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愛のかたち 13

「オレが惚れてんのはお前なんだからな」

そう言った時、
腕の中の牧野はギュッと体に力を入れて固くなった。


『愛のかたち』   第13話


それがオレの告白に対してなのか
男慣れしてねぇのにいきなり抱きしめたからなのかは
わかんねぇが、とりあえず腕をほどいて顔を覗き込めば
完全に放心してるこいつ。

「…牧野?」
そう声をかけたのと
「やっ…!」
牧野がオレを突き飛ばすように腕を伸ばしたのはほぼ同時。

突き飛ばしたと言っても所詮は女の力だ。
別に痛かったわけでもねぇが

「あ…すみません」
と牧野は泣きそうな顔で俯いて小さくなってしまった。

この反応を見る限り
オレの気持ちは牧野にとって大きな負担なんだろう。

いっそ冗談だって事にしてしまえば楽になるのかもしんねぇ。

それがわかっていてもそう言ってやれねぇのは
オレのエゴだとわかっていても
諦める気なんかこれっぽっちもねぇんだから仕方ねぇ。

「…いきなり驚かせて悪かった。
 お前がオレを良く思ってねぇのもわかってるけど
 それでもやっぱり好きなんだよ。
 ちょっとずつでもいい、オレとの事考えてくれねぇか?」
怖がらせねぇように
優しく声をかけた……つもりだった。

それでもビクッと肩を震わせた牧野は
「す、すみません…。
 支社長…だけは無理です。ごめんなさい」
オレの顔も見ないままにそう言うと
逃げるように部屋を飛び出して行った。


別にいい返事が聞けるなんて思ってたわけじゃねぇ。
長期戦になるのも覚悟してた。

「……オレだけは無理って、なんだよそれ」
壁に背を預けてそのままズルズルと座り込んだ。



その翌日から
牧野はどこか気まずそうにしながらも
仕事は仕事だとばかりに淡々と業務をこなそうとしていて
こいつがそうしたいなら、とオレもそれに合わせていた。

…が。

「…どういうつもりだ?」
朝一番に珈琲と一緒に出された封筒に小さく息をつく。

「西田さんにお渡ししたんですが
 判断は支社長に任せると受け取ってもらえませんでしたので」
「だったら認めるわけねぇだろ」

デスクに置かれた封筒をスッと牧野の方へと滑らせると
椅子に深く体を沈めて牧野を見た。

牧野が出したのは退職届。
想定内と言えばそうだがあれから1週間ほど経ってる。

決して勢いだけで出してるわけじゃねぇ
この封筒の重みがオレのどっか奥底に重くのしかかる。

「このままの環境では良くないと思います」
「それは誰にとってだ?」

「……支社長です」
「オレは特に不都合は感じてねぇ。
 牧野の仕事っぷりにも満足してる。
 だからオレのためだって言うならやっぱり却下だ」

「……」
「だが、仮にお前にとって環境が悪いってなら話は別だ。
 それならオレが社長に辞表を出してやるからお前は残れ」

「…は?」
「だってそうだろ。
 原因がオレならどうしてお前が去る必要がある?
 先に言っておくが立場なんて関係ねぇぞ?
 遠慮なんかする必要はねぇ。
 オレがいるから働きづらいならそう言えばいい」

牧野の性格を考えれば
ここでオレがいるせいだとは言わないだろう。

それでもどうにかして辞表を受け取らせようと
次にどんな言葉を投げようか策でも練ってそうなこいつに

黙ってデスクの上にある電話を手に取る。

「…あの?」
「あ?何も言わねぇって事は肯定だろ?
 だから社長に電話すんだよ。
 後任や予定の調整もしなきゃなんねぇし
 さすがに紙切れ1枚で済む話じゃねぇからな」
言いながらダイヤルに手を伸ばせば
牧野は慌ててオレから受話器を取り上げ、ガシャンッと元の位置へ戻す。

「…はぁぁ。
 支社長がいる事で業務に支障があるなんて事はありません」
どこか諦めたような表情で小さく息をつく牧野。

「だったらコレは無効でいいな?」
デスクの上の封筒をトントンと指で叩けば
少しの間をおいて
コクンと頷いたのを見て目の前で破くとゴミ箱へ入れた。

「この話はこれで終わりだ」
そう言ったオレにもう一度頭を下げて
執務室を出て行く後姿を黙って見送りながら
ひとまずホッと息をついた。

秘書としても、個人的にも
今 こいつを失うなんてあり得ねぇ。

あいつの気持ちは尊重してやるつもりだが
だからといって譲るつもりはねぇぞ。

あいつにとってオレは無理だとしても
オレだって牧野じゃなきゃ無理なんだからな。




いつも応援ありがとうございます♡
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つく★★★様

今回の坊っちゃんは
ほんと不憫ですからね(^^;)

ククッ♪
「GOOD LUCK」の時も
付き合いだしたら急にラブラブ街道でしたからね( *´艸‘)
この坊っちゃんも
想いが通じたその時はつくしちゃんを大事に大事にするはずです♡

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No title

安定の不憫さですね(笑)
立場なんか関係なく、俺が退くって、なかなか言えないよね〜
つくしちゃん、何が原因で司君だけは、駄目なのか分かんないけど、でも、司君自身は、良い奴でしょう?
あの人から、司君は、駄目だよと言われてるの〜?(あの人が誰かは、知らないけどさ)
司君と接していて、司君だけは駄目ってことは、つくしちゃん自身の評価ではないのかなと思っちゃう
モヤモヤするぅ〜(笑)

 

り★★様

ラブラブにしてあげたいんですけどねぇ
なかなか今回のつくしちゃんは手強いです(´ヘ`;)

ラブラブになれるように
坊っちゃんを応援してあげてください♪

 

スリー★★★★★様

やっぱりまだつくしちゃんの心は開きませんでしたね。
それもわりと強めに拒否されてしまいました(´・ω・`; )

そしてつくしちゃんらしいと言えばそうですが
もう少しで逃げられてしまう所でした💦
でも司くんも引いたりしませんからね♪
どう言えばつくしちゃんの動きを封じられるかよくわかってました(*・ω・)

つくしちゃんもこれからどうするんでしょう?
その辺も含めて明日はつくしちゃん視点です。
ついにあの人の存在も動かせそうです( *´艸`)

 

JUJU様

不憫ですねぇ(;´∀`)

つくしちゃんだって司くんの良さを
全くわかってないわけでもないんですけどね

司くんの◯◯がどうしても駄目なんです…。

その理由になってるあの人…
ついに次回、ふわっと?明かします♪

…あぁ、でもさらに不憫になるかも💦

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さと★★★様

ふふっ♪
そうなんです。
今回のつくしちゃんはただ恋愛に消極的なだけじゃなく
司だけは特にダメな理由があるんです♪

もう今さらなんですが(笑)
司が不憫でならん理由です(((*≧艸≦)ププ
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