Wherever you are 11

道明寺は目の前にいるんだから
情報の方が間違いに決まってる。

だけど素直にそう思えないのは
道明寺家ならたとえ本人が危篤の状態だったとしても
それを隠すだけの力がある事をあたしも知ってるから。


『Wherever you are』   第11話


風呂から上がってきてみれば
牧野は誰かと電話してて
ここで再会したあの時のように
幽霊でも見るかのような顔でオレをガン見してる。

そしてテレビに流れる事故の速報を見れば
大体の状況はつかめた。

どこからか知らねぇが
事故の情報を掴まれたらしい。

クソッ…。親父の奴
何やってんだよ。マジで使えねぇな。

牧野に近寄って
耳に当ててるケータイを取り上げて
ディスプレイを見てみれば“類”の文字。

向こうからは
『…牧野?大丈夫?』
とか類の声がかすかに聞こえてきている。

「おいッ!類っ!!
 中途半端に話してんじゃねぇぞっ!」
そう怒鳴ってやれば
『…えっ!?
 もしかして司っ??そこにいるの?』
なんて類にしては珍しくマジで驚いてやがる。

「うっせぇよ。いたら悪ぃか。
 …そうだ。てめぇ、オレの許可なく
 牧野と2人きりになってんじゃねぇよ。今度覚えとけよ」
『…はぁぁ。そんなのどうでもいいけど。
 とりあえず無事って思っててもいいって事?』

「あぁ、まぁな。
 とりあえず牧野が完全に放心しちまってるから、またな」
それだけ言うと電話を切った。

「…おーい?牧野?」
顔の目の前で手をヒラヒラさせてると
ハッとしたようにオレを見上げる。

「……道明寺?あんた誰なの?」
そんな事を聞いてくるこいつは
相当混乱してるらしい。

「誰って…自分で道明寺って呼んでんだろうが。
 それとも…幽霊だとでも言えば納得すんのか?」
「……幽霊」
オレの言葉を繰り返すようにポツリと呟くと
腰でも抜かしたのかその場にヘタりと座り込むこいつ。

「おい、バカ。信じるな。んなわけあるかよ
 事故に遭ったのは間違っちゃいねぇが
 ありゃ、3週間くらい前の話で
 ここにいるのは紛れもなくオレだ。ちゃんと生きてっぞ」
牧野の視線に合わせるようにしゃがむと
髪をクシャッと撫でる。

「…でも。あぁ、あん時一瞬、死ぬなって思った。
 そしたらどうしてもお前に会いたくなってよ。
 あの時縋りついてでもお前の手を放さなければ
 もしかしたらお前が看取ってくれたのかって心底後悔した」

「…で。
 死んでから会いに来たって言うの?」
「だから死んでねぇって言ってんだろ」

「じゃあこれからNYに行って看取れって言うの?」
「そんなにオレを殺したいのか、お前は」
どうやらこいつの頭の中で
ここにいるオレは幻だとでも決めつけてるらしい。

「死んだって思った瞬間はあったけど
 …生きてんだよ、ちゃんと。ほら。」
言いながら牧野の手を取って
自分の胸に当てる。

「お前を取り戻さねぇまま死ねっかよ。ふざけんじゃねぇっつーの。
 でもあの時まではそのうち会えるとか
 いつかまたお前を取り戻すとか
 どっかで思ってたけど、それじゃ遅ぇ事もあるって思い知った」

「だから…死ぬ気でお前を取り戻しにきた」
そう言って腕の中に閉じ込めれば
やっと理解して安心したのか
すすり泣く声が聞こえてくる。

「驚かせて悪かった。
 心配すると思って黙ってたが
 こんな風にバレちまうなら
 お前が傷に気付いた時に話しておけばよかったな」
落ち着かせようと背中をポンポンと叩いてやると

