Memorial Tree 23

「あ~あ…
 こんなに小っちゃくなっちゃって…」

そう言って牧野は小さな苗木を
よしよしと子供をあやすように撫でた。


『Memorial Tree』   第23話


牧野と再び付き合い始めて半年。
正式に婚約を発表したのはつい先日だ。

オレとしては婚約の発表くらいはもっと早くしたかったが
それに待ったをかけたのは他でもねぇ牧野で
その理由は親父やババァに会って
ちゃんと認められたい、とそんな事だった。

そうは言うが
認めてるからオレを日本に寄こしたわけで
結果それぞれ拠点の違うオレや親父たちが
顔を合わせようとすると簡単にはいかねぇんだぞ?

親父はああ見えて自由人だし、
ババァはどこまでもビジネス優先。

それでもオレのスケジュールを握ってんのは
西田とその下に牧野なんだから
アポ取ってさっさと合わせりゃいいモンを

会いたいと言った本人は
どの隙で会いに行けというのかとツッコまずにはいらない
西田によって組まれる殺人的スケジュールを
しっかりこなせと鬼のような事を言いやがる。

そんな日々が過ぎていけばいくほど
積もり積もった疲れと焦りから
もしかしたら顔合わせだなんてただの口実で
実際はオレとの結婚をしぶってんのかと
西田もリュウもいる前で派手に口論になった事もあった。

顔合わせなんてそのうちやればいい、
すぐにでも婚約発表がしたいと迫るオレに
物事には順序があると譲らない牧野。

そんなオレ達を呆れた様子で眺めている西田とリュウ。

だが、そこに現れたのが親父とババァだった。

「おやめなさい。
 大声ではしたない。何事ですか」
「西田の言う通り、
 これじゃあフラれるのも時間の問題だな」
突然の訪問にそれまでの勢いを失くし固まるオレと牧野。

だが事情はともあれ
向こうから出向いて来たなら好都合だとすぐに気を取り直す。

「結婚っすから」
牧野の肩を抱き寄せてそう宣言すれば
「ちょっ…そんないきなり…!」
と固まっていた牧野が暴れ出して
オレの腕を振りほどくと親父とババァに頭を下げた。

そんな牧野を見る親父はすでに笑いを堪えてやがる。

「相手は彼女で間違いないか?」
「当然だろうがっ!!」
からかわれてるとわかっていても
噛みつかずにいられないオレに堪えきれずに笑う。

そしてオレ達の前へと足を進めると
「私は牧野さんと会うのは初めてだね。
 会える日を楽しみにしていたから嬉しいよ」
そう牧野に声をかければ
頭を下げていた牧野も顔を上げた。

そして
「司の気持ちは前から聞いてるが
 牧野さんはどうなんだ?本当に司でいいのかい?」

「…え?」
「は…?」
そう続けられた言葉に再び固まるオレ達。

「2人はもう高校生じゃない、立派な大人だ。
 結婚に必要なのは私達の意見より2人の意志だろう?
 父親が言うのも何だが、息子は私に似て厄介な男だ。
 おまけにうちは知っての通りこうだから。苦労はかけるよ?」

一見柔和な笑みを浮かべてはいるが
全身から放たれる威圧感ときたら半端じゃねぇし、
まるで諦めろとでも言いたげな言葉に
この期に及んで反対だとでも言いに来たのかと
オレが反発する前に
クイッとスーツの裾を引っ張って止めたのは牧野。

そしてオレを見上げてはぁぁ…と盛大なため息。

「…司さんの厄介な所も嫌な所も
 道明寺家の面倒臭さもこれまでに十分に思い知ってます。
 出来る事ならもう二度と関わりたくなかったくらいです」
その言葉に親父はほぅ、と面白そうに片眉を上げた。

「おいっ!」
何を言い出すのかと止めに入ろうと言葉を挟んだが
それさえ制しようとするこいつの視線に捕まった瞬間
オレはゾクッと背中が震えて動けなくなった。

「でも…やっぱり。
 司さんじゃないとダメなんです。
 だから今ここにいます。苦労は覚悟の上です」
まっすぐに親父を見据えて告げたのはまるで宣戦布告。

__あぁ。
こいつのこういう所がたまんねぇんだ。

時にその慎重さと優柔不断な所にイラつくが
1度腹を括っちまえば誰よりも強くて絶対に折れねぇ。

そんな事を考えながら牧野を見つめるオレが
どんな顔をしてたかは知らねぇが
牧野に少し面食らったようにジッと見ていた親父は
チラりとオレに視線を向けてから吹き出して笑いだす。

