already in love 

★もう少ししてから始めようと思ってたのに
 間違って公開しちゃいました(・・;)
 でも少しの間だしバレてないだろうと思ってたら
 拍手もついちゃったのでもう開き直って出し直します(笑)★




ども。
気が付けば今年ももう8月ですね。

koma地方は梅雨もようやく明けて
太陽が本領発揮しておりますが
皆さんも体調管理にはますます気をつけて
どうか元気にこの夏を乗り切って下さいね。

さてさて。
今日は新しいお話の事なんですが
この下に「episode0」をアップしてます。

ただ、読んでみると「あれ?」
と思われる方もいるかもしれません。

こちらは”妄想畑”に置いてあった
“Discovery”というお話のタイトルだけ変えたものです。
この間、言い忘れてたんですが
実は…次回作はこのお話の続きになります(・∀・*)

「already in love」
恋しちゃってるよ、みたいな感じです。

現在 まだ第1話が書けただけなんですが
ボチボチ始めてみようかなぁ…なんて思ってます。

またのんびり更新になりますが
よろしければお付き合いお願いします♡


koma





☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆

続きを読む

already in love 1

「うひゃ~…。
 本当にここで合ってる…?家、なんだよね?」

まるでどこかの宮殿のようなその建物を見上げ
住所が書かれたメモを手にあたしはため息をついた。


『already in love』   第1話


決して裕福ではないし
節約が趣味のママは贅沢も許してはくれないけど
家族4人、仲良く楽しく暮らしてきた。

だけど高校2年の冬休みの少し前。
パパがリストラに遭って
田舎の漁村に引っ越す事になったのをきっかけに
あたしの日常が変わり始める。

パパとママはもちろん
家族4人で引っ越すつもりだったみたいだし
あたしも最初はそうするつもりだったんだけど

もともと大学生になったら自立しようと思ってたし
それが1年と少し早まるだけならと
今回はパパ達について行かず、東京に残る事を決めた。

だけど問題は
これまで住んでいたのは社宅だったから
新しい家も、そしてバイトも探さなきゃいけない事。

そんなある日。
ポストに入っていたフリーペーパーに
挟まっていたのが家事手伝い募集のチラシを見つけた。

「なになに…?
 ”部屋の清掃等、簡単なお仕事”
 ”未経験者OK。やる気のある方募集”?」

何がすごいって住み込みで食事込み!
住む所と食費の心配が一気に解消する!

家事ならママの手伝いくらいはしてたし
掃除は結構得意な方だ。

でもあまりに時給がいいから
ちょっと怪しいっていうか
嘘の求人なのかな…なんて思いながらも
背に腹は変えられなくて応募してみれば…

この豪邸が仕事場なら納得かも知れない。

大きく深呼吸をして呼び鈴を鳴らすと
少しの間をおいてから門が自動で開いた。

そこから5分歩いてやっとエントランスにたどり着いた。
ひょえ〜。
もしかしてここまで全部お庭って事??

はぁぁ…。ダメだ。

学生でもOKって書いてたから
下宿みたいな感じだと思ってたのに…。
募集してるのはこのお邸のメイドさんって事だよね?

ただの女子高生に務まるような
お仕事じゃないのは嫌でもわかっちゃうよ。
面接を受けてくれただけでもよくやったよ、あたし。

でもまぁ、ここまで来たなら
滅多に見れられる物じゃないし
豪邸見学を楽しむくらいのつもりでドーンと行こう。

そんなあたしを
エントランスで待っていたのは小さなおばあさん。

「お待ちしておりました。
 ここの使用人頭のタマと申します」
そう厳しい顔をして鋭い視線を真っ直ぐに向ける。
「えっと…面接に来ました。
 牧野つくしですっ!よろしくお願いします」
その迫力に背筋を伸ばして深くお辞儀をした。


面接もタマさんが担当で
応接室に通されてそのまま面接が始まった。

「へぇ。高校生かい。
 住み込みでも親御さんは大丈夫なのかい?」
そう聞いてくるタマさんに
我が家の事情を簡単に話した。

「学校に通いながら働くつもりなんだね?」
「はい。そのつもりです」

「なら、働けるのは夕方から夜と朝支度だね」
「…はい、すみません」

「謝る必要はないさね。
 学生の本業は学業だろう?
 募集したのは住み込みの子が立て続けに辞めて
 通いの子が帰った後の人手が足りないからだよ」
それを聞いて少しホッとしたあたしに

「しかし、あんたも苦労してるんだねぇ」
なんて言うタマさん。

「ん〜。そうなんですかね?
 パパ…いえ、父は確かに頼りないんですし
 実はこういう事も初めてじゃなくて
 その度に引越しもしてたので慣れっこというか…。
 でもとても優しい人で人の悪口を言ったりはしない人で
 あたしにとっては自慢の父親なので
 仕事の事は残念ですけど、
 それが苦労と思えないんですよねぇ」
そう答えるうちに
タマさんはケラケラと笑い出した。

「面白い子だねぇ。
 あたしゃあんたを気に入ったよ。
 あんたが本気でやる気があるなら採用しよう。
 ただ、あんたに頼みたい仕事は
 難しくはないけれど楽な仕事でもない。
 やめておくなら今のうちだよ。…どうする?」

