嘘のようなホントの話 5

秋から冬に差し掛かる頃、
覚えのない内定通知書が届いてから
研修だ何だとこなしながら

春。あたしは道明寺HDの正式な社員になった。


『嘘のようなホントの話』   第5話


研修の過程であたしは総務部に所属が決まったから
総務部の部長や先輩方の顔はもう覚えていた。

一緒に配属されたのはあたしの他に
さばさばとした印象の同い年、長瀬 麻衣と
大学院卒で年齢は2つ年上になる小出 貴志の2人。

この2人とも研修中にすっかり仲良くなって
一緒に総務部と決まった時は喜んだ。

「つくし!おはよう」
「牧野、おはよ」
うしろから声をかけられて振り向くと麻衣と小出君。

「おはよ。一緒に来たの?だったら誘ってよ」
そう言って軽く頬を膨らませると
「私たちもさっきそこで会っただけだってば」
と麻衣がケラケラ笑う。

「そうなんだ。でも会えてよかった。
 1人で総務部入るの緊張してどうしようかと思ってたから」
「うん。俺も」
と小出君もクスッと笑う。

結局3人で総務部に向かうと
教育係の先輩が声をかけてくれる。
「おはよ。3人お揃いで相変わらず仲いいね」
そう言ってあたし達に手招きをすると

「ここが君たちの席ね。
 あと近いうちに歓迎会するから。
 あんた達は会費いらない代わりに絶対参加。
 いいね?…ってやば。これってパワハラになるんだっけ?」
とペロッと舌を出す先輩は5つ上とは思えないほど可愛らしい人。

「いいえ。喜んで参加します。な?」
と小出君は言えば
「「もちろん」」
とあたしと麻衣も頷く。

「よかった。
 じゃあ日時はまた他の人とかの都合に合わせてからね」
そうにっこり笑うと、業務の説明に入った。


さすがに道明寺HDともなると総務部の人数は多く
その業務も多岐にわたる。

その中で新人のあたし達が出来る事なんて
まだまだ知れていて
とりあえずしばらくは各部署の場所を覚えるついでに
各部署に届いた書物を届けるのが当面の仕事みたいだ。

「これが小出、これが牧野、でこれが長瀬ね。
 明日からは引き取りと仕分けも君たちの仕事ね」
そう言って先輩が渡してきたのは3つのコンテナ。
「すごい量だね」
「さすがは道明寺HD」
「とりあえず配りに行こっか」
そう言うとそれぞれ渡された箱を台車に乗せて
総務部をあとにする。

今日の分は先輩が配りやすいように仕分けてくれたようで
あたしがもらった分は上層階にまとめられているようだった。

順番に配って行き最後に持ってきたのは秘書課。
ここには各重役宛ての書物もあるので
それを手前の机に座っていた
秘書課の綺麗なお姉さんに渡そうとすると
奥に座っていた眼鏡の男性が立ち上がって

「ご苦労様です」
とわざわざ入口まで歩いてきて受け取ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
ペコッと頭を下げるとその人はサササっと
目にもとまらぬ速さで渡した書物を仕分けすると
それぞれの机へと配って行く。

そして最後に残った束をあたしに返してくるので
「…もしかして仕分けが間違ってましたか?」
受け取りながら聞くと
「いいえ。そちらは支社長宛てになりますので
 牧野さんから直接お渡しになって下さると助かります」
と奥の重厚そうな扉を指す。

「…あたしが、ですか?」
驚いたのはあたしだけでないようで
秘書課のお姉さん方もギョッとした顔でこっちを見てる。

「えぇ。是非。お願いできますか?」
そう言われて新人のあたしが断れるわけもなく
お姉様方がじっと見守る中、恐る恐る奥の扉をノックする。

「…入れ」
中から声が聞こえてきてそっと扉を開けて入ると

「お。なんだ、牧野か」
そう言ってフッと笑っていたのは道明寺だった。

「……」
何も言わないあたしに
「まさかオレの事覚えてねぇとか言うんじゃねぇだろうな?」
と少しだけ不機嫌な顔をするから

「いや…覚えてるけど。
 道明寺…こんな所で何してんの?」
とりあえず大きなデスクに書物を置くと
「何してるって…仕事してんに決まってんだろ」
と面白そうに笑われて
「仕事って…え?道明寺ってここの支社長なの!?」
「はぁ?お前自分が勤める会社の支社長の顔も知らなかったのかよ」
とため息をつかれる。
「だって!入社式には社長しか出てなかったし…」

入院中は毎日のように会いに来てくれたし、
それからも何度かみんなと集まる時は必ず道明寺もいたから
すっかり顔なじみではあるけど
そう言えば仕事の話とかは一度も聞いた事がなかった。

「あぁ…入社式ん時はちょうど出張入ってたからな」
そう言いながらあたしが置いた郵便物にささっと目を通す。

「…って言うか
 いつも総務の人がどうみ…支社長に渡してるんですか?」
道明寺と言いかけて、支社長と言い直すと
「いや。西田にもしお前が来たら持って来させろって言ったからな。
 他の奴は普通、この部屋に入ったりしねぇよ。
 …あと人前ならしょうがねぇが2人の時は敬語とかやめろ」
とどこからツッコんでいいのかわからない事を言う。

「ちょっ…。どうしてあたしだと
 ここまで持って来なきゃならないのよ…」
とりあえず最大の疑問をぶつけてみると
「お前の顔が見たかったからに決まってんだろ?」
とまるで当たり前みたいに言うから
やっぱりどうツッコむべきなのかわからなかった。





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No title

司君、ストレートですね
お前の顔が見たかったから…
イヤイヤ、楓様公認、西田さんもウエルカム体制…
これで、落とせなきゃ…
頑張れ司君、JUJUも司君の見方だよ!

ka★★★様

考えてみれば入社するって事は
春なわけですから、この時点で
半年ほど経過してるって
書き始めてから気づきました(笑)

そう考えれば
執務室に招き入れるくらい
許してあげなきゃかわいそうですね(^_^;)

悠★様

ふふ…♪
その辺りは明日の更新で
明らかになって参ります(^_^)

JUJU様

西田さんは支社長の仕事の効率を上げるためなら
何だって利用しますからね(笑)
つくしちゃん程おいしい素材はいません♪

あとは坊っちゃん次第ってとこですかね(*^^*)
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