気が付けばすぐそこに 5

道明寺さんに告白?されてから
1週間くらい経ったある日。

仕事の帰り道、
また背後に人の気配を感じて早足で歩いた。


『気が付けばすぐそこに』   第5話


マンションのエントランスに入ると
辺りも明るくなって少しホッとしたけれど
管理人さんも帰った後じゃ誰かがいるわけでもなく
エレベーターが降りてくるのが遅い気がして
そわそわしてしまう。

と、ふいに今通ってきたばかりの
エントランスの方からカツカツと足音が聞こえて
背中にヒヤりと汗が流れた。

階段へと逃げようか…
いやいや、でもただ誰か他の人が
帰ってきただけだったら不審なのはあたしだし。

そんな事を考えながら
振り向くに振り向けなくて
とりあえずポケットのケータイを握りしめる。

だけど

「牧野?」
聞こえた声と共に
肩に大きな手が降りてきた時には
ビックリしすぎて声をあげる事も出来なかった。

まるで石にでもなったかのように
固まったまま動けなかったあたしに
「…どうした?具合悪ぃのか?」
心配そうな声で覗き込むように前にまわってきたのは

「どう…みょうじ、さん?」
「おぅ。今帰りか?」

とりあえず知ってる人だった事に
体の力がふにゃっと抜けた。

そこにちょうど到着したエレベーター。
扉が開くと左手で扉を押さえて右手であたしの背中に手を添えて
「コケんなよ?」
なんて優しく言われるままに乗り込めば
あたしに続いて道明寺さんが乗り込んできてから気が付いた。

…道明寺さん、こんな所で何してるんだろう?

そんな疑問が浮かんだと同時に
道明寺さんあが押したのはあたしが押そうと思ってた4階のボタンで。

道明寺さんも同じ階に住んでる誰かに
偶然 用事があるんだと思い込もうにも、
最近立て続けに引っ越しが続いて
4階は一番奥のあたしの部屋以外今は誰も住んでない。

管理人さんからもリフォームの業者が入るから
少し音がするかもしれないけど、と説明を受けたけど
道明寺さんがその業者なはずがない。

「……」
「……」

チーン、とエレベーターが4階に到着すると
また自然と片手で扉を押さえながら
降りるように促される。

このまま降りていいのか。
それとも道明寺さんだけ降ろして
コレに乗って逃げるべき?

そんな事を考えてると

「降りねぇの?
 お前の部屋もここだろ?」
なんて教えた覚えもないのに
あたしの部屋がここにあると知ってるこの人は
不思議そうに首をかしげている。

「……道明寺さんは何しにこちらへ?」
答えを知りたいような知りたくないような。
それでもやっぱり聞いてみる。

「何しに…って。
 自分の家に帰ってきちゃ悪ぃか?」
「…自分の家?」

「おぅ。
 お前が住む世界が違うっつーから引っ越してきた。
 部屋があまりに狭ぇから壁ぶち抜いて広くすんのに
 ちょっと時間かかったけどな。今日からここに住むぞ。
 隣に住んでればオレの事も知ってもらえるし一石二鳥だろ?」

ポカンと開いた口が塞げないままのあたしも
お構いなしにそんな事を得意気に言ってる道明寺さん。

えっと…
これってやっぱり…。

「ストーカー…?」
口に出すつもりじゃなかったのに
思わずポロッと漏らした言葉。

「…ストーカーだと?」
少し低くなった声にヤバい、と思った。
これって逆上されて刺されたりするパターン?

だけど次に出てきた言葉は
「…まぁ現状付き合えてはいねぇし。
 その上で隠し撮りしたり付け回したり
 お前の事を調べてるって意味じゃ間違っちゃいねぇか…?
 でもいずれはお前だってオレを好きになるんだから問題ねぇよ」
なんてまさかのストーカー宣言しながら
「お。その顔も可愛いな」
とあたしに向けた道明寺さんのケータイがカシャッと鳴った。

…今、もしかしなくても写真撮られた?

