私を嫌いになって 8

あれから宣言通り、司は私の病室で寝泊まりしている。

あたしもすっかりそれに慣れてしまったけど。
私たちって…今は夫婦じゃないよね?


『私を嫌いになって』    第8話



治療を頑張った甲斐もあって
離婚してまるまる2年の春、退院の目途がたった。

思い出したのはそんな時だった。
アイツに見つかってから、目まぐるしく環境が変わって
すっかり忘れていたけど私たちは離婚した「元・夫婦」だ。
今は当たり前のように同棲のような状態になってるけど
退院したらどうすればいいんだろう?

ただでさえ治療費はお義母様が払ってくれているのに
住む所までお世話になる訳にはいかないだろう。
それに仕事だって探さなくちゃ。
長かった闘病生活の終わりが見えて
久々に忙しくなってきたような感じに
なんだか張り切っているあたしがいた。

「なんだか楽しそうだね?」
お見舞いに来てくれた花沢類は私の顔を見るなり言った。
「うん!退院の目途がたったんだ。
 だからこれから忙しくなるなって思ったらワクワクして」
そう答えるあたしに、
「…忙しくなるの?何?あんた病み上がりの体で
さっそく働きにでも出るつもり?」
花沢類は不思議そうに聞いてくる。
「へ?当たり前でしょう。
 とりあえずはママ達のとこに泊まらせてもらうけど
 住む所もちゃんと探さなきゃだよね」
そう言いながら求人雑誌や住宅情報誌を見せるあたし。

「はぁ~…。あんた本当懲りないね。
 どうせ司は退院するとか働くとかまだ知らないんでしょ?」
大きなため息をつく花沢類。
「退院の目途がたったのが一昨日で
 アイツ出張からまだ帰って来てないからねぇ。」
あたしは雑誌をパラパラめくりながら答える
「・・・だろうね。知ってたら今頃大暴れしてるはずだもん」
そう呟いた花沢類の言葉はあたしは雑誌に夢中で聞いてなかった。

それから2日後。
司が出張から帰って来た。

「…おかえり?」首をかしげながら言うと
「おぅ、ただいま。なんで疑問形なんだ?」とクスッと笑う司。
「だってあたしの病室なのに、おかえりってやっぱりおかしいじゃない?」
つられてクスクス笑いだしたあたしを司はそっと抱きしめた。
「どこだっていいんだよ。お前がいる所がオレの帰る場所なんだよ」
「う~ん…じゃあ、やっぱり結局は半同棲みたいになるのかな?
だったらワンルームのアパートとかじゃマズイよねぇ…」
とあたしが言うと、髪や額にキスを繰り返していた司の動きが止まった。
「……何の話だ?」
怪訝な顔をする司を見て、そう言えばまだ話してなかった事を思い出す。
退院の事、就職先と住む所を探してる事を話した。

すると…
「ふざけんじゃねぇッ!退院したら一緒に邸に戻るんだろうが!
 仕事はともかくだ、なんで今さら別々に暮らす必要があるんだ!」
もう面会時間も過ぎた夜中だってのに大声で怒鳴りだした。
そのあまりの迫力に肩を竦めてビクッとなる。
「え…だって」
「だってもクソもねぇ!」
やばい…本気で怒ってる。
でもあたしだって何も考えてない訳じゃない。
「ちょっと…聞いてよ!
 あんた大事な事忘れてるよ?あたしとあんたは元夫婦なの。
 別れた妻が、邸で一緒に住むなんておかしいでしょう?
 それは2人の事をちゃんとしてからじゃないとけじめもつかないし嫌なの」

別れた夫の実家で一緒に暮らすなんて、聞いた事ない。

あたしのその一言で少し落ち着きを取り戻した司。

「…あぁ。その事なら問題ねぇ。」とふぅっと息をつきながら一言。
「その事?どの事よ?ちょっとあんたまさか…」
…まさか今から区役所に行くとか言いだすんじゃないでしょうね?
いや、こいつなら言いかねない…やりかねない…。

司は泊まるのに使っている隣の部屋に行くと
すぐに4つ折りにされた紙を持って戻ってきた。
その紙をあたしの前にポンっと置く。

いくらなんでもすでに用意してるとは思わなかった…。
こいつ、本気で今から書いて出しに行く気…?

今さら司と一緒になりたくないとは言わない…。
でもせめてさんざん迷惑をかけたお義母様にも
ちゃんと謝罪と挨拶してから、とか段取りは踏みたい。
そもそも道明寺家として、再婚なんて認めてくれるかどうかだってわからない。

はぁぁ…。
別に明日退院するわけじゃないんだし
そんなに急ぐ必要もないと思うんだけど…

どう言ってこの傲慢男を説得しようか考えながら、ため息まじりに
4ツ折りにされていたその紙をそっと広げたあたし。

でもあたしは何も言えなくなってしまった。
司が持ってきたそれは…婚姻届なんかじゃなくて


2年前、家を出る時にあたしが司に渡した離婚届だったから…。


離婚届を見つめたまま固まるあたしに
「お前には悪りぃと思ったけどよ…どうしても出せなかった」
と司はバツが悪そうに呟く。

「これを出さない限り、まだ繋がってられる気がしてよ…
 それに届けを出してない事に気がついたら連絡くらいはしてくんじゃねぇか…って
 たとえ文句を言われるにしてもお前の声が聞けるならそれでもよかった。
 ……自分でも情けねぇってわかってるよ」
そう言って頭をグシャグシャと掻きながら
その場にしゃがみ込んだ。

私も司の前にしゃがんで司の顔を覗き込む。

じーっと見つめる私に司は耳まで赤くして
「な…なんだよ。お前も無事治ったんだから
結果オーライってやつだろ?
……それともやっぱり離婚はしてーとか言うのかよ?」
言葉や態度は傲慢だけど、その顔はまた捨てられた子犬そのもの。

お金だって地位だって人が欲しがる物は全部持ってて
欲しいと思えば何だって手に入れられる男のクセに…。
あたしが離れていく…たったそれだけの事を怖がっている司が愛しくてたまらない。


「ううん。あんたと一緒にいたい。」
そう言ってあたしは司に渡された離婚届を破く。

「やっぱりあたしもアンタがいないと生きていけないみたいだからさ?」


~fin~





★あとがきはコチラ~★
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★★★★リン様

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

離婚届はすごく迷ったんです。
さすがに2年気付かないつくしもどうかと思ったんですが
私の妄想の世界の司は離婚届なんて出せそうにないんですよね…(^^;)
きっと楓様がその辺も知った上で動いてたんだろうって事でこじつけました(笑)
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