嘘のようなホントの話 27
牧野の記憶が戻って3日。
念のため脳の検査を
いくつか受けるためにあいつはまだ入院中だ。
『嘘のようなホントの話』 第27話
当然のように病院に泊まり込もうとしたオレに
「そんな事したらお義母様に言いつけて
長期出張とか入れてもらうからね!?」
なんて言われてしぶしぶ通っている。
そして今日も少しでも顔が見たいと
仕事を必死に片づけて病院に来た。
それなのに……。
あいつの病室が近づくにつれて
聞こえてくる声に
オレの額には青筋が浮かんでいく。
「まさか牧野まで記憶喪失なんてな」
「しかも司だけ!」
「喧嘩になって不利になるとさ、
“あたしだけ忘れたバカは誰だっ”って
言ってやってたのに、これからはもう使えないなぁ」
とケラケラ笑ってやがる牧野。
「でもまさか思い出すきっかけが
これまたボールとは…どこまで一緒なんだよお前ら」
「だから滋ちゃん言ったじゃん!
ボールぶつけてみようって~!」
「あたしは当たってないんだから!
あんなの頭に当たったら本当に死ぬっつーの!」
…そのボールをオレの頭にぶつけたのはお前だろうがっ!
「それも土星人の特徴なワケ?
えっと…あぁ、そうだ。運命共同体?…だっけ?」
「やめてよ、類。気持ち悪いっ!
そんなの全然嬉しくないんだからっ!」
気持ち悪いってなんだ!?
ちょっとそう思ってたオレがバカみてぇじゃねぇかよっ!!
イライラしながら病室のドアを勢いよく開けて
「てめぇらっ!毎日毎日来やがって…帰れっ!!」
「なんだよ機嫌悪ぃな、司」
「いいじゃん別に。会いたいんだからさ」
なんて言いながら誰一人として動こうとしない。
いいわけあるかよっ!
お前らがいつもいるせいで牧野の記憶が戻ってから
2人きりになれてねぇんだよ!!
「せっかくみんな来てくれてるのに
そんな言い方しちゃ悪いよ。
それにあんただって毎日来てるじゃない」
と牧野は相変わらずだ。
オレはお前の恋人で婚約者だぞ!
毎日見舞うのは当然じゃねぇのかよっ!!
「………チッ!!」
もう何も言う気にもなれず
ドカッと無言でソファに体を沈める。
「うっわ…。超不機嫌っ」
そう言った滋を無言で睨みつけると
ぎゃーとか言いながら牧野にしがみついてやがる。
「はぁぁ…。帰ろうぜ」
ため息をついて言ったのは総二郎。
「あぁ…暴れる前に退散した方が身のためだな」
と総二郎に続いて腰を上げるあきら。
「牧野…また明日ね」
と類。
「じゃあ私たちも…。
先輩、道明寺さん明日までに何とかしといて下さいね?」
「頼んだよ、つくしー!」
と三条と滋も鞄を持つ。
「え…。ちょっと待ってよ!
あたし1人でこんなのどうにかしろって言うの?」
と牧野は頬を引き攣らせながら言ってやがる。
「こうなったら、もうお前にしかどうにも出来ねぇよ」
苦笑いするあきらに他の奴らも頷いてぞろぞろと出て行く。
2人きりになった病室。
黙ったままソファに座ってるオレの様子を伺いながら
「あんたは帰らな……」
そう言いかけた牧野を睨んでやると
「…いよね。…そんな睨まないでよ。わかってるってば」
そう小さくため息をつくと
ベッドから降りてオレの前に立つ。
ふわっと香ったこいつの匂いに
イライラしてた気持ちが小さくなっていく。
「…何がわかってんだよ」
「あたしに怒ってるんでしょ?
…忘れたりしてごめんね?
謝らなくちゃとは思ってたけど、みんないるとやっぱりさ…」
そう言って小さく笑う
相変わらず鈍いコイツの腕を引っ張って抱き寄せる。
「ばか。ちげーよ…。
そんな事怒ってんじゃねぇ
オレは…お前と2人になりたかっただけだ」
どんな手を使っても取り戻すつもりでいても
それでも、もしも…
こいつがオレの所に戻ってこなかったら…
そう思うと気がおかしくなりそうで。
「……すげぇ怖かった。不安だった」
「…うん。ごめんね」
「オレにはお前しかいねぇんだよ」
「……あたしだってそうだよ。
記憶がなくたって、ちゃんと好きになったもん」
「ほんとか?」
「何よ。信じないの?」
拗ねた顔でそう言うとオレの胸を押し返して離れようとする。
その腕を捕まえて
「だったら顔見てもう一度言ってくれよ」
そうまっすぐ見つめて言うと
みるみるうちに真っ赤になるこいつの顔。
「…好きだよ。
記憶がなくたって、
好きになったのはやっぱり道明寺だった。
あたしにはあんただけ。……信じてよ」
そこまで言うと限界だとばかりに
両手を顔で覆ってしゃがみ込んでしまった牧野。
……なんだこれ。
可愛いすぎんだろ、こいつ。
たまらなくなって足元でしゃがみこんだままのこいつを
抱き上げてベッドに運んで組み敷いた。

いつも応援ありがとうございます♡
★お?頑張った坊ちゃんにご褒美タイム?それとも……(笑)?★
念のため脳の検査を
いくつか受けるためにあいつはまだ入院中だ。
『嘘のようなホントの話』 第27話
当然のように病院に泊まり込もうとしたオレに
「そんな事したらお義母様に言いつけて
長期出張とか入れてもらうからね!?」
なんて言われてしぶしぶ通っている。
そして今日も少しでも顔が見たいと
仕事を必死に片づけて病院に来た。
それなのに……。
あいつの病室が近づくにつれて
聞こえてくる声に
オレの額には青筋が浮かんでいく。
「まさか牧野まで記憶喪失なんてな」
「しかも司だけ!」
「喧嘩になって不利になるとさ、
“あたしだけ忘れたバカは誰だっ”って
言ってやってたのに、これからはもう使えないなぁ」
とケラケラ笑ってやがる牧野。
「でもまさか思い出すきっかけが
これまたボールとは…どこまで一緒なんだよお前ら」
「だから滋ちゃん言ったじゃん!
