




いつも応援ありがとうございます♡
プロフィール

koma

Author:koma
管理人komaの
くだらない妄想の世界へ
ようこそいらっしゃいました。

基本テイストとしては
ラブコメ風味の
ゆる~いつかつく道を
突っ走っております。

ご覧頂きありがとうございます♪
*カウンター*
 
*現在の閲覧者数*
komaの呟き。
毎日、毎日
あっついですねぇ(>_<)
 
皆さまも
体調崩されませんように…
 
ご自愛くださいませm(_ _)m
 
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
リンク
素敵サイト様
*素敵なイラストなど♪* 管理人 まま様

*二次が生んだ二次作家様*
管理人 aoi様

*CP自在のファンタジスタ* 管理人 asuhana様

*イケメンイラスト&二次小説*
管理人 やこ様

*長編大作の巨匠様* 管理人 こ茶子様

*胸きゅん♡つかつく* 管理人 Happyending様

*カッコ可愛いつくしちゃん*
管理人 四葉様

*切なくも甘いつかつく*
管理人 きぃ様

*シビれるッ!つかつく♪*
管理人 lemmmon様

*とにかく司を愛する作家様*
管理人 蘭丸様
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる