私を嫌いになって 4

アイツと別れて2回目の夏が来た。
あたしは相変わらず病室から空を見ている。

そんな時は…やっぱりアイツの事を考えてしまう。


『私を嫌いになって』   第4話


アイツには何も言わないまま道明寺家を出たあたし。
だけど…たった1人真実を知る人がいる。
それはお義母様だ。


あたしがわざとあいつに喧嘩をふっかけるようになったある日。

喧嘩ばかりしている事を使用人からでも聞いたのだろう。
あたしはお義母様に呼び出しを受けた。
道明寺家の嫁としてあるまじき行為であるのは百も承知。
あたしは叱られる覚悟をしてお義母様の私室のドアをノックした。

「失礼します…お義母様」
「そこにおかけになって」

あたしの予想通り、お義母様は厳しい表情で迎えた。

「最近、司さんと喧嘩が絶えないんですって?」
いきなり核心。
「は…はい。申し訳ありません」
あたしが頭を下げると…

「ホントに不器用な方…」
とお義母様はため息をつきながら一言。
あたしはその言葉の真意がつかめずにお義母様を見ていた。

「あなたって人はまったく。本当にそれで後悔しなくて?」

えっと…何の話をしてたんだっけ?
最近アイツと喧嘩が多いって叱られてるんだよね?
あ。そんな事ばかりしてて追い出されてもいいのかって事か!

「違います。出て行こうとしているのはあなたの意思でしょう?」
「え…?」
「思ってる事が口に出る癖、治ってらっしゃらないようね?」
…またやってしまったらしい。
言っちゃったモンはしょうがないと腹をくくって真意を尋ねる。

「では…何についてのお話でしょうか?」
「司さんはごまかせても私の目はごまかせませんよ。
 私が何も知らないとでも思ってるの?…あなたの体の事です」
と、お義母様が初めて表情を崩し心配そうに答えた。

「…ッ!」
誰にも知られていないハズだった。少なくとも私の周りにいる人たちには。

「容態はどうなの?」
質問の答え以外は認めないと言った空気のお義母様。
こうなったらもうこの人相手にごまかせる術をあたしは持っていない。

「このまま治療をしなかったとすれば…5年の命だそうです」
あの日1人でバレないようこっそり受診した小さな病院で
担当医師に告げられた言葉をそのまま伝える。

「何てこと…」
予想より悪かったのだろう…。
お義母様の顔が少し青ざめた。

「でも治療の余地もない訳じゃないのでしょう?
 それ上で何故あなたは治療を選ばず道明寺を出る気になったのかしら?
 あなたに限って簡単に命を諦めるなんて事はしないと思っています。
 私はそこがどうしても解せないのです。」
お義母様の疑問はもっともだ。
もっと施設のしっかりした大きな病院で
ちゃんと治療を受ければ完治する事だって可能なのも事実。
でもその確率は100%じゃない。五分五分だと言われた。

「自惚れかも知れませんが…司さんは私を心底愛してくれていると思います。
それこそ私がいれば他に何もいらないと…いつも伝えてくれていま…す。」
自分で言ってて照れ臭い…。絶対今、顔が真っ赤になってる。
そんな私の顔を見て笑うでもなく真っ直ぐな瞳で
「そうね。司さんにとってあなたは全て。あなたを失ったとしたらあの子が
 自分自身を見失うなんて事は明らか。昔のように荒れるんでしょうね…」
と私の言葉を肯定してくれた。

「でもあなたと離婚するのも……
 死別…するのも、あなたを失う事に変わりはないのではなくて?」
「はい…。ただ離婚するだけならそうです。
 でも司さんが私に嫌気がさして望んだ上での離婚なら意味が違ってきますよね?」
私がそう答えると、お義母様はハッとしたように顔を上げて私を見つめた。

治療して完治する可能性は五分五分。
この数字は決して絶望的なものではないと思う。
半分の確立で生きていける…と考えるか、
半分の確率で死ぬかもしれない…と考えるかだけの2択。
でもあたしは死ぬのが怖いんじゃない。
あいつを残して逝くのが怖いんだ。

「…その為にわざわざ喧嘩を…?」
「そうです。馬鹿げた話だとは自分でも思っています。
 あたしだって病気を治す気がない訳ではありません。いえ、絶対治します。
 でも荒れるとわかっていて司さんを置いて逝くなんて事だけは絶対に避けたい。
 だったらあたしが司さんから突き放されればいい…嫌われればいい。
 そうすればあたしがもしこの病気に勝てなかったとしても
 司さんも……そして道明寺も安泰です」
そう言い切った私をしばらく見つめていたお義母様。

「……本当に馬鹿げたことね」
大きくため息をついて
「わかりました。あなたの事です。どうせ私が何を言ったって聞かないのでしょう?
 司さんとの事はあなたの好きにすれば宜しいわ。
 ただし。あなたの体の事は別。こちらで用意した病院で治療は必ず受けてもらいます。
 司さんにはこの事は話しません。あなたと私だけの秘密。それでよろしくって?」

いい?と聞きながらもやはり反論は認めないと言った様子のお義母様。
私もこの重すぎる秘密を話して心が少し軽くなったのも事実だ。
アイツにはバレないのであればそれでいっか。

「はい…よろしくお願いします」
そう言ったあたしにお義母様は歩み寄って
「…頑張りなさい」そう言ってそっと抱きしめてくれた。



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★★★★リン様

ようやくつくしの真意を明かせました。
これが正しい選択かどうかは別にしても
つくしの愛が表現できていれば嬉しいです(^^)

ここからは司に頑張ってもらいましょう♪
あとは気楽にお楽しみいただけるかと思います。
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