気が付けばすぐそこに 29

「…牧野?」
インターホンの音も道明寺さんの声も
あたしの耳にはしっかりと聞こえていたんだけど

声を出す事は出来なかった。


『気が付けばすぐそこに』   第29話


スーパーで買い物を済ませた帰り道。
ずっと後ろでコツコツと足音が続いてる気がしていた。

「…道明寺さん?」
何度か振り返って声を出してみたけれど
そこには誰もいないし、出てくるわけでもない。

大体、道明寺さんだったら
今さら尾行なんてしなくても声かけてくれるだろうし…

「…気のせいだよね」
自分に言い聞かせるように頷くと
早足にマンションへと向かう。

落ち着かないままにエレベーターに乗り込むと
急いで〈閉〉のボタンを押す。
閉じる直前に隙間から覗いたエントランスには誰もいなくて

「なんだ…ちょっと自意識過剰だったかも」
ホッと息をついた。

良く考えたら道明寺さんはいつも車で移動してるんだから
あたしの後ろからコソコソついて来たりしないよね。

そんな事を考えながら
鍵を取り出しながら、ふと気付く。

…あれ?
じゃあ…今までつけられてるような気がしてたのって…
道明寺さんじゃなかった…って事?

ゾクッとした拍子に手に持っていた鍵を落としてしまって
それを追うように自然と下を向いたあたしの目に飛び込んできたのは
あたしのすぐ後ろに立っている男の人の皮靴だった。




__ピンポーン……ピンポーン。

「…牧野?」

訪ねてきたのが
道明寺さんだとわかって反応しようとしたけれど

「巻き込みたくねぇなら黙ってろ」
とナイフを向けられて
ソファの隅へと追い詰められた。

しばらくすると
道明寺さんは留守だと思ったのか帰ったみたいで。

「隣に住んでんだっけ?ほんとウゼェな」
とドアの方を睨みつけて
忌々しそうにチッと小さく舌打ちをする。

「…あ、あの。
 どうしてこんな事するんですか?……赤井さん」

「どうして?
 マジで聞いてんのか?好きだからに決まってんだろ?」
名前を呼ばれ振り向いたその顔は
普段の赤井さんとは違って醜く歪んでいた。

「…えっ。だって彼女いるんじゃ…」
「…あぁ。アレか。
 なんだよ気付かなかったか?」
そう言ってケータイを操作すると画面を見せてくる。

「あのアイコンの元の写真はコレだよ。
 なかなか上手く加工してあんだろ?」
そこに写っていたのは
いつだったか定かじゃないけれど優紀とお茶をしてるあたしだった。

「…っ!」
「俺の方が先にお前を見つけてたのに
 後からしゃしゃり出てきやがって…。
 アイツ道明寺の御曹司なんだろ?
 そりゃあ俺なんかよりアイツを選ぶ方が賢いよなぁ?」

道明寺さんが御曹司だっていうのは
間違いないのかもしれないけれど
あたしはそういう理由で好きになったわけじゃない。

言葉には出さずにキッと赤井さんを睨みつける。

「あぁ、その顔だ。
 その強気な顔がたまんねぇんだ…
 お前が総務課に来た時は何とも思ってなかったけどな
 厳しく当たれば当たるほど、跳ね返ってくるその瞳が好きだ」
そう言いながら頬に手を伸ばされた手をパシッと払う。

「フンッ。
 今さらどうしたって俺の事を好きになったりしねぇんだろ?」

「…道明寺さんがいなくても
 あたしは先輩を好きになったりはしませんっ!絶対に」
ほんとはすごく怖いけど。
負けたくなくて言いきってやる。

「…そういう顔が好きなんだけどよ。今のはムカつくな…
 どうせ好きにならねぇなら、せめて俺を忘れねぇようにしないとな?
 ……そうだなぁ。一生消えねぇ傷なんてどうだ?」
手に持っていたナイフに視線を送ってニヤりと不気味に笑った顔に
逃げようとしたけど腕を掴まれた。

