残り物には福がある 12

「おはようございます。
 …つくし様じゃなくてすみませんねぇ」

ニヤニヤした顔で
オレを起こしに来たタマを睨みつけた。


『残り物には福がある』   第12話


ある朝。
いつもされてるマッサージとは違い
肩を叩かれる感触に目を開けたら
そこには妖怪…じゃねぇ、タマの顔のどアップがあった。

「……あいつは?」
覚醒しきらない、ぼーっとした頭で聞けば
「つくし様は今日より1週間ほどお留守です。
 お仕事の出張とお家の都合でパーティに出られるそうで」
そう言うタマ。

「…出張?んな事言ってなかったぞ」
あいつと顔を合わせるのなんて
朝のこの時間くらいなもんで
何かどうでもいい事はべらべら喋ってた気がするが
少なくとも今日から邸を空けるとは聞いた覚えがない。

「こうして朝から不機嫌な坊っちゃんの
 相手をするのは嫌だったんでねぇ
 事前に伝えておくように頼みましたけどね…」

『えぇ~?まさかぁ。
 むしろいないって聞いて喜ぶんじゃないですか?』

「…なんてケラケラ笑ってたよ。
 ほんと面白い子だね、あの子は」
そう牧野がいない経緯をさらっと説明すると

「朝食はちゃんと食べて下さいましよ。
 つくし様から食べさせるように頼まれてますからね。
 あとで叱られるのはゴメンだよ」
そう告げて部屋を出て行く。


「……」
まぁ、確かにあいつがいねぇほうが楽っちゃ楽だ。

干渉するなと最初に言ったにも関わらず
いくらあいつの意思じゃねぇって言っても
気がつきゃオレの寝室にまで出入りしてる状態。

時計を見てみれば
あいつがいつも起こしにくる時間で。

それはオレを起こすのに時間がかかるとか
朝飯はゆっくりしっかり食うべきだとか
グダグダと文句を垂れて
オレが指定してた時間より30分早い時間。

「…明日からはいつも通りでいいって言わねーとな」
なんてため息交じりに言いながらも
習慣になっちまってるのか腹が減ってる気がしてダイニングに向かう。


「おはようございます」
使用人の言葉に返事をするでもなく席につけば
あいつ程じゃねぇにしても
以前のオレなら見るだけで
不機嫌になってたであろう量の朝食が並んでいる。

それでも
スープから手を付けちまうのも
あいつのもたらした影響か。

あいつが来る前は
朝食なんて珈琲があれば十分で
軽食も一応用意されてはいたがそれに手を付けた事はない。

適当に食ってから席を立てば
「おや、もういいのかい?」
とタマがテーブルの上を見ながら言う。

「…食った方だろ」
「つくし様が来る前に比べりゃね。
 でも昨日に比べりゃ、全然じゃないかい…まぁいいさね」
その言葉には返事をする事もなくそのままダイニングを出た。

タマに言われたからじゃねぇが
そういや昨日はもう少し食ったか、と思い返せば

「それ、まだ残ってるでしょ!」
「バランス悪いなぁ、もう。
 子供じゃないんだから好き嫌いせず食べなさいよ」

なんてオレの皿を見て
口うるさく文句を言ってくるあいつが浮かんで
食ってたというより
食わされてただけじゃねぇかと息をつく。

「…一週間っつったか?
 やっと静かに過ごせるじゃねぇか」
と独りごちた。



 
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残り物には福がある 13

「たまには飲もうぜ」
あきらから誘いを受けて

仕事終わりに合流してみれば
そこには総二郎の姿もあった。


『残り物には福がある』   第13話


ソファに体を沈めると同時に
「いつものでいいか?」
あきらがオーダーを通すのはいつもの事。

「あぁ」
と短く答えれば

「聞いたぜ、司。
 牧野と見合いしたんだってな?」
「それも同居中って
 いつの間にそんなおもしれー話になってたんだよ」
なんてニヤっと笑う2人に
今日誘われた理由を知る。

誰から聞いたと聞きかけて
「……桜子か」
とあきらの顔を見て言えば
「そういうこった」
と頷いた。

「だったら、
 別におもしれー話じゃねぇのも聞いてんだろうが」
「まぁなー。
 でもお前が私室に女入れたのって初めてじゃねぇ?」
総二郎はニヤニヤした顔がしまらねぇ。

「タマが自分の手に負えねぇからって
 オレに押し付けやがっただけだろうが」
実際その通りだ。

一応ババァから頼まれている客人という立場上
強く言えねぇからとオレに押し付けたせいでこうなった。

「お前が本気で拒否すりゃ
 それこそ、タマさんだって無理は通さねぇだろ?」
「そうだ。なんだかんだ
 受け入れてるお前に驚いてんだよ、オレらは」

「あ?」
何が言いてぇと眉をしかめる。

「それによ…桜子が
 お前らがもしかしたらもしかするなんて言うからさ」
ククッと笑うあきらを
「……今度殺していいか?」
睨みつければ
「それは困るな」
とまた笑う。

「…ま、それはさておき。
 実際、牧野もおもしれー奴だよな」
総二郎が言えば
「あぁ、それによ。
 どこで知り合ったか知らねぇけど
 あの類がオレら以外とつるんでるのも珍しいしな」
あきらもオレの睨みに気にするでもなく話を続けている。

…まぁ、オレが本気でキレてるわけじゃねぇのも
付き合いの長いこいつらにはわかってんだろう。

「…そういや、類は?」
類がいねぇのは別に珍しい事じゃねぇが
名前が出たついでに聞いてみる。

「あー。声はかけたけどな。今フランスらしいわ」
「…へぇ」
聞いたからと言って
特に興味があるわけじゃねぇし
最近じゃ4人全員が日本にいる方が珍しい。

「司は?しばらくこっちか?」
「あぁ…今んとこはな」
その中でも一番あちこち飛び回って
こいつらにも「捕まらねぇ」と度々愚痴られてたのはオレだ。

それが最近…っつーかあの見合いの後から
狙ったように出張すらねぇのもどうせババァの仕業なんだろう。

「そのおかげか?
 前より顔色もよくなってねぇ?」
とオレの不眠を知るあきらはホッとしたように息をつく。

その言葉に
オレの頭の中にふと浮かんだあいつ。

だがそれを口にすれば
またこいつらに余計な詮索をされると

「…かもな」
とだけ答えてグラスに手を伸ばした。



 
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残り物には福がある 14

「お休みの所失礼致します。
 まもなく到着でございますのでご準備を」

そう声をかけられて体を伸ばしながら
窓の外を見れば、久しぶりの景色が広がっていた。


『残り物には福がある』   第14話


タラップを降りた所で
見知った顔を見つけて駆け寄る。

「類っ!わざわざ迎えにきてくれたの?
 パーティは明日の夜でしょ?別によかったのに」
「ん。これ口実にして仕事抜けてきた」
ふわわ…と欠伸をしながら言う類。

「…ちょっと喜んで損した」
頬を膨らませて小さく睨みつけた所で
「お腹空いてる?ご飯行かない?」
と本人はどこ吹く風でマイペースに行動を始める。

「…仕事戻らなくてもいいの?」
「牧野の接待って事にしとく」
とニコッと笑う類は
まだあたしを理由に仕事をサボるつもりらしい。

「…ったく。田村さんも大変だね」
秘書の田村さんの困った顔を思い浮かべながらも
飛行機では寝てたからお腹はすいてたし
1人で食べるのも寂しいかと、

「美味しくなかったから、
 田村さんにサボってたって言いつけるんだからね?」
クスッと笑って2人並んで歩き出した。




「そういえば。
 司とお見合いしたんだって?」
食事中にふいに聞かれてナイフとフォークを持つ手が止まる。

「道明寺さんに聞いたの?」
「ううん。母さん…っていうか牧野のお袋さん?」
首をかしげながら言った言葉にあたしも首をかしげる。

「…あれ?そういえば
 類のおばさまと うちのママって面識あったっけ?」
あたしと類はもう何年もの付き合いにはなるから
パーティのパートナーを頼まれたと聞いた時も
特に不思議に思う事もなかったけれど
よくよく考えてみれば類にそんな事を頼まれた事はなかった。

「少し前のパーティで仲良くなったみたいだよ?
 俺がいつも1人でパーティ出るからって
 母さんの方から牧野のお袋さんに頼んだんだって。
 だから俺は牧野を丁重に接待しなきゃいけないってわけ」
とざっくり説明しながら
自分のサボりを正当化するあたりはさすがってとこ?