「えっ!?本当にいいんですか?」
まさかいい返事がもらえるなんて思ってなくて
逆に聞き返してしまう。

「採用条件は1つ。
 ここの仕事は体力も精神力も必要なんだ。
 女だから、高校生だからって泣き言は認めないよ。
 主人に忠誠を誓い、尽くす事が出来るかい?」

「はいっ。
 体力と根性には自信があります」
昔から家事は得意だったし
節約で鍛えられた忍耐力と根性もある。
しっかりと頷いたあたしにタマさんはニンマリと笑う。

「よし、決まりだね。
 つくし、これからしっかり頼むよ」

「こちらこそ
 よろしくお願いしますっ!」

この時のあたしはまだ
ここでのお仕事の内容をまだ何も知らずに
これからの生活に胸を躍らせていた。




いつも応援ありがとうございます♡

already in love 2

それから数日後。
あたしは身の回りの荷物だけを持って
このお邸へと引っ越してきた。


『already in love』   第2話


「ここがつくしの部屋だよ」
「わぁっ…広い!
 これ何人部屋なんですか?4人…いや5人?
 皆さんは 今お仕事中ですか?」

タマさんに通されたその部屋は
2LDKのゆったりとした間取りで
普通に都内で探したら家賃はいくらくらいだろう…
だなんて考えてしまうほどちゃんとしたお部屋だった。

それなのに。

「何言ってんだい。
 ここはつくし1人の居住空間だよ」
呆れたように言いながら
部屋の鍵を渡してくる。

「えぇっ!?」
今まで家族で住んでた社宅より
広いような気がするんですけど?

ここを1人で??

そんなあたしの驚きにもクスッと笑うだけで

「先代が器の大きい人でねぇ。
 使用人だって家族の一員だと考えて下さる方だった。
 住み込みの使用人は多くないとは言え
 その1人1人に部屋を割り当てて下さってるよ。
 あたしの部屋なんて
 わざわざ和室にリフォームして頂いてね。
 キッチンも付いてるけど使う機会は少ないよ。
 シェフが使用人の分も食事は作ってくれるからね」
そう言いながら指をさした先にあるキッチンだって
モデルルームみたいにオシャレでピカピカ。

こんな所に住まわせてもらいながら
食事とお給料が貰えるって…。

住み込みの人が立て続けに辞めたって言ってたけど
その人たちは結婚とか家庭の事情とかで
泣く泣く去って行ったんだろうなぁ…。

こんな条件のいいお仕事なんてそうそうないもん。

「タマさん」
「なんだい?」

「ほんとにあたしで良かったんですか?」
「今さら何言ってんだい、この子は」

「だって競争率も高かっただろうなぁ…って?」
こんな条件ならあたしよりも
もっと経験もあってメイドの仕事に集中出来る人だって
面接に来ていてもおかしくない。

「早くに決まった事もあるんだろうけどね。
 結局応募があったのはあんただけだったよ」
「え?ほんとですか?」
確かにちょっと怪しいと思うチラシだったけれど
それでもあたし以外誰も来なかった…ってほんと?

「そんな事よりあんた、
 いまだにここの主人を知らないんじゃないかい?」
「そういえば…。
 ご主人様は何人家族ですか?
 旦那様と奥様と…お子さんは?」
言われて初めてこのお邸に住む人達のことを
何も知らなかったと気づいた。

「ほらね…。
 旦那様と奥様は普段はNYにいらっしゃるから不在。
 子供は2人だが、長女の椿様もご結婚されて今はロス。
 この邸に暮らしているのは長男の司様だけだよ」
「えぇっ?この広いお邸に1人で?」

「そうだよ。
 ちなみにつくしはその司様付きの
 メイドをやってもらうからね。
 司様はつくしの1つ上の高校3年生だから…」
そこまで言うと
急に言葉に詰まってあたしを見たタマさん。

「え…何ですか?」
「いや、年が近いメイドは初めてでね。
 気が合えばいいんだけどねぇ…と思っただけさね」
その言葉とは裏腹に

「これから坊ちゃんにあんたを紹介するから
 そこに置いてある制服に着替えておいで。
 あたしゃ外で待ってるよ」
そう続けて踵を返した
その足取りはなんとなく重そうだった。

とりあえず
これからあたしの主人になる人に会うなら、と
急いで着替えて鏡でチェックする。

メイド服って言うと
なんとなく可愛らしいのを想像しちゃうけど
渡された制服はシックなデザインで
生地も滑らかで肌触りがいいし動きやすそう。

クルッとその場で体を回転させてみる。

…意外と似合ってるんじゃない?あたし。

なんて自己満足に浸ったところで
タマさんの待つ廊下へと出る。

「うん。なかなかいいんじゃないかい」
そう言いながら襟や裾を
ピッピッと軽く直して整えたタマさんは頷いた。

「その…司様?はどんな方なんですか?」
「根は心優しい方だよ」

「そうなんですか。
 良かったぁ…気難しい方だったら
 どうしようかと少し心配してたんです」

「気難しい…というか
 今はちょっとお年頃ってやつでねぇ。
 反抗期みたいな所があるから対応は慎重に頼むよ」
「あぁ〜。
 弟も普段は大人しいんですけど
 時々勝手にイライラしてて、
 反抗的な態度とか取るんですよね〜」
ケラケラと笑っていたあたしは