「…やっ!」
ギュッと目を瞑った、その時。

__ガッシァァーンッ!!

大きな音が響いて
その音に驚いて、一瞬固まった隙に
あたしに迫っていた赤井さんの体を長い足で蹴り飛ばして

「牧野っ!!大丈夫かっ!?」

守るように腕の中に閉じ込めてくれたのは

道明寺さんだった。




いつも応援ありがとうございます♡


★…えへ。イチャラブ街道かと思いきや
  突然のサスペンス劇場でごめんちゃい d(>∇<;)ユルシテ★

気が付けばすぐそこに 30

忍び込んだベランダから
そっと中を覗いてみれば…

明かりも最小限に抑えられた薄暗い中
牧野が男に刃物を突きつけられてるのが見えた。


『気が付けばすぐそこに』   第30話


ベランダにあった植木鉢を手に取ると
躊躇うことなくガラスを叩き割り中に押し入る。

男が怯んだ隙に引きはがして牧野を抱きしめた。
「牧野っ!!大丈夫かっ!?」

「怪我ねぇか?」
「…んっ。だい、じょうぶ…」
その声もギュッとオレの服を握る手も震えていて
相当怖かっただろうと もう大丈夫だと背中をさすってやる。

しばらくそうしていると

「おいっ!何だよ今の音っ」
と壁の向こうからあきらの声が聞こえて

「うわ…なんだよコレ。
 …って司っ!危ねぇっ!!」
ベランダの仕切り板から身を乗り出し
こっちの様子を覗いた総二郎が叫んだのと
背中に痛みが走ったのは同時だった。

「…チッ」
「道明寺さんっ」
総二郎の叫び声のおかげで
咄嗟に避けてまともに食らわずに済んだが
少し切れたのかシャツに血が滲んでるのが見えた。

だが、男はなおもナイフを振り回していて
オレ1人ならこんな野郎 なんて事ねぇが
牧野を守りながらとなるとそうはいかねぇ。


「お前も俺と同類のくせにカッコつけてんじゃねぇよ!」

「コソコソ写真撮って つけ回して
 今度はそれだけじゃ足りなくなって
 自分の欲のままに手に入れたんだろっ!?」

そんな事を言い続ける男は
ナイフを振り回しながら醜い笑みを浮かべてオレを睨みつけている。


「司っ!大丈夫か!?」
ベランダの仕切り板を乗り越え
加勢に来た総二郎に牧野を預ける。

「一方的に好きになって、
 牧野の気持ちも考えずに強引に近づいたのは事実だし
 お前の言ってんのは間違っちゃいねぇんだろうけどよ。
 オレは一度だってこいつに
 こんな怖い思いさせてぇなんて思った事はねぇ…」

「オレもお前と同じストーカーか知らねぇが…
 傷つけるような真似だけは絶対にしねぇよ。
 ……それがお前とオレとの決定的な違いだっ!」 
そう言うと同時に拳を力任せに振り下ろせば

「ぐぁっ…」
男は膝から崩れて倒れた。

その1発ですでにのびていたが
それだけじゃ飽きたらず
殺してやるつもりで殴りかかるオレを止めたのは

「それ以上は牧野が怖がるからやめろっ!」
総二郎に続いて部屋に入ってきて
慌ててオレを羽交い絞めにしたあきらの声だった。


その後すぐに、類が呼んだ警察が到着し
軽く口頭で事情を説明していると
連行されていく赤井がすれ違いざまに
「………」
オレにだけ聞こえるような声でポツリと捨てゼリフを吐いて行く。


「道明寺さん…
 あの、ありがとうございました」
別で事情を聞かれていた牧野が
あきらに付き添われて戻ってくる。

「あきら…今日こいつ泊めてやって。
 お前んとこならお袋さんも妹もいるし少しは落着けるだろ?」
「あ…あぁ。
 そりゃ別に構わねぇけど。お前はどうすんだよ?」

「西田がうるせぇから一応病院行っとく」
「だったらあたしも一緒に…」
そう牧野が言いかけた言葉に被せるように

「お前はいいから休んでろ」
と髪をクシャッと撫でる。
「でも…っ」

「牧野。とりあえず今日はうちに来い。
 どっちにしろ窓も割れた状態じゃ眠れねぇだろ。
 あいつなら大丈夫だ。怪我だって大した事ねぇから」
納得のいってなさそうな牧野を
なんとか宥め車に乗せたのを見送った。




