あまい気持ち 12

「…おぅ」
「うん」
数日が経ってやっと非常階段に足を向けた。

数日とは言え
牧野の顔をみるのもあれ以来で
どこか気まずい空気がオレ達の間に流れた。


『あまい気持ち』   第12話


いつもだったら
勝手に座るのに今日は
ドアに手をかけたままその場に立ったままの道明寺。

「…?
 花沢類なら今日は来てないよ?」
そう聞いてみたけれど

「…いや、そういうわけじゃねぇけど」
少し視線を泳がせたこいつは
結局あたしの隣に腰を下ろす。

「「……」」

「…あれから大丈夫だったかよ」
まるで独り言みたいに
こっちを見る事もなくポツリと言葉を漏らす。

だから
「あ~…うん、まぁ?」
あたしも答えながらお弁当に手をつければ
「なんだよ、その曖昧な返事。
 まだ何かされてんじゃねぇだろうな?」
と不満そうな顔を向けてくる。

「違う違う。
 ほんとに何もされてないってば」
「嘘じゃねぇだろうな?」
疑うような視線を向ける道明寺にコクコクと頷いておく。

実際、あの日…ううん。
あの直後からあたしに話しかけてくる人はいなくなった。

それどころかクラスメイトに
朝「おはよう」って挨拶しただけで飛び跳ねて
「おはようございます!」だなんて何故か敬語で頭下げるし

先生までなんとなく
あたしに気を使ってるのを感じてしまうほど。

この状況が良かったのかどうかは
あたしにもよくわからないけれど…確かな事は
改めてF4というか、道明寺の力を見せつけれらた感じ?

「何かあったなら言えよ?シメてやっから」
「物騒だなぁ、もう」

「バカ言え。
 言っておくがお前のためだけじゃねぇぞ?
 宣言した以上は有言実行しねぇと
 オレの股間にも関わるってモンだろうが」

「…沽券、ね?」
「あ?」

「……ぷっ」
威張ってるわりには
結構バカなんだけどなぁ。

「だから何かあれば
 すぐに言え。絶対にだ!いいな?」
ビシッと指をさしてくるその顔は真剣そのもので。
「ん。ありがと」
そう答えれば満足そうに小さく頷いて

「…なんつーか。悪かった、な。
 飯行ったくらいで騒がれると思わなかったからよ」
なんて視線をそらして
バツが悪そうに言うから憎めない。

「道明寺が悪いわけじゃないでしょ?
 あたしもご馳走になったし楽しかったから」
「そうか?」

ほんと変な奴なんだけどな。
人の話なんて全っ然 聞いてなくて
強引に物事を進めちゃう所は困るけど
どこまでもまっすぐで、友達思いで優しい奴。

そんな道明寺と話しているうちに
いつの間にか好きになっちゃうんだから
あたしも十分変な奴なのかもしれない。

「あ。そうだ。
 会ったら渡そうと思って持って来てたんだ」
そう言って鞄の中から小さな包みを取り出して道明寺に渡す。

「なんだよこれ」
「クッキー。
 なんて言うか…お礼?
 卵焼き1つとランチじゃあまりにも釣り合わないしさ」

中身を覗いた道明寺は
何か言いたげにあたしを見る。

「まさかとは思うが…
 これ、お前が作ったのか?」
「売っててもおかしくないくらい
 あんたにそっくりでしょ?味はともかく見た目は自信作」
ジト目で睨んでくる道明寺に
ケラケラと笑いながら答えた。

最初は普通に作るつもりで生地をこねてたんだけど
道明寺って頭とか特徴的だしイケるんじゃないかと
似顔絵クッキーに変更した。

「普通は味を重視するんじゃねぇのかよ…」
小さく息をつきながら
1つ手に取るとサクッと軽い音をさせて齧ると
自分の顔を容赦なく真っ二つにした。

「…あま。
 っつか、何か生臭くね?」
なんて難しい顔をした。

「あ。やっぱり?
 実はうちオーブンなくってさ。
 魚焼きグリルで焼いたんだよね…」
「はっ!?ふざけんなよ、てめぇ」
額に青筋を浮かべて睨んでくる…ま。当然か。

