最高の贈り物

あたしの病気はとっくに完治してる。

それなのに司はあたしが少し咳をしただけで
大騒ぎするほど心配症な夫となっていた。


『最高の贈り物』 
        ~私を嫌いになって 番外編~
  


そりゃあたしだって一応女なワケで
隣に立つ旦那様がこんなに何もかも完璧な男となれば
いくら気を使わない関係だって言ったって、
さすがに平気でオナラしたりはしないけどさ。

くしゃみくらいは人間、ふいに出る時だってあるでしょ?
それなのに…

「…くしゅんっ!」
なんて司の前でしようものなら…
「おいっ!寒ぃのか?風邪ひいたんじゃねぇのか!?」
と自分の上着やら毛布やら
その辺にある物であたしをぐるぐる巻きにする。

そして最近司の心配症はますますエスカレートしていて
昨日なんて
「あふ…」
とちょっと欠伸しただけで…
「疲れてんじゃねぇのか?今日は早く寝るぞっ」
なんて言いながら軽々とあたしを抱き上げてベッドに運ぶ。

……少なくとも寝不足の原因はあんただっつーの!!

なんてさすがに言わないけどね。
でも眠気があったのは本当だったし
今日はゆっくり休めそうだとお言葉に甘えてぐっすり眠る。


そんなある日。

「そう言えばそろそろ司の誕生日だねぇ。
 あたしがあげられる物で何か欲しい物とかある?」
カレンダーを見ながらそう聞いてみれば

「何もいらねぇ。
 お前がいればいい。次の1年もオレから離れるな…」
なんて真剣な顔で言いながらあたしを抱きしめる。

「もうっ…。どこも行かないよ。
 あたしもあんたがいないと生きてけないって言ったでしょ?」
そう言いながら慰めるようにクセのある髪に手を伸ばした。


何もいらないって言ったって
やっぱり何かはしてあげたくて考えた結果
あたしは出会った頃みたいにクッキーを焼く事にした。

「奥様…材料くらい私たちで揃えておきますのでっ」
買い出しに行こうとするあたしを
シェフの坂田さんが慌てて追いかけてくる。

「ありがとう。でも司にあげる物だから自分で用意したいの」
「…ではせめてお車を使ってください。
 あぁっ!そうだ!私もお供させて頂きますっ」
司顔負けの心配性っぷりで慌ててコートを手に取る坂田さん。

「いいのよ。司じゃあるまいし。
 電車くらい1人で乗れるんだから…
 それにダメだって言ったって織田さん達は一緒でしょ?」
そう言って少し離れた所で立っている
SPの織田さんに視線を送れば無言でペコッと頭を下げる。

「じゃあ行ってきまーす」
「奥様っ…!」

そんな会話をしたのが少し前。
司の誕生日も3日後に控えたこの日、

材料も無事に揃えたあたしは夫婦の部屋に
備えられたミニキッチンで1人、クッキー作りに精を出した。



そして誕生日当日。
西田さんに頼んで(…と言うか脅して?)
今日だけは出社せずに邸にいられるようにしてもらった
主役の司はゆっくり…どころか、結局は誕生日のお祝いに、と
どこぞの社長さんやらが次々と来訪するからその対応に追われていた。

「はぁぁ…ったく。やっと片付いたぜ」
そう言いながら部屋に戻ってきたのは夕方。

「お疲れ様」
そう言って上着を受け取ろうと近寄った
あたしの顎を片手でくいっと持ち上げると

「……何か微妙に顔色悪ぃな?大丈夫か?」
と目ざとく心配性を発揮する。
「そう?大丈夫だよ」
そう言いながらも少し体がダルかったのは本当だったりで…
さすがに鋭い、と内心ヒヤッとした。

「それより、はいコレ」
これ以上ツッコまれる前にと
焼いておいたクッキーを差し出す。

「お。懐かしいな…サンキュ」
司の似顔絵にしたクッキーを1つ摘まんでから
「美味い」
と嬉しそうに笑う……そして。

あたしをひょいっと持ち上げてソファに座らせると
自分はあたしの前でしゃがんでじっと見つめると

「で?どこがどう悪いんだ?
 貧血か?それとも熱か?ちゃんと計ったのか?」
とごまかしたはずの話題をぶり返された。

「もうっ…大丈夫だってば。
 自覚しちゃうとなんとなくダルいような気がするだけ」

本当はご飯でも食べながらゆっくりと話そうと思ってたのに
これ以上黙ってるのは無理だと諦めて、ため息をついて答える。

「自覚?おいっ!自覚って何だよ!?
 いつから体調が悪いんだ??病院行ったのか?何て言ってた?」
今にもあたしを担いで病院に駆け込みそうな司。

「司!落ち着いてよっ。
 ちゃんと今から話すから…ね?」
あたしの言葉に司は深呼吸をしてゆっくりあたしを見た。

「あ、あのね…。
 クッキー焼いた時にさ、オーブン開けた途端に吐き気がして
 もしかして…と思って病院行ったの。そしたらね……ビンゴだった」

「ビンゴ?吐き気がしたんだろ?
 何ラッキーみたいに言ってんだよ…
 医者は何て言ってた?ちゃんと治るんだろうな?」
今にも泣きそうな顔であたしの頬をそっと触る司。