バカだのアホだの、
挙げ句の果てには1回死んでこいだの。
可愛くねぇ事ばかり言いやがる。

だけど言葉とは裏腹にオレがここにいる事を確かめるように
治りかけの肋骨がまた折れちまうんじゃねぇかと思うほどの力で
ぎゅっと必死にしがみついてるこいつは

__死ぬほど可愛かった。




いつも応援ありがとうございます♡

★…あはっ。そんなわけで
  散々脅かしておいて何ですが
  結局坊っちゃんは生身のただの人間でした(笑)
  だから今回はイジワルkomaだって言ったでしょ?
  ぎゃーっ。石投げないでっ!ごめんなさーいd(>∇<;)エヘッ★


★あ。明日はサボりまーす(´。・д人)゙★

Wherever you are 12

気が付いた時には
オレはベッドの上にいて

覚えてはいないが
なんとなく…夢の中に牧野がいて笑ってた気がする。


『Wherever you are』   第12話


僅かに開いた瞼から差し込む光がまぶしい。
「ん…」
「気が付いたのか?」
そんな声に僅かに首を傾けてみれば親父の姿。

「…親父?ここは…」
「病院だ。事故に遭ったのは覚えているか?
 3週間ほど眠ってたか…。
 俺はお前の付き添いついでの検査入院だが
 これだけ長い時間お前と過ごすのはいつ以来だろうな?」
いつもと変わらない落ち着いた口調で話す親父に
ぼーっとしてた頭が自然と仕事へと切り替わる。

「そんなに眠ってたのか…。
 クソ…。だいぶロスしたじゃねぇかよ…
 とりあえず西田に電話して、スケジュール組み直させねぇと」
そう言ってケータイを探すと

「司…。お前はよくやってると思う」
なんてポツリと呟く。
「…なんだよ、急に」

「俺の自慢の息子だ」
「だからなんだよ。気持ち悪ぃな」

「俺をがっかりさせるなよ?」
その言葉に
事故ったくらいで時間をロスした事を
言ってんのかとため息をつく。

「……わかってる。
 遅れた分はきっちり取り戻すから心配すんな」
小さく舌打ちをしたオレに
親父はクスッと笑うと
「取り戻すのは仕事だけでいいのか?」
なんて事を聞いてくる。

「あ?」
「仕事はよくやってると思ってるのは嘘じゃない。
 お前がいない分をカバーするのも結構大変だからな」
そう言う親父はベッドの上には
仕事をしていたのかPCと書類が置いてある。

「お前の成長っぷりにも驚いているが
 今回、あと少し処置が遅れていたら危なかったそうだ。
 それが目が覚めた途端に
 それだけ意識がハッキリしてるお前にも結構驚いてるんだぞ?」
「…そう、なのか?」
確かにあの時、このまま死ぬのかと思った瞬間はあった。
だが、今となっては
そんな実感はなくて右手を握ったり開いたりを繰り返す。

「まさかこんなに早く回復するとは思ってもみなかったからな。
 あと2週間くらいはお前がいなくてもまわるようにすでに手を回してる。
 もちろん株価には影響のないように
 事故に遭った事もマスコミには伏せてある」
親父の言ってる意味が理解できずに首をかしげる。

「お前が重体という事実を隠すために
 本社はオレや楓がカバーして滞りなく動かしている。
 だが、お前はどうやらすでに動き回る元気まであるようだ」

「まどろっこしい言い方してねぇでハッキリ言えよ。何が言いてぇ?」
「…つまり。
 あと2週間、お前がどこで何をしてようが会社は困らない。
 わかりやすく言えば休暇って事だな。
 ほとんど休みもとってなかったんだろ?たまにはゆっくりしろ」

「はぁ?」
「ただし。ただ休暇をやるほど
 俺は甘くはない。課題はあるぞ?」
不敵に笑う親父に無意識に身構える。

「取り戻して来い」
「…何をだよ」

「ククッ…。それはお前が一番わかってるだろう?
 …うわ言でずっと彼女を呼んでたぞ。
 お前たちが別れた経緯には俺も多少責任は感じている。
 お前の不在をカバーするくらいはしたって罰は当たらんだろう」
「……」
親父の言葉を理解するまでに時間がかかったが
意識を手放す直前、
オレは確かにあいつに会いたいと強く想った。

そういう事なんだよな?
日本に行ってあいつに会って来い、と
そう言ってんだよな?