「だってまさか
 食べてくれるとは思わなかったから」
ははっと乾いた笑みを浮かべてごまかすしかない。

だってそうでしょ?
卵焼きだって花沢類に無理やり
食べさせられた時も怒ってたくらいだし。

受け取ってくれれば御の字で
お礼の気持ちだけ伝わればそれでよかった。

「他の奴のならともかく。
 お前が変なモン入れるとは思わねぇし
 オレに作ってきたっつーなら捨てたりしねぇよ」

フンッと鼻を鳴らしながら残った欠片も口へと運ぶと
やっぱり魚臭ぇと不味そうに舌を出しながらも
「サンキュ」なんて言ってくるからドキンと心臓が跳ねる。

…あぁ、もう。
道明寺のこういう所が好きなんだよなぁ。

どうしてこんな奴…と思う瞬間だってあるのに
ふとした時に
こういう事するから不毛だとわかっていても惹かれてしまう。

だけど…

「類に作ってやる時はちゃんとオーブン使えよ。
 家にねぇなら うちのキッチン貸してやっから。な?」
なんて言葉に今度は心臓がギュッとなる。

別にこの恋が成就する事なんて夢見てないし
花沢類の何が気に入らないって訳でもないけどさ。

やっぱり好きな人から
他の人との恋を応援されるのって辛い。

「…あのさ」
「ん?」

「花沢類との事…ちょっと考えてみるよ。
 だから、道明寺も心配しないで?
 わざわざ会いに来てくれなくてもいいよ」

どうせ叶う事もないのなら…。
せめて友達としてそばにいられるだけで良かった。

だけどこのままじゃそれさえも辛くなりそうで
あたしは道明寺と少し距離を置く事を決めた。




いつも応援ありがとうございます♡

Beloved Days

「ねぇ、ほんとに大丈夫?
 やっぱり今からでもタマさん呼ぶ?」
「大丈夫だっつってんだろ。
 こっちは心配いらねぇから行って来い」

その自信は一体どこから来るのか…。
そんな事を思いながら玄関で2人と別れた。


『Beloved Days』


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あまい気持ち 13

「花沢類との事…ちょっと考えてみるよ。
 だから、道明寺も心配しないで?
 わざわざ会いに来てくれなくてもいいよ」

牧野がそう言った時
すぐに頷いて喜んでやれなかったその理由を
この時はまだ理解出来ていなかった。


『あまい気持ち』   第13話


テラスで過ごす事が増えたオレを不思議がる
総二郎とあきらに牧野から言われた事を伝えた。

「…へぇ。
 じゃあお前は晴れてお役御免ってわけだ」
「あいつらが付き合うのも時間の問題か」
なんて嬉しそうなこいつらの言葉に頷いた。

…それはいいんだが。

1日って…こんなに長かったか?
別に牧野と話すようになる前だって
一応 学園には顔を出していたはずだ。
今まで…オレは何をして時間を潰してた?

非常階段に行く理由がなくなり
オレは時間を持て余すようになった。


そこからさらに数日経ったある日。
あまりに暇で
別に会っちゃいけねぇわけじゃねぇんだから
ふと非常階段へと足を進めてみたが

「牧野ってさ。
 よく不器用って言われない?」
「も、もうっ!うるさいなっ
 あたしだって結構悩んだんだからねっ!?」

腹を抱えて笑う類をグーで殴る牧野が目に入り
ドアノブにかけた手が止まる。

「…だったら俺と付き合っちゃう?」
自分を殴ってくるその腕を捕まえて
類が牧野の顔を覗き込んで優しく微笑んだ。

「……」
さすがに今この扉を開けるのは
タイミングが悪すぎるだろうと踵を返した。


「…かさ。おいっ!司!」
「……あ?」

「あ?じゃねぇよ。
 何度呼んだと思ってんだ」
「司がボーっとしてんの珍しいな」
ハッと気が付けば
オレの顔を総二郎とあきらが覗き込んでいた。

「そんなにボーっとしてたか?」
そうは言ったが
どれくらいボーっとしてたのか。
なんとなく頭がまだ回ってねぇ気がした。

「あぁ。マジで寝てんのかと思ったっつの」
「体調悪ぃのか?大丈夫かよ」
本気で心配してくるこいつらに大丈夫だと伝えると
あきらが珈琲を取りに行った。

その姿を見ながら軽く体を伸ばすように
座ったままストレッチをするオレを横目に
総二郎もいつもの定位置へと腰を下ろす。

そして類の定位置となっているカウチへと視線を流すと
「そう言えば
 類の奴、牧野とはどうなってんだ?
 まさか何の報告もしねぇつもりじゃねぇだろうな?」
なんて不満そうな顔をしている。