……あれ?もしかして伝わってない?
どんだけニブいの、コイツ…。

はぁぁ…っと1つ大きなため息をつくと
何を勘違いしたのか今度は
「……そんなにひでぇのか?」
と真っ青になった。

「もうっ!バカ司!!」
そう言って司の手を取ってそっとお腹に当てる。
「…いるんだって。
 ここに。あたし達の赤ちゃん」
あたしが笑って言った言葉に
自分の手が置かれたあたしのお腹を見たまま
しばらくフリーズして漸く理解したらしい司は

「よっっしゃあぁぁぁぁ!!!」
と雄叫びをあげる。

その後は大変だった。
タマさんはもちろん、邸中の使用人の方達に
あたしが妊娠したからサポートを頼むだの、
危ない事は絶対にさせるなだの、
言いまわって歩くからみんなまでつられて大騒ぎ。

呆れて固まってるあたしを見てタマさんが
「めでたいのはよぉくわかったさね。
 でもそろそろ体に障るよ。ゆっくり休ませてやったらどうだい」
と司に言ってくれた事で漸く2人で部屋に戻れた。

部屋に戻ってからも司はまだ興奮冷めやらぬようで
あたしのお腹を撫でたり耳を当てたり…。

「いや…。まだわかんないと思うけど
 あたしだって、全然実感ないんだからね?」
なんて事も何度言ったかもわからない。

だけど…

あたしを抱きしめながら
「今までで一番の誕生日プレゼントだ。ありがとうな」
と本当に幸せそうに言った司の顔は
少しだけパパに近づいていたような気がした。



~ fin ~


★あとがき★

司BD第2弾は
「私を嫌いになって」初の番外編です。

実はこのお話…
あまり振り返りたくないくらい
自信がないっていうか
読み返すの恥ずかしいっていうか…(^^;)

だけど最初にアップした「離した手」より先に
浮かんでいた初の妄想だったりもするので
原点回帰って事で番外編書いてみました。

普段から番外編でも書こうとしない限り
自分のお話を読み返す事はないので
久々にこの初期の2作を読み返すと
恥ずかしいですね~ (○≧Å≦)

わざわざ連載をストップさせてまで
坊っちゃんの誕生日に新作短編ではなく
こんな初期の頃のお話の番外編を書いたりしちゃって
読んでない人にとってみれば
ガッカリさせちゃったかな~っと思ってたんですが

昨日からそちらの2作をおさらいして下さったのか、
番外編の前に、とわざわざ読んでくださったのか
その2作に限らず初期の方のお話に
拍手まで頂いちゃったりして嬉しかったです♪


そして全然関係ないですが
坊っちゃんに会えるかもと
先ほど神尾葉子先生のTwitterを覗いてみたらば
ちびF3のイラストがあって萌え死にました(≧ω≦)

あんな素敵なの見ちゃったら
『幼なじみ』もまた書きたくなりますね~♪

ま、そんな事はおいといて、
とにもかくにも我らが坊っちゃんの誕生日を
少しでも多くの方が楽しんで頂けていれば幸いです(*^^*)




koma


 
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No title

うわ~、幸せなつかつくo(^-^)o
私を嫌いになっては、司君にとっては、ホントは、大好きなのに、何故か喧嘩腰のつくしちゃんの為に、泣く泣く別れてみたけど、やっぱりつくしちゃんが、いなくちゃダメで、探して捜して……なお話だったから、病気で、わざと嫌われて、身を引こうとしていたつくしちゃんを完治したとはいえ、過保護全開な司君、わかるわぁ~
誕生日に、赤ちゃんが居ることが、わかるなんて、スッゴく素敵なプレゼントですね(*^-^*)
komaさんのお話は、ほんわか幸せな気持ちになれるから、大好きです
ハッピーエンドのその後、他のお話のその後も、たま~にで良いので、お願いしますm(__)m

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JUJU様

元々司君はつくしに対しては心配症な所がありますからね。
このお話だとその部分がさらに強調されちゃうのかな…っと。

来年の誕生日は3人で幸せに過ごすんだと思います♪

嬉しいお言葉もありがとうございます(*^^*)
番外編…そうですね。
せっかくだから次の「No Way!」から
順番に書いてってみようかなぁ…。

ka★★★様

こちらこそお付き合い頂きありがとうございます(^^)

妊娠中…。
確かにすごそうですよね(笑)
つくしやタマさん筆頭に邸中に呆れられてそうです(((*≧艸≦)
1度離れたからこそわかるお互いの大切さ。

初めてのお熱編…それだけで面白そうです♪
美味しそうな妄想の種もありがとうございます(*^^*)

ねー♪
先生のイラスト最高でしたよね(≧∀≦)

み★様

いつもお付き合い頂きありがとうございます(^^)

えっ。ホントですか?
初めて言われた気がするのですごく嬉しいです(*^^*)

こちらこそこれからもよろしくお願いします♪

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つかつ★★★様

クッキーあげるところ
私も大好きで色んなお話で何度も書いてる気がします(笑)

離した手とこのお話は
ほんとに初期なので
自分では読み返すと恥ずかしいのですが(^^;)
面白かったと言っていただけると救われます♡

ありがとうございます(*^^*)



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