「ふぅん…。
 でもさ、日本ならともかくこっちなら
 静さんにお願いした方がよかったんじゃない?」
「今、イタリア」
ポツリと呟いた類に
「あらら…そりゃ残念。
 静さんも相変わらず忙しそうだね」

もしかしたら会えるかも、と
密かに期待していたあたしもガックリと肩を落とす。


「…で?
 あたしって、今接待されてるんじゃなかったっけ?」
そう聞いてしまうのは
食事のあと、ショッピングにまわっていたのに
少し休憩しようとベンチに座った途端
類があたしの膝を枕に寝始めちゃったから。

「これじゃ接待してるのどっちかわかんないよ?」
「どっちがどっちでもいいんじゃない?」

「もう!」
「あたっ」
文句を言いながら類の頭をペチンと軽く叩いたものの
あたしも類も別に本気じゃない。

類がどこでも寝るのは今に始まった事でもないしね。

「寒くないわけ?」
「ん。ちょうどいいよ」

「…ま。たまには
 こういうまったりした時間もいいよね」
「俺はずっとこうでいいけど?」

相変わらずな類にクスッと笑うと
あたしも鞄から読みかけの本を取り出して開いた。





 
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残り物には福がある 15

あいつが邸を空けて6日。
あるべき平穏を取り戻したはずのオレだが

「……はぁ」
並べられた朝食を前に
こめかみを押さえていた。


『残り物には福がある』   第15話


朝食に手をつけようとしないオレに
「食欲がないかい?」
とタマは心配そうに聞いてくる。

「ちょっと頭痛がするだけだ。
 大した事ねぇよ…薬も飲むから心配すんな」
それだけ言うと
結局朝食には手をつけないままに席を立つ。

閉じた扉の向こうで
「…困ったね。
 つくし様がいるといないとじゃ大違いだよ」
タマがそう呟いた声はオレには届かなかった。


頭痛も別に珍しい事じゃない。
我慢できねぇ程ってわけじゃねぇし
薬を飲めば静まる。

「……クソッ」
慣れてるはずなのに
どうしてだか今日は集中力に欠けて
書類が頭にすんなり入ってこねぇ。

「少し休憩なさいますか?」
西田が聞いてくるが
「んな時間ねぇだろ。
 かまわねぇから持って来い」
そう言って再び手にしていた書類へと視線を移せば
西田も黙って頭を下げる。


仕事を終えて帰ってみれば
私室へ向かうと隣の部屋からタマが出てくる。

「年寄りがこんな時間に何してんだよ」
「明日はつくし様が帰って来られる日だからね。
 お迎えの準備だよ。
 と、言ってもあの子は自分の事は自分でするから
 チェックだけでする事もないけどね」
そう言うタマに首をかしげる。

「この部屋ってリネン室か何かだったか?」
「はぁぁ…何言ってんだい。
 坊っちゃんを起こすのに時間がかかるって
 前使ってた部屋からこっちに移動してずいぶん経つよ。
 もしかして気付いてなかったのかい?」
その言葉に
そういえば結構前にあいつがこの部屋に
荷物を抱えて入って行ったのを見た事を思い出す。