「そんな可愛いモンなら
 こうして度々メイドを迎えなくていいんだけどね」
なんて溜息まじりに呟いたタマさんの声を聞き逃していた。


「ここが坊ちゃんの部屋だよ。
 いいかい。とりあえずあんたは
 あたしの隣でニコニコしてればいいからね」
そう言うとあたしの返事も待たずにドアをノックして開く。

「坊ちゃん、新しいメイドを連れて来ましたよ」
「あ?用事ってそんな事かよ。
 だったら総二郎たちと出かければ良かったぜ…」
チッと面倒くさそうに舌打ちをしたその人は
特徴的なクルクルの髪を乱雑にかき上げた。

「主人の顔も知らないんじゃ困るだろう。
 今日から坊ちゃんのお世話をするのはこの子だよ」
そこまで言うとタマさんがあたしを見る。

「初めまして。
 牧野つくしと言います。
 これからどうぞよろし…」
頭を下げて挨拶をした言葉は最後まで言い終わる前に

「あ?知らねえよ。
 っつか世話係ならタマだけで十分だっつってんだろ」
そんな言葉に遮られてしまう。

…っていうか、今無視された?

「タマだってもう若くないんですよ。
 坊ちゃんの我儘に付き合ってたらポックリ逝っちまうよ」
「逝くも何もすでに妖怪じゃねぇかよ」
ククッとバカにするように笑う声に
ピキッと体のどこかが鳴った気がしたけれど

タマさんに視線で制されて
なんとかニコニコと笑顔を貼り付けて無を心がける。

「おい、20号」
「…」

「おいっ!」
「え?あたしですか?」
まさかあたしに話しかけるとは思ってなくて
思わず聞き返した。

「お前以外に誰がいんだよ」
「…えーっと。
 その20号っていうのは…?」

「お前が今年に入って20番目だから?
 どうせ名前覚える間もなく辞めんだから
 番号だけで十分だ。…ま。せいぜい頑張れば?」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべる坊ちゃんから
タマさんへと視線を移す。

すると、
タマさんは小さくため息をついて
バツが悪そうにあたしから視線を外した。




いつも応援ありがとうございます♡

already in love 3

「ちょっとやんちゃだったけどね、
 昔は素直で優しいお子だったんだんだよ」

”坊ちゃん”への挨拶を済ませた後
タマさんは昔を懐かしむように遠くを見た。


『already in love』   第3話


タマさんの話によれば
今まではこのお邸に出入りする使用人は
必ず決まった所から信用のおける人を
紹介してもらうのが決まりだったけれど
度重なる坊ちゃんの暴言、暴力に
遂に紹介してもらえなくなってしまい
今回初めて一般向けにチラシを作った…という事らしい。

「坊ちゃんがあんな風になったのは
 椿様の結婚が決まった頃からかねぇ…」

ご両親が留守がちだった事もあってか
近くにいる唯一のご家族はお姉様だけで
それはそれは慕っていたそうで。

だけどそのお姉様が
お付き合いされていた方と無理やり別れさせられ
ご両親が連れてきた方と結婚させられたんだとか。

「誤解しないでおくれよ。
 旦那様と奥様だって椿様の幸せを考えての事だ。
 当時は椿様も落ち込まれておいでだったけど
 今じゃ仲のいい夫婦でとても幸せに暮らしてるんだよ」

「坊ちゃんは、この家に産まれるには
 心根が綺麗すぎたのかもしれないねぇ。
 いつかは自分も椿様のように決められた相手と
 結婚させられる事に絶望を抱いてるんだろうね」

「…もしかして坊ちゃんにも恋人が?」

「その逆さ。
 それもこの家に産まれたばっかりに
 幼い頃から周りの大人達は
 1人の人間ではなく”道明寺”として見る。
 おまけに坊ちゃんはこの家の跡取りだろう?
 そんな状況で寄ってくる女性は
 どうにか気に入られようと媚びる人ばっかでねぇ…
 おかげで今じゃ女性そのものを毛嫌いされてるよ」

そうため息をついたタマさんは

「だから あんたは間違っても
 坊ちゃんの前で色目を使うんじゃないよ」
なんて釘を刺してくる。

「冗談じゃないっ!
 いくらお金があったって
 あんな心が貧しい男、こっちから願い下げですっ」

そりゃあ、あたしの置かれている現状として
お金も住む所も必要だけど
人を番号で呼ぶような人に媚売ってまで
お金が欲しいとは思わない。

さっきの態度を思い出して
眉間に皺を寄せたあたしをタマさんがジッと見てくる。

「…え?
 何かおかしな事言いました?」
「つくし…あんたは辞めないでおくれよ」
突然ガシッと両手を握られ
そんな事を言い出すタマさんは真剣だ。

「はい?」
「つくしの言う通り
 坊ちゃんは心が空っぽになっちまってんだ。
 今坊ちゃんに必要なのは
 つくしみたいな人なのかもしれないねぇ…。
 よしっ。坊ちゃんがどう言おうが
 あんたの思うようにやってみておくれ」

「あたしの思うように…ですか?」
「あぁ、笑顔を取り繕う必要もないさね。
 プロの使用人としての仕事は
 ここにいる使用人全員が出来る事だけど
 1人の人間として対峙出来るのはつくしだけだ」

正直、あの人相手にいつまで
ニコニコしていられるか不安だった。
…さっきだってタマさんが隣にいなきゃ
確実に手が出てたと思う。

そうなる前に
辞めた方がいいかと思ったりもしてたけど
ここを辞めたらまた住む所から探さなきゃダメだし。

「ほんとにあたしの思うようにやっていいですか?」
確認するようにもう一度聞いてみる。
「あぁ。かまわないよ。
 責任はこのタマが取るから安心しな」
しっかりと頷くタマさんにあたしも頷く。

