already in love 18

扉を開けると同時に
一瞬ざわついた会場内がシンと静まり返ったのは

オレの隣に立つこいつに
ゲストの興味と視線が集中したからだ。



『already in love』  第18話


支度が終わった頃から
妙に大人しくなったから
姉ちゃんのクローゼットから
オレが選んでやった
牧野でも着れそうなワンピースが気に入ったのか
それとも単純に諦めただけなのか。
そんな風に考えていたが
どうやらどちらも違っていたらしい。

「ぼ、ぼ…坊ちゃん。
 みなさんがこっちを見てます…」
明らかに狼狽えた様子のこいつは
錆び付いたロボットみてぇな動きで
不安そうにオレを見上げる。

見られてるだけで何かされたわけじゃねぇだろ。
そう思わなくもねぇが
こいつにしてみればこれだけの人間から
一度に注目されるだけで十分問題なんだろう。

「ビビってんじゃねぇよ。
 堂々としてろ。余計に目立つぞ」
「そ、そんな事言ったって!
 やっぱり坊ちゃん1人で楽しんで来てくだ…」
今にも言い捨てて逃げ出しそうな様子に

「オレの名は司だ」
言葉を重ねて遮れば
きょとんとした顔で

「えっと…今さら自己紹介ですか?」
名前くらい知っていると間抜けな事を言う。

「違ぇよっ。
 坊ちゃん呼びやめろっつってんだよ。
 お前は今、使用人じゃねぇ。オレのパートナーだぞ!」
「えぇっ?そんなの無理ですっ」

「いいから言う通りにしとけっ。
 …っつか、いいのか?
 こうしている間にも注目浴び続けてんだぞ?」
「ひぇっ」
顎で会場の方へ視線を促せば
入ってきた途端にヒソヒソと話すオレらの様子を
探ってくる視線にビクッと肩を揺らし

隠れるようにオレの背後へと回ろうとしたが
それを阻止するように腰へ腕を回して引き寄せた。

「何でも言う事聞いてくれんじゃねぇの?」
まるで恋人同士かのように
耳に口を寄せて言ってから
顔を覗き込むようにしたのはわざとだが

耳にかかる息がくすぐったかったのか手で押さえた
こいつの顔が真っ赤だったのは意外だった。

おかげで狙い通り
オレのパートナーが特別な相手だと
確信を持ったように会場はより一層ざわつき

「隣にいる限りは守ってやっから心配すんな」
そうまた耳打ちすればやっと諦め
覚悟を決めたように一度大きく息を吐いた。

大人しくなった牧野は
気づいているのかいねぇのか、
上辺だけの挨拶をしている間にも
品定めするような視線を向ける相手に
ぎこちない笑顔で対応していた。

オレはと言えば
相手の話はほぼ右から左へと聞き流し
適当に会話をしていたが
その合間にこいつがオレを
坊ちゃんではなく“司さん”と呼ぶ声に
何とも言えねぇくすぐったさを感じ満足していた。


「…大丈夫かよ?」
ひと段落したところで聞いてみれば
「最初の方に話した人の名前を忘れました」
なんてそんな事で
真っ青になってるこいつに
やっぱ緊張していただけで
何にも気づいてなかったとククッと笑う。

「覚える必要なんてねぇよ。
 っつか、オレは最後に話した奴さえ
 誰だったかなんて覚えてねぇぞ?」
「えぇ?そうなんですか?
 坊ちゃんったら全然余裕そうですごいし
 思ってたより楽しそうで良かったと思ってたのに!」

「余裕っつーか、
 どうでもいいっつーか。
 まぁ、退屈はしてねぇんじゃね?」
「これだけお客様がいらっしゃって
 どこに退屈する暇があるって言うんですか?」
不思議そうに首を傾げるこいつには
やっぱりこの世界の居心地の悪さはわかんねぇかと
呆れなながらも知らなくていいとも思う。


「…そうね。
 いつもならそろそろ不機嫌を隠さなくなる頃ね。
 退屈凌ぎに騒ぎを起こしたのはいつだったかしら?」
後ろからかけられたその声に身構え
オレは牧野を引き寄せ、振り向いた。

「誕生日おめでとう、司さん」
「ありがとうございます」
オレの声が低くなったからか
牧野が不安そうにオレを見上げているのは分かっていたが
目の前の人物を睨みつけたまま視線を逸らさなかった。