開いている扉から中をチラりと覗けば
オレの部屋とは違う香りが鼻をくすぐった。

「せめて好みの香りがすれば
 自分の家じゃなくても落ち着くかと思ってね」
そういうタマの手には香水のビンが握られている。

石鹸の香りに少しフローラル系が混じったような
清潔感のある香り。

それはあいつの香りだった。

「いくら寂しいからって
 留守中の女性の部屋を勝手に覗くモンじゃないよ」
ニヤリと笑うタマ。

「バッ…。そんなんじゃねぇよ。
 っつーか勝手に部屋隣にしてんじゃねぇぞ」
「いいじゃないですか、別に。
 今までだって気付かないくらいだったなら
 何の問題もございませんでしょう」

そういう問題じゃねぇだろうっ!
そう言い返そうとした言葉は

「あー…でも
 つくし様がこの邸で過ごされるのも
 そんなに長くないのかもしれないけどねぇ」
なんて部屋の中を振り返りながら
言った言葉が気になって口に出来なかった。

そして
「類坊っちゃんとも“お友達”だったとはねぇ」
と独り言のように呟く。

「…あ?どういう意味だ?」
そう聞いたつもりだったが
タマの耳には届かなかったのか

「ま。こういう事は
 なるようにしかならないモンだからね。
 それじゃあ、あたしゃ、そろそろ休ませて頂くよ」
とあいつの部屋の戸締りを済ませると
ペコリと頭を下げて長い廊下を歩いて行く。

しばらくその後ろ姿を見ていたが
「…チッ。聞いた事にくらい答えろよ」
舌打ちをした言葉にも当然返事はなく

踵を返したオレの視界に
閉じたあいつの部屋の扉が一瞬だけ映った。



 
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残り物には福がある 16

部屋に戻って1時間。

タマの言葉の意味をオレに教えたのは
なんとはなしに見ていたタブレットだった。


『残り物には福がある』   第16話


とっとと寝ねぇと
また明日に差支えると思いながらも
眠気が訪れる気配もなくて
ソファで酒を煽っていたオレの目に飛び込んできたのは

2人揃って向こうのパーティに参加している類と牧野の姿。

「…あいつ。
 フランスにまで行ってたのかよ」
記事を読み進めれば
基本的にパートナーを伴わず1人で参加する事の多い類が
女を連れて現れただけでなく
その親密そうな雰囲気に、恋人同士かと思われたが
本人たちはあくまでも“仲のいい友人”と答えたと綴っていた。

だがその記事の続きには
前日に2人がショッピングを楽しむ様子や
公園で膝枕をしてる様子までわざわざ載せていて
恋人だと決めつけたような文章で締めくくっていた。

「なるほどな…」

タマがこんな記事を読んだとは思えねぇが
この記事か、直接誰かに聞いたか知らねぇが
この事を知ったババァに
オレとはどうなってるのかと突かれたってとこか?


あいつらが以前から
知り合いだった事はオレだって知ってる。

仮に本当に恋人同士なら
オレと見合いをした時にそう言えば
こんな面倒な事にならねぇんだし
類だってそれなりに抗議をしてくるだろう。

そこを考えれば周りから見れば
恋人同士のデートにしか見えねぇ行動をしてた所で
実際ただの友人の1人って事なんだろう。


「………」
問題はあいつらが恋人か友人かって事じゃねぇ。

問題はそこじゃねぇ。

こんな記事を隅々まで読んだ上で
あれこれと2人の関係を詮索してるオレだ。

どうしてオレは
こいつらが友人だって結論に安心してるんだ?

実際どうかなんて関係ねぇだろ。
この見合いを断るいいきっかけじゃねぇのか?

それなのに
どうしてオレはそれをしようとしない?