「…ククッ。噂通りのお嬢さんみたいだね。
 司が夢中になるのも納得だ。その瞳が良いね。
 試すような真似をしてすまなかったが
 それだけ肝が据わっていればこの先も安心だ」
そう言って取り出したのは
自分たちの名前を証人の欄に記入してある婚姻届。

それを受け取り
呆然としてる牧野の前に今度はババァが立つ。

「それだけの覚悟があると仰るなら
 グズグズしてないで段取りを組みなさい。
 貴方は司の婚約者である前に
 秘書でもあるのですからしっかり管理なさい」
ピシャリと戒めるように言うと
発表はともかく式はこの時期に合わせろだとか
細かく注文を付けてきた最後に

「あと、こちらは預かり物です。
 ちなみに欠席は受け入れないそうよ」
そんな言葉と共に1枚の招待状を渡して執務室を去った。

「何これ?何の招待状?」
「そもそも誰から…って、これ?」
封筒を開けて中身を確認したオレ達は顔を見合わせた。



招待状の送り主はあいつら。
日時と場所だけを記したシンプルな招待状。

そして招待状の通り
ある晴れた日、トスカーナの丘を訪れてみれば

オレ達の4本の木の中心に真新しいテーブルセット。
それは前に類が言っていたように
オレがダメにしてしまった牧野の木で作ったものだろう。

「ここのぶどう畑から醸造出来たら
 みんなでワインをあけようって決めてたんだよね」
そうニッコリと笑う類は
あくまでそのワインのお披露目のための招待状だと言うが

それはきっと違う。
これはこいつらなりのオレ達2人を祝うためのパーティで
牧野のために開いたに違いない。

…と、そこまでは良かったが
何故かオレが掘り返した所に
今度こそ、墓ではなく牧野の木を植えると言い出した。

当然ここに牧野の木があるなんて
辛抱ならねぇと反発したが

「あたしは嬉しいけど?
 せっかく用意してくれてるんだし一緒に植えようよ」
なんてのん気に答える牧野は
総二郎が結婚する時にも植えたいと類に頼んで許可を得ると
自分の木を中心から少し右へずらした所にしようと
そんな事まで言い出しかなりの乗り気だ。

そしてオレもまた
「お。いいじゃん。
 初めての共同作業ってか?」
なんて言われてしまえば
なんとなく悪い気はせずまんまの乗せられちまった。

そんなわけで
また植えられた苗木を撫でながら

「今度は掘り起こしたりしないでよ」
小さくなったとオレを責めるような視線をよこすこいつ。
「……しねぇよ」
たぶんな、とは口には出さなかったオレだが
その間が怪しいと問い詰めようとしてきた所で

「ほら。主役2人が何してんだ?ワインで乾杯しようぜ!」

そんな声に助けられ
「おぅ。行くぞ」
こいつの手を取り足を踏み出せば
「…もうっ!」
まだ納得してなさそうだが
すぐに幸せそうにクスッと笑って手を握り返してきた。


~ fin ~




いつも応援ありがとうございます♡

★長い間、ありがとうございました(*´▽`*)
  あとがきはまた近いうちにアップしま~す★

「Memorial Tree」あとがき & 独り言


Memorial Tree

「Memorial Tree」

まずは
最後までお付き合い頂きありがとうございました(*^^*)


続きを読む

素敵なお祝い頂いちゃいました♡

ども。komaです。
いつも私のくだらぬ妄想に
お付き合い頂きありがとうございます(*^^*)

今日はですね。
タイトルにもあるように
4周年のお祝いを頂いたぞ!って自慢です( •̀∀•́ ) ✧ドヤ


届けてくれたのは
いつも仲良くして下さっていて
komaも大好きなhappyendingさんです♡

今年は自分も手ぶらだったし
happyさんもお忙しそうだったから
本当にお祝いしてもらえるだなんて期待すらしてなくて…(^^;)

なので、LINE頂いた時は
ビックリしすぎてどうしていいかわからず(どうもしなくていい。笑)
ただただ溢れる幸せにニヤけるkomaを
ダンナが白い目で見てました(((*≧艸≦)ププ


そんなkomaの家庭内事情は置いといて、
早速、皆さまにも幸せのお裾分けです♡

頂いたコメントは
責任を持ってhappyさんにもお届けします♪

では、
ニヤける準備が出来た方からどーぞ♡


☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆

続きを読む

Love is best 2

★お知らせです♡
  1つ前の記事に4周年のお祝いにと
  happyさんから頂いたお話があります♡お見逃しなく♪★





「わ、ぁ…。
 これが…道明寺さんのお部屋?」
「気に入ったか?」

あたし達は付き合ってまだ数時間の恋人同士。
それなのに…いきなり同棲なんて。
ほんとにいいのかなぁ?