「…け、けっ…」
衝撃のあまりうまく言葉が出せないあたし。

「け?……ハッ!結婚か!?
 オレと結婚する気になったか?」
なんてジャケットの胸ポケットから出したのは
“妻になる人”の欄だけが空白の婚姻届。

「違いますっ!
 警察…っ!そう、警察!呼びますよ!」
「警察?何か事件かよ?
 オレが警視総監に直接電話してやろうか?」
なんて次元が違いすぎるこの人に眩暈がして

「あ、あた…あたし
 絶対道明寺さんを好きになったりしませんから!」
それだけ言い捨てて自分の部屋へと逃げ込んだ。



 
いつも応援ありがとうございます♡

気が付けばすぐそこに 6

ヤバい。ヤバいヤバいっ!
絶対あの人ヤバい人だっっ!!

逃げ込むように入った玄関のドアを
閉めると同時にしっかりチェーンをかけた。


『気が付けばすぐそこに』   第6話


なんで教えてないのにあたしの家知ってんの?

それに隠し撮りって何?
何撮ったの!?

あ。じゃあ…

最近つけられてる気がしてたのも
やっぱり気のせいじゃなかったって事だよね?

命を狙われてるわけじゃないにしても
これはこれで身の危険を感じる。

部屋に入ると
あたしの部屋と道明寺さんの部屋を隔てる壁を
何となしに見つめる。

この壁の向こうに
あの人がこれから住むの?

…どうして?
そんなあたしの脳裏には

『お前が住む世界が違うっつーから引っ越してきた』

まるでそうするのが当たり前みたいに言った
道明寺さんの顔が浮かぶ。

ほんの1週間で
マンションの一室をリフォームして引っ越してくるなんて
それこそ世界の違いを見せつけられてる気がしないでもないけど。

あの人、どうしてそこまでしてあたしに執着するんだろう。
道明寺さんならカッコいいしモテそうだし。
相手なんていくらでもいる…よね?

やっぱりあの時、頭打ったんじゃないだろうか…。

そんな事を考えながら
「はぁぁぁ…。明日からどうしよ」
深いため息をついた。



翌朝。
いつも通りの時間にドアを開ければ
そこには道明寺さんがすでに立っていて
腕時計を確認すると

「はよ。時間通りだな」
なんてまた当たり前のように言う道明寺さんが
あたしの出社時間を知ってた事を知る。

「…おはようございます。
 えっと…何か御用ですか?」
これで回覧板でも出てくるならどんなに楽か。
そんなあり得ない事を考えてると

「送ってってやるから 車乗ってけよ」
なんて言いながらあたしの手を引く。

「いや、いいです!」
「隣のよしみってヤツだ。遠慮すんな」

「お隣だからって普通そんな事しません!」
「そうなのか?
 まぁいいじゃねぇかよ。乗ってけ」

そんな押し問答を繰り返しているうちに
見えてきたのは何の冗談かとツッコミを入れたくなるほど
このマンションには似合わないピッカピカのリムジン。

「こんな車嫌ですっ!」
「あ?好みじゃねぇ?」

「車の問題だけじゃなくて…
 道明寺さんと一緒に行く理由なんてないですから」
あたしがそう言うと急にピタッと歩みを止めた道明寺さん。

「オレがお前と一緒に行きてぇ。…それじゃダメか?」
「……え。」

ダメだと、すぐに答えられなかったのは
振り向いた道明寺さんが捨てられた仔犬みたいな顔してたから。

「車が気に入らねぇならオレが電車乗ってくか?」
そう言った途端、
リムジンのそばに立っていたSPさんがざわつき始めて
インカムで何かやりとりしてる。

…このまま電車ってなったら
あの人たちも一緒について来る…とか?

そんなの絶対ムリ!

「…どうしてもダメか?」

ダメだよ。絶対ダメ。
だってストーカー宣言するような危ない人だよ?