どうしてオレは…



「………は?あり得ねぇだろ」
ふと自分の中に見つけた感情が
すぐに信じられるものではなくて独りごちる。

それでも1度自覚しちまえば
ついさっきまで平気で見ていたはずの写真でさえ
無性に腹立たしく感じられて思わずページを閉じた。

そのままベッドに向かったはいいが
さっき以上に目も頭も冴えちまってて
とてもじゃねぇが眠れそうにねぇ。

それでもこれ以上考えたくなくて
さっさと寝ちまおうと
引き出しから睡眠薬を取りだすと
近くにあったウィスキーのボトルを手に取って
グラスに注ぐ。

…が。

『アルコールと一緒に服用するなんてあり得ない!』

『指示された通りに服用して初めて効果があるの。
 薬は正しく飲まないと毒にだってなるんだからねっ!』

そう言ってたあいつの姿が浮かんで

「…クソッ。面倒くせぇな」
愚痴りながらも
手にしていたグラスを置いて冷蔵庫から水を取りだした。




 
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残り物には福がある 17

オレがあいつに惚れただなんて
酔った頭が勘違いしただけだろうと
寝る直前に何度も自分に言い聞かせた言葉は

朝一番に鼻をくすぐる香りに反応している
自分自身によってあっさりと否定された。


『残り物には福がある』   第17話


「…あ。
 まさかまたお酒で飲んだんじゃないでしょうね」

キシッと小さく音をたてて沈むベッドの端、
聞こえてくる呆れたような声。

あいつの気配に体温が上がるような気がした。

「…そこに水のグラスも置いてあんだろうが」
目を開ければそこにいるのはやっぱり牧野で。

「あれ?おはよう。
 珍しい…起きてたんだ?」
「起こされたんだよ、お前に」

「いつも全然起きないくせに?」
「…るせぇ」

「薬飲んだの?」
オレの文句も聞き流して
反対側にあるチェストから
薬の袋を取ろうと細ぇ腕がオレの上を通過した。

「…るせぇ」
誰のせいで眠れなかったと思ってんだ。
そんな文句を飲み込んで起き上がる。

「結構減ってるね?
 一気にたくさん飲んだりしてないでしょうね?」
不満そうにオレを睨みつけるその顔に
前は主治医でもねぇくせにうるせぇと思ってたはずだ。

それが今はどうだ。
「そんなに心配か?」
なんてニヤけそうになる顔を引き締めながら聞いている。

「そりゃ、いくら乱用とは言え
 うちの薬で死人が出たら困るし?」
きょとんとした顔で答えるこいつにムカついて

「るせぇよっ!」
思わず怒鳴ったオレにも首をかしげて
「……?
 うるせぇうるせぇって、うるさいのはあんたでしょ。
 起きたならおはようくらい言いなさいよね」
と肩を竦めるこいつは
相変わらずオレには無関心だ。

「…早かったな」
今日帰ってくるとは聞いてたが
まさかオレが起きるより早ぇとは思ってなかった。
「ん?まぁね。
 向こうで偶然おばさまに会ってさ。
 あ。昨日までフランスだったんだけどね?
 ちょうど帰国するからって乗せてもらっちゃった。
 で、起きたらお邸の裏なんだもん。
 ビックリしちゃった。さすが道明寺家だよね」
クスクス笑いながらそう言うこいつ。

って事は自家用ジェットでババァと帰ってきたのか?
それで着くまで寝てたって?

…っつーか
会ったのは絶対偶然じゃねぇだろ。

ババァと外で偶然会った事なんか
息子のオレでさえねぇっつーの。

たまたま近くにいたのかまでは知らねぇが
こいつをとっ捕まえるためにわざわざ行ったに決まってる。

ババァは類との事も
オレとの事をどう考えてるかってあたりも
色々と探りを入れようとしたはずだ。

それをあっさりと躱してぐーすか寝てたなんて
さすがなのはお前の方じゃねぇの?