『Love is best 2』


牧野の両親への挨拶は
人生で一番 緊張したかもしんねぇ。

それでも無事にこうして
同棲の許可を得て、
オレのマンションに連れてきた…いや。
一緒に帰ってこれた事に、完全に浮かれている。

でもまだ油断は禁物だ。
牧野がこの部屋を気に入ってくれるかどうか…。

一緒に暮らすんだ。
今まではオレが気に入った物を置いていたが
これからは牧野の好みだって取り入れてやらなきゃだろ?

「とりあえず座れよ」
「は、はい」

オレの言葉に頷いてソファへ移動したはいいが
ほんとに座ってるか?ってくれーに
浅く腰を下ろしてる牧野はどう見てもくつろいでねぇ。

「もっとゆっくりしろよ」
「だって…
 男の人の部屋に入るのも初めてだし…。
 すごく綺麗だから汚しちゃったらと思うと…」
所在なさげに小さく俯いてポッと頬を染める。

その仕草だって可愛い。
とりあえず先に食っちまうかって程に可愛い。

でもよ…
やっぱひっかかる。

「昨日まではオレの家だったけどよ。
 今日からはお前の家でもあるんだぞ?」
「えっ…あ、そっか。そうでした」
今、思い出したみたいにまた頬を染める。

牧野に近づくと
ソファの背もたれと牧野の間に体を滑り込ませ
グイッとその体を引き寄せた。

ひゃっと小さく声をあげはしたが
大人しくオレの腕の中におさまっている。

男慣れしてない。
そんな勝手な予想はオレを喜ばせ
すっげぇ可愛いと思う……んだが。

オレが好きになった牧野は
こんな遠慮しまくってる姿じゃなくて
眩しいくらいに生き生きとした姿なんだ。

付き合った日に思う事じゃねぇかもしんねぇが
いつか喧嘩をする日も楽しみだったりする。
すっげぇつまんねぇ事で言い合いしたりしてよ、
その後仲直りしてまた笑い合いたい。

「なぁ」
「はい?」

「嫌な事は嫌だって言えばいいんだぞ?」
「え?」

「オレも言うし。まず敬語やめろ」
「うっ…でも」

「一緒に住むんだぞ、家族だろ?
 ここをお前がくつろげねぇ家にする気はねぇ」
「は、……うん」
敬語で答えかけて、言葉に詰まり
それをごまかすように腕の中でオレを見上げると
へらっと笑って頷くその破壊力ときたら…もう。

なんつーか……ダメだ。

「よしっ。寝るか」
「え?もう?」
牧野が驚くのも無理はねぇ。

まだ部屋に入って10分も経ってねぇ。
いくらなんでも展開が早すぎるよな?
自分でもそうツッコみたくもなる。

4年越しに届いた想いだ。
牧野からもらったチョコをつまみに酒でも飲んで
もう少しこのまま2人で話をしながらゆっくり過ごすつもりだった。

…でも。
4年越しだからこそ。
我慢出来ねぇ事だってあんだろ?

だが、そんな男の事情ってやつは
牧野には全くと言っていいほどに伝わってねぇと知る。

「えっと…あたしどのお部屋使えばいい?
 急な事だし このソファでも十分眠れるよ?」
「……」

別に部屋がねぇわけじゃねぇ。
主寝室の別に寝室は2つあるし
ゲストルームも3つある。

もちろんソファなんて論外だ。

でも…そうじゃねぇだろ?