そんな人の車になんて乗ったら
本当に会社に着くかなんてわかったもんじゃない。
危険すぎる。

わかってるのに。

「そうか…」
ほんとに悲しそうに言うから。

「と、途中まで…なら。
 そんな車で会社の前で降りたら目立つ、し…困ります」

…うん。わかってる。
言ってから自分でも何言ってんだろうって頭を抱えたもん。

そんなあたしの隣で
道明寺さんは無邪気な顔で嬉しそうに笑っていた。



 
いつも応援ありがとうございます♡

気が付けばすぐそこに 7

車に乗ってから言っても遅いけど。

やっぱり道明寺さんが落ち込もうがどうしようが
放っておくべくだったと後悔した。


『気が付けばすぐそこに』   第7話


すぐ隣であたしを観察するように
じーっと見てる道明寺さんの視線に
気づかないフリして窓の外を見続けるあたし。

ストーカーって
もう少しコソコソしてるイメージあったんだけどな。

向こうはずっと見てるのに
こっちからは姿は見えない…みたいな?

背後に気配を感じてる時は
だから気味悪くて怖いんだと思ってたのに

昨日のストーカー宣言で
開き直ったのか何なのか知らないけれど
こんなに堂々とされると
得体の知れなさが半端じゃない。

ほんと何なのこの人…。


「なぁ、今日はあくびしねぇの?」
「は?」

「電車ん中でしてただろ」
「し、してません」

「嘘つくなよ。
 えっと……、お。あった。ほらな?」
と見せてきたケータイの画面を横目でチラッと覗いてみれば
あたしが大口あけて欠伸をしてる写真が映しだされている。

「……」
それが例の隠し撮りの写真ですか?
なんて、怖くてとても聞けたもんじゃないけれど

ぜ、全然気が付かなかった…。
いつの間に撮られてたんだろう。

「しねぇの?」
「しませんっ」

「ふぅん…。
 可愛いから生で見てみたかったんだけどよ」
なんて言いながら
他にもあるのか、指でスクロールしてる道明寺さん。

そんなにつまんなさそうに言われても。
とても欠伸なんてしてられる雰囲気じゃないでしょ。

「……写真、って。
 たくさんあるんですか?」
こんな事聞いても仕方ないんだけど
逆に聞かない方が幸せな気さえするんだけどっ。

スクロールする指が止まらないから
一体どれだけあるのか…少しだけ気になった。

「おぅ。見るか?」
とケータイをそのままあたしに渡してくるから
見てもいいのかと見上げてみればコクンと頷く。

恐る恐る画面に視線を落とせばそこには
眩暈がしそうなくらいにあたしの日常が詰まっていて
左上には“牧野”と記されてる所を見ると
どうやらあたしだけのフォルダがあるらしかった。

「…これ全部まとめて消していいですか?」
「バッ…!
 ふざけんなっ!オレの宝物なんだぞ!?」
慌ててケータイをあたしの手から抜き取って
ムッとしてる道明寺さん。


__気持ち悪い。

そう思う気持ちがないわけじゃないのに
不思議と嫌悪感がそれほど強くないのは

やっぱりストーカーって言葉が似合わない
このオーラみたいな物のなせる技なのだろうか?