確かめるように視線を向けたオレに
「椿はすぐにでも彼女を連れて来ようとしてたが楓が止めたんだ。
 “本気で欲しいのであれば自分の力で掴みとってごらんなさい?”
 そう寝てるお前の耳元で言ったのが2日前の事だ。
 さすが母親だな。どう言えば
 お前が眠っていられなくなるかわかっていたんだろうな」
クッと笑う親父に確信を得る。

ゆっくりとベッドから起き上がり軽くストレッチをする。
肋骨を折ってたのかサポーターは着けていたが
眠ってたのが幸いしてか軽く動くくらいならどうって事ねぇ。
だったら邪魔だとサポーターも取り外して
いつものスーツではなくラフな恰好に着替えたオレ。

「おい、まさか今から行くつもりなのか?
 頭も縫ってるんだぞ。一応検査を受けてからにしたらどうだ」
「いらねぇ。
 そんな時間あんなら1秒でも早くあいつを捕まる方が先だ。
 せっかくの休暇だろ?あいつとゆっくり過ごしてぇんだよ」

「そうか。まぁお前の休暇だからな。好きにしろ。
 …ただ。これだけは言っておくぞ、司。
 俺をがっかりさせるなよ?
 惚れた女1人オトせない男に育てた覚えはないぞ?」

「チッ。
 親父に育てられた覚えなんかねぇよ」
「ククッ。それもそうか…。
 じゃあ、勝手に大きくなった息子を見守るとするか」
愉快そうに笑う親父にフッと笑うと
病室を出たその足で日本へと向かう足取りは軽かった。




いつも応援ありがとうございます♡

Wherever you are 12、5

★なくてもいいけどふと思い浮かんじゃったので
  おまけ的エピを1つ。椿お姉様視点でどうぞ♡★





「…きの」

司が事故に遭って2週間と少し。
眠り続ける合間に呟くのは彼女の名前だけ。


『Wherever you are』   12、5話


司とつくしちゃんが別れて…もう6年かしら?

「別れた女性の名前を
 うわ言で呼び続けるなんて…情けない」
私と一緒に様子を見に来たお母様は
相変わらずの無表情でそう言ってため息をつく。

だけど、司の分まで業務をこなして
普段以上に忙しいはずのお母様が
こうして病院へと通っているのは
やっぱり目を覚まさない司が心配で仕方ないからだと思う。

ほんと素直じゃないんだから。


司から2人が別れたと聞いた時は
そりゃもうショックでショックで。

だけど…
それが2人が出した答えだと言うなら
いくら姉とは言え
口を出してはいけないとそう思えたのは

つくしちゃんを
守りきれなかった自分を責めて
暗い影を落としていた司の瞳はまだ光を失ってなかったから。

2人の関係が変わってしまっても
司の心につくしちゃんはちゃんといて今も支えてくれてる。

今は無理でもきっといつの日か
つくしちゃんを迎えに行く日が来ると私はそう思えた。


「あ…。司ったら少し笑ってない?
 ふふっ。つくしちゃんの夢見てるのね、きっと」

事故の規模を考えれば
司の怪我は幸運にも軽い方だった。

だけど病院へ運び込まれた時は
頭の傷からの出血量が多くてあと少し救助が遅れていたら
どうなってたかわからなかったらしい。

目覚めさえすれば
あとはもう心配ないと主治医は言うけれど
夢の中がそんなに居心地がいいのか司はまだ目覚めない。

「……あ!
 そうだわ!つくしちゃんをここに呼びましょうよっ。
 そうすれば司も眠ってられないはずだわ!」
思い立ったら即実行!とばかりに
立ち上がる私を止めたのはお母様。

「おやめなさい。
 牧野さんにも今の生活があるのよ?
 すでに他の方と結婚なさってるかもしれないし
 そうでなくても事故の事も公表しない内から
 突然こんな姿を見せられたらショックを受けてしまうわ」

その言葉がごもっともすぎて
今、立ち上がったばかりの椅子にまた腰を落とす。

そんな私と入れ替わるように立ち上がったお母様は
司の髪に触れるか触れないかくらいにそっと撫でて

「本気で欲しいのであれば
 自分の力で掴みとってごらんなさい?」
ポツリと呟くと
そろそろ戻るわね、と病室を出て行く。

「…フッ。
 楓は本当に素直じゃないな。
 早く起きてと言えばいいものを…」
お父様はクスッと笑う。
「え?今のってそういう意味だったの?」

「あぁ…たぶんな。
 楓はあれで牧野さんを結構気に入ってたからな。
 のん気に眠りこけてる司に焦れてるんだよ…」
楓には言うなよ?とお父様がそっと出してきたのは
つくしちゃんの近況の報告書。

ざっと目を通してみれば
さっきは「もう結婚してるかも」なんて言ってたのに
まだ独身だって事もお付き合いしてる人もいないと
しっかり記されている。

ただ…お友達に連れられて
合コンには何度か行ってるみたいね。

「つくしちゃん、いいなぁ。
 合コンなんてしばらくしてないなぁ」
わざと声に出してそこだけを読んでみる。

「あ!お父様。
 この人なんて素敵じゃない?
 つくしちゃんとすっごくお似合いよ」
報告書には写真まではついていない。

お父様も一瞬、怪訝な顔をしてたけど
私が合わせるように目で合図すると
少し困ったように笑ってから

「…あ、あぁ。そうだな。
 爽やかそうな青年じゃないか」
お父様がそう言った時、
ほんのわずかだけど穏やかだった司の表情が固くなった。

「ね?どことなく“”に似てない?」
「…類君?」
また首をかしげるお父様に耳打ちでセリフを伝える。

「……言われてみれば
 ビー玉のような瞳が似てるかもしれんな」
よくわからないままにお父様そう言った瞬間、
司の眉が確かにピクッと動いた。

「そりゃあそうよね。6年だもの。
 いつまでも司なんかに拘ってないで
 新しい恋に踏み出さなきゃもったいないわ。
 そうだわ!いっその事私がいい人紹介するのもアリよね!」
立ち上がって寝てる司をトントンと軽く叩く。

「結婚式にはお姉様が腕によりをかけて
 つくしちゃんをうんと可愛い花嫁さんにしてあげるから
 あんたもいち友人としてしっかり列席しなさいよ?」
とどめとばかりに耳元で意地悪く囁くと病室をあとにした。



「……。
 うちの女どもは敵に回すと厄介そうなのばかりだな。
 おい司。俺だけじゃ手に負えんぞ…早く起きてくれないか?」
私がいなくなった病室で
苦笑いしながら司にそう言ったらしいお父様から

目覚めてすぐに日本に行ってしまったと聞いたのは
それから数日後の事だった。




いつも応援ありがとうございます♡

Wherever you are 13

調査書にあった住所に建っていたのは

昔のボロアパートに比べりゃマシだが
オートロックすらねぇ女の独り暮らしには
どうかと思う佇まいのマンションだった


『Wherever you are』   第13話


一応極秘の帰国となった今のオレにとっては
誰にチェックされるでもなく
部屋の前まで来れた事は好都合かも知れねぇが
オレじゃねぇ誰でもこうやって
部屋の前まで来れちまうセキュリティの甘さは
やっぱり心配でたまんねぇ。

あいつを取り戻したらソッコー引っ越しさせてやっからな。

そんな事を考えてから
1度大きく深呼吸をする。

__ここに牧野がいる。

ドアを開けてオレが立っていたら
あいつはどんな反応をする?