「……」
「え?」
きょとんと首をかしげる牧野。

「一緒じゃねぇの?」
「え…えぇっ!?」
オレにとっちゃ一択だったが
牧野の頭の中には少しも頭になかったのか
マジで驚いてやがる。

「オレは一緒に寝るんだと思ってた」
そう言い切れば
ポッと頬を赤く染める。

「えっ…と。
 あたし寝相悪いかも…」
「かまわねぇぞ」

「寝言とか言うかも」
「んなの、寝たらわかんねぇよ」

「えっと…あとは…」
必死に寝室を別ける口実を探してるこいつの
頬にそっと手を添えた。

「オレは一緒がいい。
 …いや、一緒じゃねぇと嫌だ。
 お前がソファで寝るならオレもここで寝るぞ?」
そう言えば頬を真っ赤に染めて
困ったように視線を泳がせるこいつをじっと見つめる。

すると顔を隠すようにオレに抱きついてくる。

そして…

「…2人で寝るなら、ソファは狭いかも」
ポツリと呟いた言葉にクッと笑って
「だな」
それだけ答えると牧野を抱き上げ寝室に向かった。





いつも応援ありがとうございます♡

Get a fever! 12

「ばーか、ばーか。
 道明寺のくるくるぱー」
ムッとした表情でそう言ったかと思えば
くるくるぱーだってー、と1人でケタケタ笑う。

そんなこいつの両サイドで滋と三条が
笑いを堪えたような顔でオレの方をちらっと見た。


『Get a fever!』   第12話


あれほど飲むなと言ったのに。
ついでに飲ませるなとも言っておいたはずだ。

それでもオレが来た時にはすでにフィーバー状態で
部屋に入った途端にオレを指さし言いたい放題のこいつ。

「また今日もぶっ飛んでんなー」
「あぁ。一応言っておくが、止めたからな?
 牧野が自分でオーダーしたんだ。オレらは知らねぇぞ?」
2回目ともなれば
総二郎とあきらも慣れたのか
呆れたような顔で笑いながらオレの前にグラスを置く。

「…類は?」
部屋を見渡してみたが姿が見えない。

「あぁ。今フランスだってよ」
「ま。声かけても来ねぇんじゃね?
 この間の傷はまだ癒えてねぇだろ」
なんてゲラゲラ笑いながら言うのは

前に盛大に惚気られたからなんだろうが
今日はその時のように惚気るとも思えなかっただけに
類がいなかった事に少しだけホッとした。

「にしても司が招集かけるって珍しいな」
「何かあったか?」
ふいに真面目なツラで聞いてくるのは
オレの表情が浮かねぇからだろう。

「……。
 あったと言えばあったが…はぁぁ」
牧野の方を見て思わずため息。

「喧嘩したらしいよー」
「えぇ。
 それも原因が道明寺さんの浮気!」
そう口を挟んできたのは滋と三条。

「へぇ…?何だよそういう事か」
「お前だけはそんな事しねぇと思ってたが
 やっぱりただの男だったってわけか。で?相手は?」

これがマジな話なら
こいつらだってこんな風にニヤついて茶化したりしねぇわけで。

その勘違いの原因が
3日前に発売された雑誌の記事にあるって事も
十分に察した上で楽しんでやがる。

こいつらでさえ
一瞬で理解出来る事だっつーのに
珍しく拗ねて突っかかってくる牧野の前で
「面倒くせぇな」
ついポツリと呟いたのがあいつにとっては地雷だった。

その瞬間から牧野は仕事以外で口を聞いてくれねぇし
夜はオレが帰るまでに部屋に籠って寝てやがるし
今朝なんてオレを置いて勝手に電車で出勤しやがった。

とりつく島もねぇ態度に困り果てて
こいつらもいれば多少冷静になるかと思えば
今度はフィーバーときたもんだ。


「さぁ、司クンはどう弁解するんだろうねぇ?」
「内容によっては私たちも許しませんよ?」
「そうだよっ。司!
 つくしを傷つけた罪は重いんだからねー!」

「…っていうか話を聞ける状態なのか?あれ」

だが、逆にこれでよかったのかもしれねぇ。
フィーバーしてる今なら交渉の余地もあるはずだ。

「牧野、話合おうぜ。
 とりあえずこっち来い」
「……」
気に入らないとばかりにツーンとそっぽ向いたままの牧野。

それなら、と
足を進めて牧野のそばまで行くと
まるでガードするかのように両サイドを固めている
滋と三条にどけと視線だけで伝えれば
しぶしぶではあったが席を譲った。