いつも応援ありがとうございます♡

気が付けばすぐそこに 31

「ヒーローでいられるのも今だけだ。
 あいつの心が他の男に向けば、次はお前がこうなる」

あの時、すれ違いざまに
耳に飛び込んできたのはそんな言葉だった。


『気が付けばすぐそこに』   第31話


嘲笑うような笑みを浮かべた男に言われた言葉は
オレの中で呪文のように何度も繰り返されて

そんな事ねぇと言い切れねぇ自分に気付いてゾッとした。

もしも…牧野が他の男のモンになったりしたら
正気を保ってられる自信なんてこれっぽっちもねぇ。

だからと言って あの男みてぇに
刃物で脅すような真似はさすがにしねぇと思うが
とりあえず相手の男はぶっ殺して
2度と誰にも見つからないように
閉じ込めて隠そうとするくらいはあるかもしんねぇ。

あいつの言うように
オレだってストーカーだって事は否定出来ねぇ以上
少なからず あいつの心に負担を強いていたんじゃねぇかと思う。

こんな事があったんだ。
オレは近くにいねぇ方がいい…。
そう考えて あれからマンションには戻らず邸に帰っていた。

牧野からは毎日のようにLINEがくる。

『おはようございます』
『怪我は大丈夫でしたか?』
『忙しいですか?』
『ちゃんと朝ご飯食べてます?』

その1つ1つが嬉しくて
同時に声が聞きたくてたまんねぇのに。

「おぅ」とか「まぁな」しか返せねぇオレに
牧野も何かを感じてはいたんだろう。

あいつから送られたメッセージに思わず固った。

『あんな迷惑かけちゃったし
 もうあたしの事は嫌いになりましたか?』

あんな事くらいで嫌いになれるなら
最初からストーカーになんてなるかよ。

それでも電話をかける事はできなくて
「それだけは絶対にねぇ」
そう返したメッセージは
すぐに既読がついて返事が返ってくる。

『それならよかったです。安心しました』

ストーカー相手に
“嫌われてなくてよかった”
なんてのん気に言ってんじゃねぇよ…

そんな事を考えながら
返ってきた文字を指でなぞった。



翌日。
近くまで来たからとあきらが顔を出す。

「マンションに1度も戻ってねぇんだってな?
 お前にも考えがあるんだろうけど…何かあったのか?」

あの男も美作の社員だったって事もあるんだろうが
あきらは次の日には
オレが割ったベランダの窓を直し、
ハウスクリーニングも入れてやって
3日後にはあきらのお袋さんたちが
泣いて止めるのも聞かずあの部屋に戻ったという。

「…あいつ、大丈夫そうか?」
「あぁ。今は一応静養兼ねて有給消化中。
 一応内緒でSPもつけようと思ったが…
 どうやらお前の方が先だったみてぇだな?」
そう話すあきらにホッと息をついて頷く。

「あんな事があったんだし今まで通り総務課ってのも
 負担かと思って希望の部署は聞いてたんだけどよ…
 昨日返事もらったよ。あいつはもう一歩前に踏み出してんぞ?
 あとはお前だ、司。牧野もお前の心配ばっかしてたぞ」

「あ?オレ?」
「怪我は大丈夫だったのか、とか
 あんな迷惑かけたから怒ってるんじゃないか、とか
 LINEの返事も素っ気ないってしょげてたぞ。
 あいつすっかりストーキングされるのに
 慣らされちまってちょっと感覚おかしくなってんじゃねぇの?」
ククッと笑うと

「ストーカーなんだろ?
 完全に置いてかれる前にしっかり追いかけろよ?」
とオレも踏み出せと肩をポンと叩いた。




いつも応援ありがとうございます♡

気が付けばすぐそこに 32

「マジでいいんだな?
 おそらく…っつーか、絶対か。後戻りは出来ねぇぞ?」
残念そうに肩を竦めながらも
頑張れと困ったように笑った美作専務。

「はいっ。お世話になりました」
あたしは笑顔で頷いて頭を下げた。


『気が付けばすぐそこに』   第32話


それはあきらがオフィスを訪れた翌朝だった。

__カシャ。

アラームとは違う音に
フ…ッと意識が浮上する。

最近聞きなれていたその音。
夢でも見てんのか、その音を聞くだけで
あいつの顔が浮かんでくるんだからオレも相当やべぇな。

あきらの言う通り
いつまでも逃げてたって何になるわけでもねぇし
今日はマンションに帰ってみるか……?

__カシャ。

「あ。ちょっと笑ってる?」

シャッター音と同時に聞こえてきた声に
瞼を上げれば

__カシャ。

「寝起きの顔ゲット♪」
なんてニコニコしてる牧野と目が合った。

何してる?

そう聞く前にこいつは
「おはようございます。
 朝食の準備できてますよ?起きて下さいね」
と、それだけ言うと慌てて踵を返して部屋を出て行った。

「は…?
 って、ちょっ…待てっ」
慌てて追いかけたが
部屋を出て左右を見渡してみてもその姿はねぇ。

「なんだい。珍しいねぇ。
 今日は自分で起きられたのかい?」
そう声をかけてきたのはタマ。

「おい。今牧野がいただろ?」
「…はて?そんな子いたかねぇ?」

「あ?ついにボケたのか?」
「寝ぼけてるのは坊っちゃんの方でございましょ。
 さぁさ。早く起きたならたまには朝食も食べて行って下さいましよ」
フォフォフォッと不気味に笑うと
結局牧野については何も答えずに去っていく。

一瞬、マジで寝ぼけてたのかと首を捻って
その場でしばらく目を閉じてさっきの光景を
頭の中でリプレイさせる。

「……いや。さっきのは絶対本物だ」
ゆっくりと瞳を開けると
もう一度右と左に視線を振り、右へと歩いて行く。

ただの勘だと言われればそれまでだが
牧野がいるような気がする方へとズンズンと足を進める。

と、突き当りの角をサッと曲がった人影を見つけ
すぐに追ったがまたそこには誰もいねぇ。

「……」

曲がった先の廊下はいくつかの部屋のドアが開いていた。

そのままゆっくり進む事数メートル。
2つほど部屋を通過して
3つ目の部屋で足を止め 一歩入ると

「…なぁ。何してんだ?」
とその扉の裏に隠れていた牧野を見つけ
今度こそ逃げられねぇように壁に両手をついて追い詰める。
「えっ…なんでっ?
 どうしてあたしのいる所が一発でわかるんですか?」

「ストーカーなめてんじゃねぇぞ?」
「…それ。威張るような事ですか?」
そう言いながらもクスクスと可笑しそうに笑う。

「で?マジで何してんだ?」
「えっと…何って言われると…
 やっぱりストーカーって事になっちゃいますかね?」

「は?」
「でも あたしは道明寺さんみたいに
 いきなりマンション買ったり出来ないので
 美作専務にここの使用人のお仕事を紹介してもらったので
 今日から住み込みで働きながら道明寺さんの事つけ回しますね」
ニコッと笑った牧野に
オレは思考が完全に停止した。




いつも応援ありがとうございます♡

★へへっ。形勢逆転ですっ(((*≧艸≦)ププ★

気が付けばすぐそこに 33

…ダメだ。
寝起きのせいか?
牧野の言ってる事が理解できねぇ。

牧野がオレをつけ回す?
オレが牧野をつけ回すの聞き間違いだよな?


『気が付けばすぐそこに』   第33話


美作専務に教えてもらった住所を頼りに
気合い十分にやってきたはいいんだけど…

「…うそ。ほんとに?」
目の前にそびえ立つ
とても個人の家とは思えない建物に息を飲む。

「使用人頭のタマさんには話通してるから
 面接と言っても形だけだ。
 志望動機は司をストーカーするためでいいぞ?」
なんて面白そうに笑っていた美作専務。

絶対ダメだよ。
そんな事 冗談でも言ったら…
あたし…警視総監さんに電話されちゃうんじゃない?