大体が堂々としすぎてて
悪い事してるって気がなさそうなんだよね。

「ストーカーって犯罪だって知ってます?」
「わかってるぞ」

ほらね。当たり前みたいに答える。

「だったらもう隠し撮りはやめて下さい」
「…嫌だ」

「じゃあもう道明寺さんとは口聞きません」
そう言って体ごとプイッと顔をそむけると
背中越しでも困ってるのが伝わってくる。

「…今あるのは消さねぇぞ?」
不本意そうにポツリと呟く。
それだってホントは消して欲しいんだけど。
やっぱり強く言えない。

「んー…わかりました。
 じゃあそれは嘘ついたら全部消すって事で」
そう言うとホッとしたように笑う。

あたしはどうやら
道明寺さんの捨てられた仔犬みたいな顔と
嬉しそうな笑顔に弱いらしい。

この人ストーカーなのに…大丈夫か?あたし。



 
いつも応援ありがとうございます♡

気が付けばすぐそこに 8

「ここ空いてる?」
「あ。はい、どー…ぞ…」

ある日のお昼。
社食でよくある光景に固まったのは
声をかけてきた人のせいだ。


『気が付けばすぐそこに』   第8話


固まるあたしの周りでは
突然現れたこの人に黄色い歓声が響いていたけれど

慣れた様子でしぃーっと人差し指を口に当てて
この場をおさめてしまう。

「み、まさか専務?」
「よっ」

気安げに片手を上げると美作専務は
椅子を引いてあたしの正面の席に腰かけた。

「1人か?」
「あ、はい。少し作業がおしちゃって…」
お昼休み前になって急に先輩に頼まれた仕事を
やってた事もあって遅くなった今日は1人だった。

「へぇ。お疲れさん」
「お疲れさまです」
そう返しながらも
何の用なのかとチラりと伺えば

「あいつ、牧野のストーカーになってるってマジ?」
とどこか可笑しそうに聞かれ小さくため息をつく。

「…本人がそう言ったんですか?
 じゃあ…そうなんじゃないでしょうか?」
「ふぅん。牧野ってさ、もしかして彼氏とかいる?」

「いえ…。決まった人はいませんけど」
「じゃあどうして司と付き合わねぇの?」

「は?」
「だって、相手は司だぜ?
 まぁ…性格に多少難があるのは否定しねぇけど
 悪い奴じゃねぇし、普通ならとりあえず付き合うだろ?」

まるで付き合わないあたしがおかしいとばかりに
聞いてくる美作専務。

言いたい事はわからないでもないんだけど。

「あたしは好きでもない人と
 とりあえず付き合ったり出来ません。
 そういう女性をお探しながら他当たって下さいって
 道明寺さんにもそう伝えておいてください」
それだけ言って席を立とうとすると
慌ててあたしのトレーを片手で押さえて

「ちょ、ちょっと待てって。悪かった。
 別にそういうつもりで言ったんじゃねぇんだ。
 ただ司が女に惚れたなんて言い出したのが初めてだし
 その相手が靡かねぇってなったら興味もわくだろ?」

困ったように小さく手を合わせられたら
これ以上怒るのも悪い気がして椅子に座り直す。

「で?ストーカーってあいつ何してんの?」
「……隣に引っ越してきました」
隠し撮りとかつけられてる事とかもあるけど
とりあえず一番驚いた事を言ってみる。

「引っ越し!?牧野を引っ越しさせたんじゃなくて
 司が牧野の家の隣に引っ越してきたのか?」
「そうですけど」
驚いてる所を見ると
美作専務も引っ越しの事までは知らなかったんだろうか?

「へぇ…あいつが人に合わせるとはねぇ」
ニヤりと笑いながらそんな事を言ったかと思うと

「牧野はさ、司をどう見てるわけ?」
なんて聞いてくる。

どうって…。

「正直よくわかりません。
 でも、困惑してるのは確かです」
「ははっ。そりゃそうか」

美作専務の言うとおり
悪い人…じゃないんだと思う。

強引だし人の話聞いてない…っていうか
そもそも思考回路が理解できなくて
会話すら成立してない事もあるし。

けど、なんか憎めない人。

うん、そんな感じだ。


「なぁ、牧野」
「はい?」

「ちょっと笑ってみ?」
「は?」

「いいから」
突然何なのかと思いながらも
一応笑ってみる。

「硬ぇな…。ま、いっか」
そう言うとケータイでカシャッと写真を撮った。

「……何ですか、今の」
そう言うあたしの顔は確実に引き攣ってたはずだ。

「何か知らねぇけど
 司が牧野の写真撮って送れってうるせぇんだよ。
 それも本人に許可取れとかムチャクチャ言ってさ」
困ったように笑う美作専務。

「はっ?許可なんてしてませんよ!消して下さい!」
「いいじゃん、写真くらい。
 それにこれ送らなかったらあいつ乗り込んでくるぞ?
 そうなればオレの業務にも支障が出るし。
 牧野だって会社の中でまで追いかけまわされたくないだろ?
 ここは写真1枚で賢く手を打っとこうぜ」
なんて爽やかにウインクすると
ククッと笑いながら席を立と手をヒラヒラさせて去って行った。

〰〰 っ。

何っ?
隠し撮りダメって言ったから??

だったら堂々と撮ればいいって事なのっ!?

そういう問題じゃないでしょうがっ!
やっぱりあの人の思考回路って
どうなってるのか全く理解できないっ!



