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幸せのかけら 21

「…はい。
 かしこまりました。すぐ伺います」

デスクにかかってきた電話を切ると
チーフに声をかけ、彼の部屋へと向かう。


『幸せのかけら』   第21話


敬語をやめろ、から始まった
彼のご要望はとにかく変なのばかり。

敬語の次は呼び方だった。

「…なぁ。
 その道明寺さんっつーのやめねぇ?」
「え?」

「呼び捨てでいい。
 …っつーか、呼び捨てがいい。」
わざわざ言い直すあたり
気を使ったとかではなくて
それを望んでいるという事。

「…道明寺?」
これでいいのかと首をかしげると

「…そうくるのか」
ボソッと呟いた彼は
なんとなくガクッと肩を落とした気がする…?

「あれっ?違った?」
「…いや、それでいい。
 とにかく道明寺さんは今後禁止だからな?」
やっぱり何か他に彼の中には
他の呼び名が浮かんでいたようだけど
いくら聞いても結局は教えてはもらえなかった…。


そして今日、
ディナーにおすすめのお店を聞かれて答えたのは朝。

夜になって、呼ばれて行ってみると
彼の部屋の中にはあたしが教えたお店のシェフがいて
テーブルには2人分のお皿がセッティングされていた。

他に誰かお客様が?
と部屋を見渡してみても誰もいない。

「一緒に食おうぜ」
「えっ?」

「1人で食ってもつまんねぇだろ?付き合えよ」
「えーっと…」

コンシェルジュは基本的には
お客様のご要望に対して
それが無理難題だったとしても
NOとハッキリ言わない。

前にも1度だけお客様のご夫婦に
食事に誘われた事があった。

その時はホテルの外だった事を理由に
同行はお断りしてから
お店に連絡を入れお誘い頂いたお礼にと
デザートのサービスをお願いした。

だけど…
これはどう切り抜けよう?

そう頭の中で考えを巡らせるあたしに
ニヤリと不敵に笑った彼は

「別に食う、食わねぇと
 くだらねぇやり合いをしてもいいが
 オレはお前を言い負かす自信はあるぞ?」
そんな事を言う。

「…はぁ。
 じゃあチーフに確認するからちょっと待って」
「それなら必要ねぇ。
 上がる時間に合わせるなら
 その後はプライベートだから問題ねぇってよ。
 ちゃんとお前を借りる許可はとってきた」

「えっ!?」
「だからいいだろ?付き合えよ」
ククッと可笑しそうに笑う彼を見ていると
その自信がどこから出てくるのかわかった気がした。

時計を見れば確かにもうデスクの営業時間も終えている。
チーフにまで話を通してしまったのであればもういいか…。

それにしても1人じゃつまんないって…
この人そんなに寂しがり屋さんだったかなぁ?

とりあえず、席につこうとすると

「食う前にお前はあっちな」
そう指差された部屋へ入ってみれば
まず着替えるように、と服を渡され
それが終われば今度は
服に合わせたヘアメイクを簡単に施された。

…そっか。
制服のままで目の前に座られたんじゃ
あたしはよくても
彼がリラックスして食事が出来ないよね。

戻ってみれば
「いいじゃん。すげぇ似合ってる」
なんて満足そうに笑った彼に
そんなのただのお世辞だって
わかっていながら頬が熱くなった。

席についてから思う。

カフェや軽いランチくらいなら
あの頃だって一緒に食べる事はあったけれど
こんな本格的なディナーなんて初めてかもしれない。

「何笑ってんだ?」
そう聞かれて初めて自分が笑ってるって気が付いた。

「え?なんか大人になったんだなぁ、って?」
「なんだそれ」
彼が優しく笑う。

「ほら、こんな豪華なディナー囲んじゃってさ?
 それでもあたしはうんと背伸びしてるけど
 道明寺はやっぱり自然っていうか、似合ってる」

道明寺はきっとあの頃だって
今と変わらずカッコよかったんだろうけど
あたしならマナーとかわからなくて
あたふたしちゃって見てられなかったように思う。

「…あぁ。確かにガキの頃は
 こんな前菜より肉食いてぇとか思ってたかもな」
「えぇ?
 そんなによく食べるイメージなかったけどなぁ」

いつだってあたしが食べたい物を聞いてくれたし
メニューを見て悩むと彼がそのどちらかを選んで
「食ってみっか?」って味見させてくれた。

ぶっきらぼうだけど優しくて
本当に今では信じられないけれど
あたしにはもったいないくらいの彼氏だった人。

「…少しは見直したか?」
「え?」

「大人になったオレを少しは見直したか?」
真剣な顔をあたしに向ける彼。

もちろん、と頷こうとした首がふと止まる。

見直すも何も…
あたしはあの頃から
彼が素敵な人だった事なんて知ってる。

でも、それをそのまま言ったら
知ったように聞こえて生意気…かな?

「見直す…っていうか
 えーっと、あれ?どう言えばいいんだろ?」
言葉に詰まったあたしに

「いや、変な事聞いて悪かった。食おうぜ」
彼は肩を竦めて
困ったように小さく笑って料理に手をつけた。





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No title

毎日毎日、命の危険を感じさせる猛暑に、グッタリです
標高の高い地方なので、エアコンの無い家も多く、恐ろしい気候になってきたもんだと、お年寄りが言ってます

ジレジレ司君、あの手この手で、攻めまくるけど、決定的な言葉は、この均衡を壊すのではと、口にできないようで、コッソリ覗いてる気分のJUJUとしては、ヘッヘッへです(笑)

高地のJUJU地方とは違い、たぶん暑いであろう関西在住のkomaさん、熱中症には、くれぐれもお気を付けくださいm(_ _)m

 

スリー★★★★★様

チーフにまで手をまわした時点で
すでにコンシェルジュデスクでは
司くんがつくしちゃん狙いな事は明らか(* ´艸`)クスクス

ほんと突破口1つで
あっという間にハピエンになれるのに…(-_-;)

いつでもぶった切れるだけに
komaは楽しんでたりするんで♪
3歩進んで2歩下がる、そんな予感です(笑)

 

JUJU様

ほんともうグッタリですよね~。

最近は天気予報でちらちらと
今日暑かった地域として名が挙がるkoma地方ですが
人間より暑さに弱いお犬様にあやかり(笑)
エアコンはフル稼働なので比較的快適に過ごしております(* ´艸`)

つくしちゃんに探りを入れつつ
じわりじわりと攻めてみますが
つくしちゃんもまた決定的な言葉をくれません(笑)

焦れ焦れ地獄、もう少し続きます(*`艸´)
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