そう思った矢先に

「あんたが坊っちゃんのストーカー希望の子かい?」
と通用門を開けて出てきたお婆さんに言われちゃうし
通された部屋には道明寺さんのお父様とお母様の姿まで。

お、終わった…。
あたしこれから警察に引き渡されるんだ…。

そんな絶望感で始まった面接だったけれど

「そんなに緊張しないで頂戴?
 私達は司の好きになった女性に会いたかっただけなのよ」
「そうだよ。
 僕達の意思は婚姻届に記した通りだからね」
なんてニッコリと笑われて
面接と言うよりただお茶をしながら
出会ったきっかけなんかを聞かれるままに答えるだけの時間が終わると

「だったらつくしは
 坊っちゃん専用の使用人という事にしておくかい?
 余った時間は花嫁修業でも何でも好きな事をすればいいさね」
と使用人頭のタマさんが言った言葉にギョッとする。

だけど反論する隙もなく

「あら、タマ。冴えてるわね。
 つくしさん、そうなさい。道明寺家の嫁として
 多少はどうしても避けられない部分はありますし
 教養は身に着けておいて損はないはずよ。ねぇあなた?」
「あぁ。いい考えだね。
 司もつくしさんが邸で待ってると思えば
 仕事にもより一層力が入るってものだろう」

なんて言われて
「旦那様と奥様の許可が出たなら決まりだね」
と笑うタマさんにあたしは何も言えなかった。



「…そんなわけで。
 今日から道明寺さんのお部屋も覗き放題みたいです」
「……」

あたしをじっと見たまま固まってる道明寺さん。

…どうしよう。
さすがに引いたかな?
だって自分で言っててちょっと気持ち悪いもん。

こっそり写真撮るのは案外楽しくて
意外とストーカーの素質あるのかなぁ なんて思ってたんだけど。

でももうここ採用されちゃったし
ここクビになったらあたし無職だし…
住み込みだって言うからマンションも昨日までに引き払っちゃったし…。

「ダ、ダメだって言ったって
 警視総監さん呼ぶって脅したって出て行きませんからね?
 …どうしても追い出すって言うなら…コレ。燃やしましちゃいますから」
ピラッと一瞬広げたそれは道明寺さんから預かったままの婚姻届。
すぐに折りたたんでポケットへしまうと

「では。あたしは仕事があるのでこれで失礼します」
頭を下げてスルッと逃げ出した。

だけど少しの間をおいて
後ろから道明寺さんが追いかけてきた。

「ちょっ…!待て!
 今のもっかい見せろ!お前いつの間に記入したんだよ!」

「ぎゃあっ!道明寺さんっ。
 朝食もまだだし、お仕事の時間も迫ってます!
 あたしに構ってないで早く準備して会社行ってきて下さいっ!」

「うっせぇ!止まらねぇとクビにすんぞ」
「なっ…。道明寺さんっ!それズルいっ」
一瞬怯んだのと捕まれた腕を引かれ抱きしめられたのはほぼ同時。

「なぁ…。オレの事 怖くねぇの?
 オレだってあいつと同じストーカーなんだぞ?」
ふぅ~っと大きく息を吐きながら静かに聞くいてくる。
「…同じじゃないです。
 そばにいて欲しいのは…道明寺さんです」

そう言った瞬間にギュッと腕に力が入って
息が苦しくなって背中をトントン叩くと力を緩めてくれた。

「…それって両想いって事だよな?」
「え…う、うん?」
思わず疑問形になっちゃったのは
顔を上げたそこにあった道明寺さんの息が荒くなってたから。

「やべぇ…。超興奮する」
「うん…でもね?
 もうお仕事の時間だし、話は帰ってきてから…んっ」
落ち着いて、と両手で宥めてみたけど
キスで口を塞がれ、何も言えなくなって
やっと解放されてからも
仕事に行きたくないとゴネる道明寺さんをなんとか送り出した。