「わかりました。
 じゃあクビになるまでやるだけやってみます!」
「頼んだよ。
 もうこれでダメならこの家に未来はないよ」
そう言って涙を浮かべるタマさんに
今日までの苦労を垣間見た気がした。



そして坊ちゃんとあたしの戦いは
翌朝から早速始まる。

「坊ちゃん!起きて下さい!
 もう起床時刻を20分も過ぎてます!」
「……チッ」

布団の中から聞こえたのは
鬱陶しそうな舌打ちひとつ。

でもまぁさっきまで
死んでるのかと思うほどに反応がなかったんだから
進歩があったと前向きに捉えつつ
明日からは拡声器でも用意してもうおうと考える。

「大体、高校生にもなって
 1人で起きて来られないって
 どんだけ甘やかされてんのよ」
ポツリと漏れた小言は
ほんとに小さな声だったのに

「クッ。
 テメェとは生きる世界が違うんだよ」
とこんな時だけ
しっかりバカにしたような返事が聞こえてくるんだから
ムカつくったらありゃしない!

「だったら起こしてあげてるんだから
 とっとと起きて朝食食べなさいよ……ねっ!」
言い終わると同時にはぎ取った掛布団は
想像以上にふわっと軽く宙を優雅に舞って
その下から漸く姿を現した坊ちゃんに視線を落とす。

その瞬間、
サァーッと血の気が引く感覚とカッと体が熱くなる感覚が
同時に襲ってくる。

「きゃあ〜っ!!
 なんで裸なのよ、あんたっ!」
「…うっせ。
 テメェが勝手にめくったんだろうが。この、変態っ」

「変態はどっちよ!
 起こしに来るのもわかってるんだから
 こんなの露出狂とやってる事変わらないじゃないっ!
 さっさと服を着なさいよ、服を!」
「あ?どうしてオレ様が
 テメェの言う事なんて聞くんだよっ」

「テメェじゃなくて牧野です!
 名前も覚えられないわけ?」
「あぁ、そうだったか。20号?」

「はぁ!?
 耳おかしいんじゃないの!?
 とにかくさっさと服着て、朝食食べなさいよっ!
 …って、そのまま動き回るなっ!
 いい加減にしないとセクハラで訴えるわよ!」
「マジでうっせぇな、お前。
 訴えるなり辞めるなり好きにしろっつの」


ぎゃあぎゃあと騒がしい部屋の外では
タマさんが可笑しそうに笑っていた事なんて知らずに
あたしは目の前の露出狂の坊ちゃんに
ベッドサイドにあったガウンを投げつけていた。



いつも応援ありがとうございます♡

already in love 4

「…ねみー」
「なんだよ、司」
「類みてぇな事言ってんなよ」

小さく欠伸を噛み殺しながらポツリと呟いたオレに
総二郎とあきらが肩を竦めた。


『already in love』   第4話


昨日、タマから紹介されたあのメイド。
なんなんだ、あいつは。

ぎゃあぎゃあとうるせぇし
そもそもメイドとしてあの態度はどうなんだ?

おまけに朝食までオレと一緒に食べやがった。
これにはさすがにタマに文句を言えば

「つくしだってこれから学校だってのに
 坊ちゃんが起きないからもう時間がないんだよ。
 嫌なら明日からは時間通りにおきてくださしまし」
なんてまるでオレが悪ぃみてぇに言い

「坊ちゃんも1人で食べるよりは
 こうして誰かと食べる方がよろしゅうございましょ」
むしろこれで良かったとばかりの態度で。

「坊ちゃん。
 さっきから全然食べてないですよ。
 こんなに美味しいのにもったいない!」
オレの向かい側に座るこいつは
見てるだけで食欲が失せそうな勢いでよく食う。


思い出すだけで不愉快な光景に
たまらず顔をしかめたオレに

「そういや
 そろそろ新しいメイドが来る頃か?」
「っつか、すでに辞めてたりしてな」
ククッと笑いながら聞いてくるこいつらも
オレが次々とメイドに嫌がらせをしては
何人も辞めさせてきた事も知っている。

「いや。
 辞めてねぇよ、まだ」

「へぇ?でもまぁ時間の問題だろ」
「だな。今までで最高何日もった?
 でもまぁ、司ん所に来る奴も可哀そうにな」
あいつを見てねぇこいつらが

「俺は3日」
「じゃあオレはドンと1週間にすっか」
辞めるまでの日数を賭け始めるのもいつもの事だが

「じゃあオレは…辞めない、にしようかな」

これまでこの賭けにノッた事もなければ
今の今まで寝てたくせにそう答えたのは類。

総二郎たちはもちろん
オレも類へと視線を移した。

「どうしてそう思う?」
辞めねぇとまではいかなくても
なんとなく一筋縄ではいかねぇ気もしてた。

「んー…司の方が参ってるみたいだから?」
クスッと笑う類は
相変わらずボーッとしてるようでよく見てやがる。

「そうなのか?
 司が押し負けるってどんな奴だ?」
「ついにゴリラみてぇな男でも付けられたか!」

「違ぇよ。
 そんな奴なら殴り飛ばせばいいだけだろ。
 …学年まで知らねぇけど。たぶんオレらより年下?」
さすがに中学生ってわけはねぇと思うが
見た目をとっても、態度をとっても年上にはまず見えねぇ。

