可愛いひと 21

あの時、
オレが言葉を遮らなければ
間違いなくフラれていたんだと思う。

そうなったら牧野は
簡単にはその結論を覆したりしねぇだろう。


『可愛いひと』   第21話


気持ちは嬉しいが
付き合えねぇと言おうとしていた牧野。

オレはそこに納得したわけじゃねぇ。

好きでもねぇ奴からいきなり告られたって
迷惑なだけで嬉しいなんて思わねぇだろ?

…って、事はだ。

オレの気持ちが嬉しいと言った牧野は
すでにオレに惚れてんじゃねぇかと思う。

あいつ鈍感だからな。
自分の気持ちにだって気付いてねぇんだろ?

本当に嫌なら
キスだって何度も受け入れるはずがねぇし。

ったく。
年上のくせに世話が焼けるな。


食事の後、
牧野をゲストルームへと案内し
オレも私室へ戻ってシャワーも浴びたが
どうにも寝る気にはなんねぇ。

……。

いや、別に
夜這いをしようってわけじゃねぇぞ?

ただ、せっかくのこの状況を利用しねぇ手はない。
畳みかけるなら今だと思うだろ?

なんて誰に対して言い訳してんだか
そんな事を考えてるうちに
牧野の部屋の前まで来ちまったのはいいが

ノックしようとした手が空中で止まる。

クソッ。
タマが余計な事を言うから
何か口実がなきゃ入りづれぇじゃねぇかよっ。

何かねぇか…何か。
…あぁ、そうだ。
明日は何時から始めるんだとかそんなんでいいだろ。

適当な口実が見つかって
空中で止まったままだった手でノックする。

…が。

中からの反応がねぇ。

聞こえなかっただけかと
もう一度ノックをしてみるが、やっぱり反応なし。

もう寝たのか?
いや、でも…いくら何でも早すぎねぇ?
そんなに時間も空いてねぇぞ。

……まさか。
マジで夜這いに来たとか思って
シカトしてるわけじゃねぇだろうな!?

「おいっ!牧野!」
思わずドアノブに手をかけ部屋に入ったが
リビングに牧野の姿はなかった。

それと同時に
バスルームへ続く扉も目に入る。
もしも風呂に入ってる途中だったとしたら
この状況はかなりヤベェんじゃねぇか…?

だが耳を澄ました所で水音も聞こえねぇし
様子を窺ったところで使用中の気配もなくて
ホッと胸を撫で下ろし 部屋を見渡したがどこにもいねぇ。

「……つか、
 あいつ どこ行った?」

鞄は置いてあるから帰ったわけじゃねぇ。
タマの部屋…はねぇよな。
まだ何もしてねぇぞ、オレは。

……そうなると。

「あそこか」
踵を返し足を進めた先は書庫。

扉を開けてみれば
庭を眺められるように窓際に設置された
ソファで本を読む牧野の姿を見つける。

その脇には数冊の本が積んである。
…まさかそれ全部読み切るつもりなのか?

風呂には入ったのか、
いつも結ってる髪を下ろしてる姿が新鮮で
しばらく扉に寄りかかったまま眺めていた。

牧野は本に集中してんのか
オレには気付いてねぇ。

そっと隣にまわり込み黙って腰をおろせば

「わっ…!って、道明寺君?」
ソファの振動でやっとオレに気付いて顔を上げた。

「どうしてこんな夜更けにわざわざ本なんだ?」
「え?だって…
 せっかく泊めてもらえるなら
 気になってた本も読めるかな~…って?」
嬉しそうな顔でそう言う。

夜這いするつもりで行ったわけじゃねぇが
オレだって健全な男だ。
全く期待してなかったと言えば嘘になる。

それがどうだ。
当の本人は寝る間を惜しんで読書ときた。

もしかすると
オレの最大のライバルは
瀬良でも他の男でもなくて本なのかもしれねぇ。

「読みてぇ本があるなら
 好きに読めばいいって言っただろ?
 別に手入れじゃなくても通えばいいし
 ゆっくり読みてぇなら貸してやるからちゃんと寝ろよ」
距離を詰めてそう言ってみた所で

「んー…
 でも今いい所だからもう少しだけ…ね?」
とさっきまでなら意識してドギマギしてたくせに
今は手の中にある本の続きを読む事しか頭にねぇ。

ほらな?
風呂上りでいい匂いさせてるとか
スッピンでいつも以上に子供っぽく見えるとか
そのくせ 無意識に女を出して
上目使いで甘えるように首をかしげてる仕草に
ヤラれてんのはオレの方。

「…はぁぁぁ。
 わかった、オレも付き合う」
そう言って積んである本の中から適当に手に取れば
「ん。…ありがと」
満足そうに笑ってすぐに続きを読み始めて

しばらくすると
「へへっ…あったかい」
とオレに寄りかかって暖まで取る始末。

こんな夜中に2人きりで
無防備に体まで寄せて甘えてくるなんて

可愛いから許してやるけどよ。

__これで好きじゃねぇとか認めねぇからな?





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No title

司君に寄りかかって読書……JUJUなら、本の内容が頭に入って来ない〜(笑)
ホントに、司君のライバルは、誰でもなく本かもよ?
でも、つくしちゃんだから、暖かい司君に寄りかかって、そのままお眠なんじゃない?(・∀・)ニヤニヤ

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JUJU様

普通はね~(笑)
でもkomaは何もなくても
読書そのものが眠気を誘いますが(((*≧艸≦)ププ

今回のつくしちゃんは
一度本の世界に入っちゃうと
本当に周りが見えなくなる設定になっております。

司君に寄りかかるなんて、ね~?

 

スリー★★★★★様

あの時点で答えを出すなら
つくしちゃんの中に選択肢は1つでしたからね(--;)

司くんは思い込みも激しいですが
今回はそれだけでないような気がkomaもします♡

シャワー中にしようかどうしようか
迷ってたんですけどね(笑)書庫にしました( *´艸‘)

読書に夢中なつくしちゃんは
2人きりだという事も頭になさそうです。

司くん、律儀に忠犬として耐えられるか。
尻尾振って飛び付いちゃうか…さぁどうなるでしょ♡

 

ふに★★★様

今回のつくしちゃんは
司の予想通り、
本の世界に入ると他は何も見えなくなります(笑)

komaもそのパターンが
やっぱりしっくりくるかな~?と思ってたんですが
実は…違うんです( *´艸`)
じゃああっちだな?って簡単に予想されそうですが(笑)
楽しんで頂けますように~♡
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