そうして始まったお邸での生活。
道明寺さんは何故か
あたしがお邸のどこにいようとすぐに見つける。

そして今日も、また

気が付けば、すぐそこに。

「牧野、ただいま」
「おかえりなさい」

大好きな彼の笑顔があった。



~ fin ~


いつも応援ありがとうございます♡

★あとがきはまたのちほど~★

「気が付けばすぐそこに」あとがき & 次回からは…

気が付けばすぐそばに



「気が付けばすぐそこに」

まずは最後までお読み頂きありがとうございました。


続きを読む

愛のかたち 1

「…にて日下部社長と会食…
 それから…で以上です。……聞いておられます?」

気が付くと
今日の予定を読み上げていた牧野が
訝しげな顔をオレに向けていた。


『愛のかたち』   第1話


「…お、おぅ。聞いてたぞ」
正直半分も聞いてなかったが
それをそのまま言えば何を言われるかわかんねぇ。

「…それならいいんですけど。
 では企画書が上がってきてますのですぐお持ちします」
ペコリと頭を下げて出て行く後姿を黙って見送る。

牧野は二か月前、
NYから帰国して日本支社長となったオレに合わせ
西田の補佐としてオレの第二秘書になった。

それまで女の秘書はNGを出していたオレは
当然反発はしたがパーティがある度に
自分の娘や孫をパートナーにと勧めてくる
親父どもをかわすためにも女性秘書がいると便利だと説得され

「だったら条件がある。
 間違っても自分が特別だとか
 勘違いしねぇ女にしろ。
 それが無理ならいっそ女に見える男でいい」
なんて言ったオレの前に現れたのが牧野だ。

この条件ならてっきり
年食ったババァだろうと思っていたが
オレより1つ年下という若さに驚いた。

こんな奴に西田の補佐なんて務まるのか?
どうしてこいつが勘違いしねぇって言いきれる?

そんな第一印象を持ったオレだが
1週間もすれば西田が牧野を選んだ事に納得していた。

決して前には出てこないが
西田の補佐として書類の整理、スケジュール管理をこなし
長年1人でやってきた西田の眉間のしわが
心なしか浅くなったような気がするほど、よく気がつく。

そして勘違いするどころか
オレに対する態度はどこをどうとっても
好意的とは言えず とにかくビジネスライク。

牧野が第二秘書になって2週間。
あいつの印象は“可愛げのねぇ女”になった。


それがさらに覆ったのが1ヶ月経ったある日の昼休み。

会食を終えて戻ってきた車の中から
社員の憩いの場として敷地内に設けてある公園に
弁当を片手にキョロキョロと辺りを見渡す牧野の姿を見つける。

誰か知り合いでも探してるのかと思ったが
どちらかというと人目を避けてるような仕草が気になって
車を降りるとオレは公園へと向かってみる事にする。

だが、公園についてみれば牧野の姿はなくて
見失ったかと諦め、踵を返したその時
茂みの中からガサガサとビニール袋の音が聞こえ
気付かれないようにそっと覗いてみた。

そこにいたのはやっぱり牧野と…数匹の猫。

「あっ!ミーさん!お久しぶりです。
 最近顔見せてくれないから心配してたんですよ?」
オレには決して見せない柔らかい笑顔で
寄ってきた猫に手を伸ばし撫でている。

……っつーか、あいつなんで猫に敬語使ってんだ?

そんなオレの疑問は解決されるはずもないまま
今度は近くにいた黒猫に話しかけ始める。

「ボス、聞いて下さいよ~。
 この間の人事でね、あたし秘書課に配属になったんです。
 それはまぁ、いいんですよ。お仕事ですからね。
 でもそこで秘書としてつく事になったのがよりにもよって…」
その先は言葉にはせず
はぁぁ…と重たいため息をつく。