まず、驚くよな。
あのでっけぇ瞳が落ちるんじゃねぇかってほどに見開いて
オレをまじまじと見るはずだ。

その後はどうする?
笑うか、泣くか…抱きついてきたりするか?

あいつの反応を想像してクッと小さく笑ってから
インターホンを鳴らした。

……が。

待てど暮らせど出て来ねぇ。
ドアの近くの小さな窓からは明かりが漏れてるんだし
こんな時間だ。中にいるんだろ?

だったらどうして出てこねぇ?

まさか…
オレだとわかった上で居留守使ってんのか?

別れてから6年だ。
今さらだと怒るなら怒ってもいい。
戸惑うのも当然かもしれねぇが
いくらなんでもシカトはねぇだろっ!

カッとなって思わずドアノブを握ると
軽い感触でカチャ、と扉が開く。

普通に考えればありえねぇ展開に
何かあったんじゃねぇかと背中に嫌な汗をかいた。

そっと扉を完全に開けば
短い廊下を両サイドにいくつか扉があって
片方はバスルームとトイレが並んでいて確認したが誰もいなかった。
その反対側がリビングなのかテレビか何かの音が聞こえているのに
人の気配は感じねぇのが逆に不気味で思わず息を飲む。

意を決して扉を開けてみれば
テーブルの上に突っ伏している牧野を見つけて
慌てて駆け寄ったが、規則正しい寝息が聞こえて
うたた寝をしてただけだと気付いて一気に脱力だ。

隣の椅子を引いて腰かけると
頬杖をついて牧野の寝顔を眺めて、そっと指先で頬に触れた。

ついさっきまで甘い再会を想像してたのによ…
これじゃ出来の悪いホラーかサスペンスじゃねぇか。

お前って女はどうしてこう
オレの想像の斜め上をいく行動ばかりしやがるんだ。

女の独り暮らしで鍵締め忘れるとかあり得ねぇぞ、おい。
入って来たのがオレじゃなかったらどうすんだよ。
やっぱりお前は引っ越しさせるくらいじゃダメだ。
常にオレのそばに置いておかねぇと安心出来ねぇな。

それでも指先から伝わってくる温もりに
心臓が、いや細胞の全てが騒ぎ出して
閉じられた瞼の奥に隠れる
あの瞳に早く映りたいと思うんだから敵わねぇ。

起こしちまうか、
もう少し眺めてようか迷っていた、その時。

ピ――――ッ
とキッチンの方から
けたたましい音が鳴りだした。

何事かと思うと同時に
「やばっ。寝てた?」
とガバッと頭を上げた牧野は
隣に座るオレに気付く事なく
キッチンへと向かい火を止めると音も止まる。

…へぇ。
湯が沸くと音が鳴んのか。面白ぇな。

なんてどうでもいい所に感心してると
牧野は何か飲むつもりだったのかカップボードに手を伸ばす。

「オレにも珈琲淹れてくれよ」
オレに気付く気配のねぇ牧野に声をかけてみれば
ビクッと肩を揺らしたまましばらく固まってた牧野が
ゆっくりと振り向いた。

パチパチと何度も瞬きを繰り返し
まるで幽霊でも見てるような反応をする。

まぁ、出て来なかったお前が悪いっつっても
勝手に入ってきたオレにも非はあるかと
テンパるこいつに
笑いそうになるのを必死に堪えたが
堪えきれずに笑っちまったのは…まぁ、許せ。