「…あー。
 そのうち言ってくんじゃね?」
「おっ?なんだよ。
 やっぱもう付き合ってんのか、あいつら」
楽しそうに聞いてくるが
実際の所、オレだって知ってるわけじゃねぇ。

「いや、知らねぇけど。
 類も告ったみてぇだし?」

考えると言った以上は
牧野だって類と付き合う事を前向きに捉えているはずで
類の気持ちを知ったなら断る理由なんて見当たらないだろう。

だからと言って
類の性格上、わざわざ報告してくるかは微妙だが。

「…念のため聞くが
 お前はこれで本当に良かったんだな?」
そんな声に振り返ればあきらが珈琲を差し出していて
その意味がわからないままに受け取った。

「…おぅ」
頷きながら感じた違和感。

だが、その正体に思い至る前に

「そうか。ならいいんだ。
 ボーっとしたりしてるから少し気になっただけだ」
とあきらが肩を竦め腰を下ろすと

「総二郎、今日ヒマか?
 久しぶりにクラブでも行こうぜ」
なんて総二郎を誘い出す。

「構わねぇけど…マダムはいいのか?」
「…聞くな。察しろ」
バツが悪そうに顔をそらしたあきらに
ブッと吹き出した総二郎。

「ついに修羅場か!」
「察しろっつってんだろ!」
それでもなおゲラゲラと笑う総二郎に
あきらはクッションを投げつけてやがる。
そんな光景を見るとはなしに眺めながら
オレはさっきの違和感の正体を探っていた。

「だからダンナのいる相手なんて
 不毛だってあれほど言っただろうが」
「理屈で好きになるわけじゃねぇんだよ。
 好きになっちまったんだからしょうがねぇだろ」

聞いてる限りじゃそのマダムにフラれたってとこか。
そりゃそうだろう。人妻相手じゃ将来なんてねぇ。

「わかったわかった。
 今夜は失恋あきらクンにとことん付き合ってやるよ」

「はぁぁ~。
 今度はもっと若くて可愛い子探すかなぁ」
「おっ。それなら紹介してやろうか?
 この子とかどうだ?あきらのタイプじゃね?」
そう言う総二郎は
ケータイを操作しながら写真を見せる。

「バーカ。
 お前のお下がりなんて死んでもゴメンだっつの」
「そうかぁ?
 マダムと違って後腐れなくていいぞ。
 俺に言わせりゃ女絡みの修羅場こそ
 死んでもゴメンってやつだけどねぇ」

「頭で考えて恋ができりゃ苦労なんてしねぇっつの。
 駄目だってわかってても惹かれたんだから仕方ねぇだろ。
 お前にわかるか?
 旦那と仲良さそうに歩く姿を見た時のオレの気持ちがっ」
そこまで言うと
相手を思い出したのか膝を抱えてしまったあきら。


その言葉にオレの頭の中をよぎったのは
何故かさっきの類と牧野がじゃれ合っている姿で。

同時にさっきとは違い
胸にギュッと締め付けられたような痛みが走った。


「お前も暇ならたまには付き合えよ。
 あきらを慰めるためだ。
 今日は女がいるくらいで不機嫌になるなよ?」
なんてこっちを見た気がするが
音として通過するだけで気付かなかった。

「……」
「おい、司?」

「サイアクだ。…あり得ねぇ」
「…は?」
ゆっくりと立ち上がるとそのまま歩き出す。

「おいおい。
 シカトして帰るほど女がいるのが嫌かよ。
 そんなだからいつまで経ってもお子ちゃまなんだろうが」
オレの背中に総二郎が
呆れたような言葉を投げてきていたが
どうでもよくて足を止める事なくテラスを後にした。





