可愛いひと 36

「司。久しぶりだな」
「……親父までいんのかよ」

てっきりババァだけかと思っていたが
書斎に入ってみれば親父に声をかけられ
息子に彼女が出来ただけで
そんなに騒ぐ事かと内心でため息をついた。


『可愛いひと』   第36話


応接ソファの片側に
並ぶように座っていた親父たち。

オレはその向かいのソファに腰を下ろす。

「彼女は一緒じゃないのか?」
「あ?仕事中だろうが」

「あぁ、そう言えばそうか。
 司書さんだってね?仲が良さそうじゃないか」
そう言って見せられたのは週刊誌のゲラ。

黙って内容を読みながら
やっぱり撮られてたか、と小さく息をつく。

あの日、なんとなく記者の気配は感じていた。
だから帰りは一応 正面からは出ずに裏に車を回した。

その甲斐あってか
決定打まではなってはねぇようだが
向こうにしてみりゃ 総二郎たちじゃあるまいし
オレが女と2人って時点でインパクトは十分って事か。

そんな事はまぁ、どうでもいい。
オレが気にするべきは…

なんとなく面白がってそうな親父はともかく

電話までして呼びつけておいて
さっきから一言も発してねぇババァ。

「牧野はオレの女だ。
 書いてる内容も特に間違いはねぇよ」
「ほぉ。そうか」
片眉を上げてニヤリと笑った親父と
逆に不快そうに眉をひそめたババァ。

今の反応で
親父はまだ掴みどころがなくて微妙だが
少なくともババァは好意的じゃねぇ事はわかった。

「……別れるつもりはねぇぞ」
だからと言って オレの意見が変わる事はねぇ。

睨みつけるように
2人をまっすぐに見据えて
どれくらいの時間が流れたのかはわかんねぇが


「…いいんじゃないか?
 なら記事の差し止めも抗議も必要ないな」
「あなたっ!」
沈黙を破ったのは親父で
その言葉に反発したのはババァ。

「お前も もういいだろう。
 牧野さんが英徳の図書館司書だとか
 一般家庭のお嬢さんだとか色々言ってたが
 結局 気に入らないのはそんな事じゃないんだろう?」
ククッと可笑しそうに笑う親父を
不満そうに睨むババァ。

「……だったら何が気に入らねぇんだよ」
今 親父があげた理由以外に
反対される大きな原因も思い当らず単刀直入に聞く。

「やきもちだ」
「…は?」

「司、お前も悪いんだぞ。
 思春期だか何だか知らないが
 母さんをババァと呼んだりキツく当たるから」
「…話が見えねぇぞ、おい」
苛立ちを隠さないオレにもクッと笑う親父は続ける。

「母さんが気に入らなかったのはお前の顔だ。
 自分は邪険にされ続けているのに
 彼女にはこんなにデレデレするもんだから拗ねてるんだよ」
「親父…頭大丈夫か?」
そうツッコミながらも
ババァに視線を向ければバツが悪そうに視線を逸らす。

…おいおい。
マジで言ってんのかよ?

「まぁ、そういう訳で私達は
 基本的にお前の恋愛にまで口を出す気はない。
 …だが、楓だってこのままじゃ気も済まないだろう。
 この週末は母親孝行でもしてやれ。
 仕方ないな、明日のパーティのパートナーも譲ってやろう」
「……どこかどう仕方ねぇのかわかんねぇよ」

「ただし。これが最後だ」
「あ?」

「楓を貸してやるのは最後だと言ってるんだ。
 司も好きな人が出来る歳になったんだ。もういいだろ?
 楓はお前たちの母親である前に私の妻だ。返してもらうよ」
「……」
最初から貸してくれと頼んだ覚えもねぇよ。
そう言ってやりたかったが

「楓も。子供たちばかり気にかけてないで
 そろそろ夫婦水入らずもいいだろう。
 いい加減私にも構ってくれたってよくないか?
 こっちは何年 やきもきさせられてると思ってるんだ」
そう言った親父を見るババァ…いや、お袋は
母親でも経営者でもねぇ、1人の女の顔をしていた。

…はぁぁ。
仕方ねぇ…のか?