お前と別れてから
笑いを堪えるなんて事は1度もなかったんだから。

お前がいるから
他の奴には動かねぇ感情が揺れ動く。

お前がどこにいようが
どんなに離れてようが
いつかはこの手に取り戻すつもりではいたが

それじゃダメだ。

「牧野…お前を取り戻しに来た」

いつか、なんて不確かな未来はあてにならねぇ。
オレは今すぐにでも
お前の全てが欲しいんだ。




いつも応援ありがとうございます♡

Wherever you are 14

「休暇じゃなかったのかよ!
 マジでいい加減にしろよ、親父っ」

漏れたモンはしょうがねぇと
親父に電話をしてる最中も牧野の手は離さない。


『Wherever you are』   第14話


繋がれた手を何とはなしに眺めながら
この温もりが本物で良かったとしみじみ思う。

見えちゃいけないモノが
見えるようになるのもそりゃ恐ろしいけど
本当に怖かったのはそんな事じゃなくて…

もう道明寺に会えなくなるんじゃないかって
それが何よりも怖かった。

「…牧野?」
声をかけられてハッとすれば
いつの間にか電話は終わってたのか
道明寺があたしを覗き込んでいた。

「とりあえず飯食ったら
 日本支社に行って来る」
「あ…うん。すぐ準備するね」
こんな時間から仕事なのかと時計をチラっと見つつ
途中だった配膳を済ませると2人で席についた。


食べ終わってお皿を片づけ始めた頃
「…あ。そうだ。
 お前も一緒に来るか?」
なんて突然聞いてくる道明寺。

「へっ!?」
「寂しいって顔に書いてあんぞ」
ニヤッと笑う顔に顔が熱くなるのが自分でもわかる。

「なっ…。仕事でしょ?いいよっ」
「休暇中なんだから仕事じゃねぇよ。
 ただ、情報がデマだって事だけは示しておかねぇと
 株価に影響が出ちまうから、顔出しておくだけだ…それに、」
そこまで言いかけて口ごもるこいつ。

「それに?何よ…」
「…いや?別に何でもねぇよ」
視線をそらすこいつは明らかに怪しい。

「言いなさいよっ」
「……」

「ちょっと!」
「…離れたくねぇなって思っただけだ」

「は?」
「せっかくお前を取り戻したんだぞ?
 一緒にいてぇと思って何が悪ぃんだよ」

「……」
「お前はそうじゃねぇの?」

ほんのついさっきまで
からかってニヤニヤしてたくせに
いきなり拗ねた顔するんだからほんとズルい。

それにこういう時の道明寺が
驚くほどしつこいのもあたしは知っている。

「なぁ…。お前は違ぇの?」
「…別に、そういうわけじゃ…ないけど」

「けど?けど、なんだよ?」
「なっ…なんでもいいでしょっ」

「よかねーよ。
 オレは今すぐお前の口から
 2度と離れたくないって聞きてぇんだよ」
「そ、そんな事…」

「…ねぇの?」
「〰〰 っ。
 もうっ!好きだって言ったでしょ!
 一緒にいたいに決まってるじゃないっ!
 でも仕事は仕事でしょ?
 バカみたいな事言ってないで早く支度しなさいよ」
やけくそとも取れるあたしの言葉。

それでも目の前のこの男は
「いいじゃねぇかよ。
 こっちは休暇中に呼び出しくらってんだ。
 恋人がついて来たくらいで文句なんて言わせねぇよ」
なんて嬉しそうに笑うと
自分とあたしの上着を手に取って

「ほら、一緒に行こうぜ?」
と手を差し出してくる。

仕事ってわかってて
のこのこついて行くなんてあり得ない。

そう思うのに。
こんなの絶対ダメなのに。

差し出された大きな手を
払いのける気にはどうしてもなれなくて

「……あたしは車で待ってるからね」
小さくため息をついて手を取った。




いつも応援ありがとうございます♡

★ほんとはこの辺でぶった切ろうと思ってたんですが
  糖分足りないみたいなので、も少しだけ続けます(笑)★

独り言。

ども。
komaです♪


いつも私のくだらぬ妄想に
お付き合い頂きありがとうございます(*^^*)