牧野の隣に腰を下ろせば

「浮気オトコが何の用?」
と久しぶりにオレへと向けた言葉は不本意極まりねぇ一言。

「浮気なんてしてねぇ。するわけねぇ」
「ウソだぁ。デレデレしちゃってさー」

「デレた覚えはねぇぞ。
 っつーか、お前も秘書なんだから知ってんだろ?
 ありゃ仕事だ。やりたくてやったわけじゃねぇ。
 気に入らねぇなら断っちまえば良かっただろ」
そうは言ったがオレらの関係だって
一部の人間しか知らねぇ中で
素面のこいつが仕事に私情を挟むわけねぇのもわかってる。

「不安にさせて悪かった」
言いながら抱きしめればしばらくしてから
「ばーか」
腕の中から聞こえた声にはさっきまでの勢いはなかった。

「ばかでもくるくるぱーでもいいから機嫌直せよ」
すると今度は顔を上げてキッ睨みつけてくる。
フィーバーしてるわりに頑固じゃねぇかよ、なんて思った瞬間

「ちょっとー。
 道明寺の悪口言わないでくれる?」
不満気な顔で発せられたのはそんな言葉で。

「悪口って…お前が言ったんじゃねぇかよ」
「あたし以外が道明寺の悪口言うのは許せませーん」
プイッと顔をそむける。

「おい。可愛い事ばっか言ってんじゃねぇぞ。
 仲直りのキスしようぜ。な?」
「やーでーすぅ。
 道明寺の悪口言う口となんてちゅーしませ~ん」
キスしようと近づけたオレの顔を両手で押し返してきやがる。

「…超カッコいい上に地位も金もあってよ。
 それでも牧野だけを愛し続けて一途って…
 もしかしなくてもオレって最高じゃね?
 こんな彼氏他にいねぇよ。なぁ、牧野。お前は幸せ者だな」

「あいつ自分で言ってて恥ずかしくねぇの?」
「…っつか、もうバカらしくて見てらんねぇな。帰るか?」
そんな声も背後から聞こえたが

「えへへ~。
 そうでしょ?羨ましいでしょ?」
なんて牧野は
へらっと笑いながら頬にキスしてくるんだからこれでいい。

「あ~あ。
 つくしの機嫌直っちゃった…つまんなぁい」
「えぇ。
 今日こそ先輩を連れて帰れると思ってましたのに」
なんて滋たちが残念そうにため息をついたのをきっかけに
ぞろぞろと帰って行って2人きり。

「大体面倒くせぇって言ったのも
 アレはお前に言ったんじゃねぇぞ?」
「ん?」

「あんなのに妬いて拗ねてんだぞ?
 そんなの可愛くて仕方ねぇだろ?
 トロトロに甘やかしてやりてぇのに
 仕事休めねぇのが面倒くさかっただけだ」
「……甘やかしてくれるの?」
どこか期待したようにそわそわするこいつの瞳の奥は
オレしか知らねぇ色に光っている。

「あぁ。でも帰ってからな?
 …どうする、もう少し飲むか?今から帰るか?」
聞いておきながらこいつへと腕を伸ばすのは
返ってくる答えがわかってるから。
そうじゃねぇとしてもオレが我慢できねぇし。