いつも応援ありがとうございます♡

あまい気持ち 14

気付かなければ良かった…。

そう思っても もう遅くて。
ほんの少し前に自覚してしまった
自分の気持ちを完全に持て余していた。

『あまい気持ち』   第14話


邸に戻り 私室へまっすぐに足を進め
そのまま奥へと進むとベッドへと倒れ込んだ。

最初から類の好きな女だと知ってて近づいたんだ。
こんなの想定外もいいところだ。

どうすんだよ、オレ。
っつか、今さらどうにも出来ねぇだろ。

今さら何を言ったところで
オレの失恋は決定してる。
類と牧野はすでに付き合ってんだぞ?

そうだ。
こうなるように望んだのは他の誰でもねぇオレ自身で。
誰よりも2人を祝福しなければならない立場だ。

オレ達が当たり前だと思って疑わなかった常識が
あいつにとっては非常識で。
あいつの言動はいつも新鮮で近づきすぎた…。

そう後悔したところで
何もかもが遅すぎだ。

「…言えるわけねぇよ」

あれほど類を推しておいて
くっついた途端に今度は自分が惚れただなんて

たとえフラれるのは覚悟の上で
せめて気持ちを伝えるだけだとしても
牧野に言わせればそんなもの
あまりに身勝手で迷惑なだけだろう。

牧野の幸せを考えるなら
このまま黙ってダチでいるのがベストだ。

「はぁぁ…」
そう決めたそばから漏れたため息は
静かな空気に溶けていった。



ハッキリ言って
とても学園へ顔出すような気分じゃねぇが。

表面上ダチの顔をしておくなら
いきなり邸に引きこもるのも妙かと
翌日もいつも通り学園へと向かう車内で
流れる景色を眺めながら

よく考えたら牧野が
オレが登校しているかどうかなんて
気にしているかさえ怪しい事に気づき
意外と健気なタイプだったのかと
自嘲気味にツッコミを入れた。

と、その時。

学園の門の手前で
並んで歩く類と牧野の後ろ姿を見つけ

自覚してしまうとやっぱり
心臓がギュッと締め付けられて
僅かに体が反応した。

それに運転手も気付いたのか
「類様ですね。
 お声をかけられますか?」
と聞いてくる。

少し迷ったが
「…いや、いい。行ってくれ」

昨日までのオレなら…
きっと声くらいはかけたはずだ
やっと収まる所に収まったのかと
冷やかしていたかもしれない。

だが、今はまだ
あいつらの顔を見て
笑って祝福なんて出来そうにねぇ。

2人を車が追いこした時
類がうちの車だと気付いて
こっちを見た気もするが
どうせ外からは車内は見えねぇんだから
気付かなかったフリをして通り過ぎた。



オレがテラスに来てすぐ
類が今度は1人でやって来る。

「おはよ。
 さっき門の前で声かけてくれれば良かったのに」
「…いたのか?
 外なんて見てねぇから気付かねぇよ」

「途中で牧野見つけて声かけたんだけどさ、
 乗らないって言うから一緒に歩いてきたんだ」
「へぇ?
 っつか、一緒に登校とか大丈夫なのかよ?」

ランチに行っただけで絡まれたんだ。
連れ立って登校だなんてそれこそ騒ぎになる気がした。

「この間の司の牽制が効いてるみたいだよ?
 あの時に俺とも仲良いのはバレちゃってるしね」
「…ふぅん。
 ならいいけどよ」

だったらこんな所に来ねぇで
一緒にいればいいんじゃねぇかと思ったが

牧野の事だ。
類が彼氏になったところで
授業は授業だと自分の教室に行っちまったんだろう。

そんな会話をしているうちに