「今年はお一人でないのね」
「何か問題でも?」

「いいえ。
 つくしさん、でいいのかしら?
 タマからも聞いています。
 至らない息子で何かと大変でしょう?
 私も一度お会いしてみたいと思っていたのよ」
牧野はこの発言で漸く目の前の人物が誰なのかを知ったようで

「えっ。息子…?
 という事は…この方は…」
なんてオレを見上げて確認してくるから
「オレの母親」
と事実は事実として肯定しておく。

「奥様っ!
 ご挨拶が遅れてすみませんっ。
 牧野つくしと言います。去年の12月から…むぐっ」
勢いのままにこの場で使用人である事を
バラしそうなこいつの口をギリギリの所で塞いでやる。

そんなオレ達の様子に小さく息をつくババァは
「タマから聞いていると言ったでしょう?
 自己紹介は結構よ。引き続き 息子を頼みます。
 司さんも。くれぐれも今年はお客様に失礼のないように」
それだけ言うと
牧野の返事も待たずにまた会場へと消えていく。

「奥様って…何だかオーラがある方ですね。
 凛とされていてカッコいいと言うか…」
うっとりとした様子で
ババァの後ろ姿を見送っていた牧野は
おそらくババァの事を激しく誤解しているはずだ。

それでも

「司さんにそっくりです」
なんて嬉しそうにこいつが笑っただけで

あんなのに似てるなんて言われたって
ちっとも嬉しくなんてねぇのに気分は悪くない。

「なぁ。それってよ
 オレがカッコいいって言いてぇの?」
どうしたってニヤつく口元を
こいつに見られねぇように耳に寄せて言えば

「ちがっ…。
 別にそういう意味じゃ…っ」
なんてまた顔を真っ赤にさせながら慌てる姿に
パーティが始まってから初めて自然に笑っていた。




いつも応援ありがとうございます♡
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 

ふに★★★様

わ〜!ご無沙汰してます♡

世の中は色々とありましたねぇ。
え?私ですか?
サボってただけで
私も大きく変わりはないです( *´艸`)

妄想茸もご馳走様です♡

正直言うとサボりすぎてどうするつもりだったか
かなり曖昧になってる部分もあって
なんとなくメモってたのを頼りに
komaも探り探り妄想し直してるのですが(笑)

現時点での楓様は①が近い感じです♡
でも②と③も混じってる…かも?

どうなっていくかkoma自身手探り状態ですが
続きものんびりお付き合い頂けると嬉しいです♡
プロフィール

koma

Author:koma
管理人komaの
くだらない妄想の世界へ
ようこそいらっしゃいました。

基本テイストとしては
ラブコメ風味の
ゆる~いつかつく道を
突っ走っております。

ご覧頂きありがとうございます♪
*カウンター*
 
*現在の閲覧者数*
ランキングサイト
素敵サイトがたくさん♡
 
*ランキング参加中*
 
 
*新着のお知らせだけ登録中*
komaの呟き。
 
 
|*・ω・)チラッ
 
|-・。)ソォー…
 
|)彡 サッ
 
 
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
リンク
素敵サイト様
*素敵なイラストなど♪* 管理人 まま様

*二次が生んだ二次作家様*
管理人 aoi様

*CP自在のファンタジスタ* 管理人 asuhana様

*イケメンイラスト&二次小説*
管理人 やこ様

*長編大作の巨匠様* 管理人 こ茶子様

*胸きゅん♡つかつく* 管理人 Happyending様

*カッコ可愛いつくしちゃん*
管理人 四葉様

*切なくも甘いつかつく*
管理人 きぃ様

*シビれるッ!つかつく♪*
管理人 lemmmon様

*とにかく司を愛する作家様*
管理人 蘭丸様

*世界観がkomaのツボ♡*
管理人 チムチム様

*めちゃカッコいい総ちゃん♡*
管理人 Gipskräuter様

*パワフルなつくしちゃん♪*
管理人 つくしんぼ様

*筆の向くまま、オールCP♡*
*ほっこり和む優しいつかつく*


*貴重なつかつく&総優さん♪*

*チャーミングなつかつく♡*

*鮮やかなつかつく♡*
イベントサイト
*つかつく*

   
   
 
*ALL CPコラボ*

   2017.10
 
ブロとも申請フォーム
  

    [ブロとも申請フォーム]へ

 
      申請の際は
  「ブロとも申請について」
  の記事をご覧になってから
    して頂きますよう
   お願いします(人∀・)