そしてオレの予想通り
帰る、と飛びついてきたこいつを抱き上げ
マンションへと車を走らせた。





いつも応援ありがとうございます♡

あまい気持ち 1

★新連載でーす。
  相変わらずのマイペース更新になりますが
  よろしければ気長にお付き合いお願いします(*^^*)★




「類が悪いんだぞ!
 類がいつまでも離さないからっ」

あの日。
素直に謝れなかった事が
ずっと心の奥でしこりとなってくすぶっていた。


『あまい気持ち』   第1話


ガキん時に
類が大事にしていたテディベアが羨ましくて
奪い取ろうと引っ張り壊してしまった事があった。

すげぇ怒ってんだろうと思って覚悟してたのに
次の日には向こうから笑って挨拶をしてきたんだから
もしかしたらもう覚えてねぇのかもしんねぇが

あの日、
初めての敗北感を覚えたオレにとっては
あの事は高校3年になった今でも忘れられねぇ出来事だ。


「…かさ、おいっ。司って!」
「あ?」
いつの間にか考え込んでしまっていたのか
気が付いたら総二郎がオレの肩を叩いていた。

「どうした、ボーっとして」
「聞いてなかったのかよ?」

「あー…わり。何の話だ?」

「だからっ。
 類に女が出来たらしいって話だよ」
「…へぇ。ついに付き合いだしたのか?」

類の好きな女と言えばガキん頃から変わらず静だ。

「めでてぇが、そんな騒ぐ事か?」

ただその静はどこか
のらりくらりとかわしてるようにも見えていたが
親同士も仲が良く、繋がりも深いのだから
いずれは結婚なんて話になってもおかしくはなかった。

そんな2人が付き合ったと言われても
なるようになった、というだけの話で何の意外性もねぇ。

「それが相手が静じゃねぇから驚いてんだよ!」
「最近前にも増して付き合い悪ぃと思ったら
 類の奴…非常階段で女と会ってるらしいぞ!」

興奮した様子の2人には悪いが…

類だぞ?
そりゃ何考えてんのかわかんねぇ所はあるが
あれでわりと頑固なんだ。
そう簡単に心変わりするとも思えない。

「……あり得ねぇよ。ガセだろ」
とてもじゃねぇが信じられねぇ。

「だったらコレをどう見る?」
「あ?」
そう言って見せられたケータイの画面には類と…

「……誰だ?」
思わず首をかしげる。

類の隣で笑ってるのは見覚えのねぇ顔。
英徳の制服を着てるからこの学園の生徒なんだろうが
この学園内ではもちろん
どこかのパーティでさえ会った記憶はねぇ。

「牧野つくし。
 オレらより1つ下だから2年だな」
画面を睨みつけるオレにあきらが
調べてきたのか見せてきたデータに目を通す。

それによれば
牧野つくしはどこかの令嬢なんかじゃなくて
父親はごく普通のサラリーマンで母親はパート。

どうしてそんな奴がこの学園にいる?
第一印象はそんなとこだった。

その間もオレの隣では

「類の奴…静と何かあったのか?」
なんて心配そうなあきらに
「そうだったとしてもだ。
 コレに乗り変えるって正気じゃなくね?
 どうやって近づいたかは知らねぇが
 この女が類を誑かしたに決まってんだろ」
総二郎が不満そうに牧野の写真へ視線を落とした。

静と何かあったかどうかなんて知らねぇが
仮にもしそうだったとして
この女がその隙に付け込もうとしてるなら…。

これはあの時の借りを返すチャンスなんじゃねぇか?

オレがこの女が
本当に類に相応しいか見極めて
くだらねぇ女なら類が傷つく前にオレの手で排除してやるっ。

「…あっ。おい、どこ行くんだ司っ」
立ち上がったオレを総二郎の声が追いかけてくる。

「その牧野って奴に会ってくる」
「はぁ?」

「類を利用しようとしてるんなら許さねぇ」
「おいおい…。熱くなってるとこ悪ぃが
 いくらダチでも女に手ぇ出すのはやめとけ。
 類だってそのうち目が覚めりゃ自分でどうにかすんだろ?」

「別に今すぐ何かしようってわけじゃねぇよ。
 オレの目で見極めてやるっつってるだけだ」
それだけ答えると踵を返し
非常階段へと向かったオレの背中を見送りながら


「牧野つくしがどういう女だったとしても
 自分の女にちょっかいかけられて
 いい気はしねぇだろうから言ってんだけどねぇ…」
「司は恋した事もねぇからな。
 その辺の感情は理解出来ねぇんだろうよ」

「女で もめるとかダセェのはやだぜ、俺」
「まったくだ。だが司は
 ああ見えて結構情深い所があるからな…。
 こうなりゃ牧野つくしが
 司のお眼鏡にかなうのを祈るしかねぇな」

そんな会話をしていたらしいが
オレの耳には届いていなかった。





いつも応援ありがとうございます♡

あまい気持ち 2

バンッ!!
「わわっ!?…っと、ふぅ~。セーフ…」

総二郎たちと別れたその足で非常階段に向かい
力任せに扉を開けると同時に女の声がした。


『あまい気持ち』   第2話


声のした方を見てみれば
1番上の段に座っていたこいつの手は
大事そうに何だかわかんねぇ箱を抱えていた。

「ちょっと、花沢類っ!
 お弁当ひっくり返すとこだったじゃな…」
振り返って文句を言うこいつはオレを見て固まった。

「えっ…道明寺 司……?」
ポツリとオレの名を呼ぶこいつは
さっき写真で見た人物に間違いなさそうだ。

「てめぇが牧野つくしか」
「…ど、どうしてあたしの名前…」

「お前、ちょっと立ってみろ」
「はっ?」

「いいから早くしろよ!」
「ぎゃっ…!はいっ!」
慌てて立ち上がったこいつの全身を改めて見る。

癖のなさそうなストレートの長い黒髪は
両サイドに三つ編みで纏められている。

化粧っ気のない顔の中で
唯一 印象的なのは大きな瞳くらいだが
突然現れたオレへの戸惑いを隠す事なく
キョロキョロと落ち着きなく動いていて
何言ってんのかは聞こえねぇが口はパクパク動いていた。

