I'm back

…どこだ、ここ。
オレ何してたんだっけ…?

思い出せねぇが、
とにかく体は軽くて気分はいい……。


『I'm back』    ~司 短編~


自分の格好を見てみれば
ガウンに何故か裸足だった。

辺りを見渡せば
「……病院か」
自分が道明寺系列の病院の廊下に立っていると気付く。


そう言えばオレ、さっきまで車に乗ってなかったか?
そんで何かすげぇ衝撃があって…そこで意識が飛んだ気がする。

って事は事故って担ぎ込まれたのか。
いつの間に目が覚めて動き出してたんだ?

誰かいねぇのかと歩き出す。
幸い、事故ったわりにはどこも痛くなくて、動き回る事は苦じゃない。
裸足で歩いてるわりに床の感触はあまり感じなくて
ふわふわとした浮遊感まである。
歩くどころか今なら空だって飛べそうなくらい体は軽い。

そんな体でしばらく歩き回っていると
廊下の一角にあいつらが揃っているのが見えた。

「なんだよ。あんなとこにいたのか」
あいつらの方へ歩いて行くと
そこが集中治療室の前だと気付く。

…オレの他に事故に巻き込まれた奴がいるのか?

「おい。お前ら…」
十分聞こえる距離で声をかけたハズなのに
誰1人として集中治療室のガラスに張り付いたままこっちを向かない。

オレ様を無視するなんていい度胸してんじゃねぇか。

一番近くにいたあきらの頭めがけて足を振り上げる。

でも確実に入ったと思った蹴りは
空を切って反動で自分が床に転んでいた。

体が軽すぎて距離感ミスったか?
「…てぇ」
反射的にそう言ったものの体のどこにも痛みはなくて
わりと派手に転んだ気がしたのに
まだ誰1人としてオレに気が付かない。

なんだよ。その中に入ってる奴、そんなにやべーのか?

これならさすがに気付くだろうと
「おいっっっ!!」
これ以上ないくらい声を張り上げる。

すると類たちに囲まれていて見えなかった
いつか刺された時に、このオレに向かって
偉そうな口をきいてきた頭のおかしな女だけが
ビックリしたように振り向いてオレの方を見た。

その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

「…牧野?どうした?」
類がそいつの肩を優しく抱く。

そいつはまだオレの方を見て固まっている。

目が合ってるような合ってないような…。
それでもオレはそいつのでっかい瞳から目がそらせなくなっていて。
そのまま吸い込まれるんじゃねぇかってくらい見つめていた。

それと同時に頭の中に忘れていた
何よりも大事だったはずの女の顔が
浮かび上がって、目の前の女と重なった。

___っ!!

そうだ……牧野だ。

強く想いすぎて記憶から抜け落ちるなんて
どんだけバカなんだよ、オレは。

立ち上がってあいつの前に立つ。
「泣くな…」
そう言って涙を拭おうとしたオレの右手が
あいつの頬をすり抜けた。

「なんだ…これっ」
思わず手を引いて固まってると
集中治療室の中で電子音が鳴り響く。
その音に反応するように牧野がガラスに張り付いた。

「あんたねぇっ!!何回こんな思いさせれば気が済むのよ!」

牧野が怒鳴りながらガラスを叩いたかと思うと
ズルズルとその場にへたり込む。

牧野がズレ落ちた隙間から見えたその向こうには

……オレ?

なんだよ。どういう事だよこれ。

さっきすり抜けた右手をよく見れば少し透けているのに気付いた。
もしかして…オレ、死んだのか?

あいつを残して?
せっかくこうして思い出したってのに?
目の前で泣いてるのに、もう涙も拭ってやれねぇのか?

そう思ってるそばから
体がさらに軽くなっていく気がする。

あぁ…ダメだ。力が入らねぇ。
だんだん目開けてるのも辛くなってきて閉じかけた、その時。

「道明寺!!」
あいつがまた怒鳴り出した声にうっすら瞼を上げる。
「死んだりしたらほんとに許さないんだからっ!!
 今度こそあんたよりいい男見つけて幸せになってやるんだからね!」

…………あ?

お前、今なんつった?
オレよりいい男見つけて幸せになるだと?
ふざけんじゃねぇよ。

お前を幸せに出来るのは世界中でこのオレだけだろうがっっ!!







「……ん」
「司!?気が付いたのか!?」

目を開けたそこはいつもオレが入院する時に使う特別室で。
オレに気が付いたあきらの声に
あいつらがオレを覗き込んでくる。
が、そこに肝心のあいつがいねぇ。

「……牧野、どこ行った」
「おま…思い出したのか?」
と声を出した総二郎だけでなくみんなが目を丸くする。
「…いるよ?牧野、司が呼んでる」
クスッと笑った類が振り向いた方に首だけ回してみれば
ベッドから少し離れたところで涙目のままこっちを見てた。

さっきまでとは違う、鉛のように重い右手をなんとか動かす。
「…っ。届かねぇよ。こっち来い」
オレの声が聞こえてんのか聞こえてねぇのかあいつは突っ立ったままだ。

「ほらっ!つくし!!」
滋が牧野の腕を引っ張ってベッドのすぐ横まで連れてきて
「私たちはお邪魔でしょうから、外しましょう」
と三条がみんなを連れて出て行く。

重たい右手を限界まで上げるとあいつの頬に届いた。
「……オレよりいい男なんかこの世にいるわけねぇだろ。
 今度キョトキョトしやがったら許さねぇのはオレだからな」
オレが言うと同時にあふれ出した涙を親指で拭ってやる。

お前の涙を拭ってやれるこの場所を誰かに譲ってたまるかよ。
記憶がなくてフラフラしてたし、うっかり逝っちまうとこだったが
ちゃんとここに帰ってきたぜ。

「ただいま」
「…おかえり」

オレの言葉に牧野がやっと小さく笑って答えた。


~ fin ~





★あとがき★


「Fall in…」に続く、
司の記憶喪失 短編 第2弾??

これはシチュ的には好物だったんですが
お話を広げるとなると大変そうだったので
連載用としてはボツとなりました。

短編にしては長いんですけどね。
前後編にするには短く、
とことん中途半端(笑)

記憶を失った司の
臨死体験(…っていうので合ってる??)編です。

もうすぐ「The one」も終わるのに
次々とボツってる場合じゃないんだけどなぁ…。

でも妄想は楽しいので…ま、いっか(笑)


臨死体験が書きたかったのか、
記憶喪失が書きたかったのか、
どっちかわかんない感じになっちゃいましたが
楽しんで頂けていれば幸いです♪



管理人 koma




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チビ★★★マ様


幽体離脱、楽しんで頂けたようで嬉しいです♪
記憶が戻るタイミングとしては
今かよ!って感じですけどね~(笑)
ギリギリの所で戻ってきました。

The oneもお付き合いありがとうございます♪
最後まで楽しんで頂けますように(*^^*)
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