「年下っ!?マジかよ!」
「どんな子だ?かわいいのか?」
ヒュ〜っと口笛を吹いて楽しげなこいつらの考えは
どうせ想像するのも不愉快な程ロクでもねぇはずだ。

その予想通り
今度はいつ辞めるかではなく
オレがいつあいつを食うか、で賭け始めやがる。

「未来永劫ねぇよ!」
放っておけば
どんどん勝手に盛り上がりそうなこいつらに
そう宣言して水をさしておけば

わざとらしく大袈裟なため息をつく。

「いつになったら司は男になるんだ。
 まさかまだ初恋を忘れてねぇとか言うつもりか?」
「有り得ねぇだろ。
 名前も覚えてねぇしそもそも1度会ったっきりだろう?」
つまらなさそうに言うこいつらに
「あぁ、ぬいぐるみあげた子だっけ?」
と類までクスクスと笑う。

確かにオレの初恋はあの時だった。

あの後、何度かあの公園へ行ってみたが
会える事はなかったし オレもそのうちに行くのをやめた。

おかげで今となっては
名前どころか顔もぼんやりしている。

ただ…。
初恋以降、誰かを好きになった事もねぇし
完全に思い出なのかと聞かれたら…微妙なだけ。

それがただの執着なのか
気持ちが残ってんのかは自分でもわかんねぇ。

それでも所詮はガキの頃の淡い初恋だ。
今さらどうなると思ってるわけじゃねぇんだが。




それから2週間。
総二郎たちの予想は外れ、
類の直感が当たる形であいつは未だに邸にいる。

部屋の掃除をしているこいつをシカトしつつ
あいつが今モップをかけたその床に
わざとコーヒーをこぼしてやる。

我ながらくだらねぇとは思うが

「あーっ!もう!ほんと性格悪いっ!」
「今まで辞めてった人たちの気持ちがわかりすぎる」
主人の目の前で
盛大なため息とともに愚痴るこいつもこいつだろ。


「だったらとっとと辞めろ!」
「いいえっ。
 タマさんは優しいし、ご飯は美味しいし。
 知ってました?お給料までいいんですよ!
 ただ1つ、性悪坊ちゃんがいる事を除けば
 ここはほんと〜に素敵な職場なので辞めません!」
ベーっと舌を出して慣れた手つきで
オレが零したコーヒーを拭き取っていく。

「テメェの方が年下だろうがっ。
 坊ちゃんとか呼んでんじゃねぇよ!」
「精神年齢に合わせるなら
 坊ちゃんで十分でしょ?」

「あぁっ!?」
「行動もそうだけど、ほら。
 坊ちゃんの好きなこのお菓子!
 坊ちゃんがこれ好きって言うのも意外ですけど。
 常にストックしておかなきゃならないなんて。
 でもこれ美味しいんですよね〜。1つもらっていいですか?」
オレの苛立ちもスルーして
チェストの上のケースに入っている
あの時食べた駄菓子を1つ手に取り勝手に封を開ける。

「ちょっ…!おいっ!
 勝手に食ってんじゃねぇよ!」
「いいじゃないですか、1つくらい。
 今度あたしのおすすめを持ってきますから。
 これも美味しいけどそれも美味しいんですよ?」

思い出の味をこいつと共有するつもりもねぇし
大体、メイドのくせに
主人の部屋にある食い物に手を出すってあり得ねぇだろ!

「いらねぇよ!返せよっ」
「ほんとケチ!」
そうため息をつくこいつは

食べるのをやめるのかと思えば
袋から出したその菓子をパキッと真っ二つにすると

「じゃあ、はい。はんぶんこ」
ニコッと笑って片方をオレに差し出した。



__『はいっ!はんぶんこ』


その時、
なぜかぼんやりしていた記憶の中のあいつと
目の前のこいつが重なって見えた…気がした。





いつも応援ありがとうございます♡

already in love 5

『……んー。はい?』
「ちょっと来い」

受話器の向こうでえ〜?とか
聞こえた気がしたがガチャンと切った。


『already in love』   第5話


10分くらいしてから
眠そうに目を擦りながら部屋に入ってくる。

「今度は何よ」
不機嫌そうにオレを睨むのは
これが初めてじゃねぇからだろう。

オレの部屋とこいつの部屋を繋ぐ内線。
ここ数日、新たな嫌がらせの1つとして
夜中にコールして呼び出してやる。

これが意外と効果的で
オールでも平気なオレと違って
こいつは夜は弱いらしい。

どうせロクでもねぇ用件だとでも
言いたげな顔のこいつに今日の命令を下す。

「コーヒー」

「は?」
「だからコーヒーだっつってんだろ」

「今何時だと思ってんの?」
「2時だろ。
 オレがいつコーヒー飲むかなんて勝手だろうが」

「そりゃもちろん勝手だけどね。
 飲みたきゃ自分で淹れなさいよっ。
 そんな事で起こされる身にもなりなさいよねっ」
「主人が飲みてぇって言ったら
 黙って淹れるのがお前の仕事だろうが」

間違った事は言ってねぇはずだ。
オレは主人でこいつは雇われた使用人。

「はぁぁ…もうっ!わかったわよ!」
そう言うと
ミニキッチンへと向かいコーヒーを淹れ始める。

ドリップしながら
「確かにこれが仕事かもしれないけどね。
 人としての常識とか思いやりとかないのかしら。
 大体頭ん中お子ちゃまのくせにコーヒーだなんて
 ふざけんじゃないっつーの。
 あ。夜更かしばっかしてるから成長しないんじゃない?」