ボールぶつけてみようって~!」
「あたしは当たってないんだから!
あんなの頭に当たったら本当に死ぬっつーの!」
…そのボールをオレの頭にぶつけたのはお前だろうがっ!
「それも土星人の特徴なワケ?
えっと…あぁ、そうだ。運命共同体?…だっけ?」
「やめてよ、類。気持ち悪いっ!
そんなの全然嬉しくないんだからっ!」
気持ち悪いってなんだ!?
ちょっとそう思ってたオレがバカみてぇじゃねぇかよっ!!
イライラしながら病室のドアを勢いよく開けて
「てめぇらっ!毎日毎日来やがって…帰れっ!!」
「なんだよ機嫌悪ぃな、司」
「いいじゃん別に。会いたいんだからさ」
なんて言いながら誰一人として動こうとしない。
いいわけあるかよっ!
お前らがいつもいるせいで牧野の記憶が戻ってから
2人きりになれてねぇんだよ!!
「せっかくみんな来てくれてるのに
そんな言い方しちゃ悪いよ。
それにあんただって毎日来てるじゃない」
と牧野は相変わらずだ。
オレはお前の恋人で婚約者だぞ!
毎日見舞うのは当然じゃねぇのかよっ!!
「………チッ!!」
もう何も言う気にもなれず
ドカッと無言でソファに体を沈める。
「うっわ…。超不機嫌っ」
そう言った滋を無言で睨みつけると
ぎゃーとか言いながら牧野にしがみついてやがる。
「はぁぁ…。帰ろうぜ」
ため息をついて言ったのは総二郎。
「あぁ…暴れる前に退散した方が身のためだな」
と総二郎に続いて腰を上げるあきら。
「牧野…また明日ね」
と類。
「じゃあ私たちも…。
先輩、道明寺さん明日までに何とかしといて下さいね?」
「頼んだよ、つくしー!」
と三条と滋も鞄を持つ。
「え…。ちょっと待ってよ!
あたし1人でこんなのどうにかしろって言うの?」
と牧野は頬を引き攣らせながら言ってやがる。
「こうなったら、もうお前にしかどうにも出来ねぇよ」
苦笑いするあきらに他の奴らも頷いてぞろぞろと出て行く。
2人きりになった病室。
黙ったままソファに座ってるオレの様子を伺いながら
「あんたは帰らな……」
そう言いかけた牧野を睨んでやると
「…いよね。…そんな睨まないでよ。わかってるってば」
そう小さくため息をつくと
ベッドから降りてオレの前に立つ。
ふわっと香ったこいつの匂いに
イライラしてた気持ちが小さくなっていく。
「…何がわかってんだよ」
「あたしに怒ってるんでしょ?
…忘れたりしてごめんね?
謝らなくちゃとは思ってたけど、みんないるとやっぱりさ…」
そう言って小さく笑う
相変わらず鈍いコイツの腕を引っ張って抱き寄せる。
「ばか。ちげーよ…。
そんな事怒ってんじゃねぇ
オレは…お前と2人になりたかっただけだ」
どんな手を使っても取り戻すつもりでいても
それでも、もしも…
こいつがオレの所に戻ってこなかったら…
そう思うと気がおかしくなりそうで。
「……すげぇ怖かった。不安だった」
「…うん。ごめんね」
「オレにはお前しかいねぇんだよ」
「……あたしだってそうだよ。
記憶がなくたって、ちゃんと好きになったもん」
「ほんとか?」
「何よ。信じないの?」
拗ねた顔でそう言うとオレの胸を押し返して離れようとする。
その腕を捕まえて
「だったら顔見てもう一度言ってくれよ」
そうまっすぐ見つめて言うと
みるみるうちに真っ赤になるこいつの顔。
「…好きだよ。
記憶がなくたって、
好きになったのはやっぱり道明寺だった。
あたしにはあんただけ。……信じてよ」
そこまで言うと限界だとばかりに
両手を顔で覆ってしゃがみ込んでしまった牧野。
……なんだこれ。
可愛いすぎんだろ、こいつ。
たまらなくなって足元でしゃがみこんだままのこいつを
抱き上げてベッドに運んで組み敷いた。

いつも応援ありがとうございます♡
★お?頑張った坊ちゃんにご褒美タイム?それとも……(笑)?★
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