なんて事を考えながらこいつを見てみれば

「…?ご飯食べるでしょ?」
なんて首をかしげるこいつが
なんか行く前より可愛くなったように見えるし

ただの友達だって結論付けたはずの
類との関係が今さら気になって仕方ねぇし

ついでにこいつは見合いの事を
今はどう思ってんのかってのも少し気になる。


やべぇ。
これじゃもうごまかしようがねぇじゃねーかよ。

__オレはこいつが好きだ。


牧野に触れようと伸ばした手。

「ん?」
とオレの手を取ったこいつの体温に
ドクンと胸が高鳴る。

…だが、次の瞬間。

「マッサージしろって?
 …ったく。甘えてんじゃないわよ」
「バッ…ちげ…」

「ちょっとだけだからね?」
と小さく息をついて、ベッドの端に腰かけたこいつに

言おうとしてたはずの言葉を飲み込んで
「…おぅ。こっちもやれよ」
と向き直ってもう片方の手も差し出した。



 
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残り物には福がある 18

フランスに行くためにお休みをもらった事もあって
帰ってきてからは少し仕事を詰めていた。

そして今日も残業で遅くなって
邸に着いたのはもう21時をまわっていた。


『残り物には福がある』   第18話


あたしの帰りが遅くなるという事は
必然的にあたしの運転手をしてくれている
長岡さんの帰りも遅くなるという事。

「遅くまでごめんなさい。
 いつもありがとうございます」
ドアを開けてくれた長岡さんに言うと

「いえ。とんでもございません。
 明日も8時にこちらでお待ちしております」
とにこやかに笑ってくれる。

実家にいた時は普通に電車とバスを使っていたし
車なんていらないって言ったんだけど

「つくし様がそうしたいって言うならかまわないけどね。
 でもこっちとしても何かあってからじゃ困るんだ。
 車を使わないならSPを何人か付けさせてもらうよ」
とすぐに手配しようとするから慌てて止めた。

まぁ…家の裏に滑走路があるくらいだもんね。
さすがは道明寺家ってとこなのかな。

エントランスに入れば

「おかえりなさいまし」
とタマさんが出迎えてくれる。
「タマさん、ただいまです。
 しばらくは遅いから先に休んでて下さいって言ってるのに…」

「年寄り扱いされちゃ困るよ。
 これくらいの時間ならいつも起きてますからね」
「もうっ。
 そういうつもりで言ったわけじゃないですよ」

そんな他愛もない話をしながらも
タマさんは部屋の前までついて来てくれると

「紅茶でもお持ちしますか?」
なんて聞いてくる。
「ううん。自分で出来るから大丈夫です。
 あ…。よかったら飲んでいきます?
 桜子からいい茶葉貰ったんですよ」

すると奥の扉が開いて

「よぉ。遅かったな」
なんて顔を出したのは道明寺さん。

「あ…ごめんなさい。うるさかった?」
ついついタマさんと盛り上がって
声が大きかったのかと謝れば

「別にそんなんじゃねぇよ」
不機嫌そうに言う。

だいたい、わざわざ部屋から出てきてまで
声をかけてくるのも初めてじゃない?

…あ。もしかして
寝つけそうだったのに起こしちゃったとか?

うはー。
そうだったとしたら悪い事しちゃった。
道明寺さんが怒るのも当然だ。

これ以上睡眠妨害する前に
さっさと部屋に入ってしまおうと
タマさんに紅茶を飲むのか
聞こうと視線を向けてみれば

「…そう言えば坊っちゃんも
 最近はわりと紅茶がお好きでしたかね?」
なんて事を突然言い出す。

「へ?」
「あ?」

あたしと道明寺さんの間抜けな声が重なった。
それにかまう事なく

「美味しい茶葉があるそうで…
 しかし残念だね。歳のせいか寝る前に
 水分をとると夜中に目が覚めてしまってねぇ。
 また今度誘っておくれ」
と続けて小さくため息をつく。

「あ…はい。
 じゃあまた今度のお休みにでもゆっくり…」
「あぁ。楽しみにしてるよ」
とにっこりと笑う。
「じ、じゃあ…おやすみなさ…」
そう切り上げて部屋に入ろうとした瞬間、

「で?坊っちゃんはどうするんだい?
 美味しい紅茶、飲ませてもらうのかい?」
道明寺さんを見上げてニヤリと笑う。
「……」
そんなタマさんを黙って睨みつける道明寺さん。