今度は総二郎とあきらがやって来る。

「お。なんだよ。
 2人とも早ぇんじゃん?」
なんて声をかけながら
いつもの席へと腰を下ろした。

「お前らこそ。
 昨日は遊んでたんじゃねぇのかよ」
オレには考えらんねぇが
こいつらが揃っていれば
大体が朝まではどっかの女と一緒だったはずだ。

だから今日は顔を出したとしても
昼を回ってからだと思っていた。

…ま。
正直 今類と2人きりだと
なんとなく息が詰まる気がしてたから助かったが。

「それがあきらの奴
 結構マジにヘコんじまっててよ〜。
 適当に抜けるに抜けられなかったんだわ」
と総二郎が肩を竦めて小さく息をつく。

「…あきら、何かあったの?」
昨日の会話を知らない類が首を傾げれば
総二郎がククッと笑いながら事情を説明した。

「類は何も悪くねぇのはわかってんだけど
 今幸せ絶頂なお前にだけは慰められたくねぇぞ。
 頼むからそっとしておいてくれ」
あきらが拗ねたような口調で類を睨む。

その言葉にオレも
確かにそうだ、と心の中で頷いちまった。

「ま。恋の傷は新しい恋が癒すだろ。
 またいつでも付き合ってやっから元気出せ」
あきらの肩をポンポンと叩いて

「で?類は何か言う事ねぇの?
 牧野とはどうなってんだよ?」
どうしてもそこをハッキリさせたいらしい総二郎が類を見る。

「ん?仲良くしてるよ?」
ニコッと笑ってそう答えたこいつに
また心臓を握り潰された。

だがそんな事には当然気付きもしない総二郎は

「おーおー。
 そりゃ良かったじゃねぇか」
と満足そうに笑って

「今度は司も付き合えよ」
なんて機嫌よさそうにオレにも声をかける。

平然を装いながらも
内心はボコボコにされた気分のオレは
もう反論する気力もなくて

「チッ。…わーったよ」
軽く頷いて流した。





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あまい気持ち 15

不毛な片思いなど
なかった事にしてとっとと忘れてしまえばいい。
今なら傷だってまだ浅いはずだ。

そう自分に言い聞かせ続けて
2週間ほど過ぎたが 忘れるどころか
日に日に気持ちが膨らんでいる気さえしていた。


『あまい気持ち』   第15話



あれから何度か牧野を見かけたが
声はかけられなかった。

こうなって気付いたのは
オレと牧野を繋いでいたのは類の存在で
それ以外の共通の話題なんてねぇって事だ。

だったらどう声をかければいい?


”類と付き合い始めたんだろ?良かったじゃねぇか”

おそらくこれが自然な第一声なんだろうが
オレは昔から嘘をつくのは苦手だ。
本心とは真逆の言葉を吐くオレ自身が
自然な態度でいられるとは思えねぇ。

“何かあったら相談しろよ”

もちろん牧野に何かあれば全力で助けてやるが
牧野には類がついてる。
オレに相談なんてする必要がねぇだろ。

話す事がねぇなら
牧野をダチだと思えるまで
距離を置けばいいだけの話だというのに

自分でもらしくねぇと思うほど
どう声をかけるか
ウダウダと考えちまうのは
結局は本当に言いたい事は言えなくても
オレがあいつに会いたいから。

あぁ…クソッ!
ついこの間まで何の気なしに会ってたし
ランチにだって平気で連れ出せたのに。
類と付き合い始めた今、
口実なしでは会うことも難しい
己の立ち位置が憎い。