 
いつも応援ありがとうございます♡

★昨日コメントのお返事出来なくてごめんなさい💦
   今日の午前中にはしますので少々お待ちを~(´。・д人)゙★

気が付けばすぐそこに 9

総務課に戻ると
美作専務と話していた事が噂になっていたようで
何を話していたのかと同僚から質問攻めに遭ったけれど

「昼休憩は終わってるぞ。
 浮ついてないで、とっとと仕事しろよ」
いつも厳しい先輩の一言が今日は助け舟になって逃げられた。


『気が付けばすぐそこに』   第9話


ピロンッ。

デスクの隅に置いていたケータイが
LINEを告げた瞬間、手を止めた。

画面を開けば
送り主はあきらで

『今度新居に遊びに行かせろよ?』
なんて文と一緒に牧野の写真。

なんか硬ぇ気もするけど笑ってる。

ここ社食だよな?
これ何食ってんだよ。
あきらも気がきかねぇな。詳細も添えろっつーの。

クソッ。
まさかあきらの奴
こいつと飯食ったりしたんじゃねぇだろうな?

隠し撮りを禁止された時は
絶望的な気分だったが
考えてみりゃ撮るなとは言われてねぇんだ。
コソコソしてねぇで堂々と撮ればいいって事だろ?

それにこうして実際見てみれば
隠し撮りに比べて距離が近くていい。

だけど、あきらが
この距離で牧野と会話したのかと思うと腹が立つ。

……やっぱ写真は自分で撮るか。

そんな事を考えながら
画面に映る牧野の頬をスッと指で撫でた。



隣に住めば自然と接点も生まれるのかと
牧野の住んでいたマンションを買い取ったはいいが

あの部屋の狭さはマジで人が住める広さなのか?
牧野は確かにちっこくて可愛いがそれにしても狭すぎねぇ?

とてもじゃねぇがあのままじゃ無理だと
あいつの部屋以外の壁をぶち抜いて1部屋にした。
その壁だって薄くてセキュリティが心配になったくらいだ。

でもその薄い壁1つ向こうに
あいつがいると思うと悪くはねぇけど。
…っつーか、出来る事なら
あいつの部屋の壁だっていらねぇんだけど。

いくらオレがマンションのオーナーでも
それは牧野の了承を得るか、
退去を申し出ない事には出来ないと言われ仕方なく諦めた。

このオレがそこまでしてるっつーのに
肝心のあいつは最初に送ったあの朝以来
家を出る時間をバラバラにしてどうにかオレから逃げようとする。

うっかり逃げられる日もあれば
とっ捕まえて無理やり近くまで送ってく日もある。

一緒にいるだけで満たされて
そしてすぐにそれだけじゃ足りなくなってもっと欲しくなる。

もう一度
画面に視線を落とし指で撫でながら

会いてぇなぁ…

なんてしみじみ思う。



そんな日の夕方。

オレの仕事が終わるのを見計らったかのように
オフィスに揃って顔を見せたこいつらは

「マジで引っ越したのかよ」
「司がこんな普通のマンションに住むとはな」
「…ストーカーの恋が成就する確率ってどれくらいだろうね」

そのままマンションまでついてきて
好き勝手言ってやがる。

「で?お隣さんは帰ってきてんのか?」
「オレが出る時にチェックした時は
 もう退勤してたから帰ってきてる頃じゃね?」
総二郎とあきらが
牧野の部屋の方の壁を見ながらそんな会話をすれば

「ふぅん。じゃ行ってみよっか」
と類がやたら楽しそうに立ち上がって玄関へと向かう。

「はっ!?ふざけんなよ、類っ」
慌てて追おうとしたが
「いいじゃねぇかよ。
 お前が惚れた女だ。会ってみてぇんだよ、俺らも」
「そうだ。このままじゃマジでただのストーカーだぞ?
 お前に任せてらんねぇから協力してやるって言ってんだよ」
そんな事を言う総二郎とあきらに足止めをくらってるうちに
類は部屋を出ていった。