うひゃー。
タマさん、さっきから何言ってんの?
めちゃくちゃ怒ってるよ。飲むわけないじゃないっ。

「あ…いやいやっ。
 無理に誘っても…うんっ。また今度でっ!ね?」
「……飲む」

「ほらっ、道明寺さんもこう言ってるし…
 って、えぇ?今なんて?」
意外すぎる返事に驚くあたしの隣を

「こういう事はなるようにしかならないものさね」
と楽しげに呟くタマさんがスタスタと通り抜けて行った。



 
いつも応援ありがとうございます♡

残り物には福がある 19

牧野はオレに怪訝そうな顔を向けていたが

「…どうぞ?
 って言うのも変か。あんたの家だもんね」
なんてクスッと笑いながらオレを部屋に招き入れた。


『残り物には福がある』   第19話


考えてみれば姉ちゃん以外の
女の部屋に入るのなんて初めてだ。

オレの私室の隣とあって
レイアウトは少し似てるが
その雰囲気はまるで違うのが不思議で
つい部屋の中を見渡してしまう。

そんなオレとは違って

「ちょっと着替えてきていい?」
なんて当たり前みたいに言うこいつは
やっぱりとことんオレに無関心だ。

オレは男でお前の見合いの相手だぞ?
自分の部屋に招き入れるだけじゃなく
着替えてくるなんて気軽に言ってんじゃねぇよ。

「え?そんなに紅茶飲みたかったとか?」
黙ったオレにあらぬ勘違いをするこいつ。

「なわけねーだろ。
 10分でも20分でも待っててやるからとっとと行ってこい」
シッシッと追い払うように言えば

「いいの?」
きょとんと首をかしげる。
「あ?…あぁ」
ダメだって言ったところで
どうせ着替えるんだろ?そう思って頷いたのが甘かった。

「やった!
 じゃあついでにシャワーも浴びてこよー」
「あっ!?」

どこまで無防備なんだと眩暈がしてる間に
牧野は鼻歌まじりにバスルームへと消えた。

……あいつ、いつもこんな感じなのか?
こんなの捉えようによっちゃ
誘われてると勘違いされたって文句言えねぇんじゃねぇの?

ん?
誘われ……てるわけねぇよな。

天然でやってんだよな……はぁぁぁ。


なんかどっと疲れた気がして
考えてても仕方ねぇと
ソファに腰を落として
ケータイをいじりながら待ってれば

一応急いだのか15分くらいで戻ってきた牧野は
髪もまだしっとりと艶があって当然スッピンで…
タオル地のパーカーとショートパンツ姿なんて
完全にオフモード全開だ。

気を許されていると前向きに捉えればいいのか
そこまで男として意識されてねぇと嘆くべきなのかと
オレの頭は完全に混乱してる。

でも…まぁ。
くそ可愛いからいいか、とか
そんな風に思っちまってるオレも相当やべぇ。

「ごめんごめん、お待たせ。すぐ淹れるから」
なんて謝る所がズレてんだよ、と
ツッコミを入れる隙も与えずに
奥にあるミニキッチンで紅茶を淹れる準備を始めた。


「…いつもこの時間なのか?」
「んー…あと2、3日は?」

「…ふぅん」
だったら飯に誘うのもその後じゃねぇと
無理そうなのかと小さく息をつけば
「あ。やっぱり気になって眠れない?
 だったら前の部屋に戻してもらおうか?」
そう言いながらコトンと紅茶をオレの前に置くこいつが
気にしてるのはオレの不眠の事なんだろう。

「別にそんなんじゃねぇって言ってんだろ。
 実際、お前がこの部屋使ってるってのも
 お前が帰って来る直前に知ったくらいだ、気にすんな」
気持ちを自覚する前なら
ソッコーで部屋を戻させてたはずだが
今そんな事されたら朝以外に
こうやってお前に話しかけるチャンスもねぇ。

オレがそんな風に考えてるなんて
微塵も感じてなさそうなこいつは

「そ?ならいいんだけど。
 あたしもね、さすがに隣は…って思ったんだけど
 近くの部屋で使ってないのここだけって言うからさ」
なんて言ってやがる。

部屋なんて腐るほど余ってるに決まってんだろ。
どうせタマがわざと部屋を隣にしたに決まってるなんて事も
何故この部屋を選んだのか、その理由も
こいつは何1つわかってねぇんだろうな。




 
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