already in love 3

「ちょっとやんちゃだったけどね、
 昔は素直で優しいお子だったんだんだよ」

”坊ちゃん”への挨拶を済ませた後
タマさんは昔を懐かしむように遠くを見た。


『already in love』   第3話


タマさんの話によれば
今まではこのお邸に出入りする使用人は
必ず決まった所から信用のおける人を
紹介してもらうのが決まりだったけれど
度重なる坊ちゃんの暴言、暴力に
遂に紹介してもらえなくなってしまい
今回初めて一般向けにチラシを作った…という事らしい。

「坊ちゃんがあんな風になったのは
 椿様の結婚が決まった頃からかねぇ…」

ご両親が留守がちだった事もあってか
近くにいる唯一のご家族はお姉様だけで
それはそれは慕っていたそうで。

だけどそのお姉様が
お付き合いされていた方と無理やり別れさせられ
ご両親が連れてきた方と結婚させられたんだとか。

「誤解しないでおくれよ。
 旦那様と奥様だって椿様の幸せを考えての事だ。
 当時は椿様も落ち込まれておいでだったけど
 今じゃ仲のいい夫婦でとても幸せに暮らしてるんだよ」

「坊ちゃんは、この家に産まれるには
 心根が綺麗すぎたのかもしれないねぇ。
 いつかは自分も椿様のように決められた相手と
 結婚させられる事に絶望を抱いてるんだろうね」

「…もしかして坊ちゃんにも恋人が?」

「その逆さ。
 それもこの家に産まれたばっかりに
 幼い頃から周りの大人達は
 1人の人間ではなく”道明寺”として見る。
 おまけに坊ちゃんはこの家の跡取りだろう?
 そんな状況で寄ってくる女性は
 どうにか気に入られようと媚びる人ばっかでねぇ…
 おかげで今じゃ女性そのものを毛嫌いされてるよ」

そうため息をついたタマさんは

「だから あんたは間違っても
 坊ちゃんの前で色目を使うんじゃないよ」
なんて釘を刺してくる。

「冗談じゃないっ!
 いくらお金があったって
 あんな心が貧しい男、こっちから願い下げですっ」

そりゃあ、あたしの置かれている現状として
お金も住む所も必要だけど
人を番号で呼ぶような人に媚売ってまで
お金が欲しいとは思わない。

さっきの態度を思い出して
眉間に皺を寄せたあたしをタマさんがジッと見てくる。

「…え?
 何かおかしな事言いました?」
「つくし…あんたは辞めないでおくれよ」
突然ガシッと両手を握られ
そんな事を言い出すタマさんは真剣だ。

「はい?」
「つくしの言う通り
 坊ちゃんは心が空っぽになっちまってんだ。
 今坊ちゃんに必要なのは
 つくしみたいな人なのかもしれないねぇ…。
 よしっ。坊ちゃんがどう言おうが
 あんたの思うようにやってみておくれ」

「あたしの思うように…ですか?」
「あぁ、笑顔を取り繕う必要もないさね。
 プロの使用人としての仕事は
 ここにいる使用人全員が出来る事だけど
 1人の人間として対峙出来るのはつくしだけだ」

正直、あの人相手にいつまで
ニコニコしていられるか不安だった。
…さっきだってタマさんが隣にいなきゃ
確実に手が出てたと思う。

そうなる前に
辞めた方がいいかと思ったりもしてたけど
ここを辞めたらまた住む所から探さなきゃダメだし。

「ほんとにあたしの思うようにやっていいですか?」
確認するようにもう一度聞いてみる。
「あぁ。かまわないよ。
 責任はこのタマが取るから安心しな」
しっかりと頷くタマさんにあたしも頷く。

「わかりました。
 じゃあクビになるまでやるだけやってみます!」
「頼んだよ。
 もうこれでダメならこの家に未来はないよ」
そう言って涙を浮かべるタマさんに
今日までの苦労を垣間見た気がした。



そして坊ちゃんとあたしの戦いは
翌朝から早速始まる。

「坊ちゃん!起きて下さい!
 もう起床時刻を20分も過ぎてます!」
「……チッ」

布団の中から聞こえたのは
鬱陶しそうな舌打ちひとつ。

でもまぁさっきまで
死んでるのかと思うほどに反応がなかったんだから
進歩があったと前向きに捉えつつ
明日からは拡声器でも用意してもうおうと考える。

「大体、高校生にもなって
 1人で起きて来られないって
 どんだけ甘やかされてんのよ」
ポツリと漏れた小言は
ほんとに小さな声だったのに

「クッ。
 テメェとは生きる世界が違うんだよ」
とこんな時だけ
しっかりバカにしたような返事が聞こえてくるんだから
ムカつくったらありゃしない!

「だったら起こしてあげてるんだから
 とっとと起きて朝食食べなさいよ……ねっ!」
言い終わると同時にはぎ取った掛布団は
想像以上にふわっと軽く宙を優雅に舞って
その下から漸く姿を現した坊ちゃんに視線を落とす。

その瞬間、
サァーッと血の気が引く感覚とカッと体が熱くなる感覚が
同時に襲ってくる。

「きゃあ〜っ!!
 なんで裸なのよ、あんたっ!」
「…うっせ。
 テメェが勝手にめくったんだろうが。この、変態っ」

「変態はどっちよ!
 起こしに来るのもわかってるんだから
 こんなの露出狂とやってる事変わらないじゃないっ!
 さっさと服を着なさいよ、服を!」
「あ?どうしてオレ様が
 テメェの言う事なんて聞くんだよっ」

「テメェじゃなくて牧野です!
 名前も覚えられないわけ?」
「あぁ、そうだったか。20号?」

「はぁ!?
 耳おかしいんじゃないの!?
 とにかくさっさと服着て、朝食食べなさいよっ!
 …って、そのまま動き回るなっ!
 いい加減にしないとセクハラで訴えるわよ!」
「マジでうっせぇな、お前。
 訴えるなり辞めるなり好きにしろっつの」


ぎゃあぎゃあと騒がしい部屋の外では
タマさんが可笑しそうに笑っていた事なんて知らずに
あたしは目の前の露出狂の坊ちゃんに
ベッドサイドにあったガウンを投げつけていた。



いつも応援ありがとうございます♡

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スリー★★★★★様

タマさんのおかげで
根っからの嫌な奴じゃないって事は
わかってくれたかもしれませんが
最悪だった第一印象は覆りませんねぇ(^^;)

でもタマさんから
好きにやっていいと許可が出ましたからね♪
ほんとに殴られるのも時間の問題です(((*≧艸≦)ププ

心配でドアの向こうで
様子を窺っていたタマさんも
自分の目に狂いはなかったと確信しましたかね?
続きも楽しんでいただけますように〜♡

 

na★★★様

今回もお付き合い頂き
ありがとうございます(*´▽`*)♡

小さな頃に1度だけ。
同じ時間を過ごした2人ですが

些細な出来事ゆえに
お互いその事をどれくらい覚えているのか、
どう感じているのか、
その辺りを少しずつ明かしながら
ラブへと向かえるように頑張ります♪

うんうん。
komaもそう思います。
純粋さゆえの反抗でその状態であっても
タマさんや椿お姉様の愛情もちゃんとわかってて
自分を見失う事なく本物を見極められるんでしょうね。
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