続きを読む

Wherever you are 15

「…西田のヤロウ。
 後で絶対ぶん殴ってやっからな」

そんな物騒な事を口走ってる道明寺は
車の中だというのに何枚もの書類にサインをしている。


『Wherever you are』   第15話


迎えの車に乗り込んだ途端、
オレの目に飛び込んできたのは
何の冗談だと言いたくなるような書類の束。

いつの間にあいつまで
日本に来てたのかは知らねぇが
こんな真似をする奴はオレは1人しか知らねぇ。

それでもため息1つで手をつけちまうのは
この6年、牧野の事を考えないように
仕事に没頭してきたオレが
身につけてしまった性みてぇなモンか。

舌打ちをしながらも
目を通して処理を終えた分を脇に置けば

「えと…。何か出来る事ある?」
なんて牧野が遠慮がちに聞いてくる。

「あ?」
「いや…かえって邪魔だとか
 あたしが触らない方がいいとかだったら
 大人しくしとくけど…何か手伝えるかな…って?」
そう言うこいつに口角があがる。

「いや?すげぇ助かる。
 じゃあ、オレがあげた順番どおりに
 こっちの書類をこのファイルにとじてってくれるか?」
「うん、わかった」
オレの指示に頷くと
書類を丁寧に拾って1枚1枚とじていく。

それを横目で見てるだけで
休暇を邪魔されたイラつきもおさまってんだから
オレも相当イカれてる。

そのあとも
「わり、そっちに入ってるハンコ取ってくれ」
「はい」

「これは修正あるからふせん貼ってから、そっちな」
「はい」

なんてやりとりを繰り返して
もうすぐ日本支社に着くといった所で
やっと最後の書類に手を伸ばした。

内容を確認してサインをすると
書類とペンを牧野に渡す。

「ここと…あとここだな。お前のサイン入れといて」
「はい」

さっきまでオレの指示に従って動いていたせいか
言われるがままにサインをするこいつ。

「出来たよ…って、あれ?
 どうしてあたしのサインなんかいるわけ?」
サインしてから牧野が首をかしげて
手にしている書類に視線を落としたのと

運転手がドアを開けたのはほぼ同時。

「サンキュ。助かった」
スッと牧野の手から書類を抜き取って
ファイルを手にすると車を降りてみれば

「ちょっと!今の書類は何よ?」
オレを追うようについて来る牧野。

「なんだ?
 お前は車で待ってるんじゃなかったのか?」
「はぐらかすなっ。コラッ!
 いいからその書類見せなさいよっ」
奪い取ろうと伸ばしてくるこいつの腕を避けながら
エントランスに入った所で

「「「司っ!!」」」
そんな声が聞こえて
牧野と2人声のした方を振り向いてみれば
そこにはあいつらが揃っていた。

「おぅ。早ぇな」

「おぅ、じゃねぇよっ」
「こっち来てたんなら連絡くらいよこせっ」
「ほんとに人騒がせなんだから」
口々に言いながらコツンと肩にパンチしてくる。

「一応極秘の帰国だったんだよ。
 まぁ、あとでな。
 お前らここにいるって事は暇だろ?こいつの守り頼むわ」
話してる間もオレの手から書類を抜き取ろうとしていた
牧野の背中をポンと押す。

「ちょっ…!」
バランスを崩してよろけた所を
類が受け止める。

「てめっ!触ってんじゃねぇよ」
「……押したのも、守り頼むって言ったのも司じゃん」
呆れたようにため息をつく。

「ほらよ。これ頼まれてたやつな。
 やっと連絡してきたかと思えば仕事だからな
 人使いが荒ぇんだよ。いい加減にしろっつーの」
と今度はあきらが息をつきながら封筒を渡してくる。
「おぅ。サンキュ」
その封筒を受け取ったところで