その様子を見たボスと呼ばれた黒猫が
おもむろに牧野の目の前で腹を見せて寝転がる。

「えっ!お腹触っていいんですか!?
 慰めてくれるなんてっ…ありがとうございます~」

…オレの秘書になるのは慰められるような事なのかよ。

出て行って文句の1つでも言ってやろうかと思ったが
幸せそうに猫の腹を撫でる姿を見てると
どうにもそうする気になれなくて
牧野に気付かれる前にその場をあとにした。




いつも応援ありがとうございます♡

★妄想畑とっ散らかってて
  更新休み休みになるかもなんですが…
  とりあえず…まぁ。新連載スタートです♪
  まだナゾな部分も多いですが楽しんで頂けますように(*^^*)★

愛のかたち 2

オレの前ではいつも
西田なみに表情を出さない牧野。

だがそれはオレの前だけの話であって
あいつの意外な一面を知ったオレは何故か動揺していた。


『愛のかたち』   第2話


「支社長?どうかされましたか?」
執務室の手前にある秘書課に入ると同時に
先に戻っていた西田が首をかしげる。

「…いや。
 なぁ…お前、うちの公園に猫がいるの知ってたか?」
「猫…ですか?いえ、存じませんでした」

牧野のコソコソした態度を見る限り
あの猫の存在は広くは知られてねぇんだろうと
予想していた通り、西田もあの猫の事は知らねぇらしい。

「野良猫ですかね…この辺では珍しいですね」
「あぁ…」

「住み着いてるようなら
 保健所に連絡しておきます。」
「あ?」
思わず睨みつけたが
以前のオレなら迷わず頷いていたはずだ。

そもそも動物は苦手だし
いくら公園とは言え、ビルが立ち並ぶこの地域は
周りは大きな道路ばかり。

こっちから処分せずとも事故に遭う可能性は高い。

「……いや、ダメだ」
思わずそう答えたオレの脳裏には牧野の笑顔があった。

あの猫がいなくなったら
困るのはあいつであってオレではない。

…いや。やっぱ困るな。
オレの前では見せないあの笑顔をまた見たい。

そして
出来れば猫にじゃなくて自分に向けて欲しい。

そう思ってる自分に気付いて
初めての感情に戸惑いがなかったわけじゃねぇが
公園からここに来るまでずっと
牧野の事を考えてんだから否定しようがねぇ。


「…なぁ」
「はい」

「どうして第二秘書に牧野を選んだ?」
「何かございましたか?」

「…惚れた」
西田へ報告なんてする必要もねぇが
口に出した事でこの気持ちが
勘違いでも気の迷いでもねぇと確信を持っちまう。

「……。
 申し訳ございません。私の人選ミスです」
しばらく黙り込んでから
深々と頭を下げる西田はきっと勘違いしている。

「そうじゃねぇよ。
 惚れたのはオレの方だ」
「…は?」
ゆっくりと頭を上げた西田は
間違いなく長い付き合いの中で一番間抜けな顔だった。

そりゃそうだろう。
今まであれほどに女を毛嫌いしてたオレだ。

いくら西田でも驚くなと言うのは無理な話かもしんねぇ。
オレ自身驚いてねぇと言えば嘘になるしよ。

「支社長が牧野さんを…という事ですか?」
確認するように聞く西田も混乱してんだろう。
「あぁ。そう言ってんだろ。
 だからどうしてあいつを選んだのか気になんだよ」

オレがあげた条件は
“自分が特別だなんて勘違いしねぇ女”だった。

西田の仕事はいつだって完璧だ。
だから、それをクリアしてきた牧野に惚れちまった
オレの恋路は「好きだ」と伝えるだけで上手くいく気がしねぇ。

「それは…」
西田が口を開いたと同時に

「ただいま戻りました」
と牧野が戻ってくる。
その表情はやっぱり猫に向けていた時とは別人だ。

さっきまでふにゃふにゃの笑顔してたくせに。

「……?何か?」
オレと西田が固まったのを疑問に思った牧野が
訝しげな表情を浮かべる。

「…いや。
 西田、その件はまた後でいい」
「はい」
西田の答えは正直気になって仕方ねぇが
牧野がいる場で聞けるはずもなく仕方なく
オレは執務室へと入った。




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基本テイストとしては
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