 
いつも応援ありがとうございます♡

気が付けばすぐそこに 10

……。誰?この人。

夜7時、突然鳴ったインターホン。
なんとなく道明寺さんじゃないだろうかと
そーっとスコープを覗いてみたけれど
そこにいるのは見た事もない人だった。


『気が付けばすぐそこに』   第10話


「…どちら様ですか?」
とチェーンがかかってるのを確認した上で
そっとドアを開けて隙間から覗いてみる。

あ。よく見たらイケメン?
なんて思った、その瞬間。

「あ、いた。あんた牧野でしょ?
 ねぇ、ちょっと今から出て来れない?」
とニコニコと笑ってるこの人は
こっちの質問にも答えずに変な事を言い出す。

…イケメンだけど。
この人もきっと変な人だ。

やだなぁ、もう。
治安がいい方だって言うからここにしたのに。

「…お断りします」
とりあえず関わるのはやめておこうと
扉を閉めかけたその時

「悪い、牧野。
 そいつ怪しい奴じゃねぇから」
「類に行かせたのはやっぱマズかったか」
なんて慌てた様子で出てきたのは
美作専務とまた知らない人がもう1人。

「てめぇらっ!
 勝手にオレの牧野にちょっかいかけてんじゃねぇぞっ」
3人を追うように出てきた道明寺さん。

……あ。
この人たちもしかしてF4?

学生の頃からあんまり興味なくて
名前くらいしか知らなかったけれど
周りは騒いでたし雑誌なんかでも取り上げられてたから
こうして並ばれるとなんとなく既視感がある。

「…お疲れ様です」
とりあえず美作専務に言っておく。

「あぁ、お疲れさん。
 なぁ ちょっとこっちで飲まね?
 司は変な事しねぇように責任持って見張っとくからさ」
「そーそー。
 男4人で飲んでてもつまんねぇしさ?」

「あ?オレがいつ変な事したんだよっ」
「これだけやっておいて
 自覚がない所がもうヤバいんじゃない?」
ね?と首をかしげられて
思わずコクンと頷けば道明寺さんは
本当に自覚がないのか驚いた顔をしてるから

つい、クスッと笑ってしまった。

「牧野、マジでちょっとこっち来ねぇ?」
「部屋もすげぇぞ。
 ここ以外の部屋を1つにしちまったんだから」

「…え?
 お隣1室をリフォームしたんじゃなかったんですか?」
てっきり、というか普通に考えて
隣の部屋だけのリフォームだと思ってたのに
そんな事言われたら中がどうなってるのか…ちょっと気になる。

