サイアイ 33

風呂からあがってみれば

牧野はオレと一瞬だけ目を合わせたが
すぐに逸らして ひたすらテーブルを磨いている。


『サイアイ』   第33話


その背中から伝わってくるのは…

“話しかけるな”
“さっきの事には触れるな”

と、まぁ。そんなとこか?
そしてそこには多少の怒りも含まれている気がする。

だけどよ。

好きな女と2人きりで
オレが誘ってるとは言えベッドだって一緒なんだ。
どうもねぇ方が男としておかしい事くらい察しろっつの。

トレーニングルームに籠るだけじゃ
どうにもなんねぇくらいにたまってんだよ!

それをいきなり入ってきやがって。
もうちょっとでとっ捕まえて食っちまうとこだったぞ?

我ながら自制心に感心しちまうほどだ。

「なぁ」
話しかけてほしくねぇ事もわかってて声をかければ
ビクッと肩を震わせて
「…何?」
とこっちも向かねぇままに返事をする。

「なんでお前がキレてんだよ」
「キっ…キレてなんかないです!」
背中を向けたままの敬語が
なんとなく距離を感じて気にいらねぇ。

「覗かれたのはオレだぞ?…スケベ」
わざとそう挑発すれば
「バッ!
 覗いてなんかないしっ」
まんまと引っかかって
ふきんを握りしめたまま振り向くバカ。

「実際、乱入してきたのはお前だろが」
ニヤニヤしながら言ってやれば
「だって…名前、そう!
 名前呼んだじゃない!
 だから中で倒れてるのかと思って…」
言いながら さっきの光景を思い出したのか
語尾をゴニョゴニョと濁らせるこいつの顔は真っ赤だ。

「そりゃお前の事考えて
 シてたんだから仕方ねぇんじゃねぇの?」
口に出してたかどうかまでは自覚はねぇが
相手なんてこいつ以外にあり得ねぇ。

「…っ!!?」
それでも牧野にとっては
衝撃的だったのか言葉を失うほどに驚いてやがる。

「言っとくが
 こんなの男なら普通だからな?
 オレの頭ん中じゃお前なんてもう何回も…」
言いかけたオレに
「いいっ!いい!それ以上言わないで!」
と慌てて止めに入るから黙ってみれば

「はぁぁ…一瞬でもこんな変態を
 好きかもなんて思ったあたしがバカだった!」
なんて頭を抱えて項垂れている。

「変態ってお前な…」
言いかけてハッとする。

…こいつ今何つった?

「さっ。掃除掃除っ!」
踵を返して離れようとするこいつの腕を掴む。

「今何つった?」
「…え?掃除?」

「違ぇ。その前だよ」
「その前…?……へ、変態?」
「バカ。その後だ!」

言った本人も無自覚だったのか
ほんの数秒前の自分の発言が思い出せず首をかしげる。

「オレの事好きなのか?」
「…え。……あっ!」
オレに言われて初めて気づいたのか
パッと口元を押さえた。

その顔はまた真っ赤で
違うとか言いながら慌てるこいつをギュッと抱きしめる。

愛し合っていたオレたちなら
記憶なんかなくてもまた愛し合えると信じていた。

だから牧野には話さなかった。

…だけど返事を聞くまで不安だったのも事実で。

「オレもすげぇ好き」
記憶のねぇオレでも
ちゃんと選んでくれた事が
予想していたよりもずっと嬉しくて舞い上がる。

「ちょ、ちょっと待って…」
両想いなら遠慮することはねぇと
キスをしようと近づけた顔を押さえてくる。

「なんだよ、ケチケチすんな」
「ちがっ…そうじゃなくて」
困ったように難しい顔をしてるこいつに
仕方なく動きを止めて

「…何だ?」
もう一度聞いてみる。

「えっと…あのね、
 自分でもよくわかんないって言うか
 話したところで信じてもらえるかもわかんないんだけど…」
しどろもどろではあるが
何かを伝えようとしてる牧野と視線を合わせ頷き先を促せば

「あたし…もしかしたら
 道明寺じゃない誰かが好きなのかもしれない」
出てきたのは
オレを奈落に突き落とすそんな一言で。

「あ゛っ!?
 誰だよそいつっ!まさか田中じゃねぇだろうな!?」
「え?なんで田中君が出てくんのよ。
 だから誰かってわけじゃなくて…う~ん…」

とりあえず田中じゃなかった事にホッとしながらも
的を得ない牧野の言動に首をかしげれば

「いや…信じろって言う方が無理だとは思うんだけど
 あたしね、少しだけ記憶がない所があるみたいなの」
次に出てきたのはそんな言葉で。

耳を傾けてみれば
夢の中にその誰かが出てきて
どうやら自分と付き合ってたみたいだと話す。

…はぁぁぁ。
なんだよ、超ビビったじゃねぇか。

「だったら問題ねぇよ」
「問題ないって…
 もしかしたらその人が現れるかも知れないし
 何かのきっかけで記憶が戻るかもしれないでしょ?
 そんな中途半端なまま道明寺と付き合うとか考えられない」
真面目に困った顔をするこいつに言ってやる。

「それ、たぶんオレだろ?
 だから記憶の有無なんて関係ねぇから心配すんな」




いつも応援ありがとうございます♡
2019/01/14
関連記事
プロフィール

koma

Author:koma
管理人komaの
くだらない妄想の世界へ
ようこそいらっしゃいました。

基本テイストとしては
ラブコメ風味の
ゆる~いつかつく道を
突っ走っております。

ご覧頂きありがとうございます♪
*カウンター*
 
*現在の閲覧者数*
ランキングサイト
素敵サイトがたくさん♡
 
*ランキング参加中*
 
 
*新着のお知らせだけ登録中*
komaの呟き。
 
 
おサボり中でも
拍手ボタン
押して下さって
ありがとうです♡
 
 
 
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
リンク
素敵サイト様
*素敵なイラストなど♪* 管理人 まま様

*二次が生んだ二次作家様*
管理人 aoi様

*CP自在のファンタジスタ* 管理人 asuhana様

*イケメンイラスト&二次小説*
管理人 やこ様

*長編大作の巨匠様* 管理人 こ茶子様

*胸きゅん♡つかつく* 管理人 Happyending様

*カッコ可愛いつくしちゃん*
管理人 四葉様

*切なくも甘いつかつく*
管理人 きぃ様

*シビれるッ!つかつく♪*
管理人 lemmmon様

*とにかく司を愛する作家様*
管理人 蘭丸様

*世界観がkomaのツボ♡*
管理人 チムチム様

*めちゃカッコいい総ちゃん♡*
管理人 Gipskräuter様

*パワフルなつくしちゃん♪*
管理人 つくしんぼ様

*筆の向くまま、オールCP♡*
*ほっこり和む優しいつかつく*


*貴重なつかつく&総優さん♪*

*チャーミングなつかつく♡*

*鮮やかなつかつく♡*
イベントサイト
*つかつく*

   
   
 
*ALL CPコラボ*

   2017.10
 
ブロとも申請フォーム
  

    [ブロとも申請フォーム]へ

 
      申請の際は
  「ブロとも申請について」
  の記事をご覧になってから
    して頂きますよう
   お願いします(人∀・)