The one 15

てっきりとっくに帰ったと思っていた牧野。

「ちょっと入ってもいい?」
そう言って、
オレの返事も聞かねーで部屋に入っていく。


『The one』   第15話



「お…まえ、帰ってなかったのかよ?」
こんな時間まで待ってるほど怒ってんのか…?

正直そこまでだと思ってなかったオレは少し焦る。


「昨日はさすがにちょっとやりすぎたとは思ってんよ…。
 だからそんな怒んなよ…な?」
そう言ってソファに座るあいつの隣に腰を落とすと
「ありゃ珍しい…。あんた反省してんの?」
とこいつはきょとんとして首をかしげてオレの顔を覗き込んでくる。

「悪かったとは思ってる…。
 思ってるけど2度としねぇとは言わねぇ。
 どうしたって気に入らねぇもんは気に入らねぇんだからよ」
「はっ…?何それ!?
 謝ってんの?喧嘩売ってるの?どっちなのよ」
「仕方ねぇだろ。お前がオレをどう思ってようと
 オレはお前が好きでたまんねぇし。嫉妬するなっつーのは無理だ。
 お前が他の男にキョトキョトしてたらどんな手を使ってでも奪い返す」

あぁ…これじゃまた怒られるな…。
でも嘘ついてまで許してほしいとは思わねーし。

一応謝ったし、言いたい事は言った。
後はこいつがどうするか…。
ふざけんなって1発くらいは殴ってくるか…?
まぁそれもしゃーない。

覚悟を決めて、あいつの方に向き直ってまっすぐ見る。

すると
「……はぁぁぁぁ」
でかいため息をついてガクッと肩を落としたかと思うと
急にクスクス笑いだす牧野。
「…なんだよ?」
「…あんたがバカすぎて怒る気も失せちゃったわよ。
 もういいよ。とりあえず昨日の事は許してあげる。
 みんなには違うって話せばいいだけだしね。
 でも次は許さないんだからね?ちゃんとわかってる?」
そう言ってオレに指をビシッとさしてくる。

「お…おぅ。わかってる。
 やらねぇとは言わねぇが気を付ける」
そう言って曖昧に頷くと、
「まだ言ってる…。やっぱり全然反省してないじゃん」
と、困ったような顔で笑う牧野。
その顔も可愛いとか言ったら怒られんのか?

「じゃあこの話はこれでおしまいね?
 で、あたしのホントの用事はこっち。はいコレ」
そう言って、横に置いていた紙袋を渡してくるこいつ。
「…なんだこれ」
そう言って袋を覗くと甘い香りがして、中の小箱を開けると
そこにはクッキーが入っていた。

「あんた待ってる間、暇だったからね。
 材料だけ買い出しに行って、
 キッチン借りてクッキー焼いてみたの。
 元をたどればあんたのせいなんだけど、
 結果的に 酔っ払いの介抱させちゃった上に
 泊めてもらったんだし。お礼くらい言おうと思って。
 まぁ、一宿一飯の恩ってやつ?」

「これ…お前が作ったのか?」
「うん…」
「オレのために?」
「ふ、深い意味はないよ?ただのお礼だから!
 って言ってもあんたの口に合うかどうかわかんないけど…」
牧野がそんな事を言ってる横で
オレは1つ手に取って食べてみる。

「……甘ぇ」
オレがそう言うと、こいつは慌てて
「あ~…やっぱり無理?作っちゃってから
 タマさんにあんたが甘い物苦手だって聞いたんだよね。
 ごめんごめん。それ自分で食べるから返して?」
そう言ってオレからクッキーを取り上げようとする手を避ける。

「いらねぇなんて言ってねーだろ。
 お前がオレのために作ったんだろ?食うに決まってんじゃねぇか」
「でも苦手な物あげたんじゃお礼にならないでしょ?
 1個食べてくれただけで十分だよ。甘くない物で何か考えてまた作るから」
ほら返して、とまた手を伸ばしてくる。

「しつけーな。食うって言ってんだろ?
 お前からもらったモンなら何でもめちゃくちゃ嬉しいから気にすんな」
そう言ってこいつの頭をグシャグシャと撫でる。

実際、こいつがオレのために作ったなんてマジで嬉しい。
さっきから緩んだ口元がどうにも抑えれねぇくらいだ。
そんなオレはきっとだらしない顔をしてたんだろう。

「……今度はうんと甘いの作ってやる」
可愛くない言葉を吐いて視線をそらした顔が確かに赤い。
「おぅ。どんどん作って来い。
 お前がオレのために作ったっつーなら
 どんなに甘かろーが、毒が入ってよーが喜んで食うぞ?」
オレの言葉に呆気にとられたようにしばらく固まってから
「…ほんとバカ」
そう言って吹き出して笑う。

いつも怒ってばっかのこいつが
オレに笑ってる…。

たったそれだけの事で
休み返上で働いた疲れも一瞬で吹き飛ぶ。
思わず抱きしめようと伸ばした腕をさらっと避けて

「じゃあ、あたし帰るね?お邪魔しました」
と立ち上がるこいつ。
「飯食ってけよ」
まだ帰したくなくて、腕を掴む。

だけどそんなオレの気持ちに気付きもしない鈍感女は
「いいよ。これ以上お世話になったらほんとに悪いもん」
と軽く返してくる。

その時、ノックの音と共にタマが入ってくる。
「夕飯の準備ができましたよ」

「ほら、ご飯だって。ちゃんとしっかり食べなよ?じゃあね」
と鞄を持つこいつにタマは
「何言ってんだい。あんたもだよ、つくし。
 シェフもあんたに食べて欲しいって張り切って作ってたよ」
その言葉にオレは口角があがる。

前にもこういう事があった。
こういう時はこう言えばいいんだろ?

「ほら。さっさとダイニング行くぞ。
 お前の分はお前が食わなきゃ“もったいねー”だろ?」





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