なんてブツブツと邪念でも込めてんのかと
ツッコミたくなるような文句をブツブツと言いながら
手先だけは丁寧に湯をゆっくりと注いでいく。


「はい、どうぞ」
「おぅ」
受け取り、カップに口をつける。

本当ならここで不味いと言ってやりてぇ所だが
タマから直々に教えられたらしいこいつのコーヒーは
オレの好みにドンピシャではまってやがる。

「クソ…。うめぇ」
「クソは余計でしょ。クソは」

文句を言いながらも
どこか得意げなこいつは嬉しそうにフフンと笑う。

「もう宜しいですか、坊ちゃん?」
「あぁ。とりあえずはな」

「はぁ?」
「また飲みたくなるかもしんねぇだろ」

「いい加減寝なさいよね」
「コーヒー飲んだばっかで眠れるかよ」

「だったら飲むな!」
なんて仮にも主人に向かって
偉そうな口を聞くこいつは

「変な時間に起こされて小腹減っちゃった。
 坊ちゃん、このお菓子1つもらいますね〜」
なんてまだ返事もしてねぇのに
勝手にオレのストックに手を伸ばす。

あれから何度かこうして勝手に食うから
こっちもいい加減慣れちまってもう何も言わねぇ。

別に駄菓子の1個や2個で騒ぐ事もねぇし?

それと理由はもう1つ。

「やっぱりコレ美味しい〜♪」
「……」

まただ。
こいつが満足そうに笑うと
思い出の残像と重なって見えちまうから
なんとなく何も言えなくなる。

でもそれはただ目の前で
あの時と同じように頬張ってる姿が
記憶を呼び起こすきっかけになってるにすぎない。

ただそれだけだ。

そう思うのに頭のどこかで
まさか…と疑う自分がいる。

「…?
 ん?坊ちゃんも食べます?」
「いらねぇよ」

っつか、万が一にだぞ。
こいつがあの時のあいつだったとして。

それならどうしてオレに気付かない?
自分で言うのも何だが
どこをとっても平凡なこいつと違って
オレは髪の毛ひとつとっても特徴的だぞ?気づくだろ。

それでも気付かねぇって事は
こいつにとってはその程度の出来事だったという事。
だったらわざわざ真実を追求する必要もねぇ。

それに初恋の相手が目の前に現れたからと言って
そこから何かが生まれるわけでもねぇ。

女の姉ちゃんでさえ自由な恋愛は許されなかったんだ。
生まれた時から跡取りと決まっているオレだって
いつかはババァ達の決めた相手と
戸籍上の夫婦になるのは決まってるようなモンだ。

何でも与えられるが
本当に欲しい自由は与えられない。

姉ちゃんの結婚で
それを嫌と言うほどに思い知った。

「…やっぱ食う。半分よこせ」
知らぬ間に勝手に2本目を開けたこいつにそう言えば
「えー?
 もう1本食べればいいじゃないですか」
なんて文句を垂れながらも
パキッと半分に折った片方を差し出した。

「うるせぇ。
 人のモン勝手に食ってる奴が文句言うな」
受け取ったそれを口にすれば
また目の前のこいつと重なるあの光景。

どうせ未来なんてない話なら。

「2人で食べたら2倍美味しいですね」
「…変わんねぇよ、バーカ」

せめて思い出くらいは
ババァ達に汚される事なく
綺麗なままに胸に留めておくのも悪くねぇだろ?





いつも応援ありがとうございます♡


★つくしちゃんが思い出さないのは
 何というかもう単純に鈍いせいです、はい(笑)
 きっと坊ちゃんの顔より
 駄菓子の味とかしか覚えてないんですよ( ̄▽ ̄;)★

already in love 6

「あふ…」
「なんだい、寝不足かい?」

朝食の場であくびを噛み殺すこいつに
タマが心配そうに聞く。


『already in love』   第6話


こいつとこうして向かい合って
朝食を食べるのもすっかり定着しちまっている。

タマの問いかけに
こいつはオレを睨みつけ

「聞いてくださいよ、もう〜。
 夜中にしょーもない用事で起こされて
 おかげでこっちは寝不足なんですよ〜」
なんて本人の目の前で堂々とチクりやがる。

それにタマはオレに疑惑の目を向けたが
別に文句を言われる筋合いはねぇし、
謝る気もねぇとシカトしてコーヒーに手を伸ばす。

すると
オレにだけ聞こえるようにそっと耳に近づき

「坊ちゃん。つくしは使用人だけどね
 その前に年頃の女の子だってわかってるかい?
 夜な夜な部屋に連れ込んでナニしてるんだかねぇ…」
なんてまるでオレがこいつに
手を出してるみてぇに言うから
危うく口に含んだコーヒーを吹き出しそうになった。

「バッ…!
 何もねぇよ!変な想像してんじゃねぇぞ!」

急に怒鳴ったオレに
タマの言葉を聞いてなかったこいつは
パンを頬張ろうと大きく開けた口のまま
驚いて固まってオレを見たが

「うっせぇ。見てんじゃねぇ!」
そう続けて怒鳴ったオレに
不満そうな顔をしながらも

「うるさいって…
 大声出してるのは坊ちゃんでしょうが」
なんて何事もなかったみてぇにパンにかぶりついた。

あまりの居心地の悪さに
それ以上朝食には手をつけず席を立つ。

そんなオレを黙ってエントランスまで見送るタマは

「タマは坊ちゃんを信じてますしね。
 別に本当に必要なら呼べばいいんだけどね。
 ただ一般的に考えればそう捉えられても
 仕方ないって事も頭の隅っこには置いてといて下さいな」
なんてさらに
忠告してくるあたりはさすがというべきか。