そんなあたしの気持ちの変化を見逃さなかった美作専務。

「はい。決まりな」
ククッと笑いながら言われて
「待ってるから準備出来たら来いよ」
と隣の部屋に入って行く。


パタン、と
ドアを閉めてから

「なんか押し切られちゃったけど…大丈夫なのかな?」
なんて呟きながらも

玄関にある姿見に映った自分を見て
「さすがに…これじゃマズいか」
なんて部屋着だった事を思い出して
着替えに向かっていた。

結局、帰ってきてすぐに落としちゃった
メイクまで軽くすませてからドアを開けると

「…えっ!?」
思わずそう声を出したのは
道明寺さんが立ってたから。

「もしかしてずっと待ってました?」
「女1人で危ねぇだろ」
当たり前みたいにそう言うけど

ドアからドアの距離なんてほんの数メートルで。

2つのドアを交互に見ていると
あたしの考えを見透かしたみたいに

「距離の問題じゃねぇよ」
真面目な顔でそんな事を言うと
今度はじっとあたしの服装を確かめるように見てくる。

「えー…っと。
 一応着替えたんですけど…ラフすぎました?」
そう聞いてみれば

「いや?すげぇ可愛い。
 でも、着替えちまうんならさっきのも
 写真撮っておけばよかったかと思ってよ」
拗ねた顔で何を言うのかと思えばそんな事で。

「ほんと写真集めるの好きですね?」
なんとなく聞いただけだったのに

「違ぇよ。オレが好きなのはお前だ。
 お前の写真だから欲しいに決まってんだろ」
なんて真面目な顔で言うから何も言えなくて

固まってる間も道明寺さんが何か言いながら
撮ってたような気がしてたけど怒るのを忘れてしまった。



 
いつも応援ありがとうございます♡

気が付けばすぐそこに 11

「うわ…すごっ」

扉を開けたそこには
思わず開けたばかりの扉を閉じて
外観を確認してしまうほどに別世界が広がっていた。


『気が付けばすぐそこに』   第11話


部屋に入ってからずっと
牧野はポカンと口を開けたまま
部屋を物珍しそうに見渡している。

オレは最初に図面で
元の部屋を見ただけだったが

牧野の反応を見てると
牧野の部屋はどうなってるのか
覗いて…違う。見てみたいような気がしてくる。

図面くらいなら手に入るが
実際に生活をしてる部屋は
資料で見るのとはまた違った印象があるはずだ。

普段オレが遅い事もあるが
物音とかはしねぇ…よな。

考えれば考える程
牧野がどんな部屋でどんな風に
過ごしているのか気になって仕方ねぇ。

「…かさ、……おいっ!司!」
そんな声にハッとすれば
「何ボーっとしてんだよ。
 変な事考えてたんじゃねぇだろうな?」
なんてあきらが訝しげな顔を向けていて

さっきまでオレのそばにいたはずの牧野の姿がなくて

「牧野なら、類が部屋の案内しに行ったぞ」
なんて総二郎にニヤニヤしながら奥を指さした。

「はっ!?」
オレの部屋の案内をどうして類がするんだよっ!

慌てて2人を追えば
ちょうど寝室を見ている所に追いついた。

「ほんとどこかのホテルのスイートみたい。
 …泊まるどころか見た事もないからわかんないけど」
「そうなの?今度一緒に泊まってみる?」

なんて聞き捨てならねぇ類の言葉には
後ろから蹴りをくらわせて無言の抗議をしておく。

「痛いよ、司」
腰をさすってムッとする類はシカトして

「泊まりてぇならここに泊まればいいだろ。
 ゲストルームだってあるし、
 お前が来るなら専用にしたっていい」

…つーか、
気に入ったなら一緒に住めばいいんじゃね?

なんて牧野との生活を
一瞬想像しちまったオレがどんな顔をしてたのかは知らねぇが

「…えーっと。遠慮しておきます」
と牧野は困った顔してるし
「そういうのがヤバいって言ってるのに…。
 ストーカーの家なんか
 何されるかわかんないのに泊まるわけないじゃん」
と類にまで呆れ顔を向けられた。

「べ、別に変な意味で言ったんじゃねぇよ!」

「でも牧野が泊まるって言ったら
 部屋用意するより自分の部屋で寝ろって言うでしょ?」
「い、言わねぇよっ!」

「…ふぅん?
 じゃあ寝顔見ようとして覗いたりもしない?」
「……っ」
それは…するかもしんねぇ。

「牧野。やっぱ危険だよ。
 この部屋に泊まるのはやめときな?」
なんてケラケラ笑いながら牧野に言っていて
「だから泊まるなんて言ってませんってば」
と牧野も真っ赤になってやがる。

リビングに戻れば
あきらに促されるままにソファに座った牧野の隣に
迷わず腰を落としたオレに

「いきなり隣かよ」
「せめて声かけてから座れっつの」
なんて総二郎とあきらにため息をつかれ

「牧野、こっちくる?」
なんてすでに寝転がっていた類は
わざわざ起き上がってスペースを作ると牧野に聞いている。

なんだよ。
座る場所なんてどう考えたって一択だろ?

そう思いながらも
牧野は迷惑だったのか
類の隣に行っちまうのかとチラッと様子を見てみれば

オレの視線に気付いてこっちを見た牧野は
困ったように笑うと
「ここで大丈夫です。
 道明寺さん、確かに変な人ですけど嫌いじゃないですから」
こいつらにそう言った。




 
いつも応援ありがとうございます♡

Get a fever! 4

牧野が熱を出すと
甘えん坊になると発覚して1ヶ月。

だが元々健康が取り柄だと豪語するこいつだ。
そうそう熱なんて出すはずもなく
すっかり日常を送っていたオレたち。


『Get a fever!』   第4話



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Author:koma
管理人komaの
くだらない妄想の世界へ
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基本テイストとしては
ラブコメ風味の
ゆる~いつかつく道を
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