Healing

「西田さん、おはようございます」
いつものように清掃バイトで秘書課を訪れた瞬間、

「し、失礼いたしましたっ!!」
男性社員が逃げるように執務室から飛び出してきた。


『Healing』
   ~「Blunt」 番外編~



そのまま秘書課を通って
あたしと入れ違いになる形で
出て行った社員さんを無言で目で追う。

「……もしかしなくても
 今執務室ってすごく空気悪いですか?」
恐る恐る西田さんを振り返って
引き攣る笑顔で聞いてみれば
「本日は出来れば
 空気の換気もお願い致します」
なんてジョークなのか本気なのか
わからない真面目な顔で返すとペコリとお辞儀をする。

道明寺はつまらないヤキモチを妬いたりする事はあっても
その分「愛してる」なんて毎日言ってくれたり
基本的にはすごく優しくって甘い。

だけどそれはオフの時の話で
仕事となると自分にも他人にもすごく厳しい鬼専務。

ドアをノックする前にそーっと少しだけ開いて中を覗いてみれば

何があったのかなんてあたしにはわからないけど
デスクに肘をついて眉間を押さえてる道明寺は
今までにないくらいドス黒いオーラを放っている。

ムリムリムリっっ!!
なにあれっ。なにあれっっ!!
どうしてこの部屋だけこんなに寒いのっ!?

「落ち着くまでそっとしておいた方が…
 さ、先に秘書課から清掃しよっかなぁ……」
静かにドアを閉めて西田さんにそう言おうとすると

コンコン。
とあたしの隣で西田さんがドアをノックする。

「……」
中から返事は聞こえない。

どうぞどうぞと2、3歩下がって
西田さんに場所を譲ろうとすると
「申し訳ございません」
と小声で言うとドアを開く。

さすが西田さん。
あんな道明寺見ても全然動じない上に
あたしが掃除しやすいようにあの道明寺をどうにかしてくれるんだ。

なんて尊敬の眼差しを向けていると
「宜しくお願いします」
とあたしの体を清掃ワゴンごと押し入れて
最後にもう一度ペコリと頭を下げてドアを閉めた。

「え!?ちょっと西田さんっっ」

や、や…やられたっっ!!
そう思ってももう遅くて、パニくる頭の片隅で
確か出会った頃にもノックせずに入っちゃって
こういう修羅場に出くわしてしまった事があったのを思い出していた。

あの時はどうしたっけ…
そうだっ。呆然としてたらさっさとしろって怒鳴られて
とにかく気配を消して掃除したんだ。
モタモタしてたらまた怒鳴られるっ。

そう考えて
「か、仮眠室から掃除してきます」
と道明寺に背を向けて足早に仮眠室へと向かおうとすると

「待て」
と低い声が聞こえてきてビクッと固まる。

え~。何がダメだったの?
あ、もしかして今から仮眠室使うつもりだった?
仮眠室からしていいか、聞くべきだったのかなぁ…。

そんな事を頭の中でぐるぐるさせていると
いつの間にかすぐ後ろに来ていた道明寺にふわりと抱きしめられた。

「ふぅぅぅ…」
まるでパンパンだった風船から空気を抜くみたいに
深く長く息を吐き出すと

「牧野、珈琲飲みてぇ。
 掃除する前に淹れてくれねぇか?」
と頭の上から聞こえてきた声は
もう猛獣要素を含まない落ち着いた声で

「へ?あ、あぁ、うん。わかった」
ワゴンを置いて仮眠室のキッチンへ向かう。

道明寺もあたしと一緒に仮眠室へ入ると
ジャケットをポイっと脱ぎ捨ててソファにゴロンと横になった。


「珈琲入ったよ」
「おー、サンキュ…」
さっきまでのドス黒いオーラはなくても
疲れたように顔を腕で隠すようにしている道明寺。

「お疲れさま」
そう声をかけるとそばにしゃがんでポンポンと頭を撫でてみる。

するとビックリしたみたいに腕をどけてあたしをじっと見る。

ヤバい。ついやっちゃったけど
こんな小さな子供にするみたいな事されて
余計に機嫌悪くなっちゃったんじゃ…。

「あ…ご、ごめんね」
慌てて引こうとした手は腕ごと掴まれて引き寄せられた。

「嫌じゃねぇよ。いいなコレ。
 でもどうせお前にやってもらうならコレの方がいい」
ニヤっと笑う顔が目の前に来たと同時に
チュッと唇が重なった。




「さすがでございますね」
あの後、秘書課を掃除してる間に
執務室で道明寺と打ち合わせをしていた西田さんは
戻ってくると何事もなかったみたいな顔をしている。


「西田さんでもああいう道明寺は怖いですか?」
そう聞いてみれば
「えぇ、まぁ。度合いにもよりますが
 今日のような場合は何を言っても何をしても私では力不足です」
なんて小さく息をつくから
「ああいう時は頭をポンポンってして
 お疲れさまって言われたら嬉しいみたいですよ?
 ふふっ。結構可愛いトコありますよね~。では、お疲れ様でしたっ」
なんて今日取得した猛獣化した道明寺の対処方を伝授して立ち去った後


「そんな事をする勇気があるのも
 して許されるのも牧野さんくらいなのですが…」
なんて深くため息をつかれていた事はあたしは気づかなかった。




~ fin ~


★あとがき★

先日、某J様(鍵コメだったので一応伏せときます。笑)
より拍手コメントに

15日誕生日なんだよな~
「Blunt」のイチャコラ見たいな~

なんて独り言のようなコメが届きましてですね。

普段からたくさんコメントを寄せて頂いている
J様ですので、これはせめてものお礼も兼ねて
BDお祝いとして書かねばならんと
急いで種蒔きをしたわけです、ハイ(笑)

で、芽が出たのがこんなの…という(--;)
この2人はいちいち鈍いから
なかなかイチャイチャが難しいんですよねぇ。

実はもう1つ芽が出たのもあったんですが
微妙に本編の流れを無視してる所があったり
無駄に長くなって前中後編になったりで、ボツ(^^;)


結局。
西田さんでもお手上げの猛獣化した坊っちゃんを
唯一癒せるのは当然つくしちゃんだけなんですが
本人にはやっぱり自覚はないなんて鈍感さは健在な
おバカなお話に…(*ノω<*)

西田さんが頭ポンポンなんかした日にゃ…
それこそ事件です(笑)


イチャコラと言われたのに
全然イチャイチャしてない気もするんですが…(^^;)

とにもかくにもJ様
ハッピーバースデーでございますっ♡




koma




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No title

やったぁ~o(^-^)o
Bluntの番外編!
嬉しいなぁ~O(≧∇≦)o
素敵なブレゼント、ありがとうございます(*^-^*)
休憩中のkomaさんだから、図々しいとは、思ったんだけど、丁度誕生日だったもんで、カツアゲよろしく、つぶやいてみました(≧∇≦)

御機嫌の悪い、司君の頭をポンポン……
そりゃ、流石の西田さんにも、できませんよね(・∀・)ニヤニヤ
つくしちゃんならではの、司君操縦術、西田さんじゃなくても、流石ですと、言いたくなるね~( ̄ー ̄)ニヤリ

JUJU様

ハッピーバースデーです(*^^*)

うふふ。カツアゲありがとうござます(笑)
こんなので大丈夫でした?
気に入って頂けてたら嬉しいです♡

ねー。
つくしちゃん以外が同じ事したら
さらに執務室の温度が下がっちゃいますよねぇ。
…っていうか死人が出る(笑)??
やっぱりこのお話の中の西田さんの苦労はまだまだ続きますね(^皿^)
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