「…オレのスーツ、選んどけよ」
「え?」
スーツなんてどれでもいいし
パートナーなんてマジで面倒この上ねぇが

「…お袋が何着てくのか知らねぇし
 適当に合わせとけって言ってんだよ」
「…えぇ。わかったわ」
照れくさそうに小さく笑うお袋を見る限り
これで間違ってねぇんだろう。

母親孝行するだけで
認められるなら良しとするしかねぇ。


「しかし…。
 本好きな女性が好みとは血は争えんな」
ククッと愉快そうに笑う親父。

「あら。若い頃は私も本の虫でしたが
 あんな書庫を作ってしまうほどに
 本が好きだと言ったのはあなたの方でなくて?」
「もちろん読書は嫌いではないよ。
 だがあの書庫は君を誘うために作った物だ」

「…どういう事ですの?」
「狙っている女性を家に招くのに
 興味を引けそうな物を用意するのは常套手段だろ?」
不敵に笑う親父に頬を染めたお袋。

…あの書庫が出来た経緯などどうでもいいが
ベタベタするなら息子のいねぇとこでやれっつの。
こっちは今度こそと思った そのチャンスを潰されてんだぞ。

話はついたんだからと
黙って立ち上がり出ていこうとすれば
「あぁ、そうだ。
 これだけは忠告しておこう」
なんて親父がオレを見る。
「……なんだよ」
ここにきて何を言い出すのかと思い身構えれば

「避妊だけはしっかりな。
 お前はまだ高校生なんだし
 経緯がどうであったとしても お前たちの場合
 立場が悪くなるのは彼女になってしまうからな」
ククッと笑いながら放たれた言葉に
ブチッと血管がキレる音がする。

「うるせぇっ!」
「…なんだ?
 もしかしてまだなのか?意外と奥手なんだな」
そう肩を竦める親父に
これ以上何を言っても墓穴を掘るだけな気がして

「とにかくっ!
 牧野との交際は認めるって事でいいんだなっ!?」
「あぁ。週明けには雑誌も発売される。
 学園に事実説明をしておく必要もあるし
 その時に彼女にも挨拶をしておかないといけないね」
その言葉だけを聞くと
付き合ってらんねぇと書斎をあとにした。




いつも応援ありがとうございます♡

★今回はタイトルにちなんで
  楓様だって「可愛いひと」です( *´艸`)★
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No title

いゃん♥楓様カワイイ〜(笑)
さぁさぁ、これでラスボスはむしろ、学園側を黙らせに来たんだよね?
司君、いよいよだね!
komaさん、ざっくりでいいから、司君を幸せにしてあげて〜(笑)

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JUJU様

ふふふ~♪
フクザツだけど
週末に司君が母親孝行してくれたので
楓様もつくしちゃんを認めてました~(*^^*)

さすがにね。
生転がしのネタも尽きたので(笑)
ざっくり幸せにしてあげなきゃですね~( *´艸‘)

 

ふぁ★★★★★★★ママ様

ククッ♪
ひさびさに穴掘りしちゃいましたかね?
でも今回はキュン♡な落とし穴(←なんじゃそりゃ。笑)なので
落ちてもハッピーでしょ(*´▽`*)?

パパはパパで
大好きな楓さんについて来ただけでした~(笑)

うんうん。
司パパの忠告も
悶々してる司にはまだ響いてないかもですが
ちゃんと男になったら(笑)きっとわかります( *´艸`)

学園の反応は??
さぁ…どうなんでしょう(-∀-)
↑また無駄に揺さぶってみる(笑)

 

スリー★★★★★様

司くんにしてみれば
いつかは通る道だと思ってたはずですからね~。
どんな事があろうと
絶対に認めさせるつもりで挑めば

まさかまさか
自分の態度に楓さんが拗ねてたなんて
拍子抜けもいいとこですね~(((*≧艸≦)ププ

あ。司パパも可愛いって気付いてくれました(*^^*)?
そうなんです。彼もまた楓さん大好きな可愛いひとです♡

週末しっかり母親孝行して
ラスボスをクリアした司くんですが
そんな事を知らないつくしちゃんは
両親そろっての登場にドキドキですね(^^;)

次回はそんな学長室へと戻りま~す♪
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