「司様、お休みのところ申し訳ありません」
と西田がやってくる。

「チッ…。
 類っ!必要以上に近づくんじゃねぇぞ!
 あきら!総二郎!ちゃんと見張っとけよ!」
舌打ちをしながら西田と一緒にエレベーターに乗り
扉が閉まる直前に

「相変わらずかよ」
とか言いながらため息をつくあいつらの隣で
「ちょっと!書類っっ!!」
と牧野がすげー剣幕で怒鳴っていた。




いつも応援ありがとうございます♡

★バレバレかもしれないけど
  次回まで引っ張りまーす(* ̄∇ ̄*)テヘ★

Wherever you are 16

マスコミに文書を出したり
来たついでに雑務を片づけたりしてるうちに

解放された時には22時を回っていた。


『Wherever you are』   第16話


牧野とあいつらはメープルに移動したらしく
オレもそっちへと向かえば

いつも使っていたBARの店内には
知らねぇ女と楽しげに話してやがる
総二郎とあきらの姿を見つける。

「………」
無言でその光景を睨みつけるオレの視線に
先に気付いたのはあきら。

総二郎の肩を叩いて顎をしゃくって
オレの存在を総二郎にも伝える。

「思ってたより早かったな?」
「揃ったところで乾杯と行くか」
女どもに別れを告げて奥のVIPルームへと歩いて行く。

「…おい。
 あいつと類がこの中で2人きりって事はねぇよな?」
「いやぁ…さっきまで
 あいつらもこっちにいたんだけど…なっ?」
「あぁ…いつの間に移動したんだろうな?」
なんて苦笑いするこいつらに蹴りを1発ずつ食らわせる。

見張っとけって言っただろうがっ!

クソッ…。
こんな事ならやっぱ牧野も連れて行けばよかった。

舌打ちをしながら扉を開ければ
案の定仲良くソファに並んで座る2人の姿が目に入る。

「目の前にいるのに
 NYで重体とか言われて、ほんと怖かったんだからねっ」
「ごめんごめん。
 まさか牧野の所にいるとは思わなくってさ」
なんて牧野の頭をポンポンと撫でる類の腕を払いのける。

「痛いよ、司」
「あ。おつかれ」
オレの怒りも完全スルーで
きょとんとした顔を向ける2人がムカつく。

「てめぇっ。オレの許可なく
 牧野と2人きりになんじゃねぇって電話でも言っただろうがっ」
言いながら膝蹴りをすれば

「だから痛いってば、もう。
 それに頼んだのは司でしょ?」
「今のは昼間の分だっ」

「偶然見かけたら声くらいかけるよ」
「オレだって偶然会った事ねぇのに
 お前が偶然会うとかムカつくだろうがっ」

「……。
 なんなのそのムチャクチャなやつあたり」
わざとらしいほどに深いため息をついた類の隣から

「そんな事より道明寺!
 あの書類何なのよっ?何企んでんのっ」
今度は牧野が不機嫌な顔を向ける。

「そんな事って何だよ。
 自分の女が他の男と2人きりで面白ぇわけねぇだろ」
「3人は信用してるからいいって言ったじゃん」

「それとこれとは話が別だな」
「意味わかんないっ」

「ま…まぁまぁっ。
 そんくらいにしとけよ、お前ら」
「そうだぞ。
 せっかくより戻したんなら仲良くしろっつの」
ヒートアップしそうなオレらを見て
止めに入るあきらと総二郎。

「…あっ。そうだ。
 だからあの書類何なの?いい加減白状しなさいよっ」
思い出したように
キッと睨みつけてくるこいつに
息を小さくついて答えてやる。

「雇用契約書だ」
「は?」

「お前、来月からうちの社員な」
ビシッと指さして言ってやれば

「…はぁっ!?」
とでっけぇ瞳をこれでもかと見開いてるこいつの隣で

「ククッ。どうせそんなとこだと思った」
「俺は婚姻届かと思ってたぞ」
「おい総二郎。さすがにそりゃ犯罪だろ。
 まぁ、司ならやりかねねぇのはあるけどな」
可笑しそうに笑うこいつらに

ついでに婚姻届も用意すりゃよかったかと
少しだけ後悔した。




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