「へぇ〜。まだ続いてんだ?」
「タマさんまで味方につけるなんてやるねぇ」
学園に顔を出してもイライラが治まらねぇオレに
総二郎たちが面白そうに聞いてくる。

「今日お前ん家行ってい?」
「あ?」

「会ってみたい、その子に」
ニコッと笑ってそんな事を言い出したのは、類。

「あ?ふざけんな。却下に決まっ…」

「おー!いいな!」
「俺も見てみてぇよ」
なんてオレはまだ承諾さえしてねぇのに
言葉を遮った総二郎たちは盛り上がっちまっていて

「別にお前はいなくてもいいよ」
なんて類の言葉に当然だと頷けば

「そのかわり。
 あとで文句言っても知らないからね?」
「あ?」

「だって、俺たちはその子と初対面だし。
 共通の話題って言ったらお前だろ?
 だから自然とお前をネタに話すしかないじゃん」
「別に話されて困る事なんか…ねぇよ」

「…小3までオネショしてたとか」
「あっ!?」

「庭の警備犬にちょっかい出して
 噛まれてから犬は大の苦手だとか」
「てめっ!」

「そんな事くらいしか思いつかないけど
 …別にいいよね?」
ニヤりと悪い顔をする類。




「いやぁ。
 坊ちゃんにお友達がいたなんて知りませんでした」

結局こいつらを野放しにしてたら
何を言われるかわかったモンじゃねぇと
仕方なくこいつらを連れて帰る形で邸に戻った。

だが、肝心のあいつがまだ学校だとかで
内心ホッとしたのも束の間。
しばらくすると学校から帰ってきたと
タマがいらねぇ報告をしてきたせいで
客人をもてなすために
ティーセットを運んできたこいつに
下がる間も与えず絡んでるこいつら。

「俺らの話とか出ねぇの?」
「そうですねぇ。
 少なくとも学校でのお話を聞いた事がないので
 てっきり性格悪すぎて友達もいないのかと…」
こいつの言葉にギャハハと笑い転げる。

「えーっと。
 何て呼べばいい?君、名前は?」
あきらの言葉に

「名前は牧野つくしですが
 坊ちゃんからは
 20号と呼ばれてますので皆さんもお好きに」
表面上はニコッと笑ってはいるが
オレを睨みつけてる所を見ればただの嫌味だ。

「坊ちゃん!」
それに反応してゲラゲラ笑う総二郎に
「20号はねぇよ、司。
 女の子だぞ?可哀想じゃん」
と慰めるみてぇにあいつの頭を撫でたあきら。
「じゃあ俺は牧野って呼ぼうかな。
 よろしくね?牧野?」
なんて類に顔を覗き込まれたその時

あいつの顔がわずかに上気した。






いつも応援ありがとうございます♡

already in love 7

主人であるはずのオレをシカトして
盛り上がってやがる総二郎たちは
あいつを気に入ったらしくすっかり馴染んでいて

ついには今夜は邸に泊まるとまで言い出した。


『already in love』   第7話


「じゃあ あたしタマさんに伝えて来ますね」
オレはまだ許可した覚えもねぇが
パタパタと走って部屋を出て行くあいつ。

その後ろ姿を見送った後は
さすがに総二郎たちも満足したのか
深追いはしなかったおかげで
オレの部屋にあいつが居座る事はなかったが

ずっと寝てたくせに
いつの間に抜け出していたのか
あいつの所へ行っていた類は
「おすすめだって貰っちゃった」
なんてオレの部屋にあるのとは
また違う味の駄菓子を満足気に頬張っていたが

それはオレもまだ食った事のねぇヤツで。
普段あんだけオレの分を食ってんだから
類に渡すより先にオレに渡すべきじゃねぇのかと
顔には出さなかったが……結構ムカついた。


「お。もうこんな時間かよ。
 俺らもそろそろ寝るかー」
「だな」
日付が変わろうという頃、
こいつらも漸く用意された部屋へと散り
そのタイミングで
あいつを呼び出し駄菓子の件について文句を言えば

「だって最初にいらないって言ったじゃない」
なんて開き直ってはいたが
「欲しいなら欲しいって言えばいいのに」
と自分の部屋に戻っていくつか持ってくると
「ではおやすみなさい」
とさっさと部屋へと下がってしまった。


その2時間後。
こいつは再びオレの呼び出しによって
眠気を隠さねぇ顔でやってきた。

「はぁぁ…。今度は何ですか?
 おかわりなら持ってきましたけど」
「違ぇし。
 そこにケータイあんだろ。取れよ」

「はぁ!?
 それくらい自分で取りなさいよ」
「起きあがんの面倒くせぇんだよ」

「だったら大人しく寝ればいいじゃない」
「眠くねぇし」
そんなオレの態度に
わざとらしいくらいのデカいため息をつくと
テーブルの上からケータイを手に取ると
少し乱暴にオレへと押しつけるように渡してきやがる。