「はぁぁ…」
ソファに深く体を預け深いため息をつく。

すると
「暇そうだな。
 じゃあ司、少し早いが行くか?」
総二郎に声をかけられ
ここがテラスでこいつらもいた事を思い出した。

「あ?どこにだよ」
「どこって遊びに行くんだよ」
ニヤリと笑うその顔だけで
どこに行くかは聞かずともわかる。

とても今そういう気分じゃねぇ。
恋の傷は新しい恋で、なんて言ってた気もするが
誰でもいいわけじゃねぇんだ。

だがあいつは
あの時のクマのぬいぐるみじゃねぇ。
奪うわけにも壊しちまうわけにもいかねぇだろ。

「…パ」
パス、そう言い切る前に
予想していたかのように言葉を被せてきた。

「パスはなしだぜ?」
「お前だって今度は付き合うっつっただろ」
その言葉にそう言えば返事が面倒で
適当に頷いたような気もすると記憶をたどる。

「決まりだな」
「たまには付き合えよ」
そう2人に肩を叩かれ
乗り気じゃねぇにしろ気分転換くらいにはなるかと
仕方なく立ち上がった。


「はぁぁ…」
その数時間後、オレはこいつらに付き合った事を
早くも後悔し ため息を吐いていた。

こいつらが呼んだのか
たまたまその辺にいた奴に声をかけたのか
それは知らねぇが 女の趣味悪すぎんだろ…。

最初に馴れ馴れしく腕に巻きついてきた女の腕を
振り払い触るなと睨みつければ
「あんっ。道明寺さん、こわ〜い」
なんてバカ丸出しな声を出して
あきらの方へと逃げて行ったきり
時々様子を窺うように
性懲りもなく媚びた視線をよこすが
それさえもシカトすればそのうち
あっちはあっちで勝手に盛り上がってやがる。


「そう怖い顔すんなって。
 彼女らだって悪気はねぇんだからよ」
しばらくするとあきらが女と離れて声をかけてきた。

悪気はなくとも
オレらに取り入ろうとする打算や下心は見え見えだ。

「なぁ、あきら。
 お前はあんなので本当に傷が癒えるのか?」
とても共感出来ねぇと小さくため息をつけば
あきらも苦笑いを浮かべた。

「ま、オレの場合は
 ちゃんと好きだっつったって
 最初から未来がある恋愛じゃねぇし。
 気晴らしに遊ぶくらいなら丁度いいんじゃね?」
「…そうかよ」

だったら未来を考えるどころか
スタートラインにも立てなかったオレの場合
この気持ちにケリがつけられるまで
どれくらいの時間が必要なのかと
そんな事を考えた、その時。

店の入り口の方が騒がしくなった。

「何だ?…って、
 おい、あれ類じゃね!?」
「…あ?」
意外な名前に視線を向ければ
そこには確かに類と…
類に手を引かれながらも落ち着かない様子の牧野。

「デートか?
 へぇ…。ちゃんと仲良くやってんだな」
そんな何気ないあきらの言葉も
しっかりとオレの胸に突き刺さって大ダメージだ。

会いたかった。
会いたかったけどよ。

よりにもよって
デートに遭遇するとかマジで何なんだよ。

不貞腐れるオレを知ってか知らずか
類はオレらを見つけるとそのままこっちへ向かってくる。

「珍しいじゃん」
「ん。あきらに聞いたらここだって言うからさ」
総二郎が声をかければ
総二郎に纏わりついていた女どもが
今度は類にも媚を売るように笑いかけていて
反吐が出そうになったが

類も類だ。
こんな所に牧野連れてくんじゃねぇよ。
デートならもっと他に場所があんだろっ。
オレだったら…こんな所じゃなくて

そう勝手に牧野とのデートを想像し始めたオレの隣で
類と総二郎は話を続けている。

「たまには誘ってくれたっていいんじゃない?」
「…は?
 いつも誘ったって興味ねぇっつーじゃん」

「そうだけどさ。
 たまには遊びたい気分の時だってあるよ」
「へ、ぇ…?」
総二郎が返事に困るのは当然だ。
類だって総二郎たちの”遊び”の意味はわかってるはずで
彼女を隣にして言うセリフじゃねぇからだ。


「私、F4の中で1番花沢さんが好きなんですぅ」
総二郎の腕に巻きついていた女が
またバカ丸出しの声を出す。

「でもこちらの可愛らしい方は
 まさか彼女ですか?だったらすごくショックです〜」
チラリと類の隣に立つ牧野を見て言うが
その顔は完全にバカにしてるようにも見える。

…マジであの女ぶっ飛ばすか?

イライラが頂点に達しようとした時

「ん?違うよ。
 残念ながらこの間フラれたとこ。
 だからまだ友達。ね?牧野?」
なんてあっさりと答えた類の言葉に

「「「はぁぁ!?」」」
オレと総二郎とあきらの声が重なった。

 



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★もうちょっと苛めようかと思ったんですけどね。
 可哀そうなんで、教えてあげました (*´艸`)ププ★
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ラブコメ風味の
ゆる~いつかつく道を
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