制服は学園指定の物で小物も特に付けておらず
特に気になる点もねぇ。

「外見は40点…ってとこか」
「……はぁ。そうですか」
怪訝な表情を浮かべながらも
オレの評価を受け流したこいつは

「あの…もういいですか?
 あたしお弁当食べたいんですけど…」
とさっき手に持っていた箱を指さす。

オレだって弁当くらいは知ってる。
時計を確認すれば今はちょうど昼休み。
だから飯を食おうってのが理解出来ねぇんじゃねぇ。

学園にはカフェもレストランもある。
どうしてわざわざ弁当なんて持ってくる必要がある?

そんなオレの微妙な表情を読み取ったのか

「あたしはあなた達みたいに
 毎日のお昼ご飯に何千円もかけてられないんです!」
と小さくため息をつくと
まだ食っていいとも言ってねぇのに
腰を落として膝の上に弁当を広げた。

そんなこいつの手元を覗き込んでみれば
そこにあったのはオレの知る弁当なんかじゃなくて。

どれもこれも弁当箱の中にあるのは
何と呼べばいいのかわかんねぇモンばっか。

「……食えんのか、それ」
だから思わずそう呟いた。

すると
「はぁぁ…。
 ほんとあんた達って
 言う事する事いちいち同じなんだから」
なんて呆れたように小さく息をついてから

「食べれます。…あげませんけど」
と答えて弁当の中から箸で1つ掴んで口に運ぶ。

「あ?くれなんて言うわけねぇだろ」
っつか、頼まれたってゴメンだ。

「そうですか?なら良かったです。
 花沢類はちょうだいって言ったからあたしてっきり…」
安心したようにホッと息をついたこいつとは逆に
その言葉にギョッとする。

「あぁっ!?てめぇまさか
 類にこんな得体の知れねぇモン
 食わせてねぇだろうな?腹でも壊したらどうすんだよっ」
「失礼なっ。
 食べたけどお腹壊したなんて言ってなかったし
 そもそも断ったのに花沢類がしつこいからあげただけでしょ!」
フンッ!とそっぽを向いちまったこいつは
オレの存在をない物のかのようにパクパクと弁当を食べ進める。

__それもすげぇ美味そうに。

考えてみりゃ
オレの前でこんな当たり前のように
飯を食う女なんて今までいなかった。

ま。オレと飯を食う機会がある女といえば
姉ちゃんかくらいしかいねぇわけだが。

姉ちゃんは少食じゃねぇが
どっちかと言えば自分よりオレにもっと食えと勧める方だ。

だから…おそらくだが
類もこの姿を見ているうちに
こいつに興味が沸いたんじゃねぇかとなんとなく納得した。

「…っつか、
 こんな寒ぃ所でこんなの食ってねぇで
 類に食わせてもらえばいいんじゃねぇの?」
こんな訳わかんねぇ食い物でこの反応なら
レストランの料理を食わせたら
どんな顔をするのかと類は思わなかったのか?

そんなオレの素朴な疑問の答えは

「は?
 どうしてあたしが
 花沢類に食べさせてもらわなきゃいけないのよ」
なんて意味わかんねぇ言葉で。

どうして…って
付き合ってんなら、一緒に飯食うくらい…

そこまで考えて

「……お前、類と付き合ってんだよな?」
確認するように聞いてみれば

ポカン、と口を開けたまましばらく固まった。

そして…

「はぁ~?
 何を言い出すのかと思ったら、
 どうしてあたしが花沢類となんて…」
そこまで言ってから
ツボに入ったとばかりにケラケラと笑いだす。
 
付き合ってねぇのか…?

それもこいつの反応を見る限りじゃ
類に取り入ろうとしてる…って感じでもねぇ。

だが、少なくとも
ここで会っていて弁当のおかずを貰うくらいの
仲ではあるんだよな?

総二郎たちの話と実際に見たこいつとの
違和感に戸惑うオレの隣で
笑い疲れて息を整えた牧野は不思議そうに首を傾げた。






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プロフィール

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