なんだかんだ文句を言いながらも
いつも結局従ってるこいつが可笑しくて
ついククッと笑いが漏れたが

「人をコキ使っておいて
 笑ってるなんて悪趣味…。
 類さんみたいにもう少し優しかったらいいのに」
そんなこいつの言葉が引っかかり癇に障る。

「うるせぇ!
 グダグダ言ってねぇでとっと寝ろ!」
「だからうるさいのも
 寝てたのを起こしたのもそっち!
 言われなくたって寝ますよー」
そう言って何故か
オレが座ってるソファの向かい側へ移動し
クッションなんかを適当に移動させると
それを枕にするようにゴロンと横になる。

「おい。寝ぼけてんのか」
「寝ぼけてなんかいません」

「だったらそれは何の真似だ?」
説明しろと促せば
面倒くさそうに上半身だけ起こすこいつ。
「知ってます?
 あたしの部屋ってタマさんの2つ隣なんです」
「知らねぇよ」
「でしょうねぇ。
 でもね?あたしの部屋から
 坊ちゃんのこの部屋まで歩いて5分かかるんですよ」

「だからそれが何だよっ」
「まだわからないですか?
 5分も歩いて、命令されるのが
 3歩歩けば取れる物を坊ちゃんに届ける事なんです。
 そんな事のために何往復もしてられないので
 今日はここで寝ます。また何かあれば声かけて下さい」
早口で言いたい事だけ言うと
おやすみなさいと付け加えてオレに背を向けた。

「はぁっ!?おいっ!ふざけんな!」
そう怒鳴ってみてもこいつはシカトで。

っつか、こいつマジかよ。

こいつじゃねぇ誰かが
同じ事をしたとすれば
それはむしろ何かが起こる事を期待してるようで
気色悪ぃとしか思えねぇんだが…。

こいつがそんな事は微塵も考えてねぇのはわかる。
本気で呼ばれる度に来るのが面倒なだけだ。

だがよ、ここは男の部屋だぞ。
いくら何でも無防備すぎねぇか?

そっと立ち上がり顔を覗き込めば
すでに寝息を立て始めていて
寝付きの良さにも呆れる。

「……」
っつか、こいつは
このまま朝までここで寝る気か?

だとすれば
それはとてつもなくヤベェ気がする。

数回呼びつけただけで
手を出してるみてぇに言われたんだ。
朝になってオレの部屋から出てくるこいつを
誰かに…特に今夜は総二郎たちもいるのに見られてみろ。

いくら否定した所で
面白おかしく話を拗らせるに決まってる。

「おいっ。起きろよっ」
「んっ!」
軽く揺すってみたが
うるさいとばかりに手をはらわれるだけで
何かあれば呼べと言ったわりには
起きる気配は全くない。

「し、知らねぇよ。
 言いたい奴には言わせておけばいいだろ」
誰に言ってんのかは
自分でもわかんねぇがそう言い捨て
元いた位置へと戻るとケータイを目的もなくいじる。

だが、視界の端に映るこいつが
どうしたって気になって何を見ても頭に入らない。

「…………。クソッ!!」
ケータイをソファへ投げ捨て立ち上がると
もう一度こいつのそばに立ち揺すってみるが
今度は手をはらわれる事さえねぇほどに熟睡中ときた。

「途中で起きたら
 床に叩きつけてやっからな」
舌打ちをして
こいつの体の下に腕を差し入れ抱き上げると
部屋の扉を少し開き、辺りを見渡す。

そして誰もいない事を確認してから廊下へ出た。
確かタマの部屋の2つ隣とか言ってたか?
頭の中で地図を描き、総二郎たちの部屋の近くは避け
こいつの部屋を目指した。

「くっそ。覚えてろよ…」
遠回りをしたせいで
5分以上かかったこいつの部屋までの道のり。

幸い誰にも見られる事なく
ここまで来られたのは良かったが
その間、起きるそぶり1つ見せず
むしろ気持ちよさそうに眠りこけていた
こいつを睨んだがそれさえ本人には届いていない。

どうしてオレがこんな思いをしなきゃなんねぇのかと
やりきれない思いを抱きながらも
こいつの部屋のドアを開いた。

そこはタマの部屋とは
和室と洋室ということもあり全く違ったが
広さはそんなに変わらない印象を受けた。

リビングルームを中心に
キッチンとダイニングが同じ空間にあり
その奥に扉が2つある。

部屋は片付いている、というか物が少ない。
こいつは自分の荷物とか持って来てねぇのか?

そこまで考えてふと
いくら親切にも運んで来てやったわけで
もちろんオレに疾しさなど微塵もなくて
どっちかっつーと
起こしても起きねぇこいつが悪いとしても。

こうして本人の許可なく
仮にも女の部屋に入ってるこの状況も
バレたら面倒な事になるんじゃねぇかと
さっさと部屋を出ようと寝室へ急ぐ。

ベッドへ下ろしたこいつの寝息が
規則正しい事にホッとした、その瞬間だった。

ベッドの脇にあるチェストの上に
見覚えのあるウサギのぬいぐるみが目に入り

とっとと出ようと急いでいたはずの
オレの動きは完全に止まった。






いつも応援ありがとうございます♡


★ここでお知らせです。
 本日 ある方のお祝いに出張しております!
 どこへかはナイショですが(え?バレバレ??笑)
 お昼12時にアップして頂く予定なので
 良かったら探してみてくださいね〜( *´艸`)クスクス★


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