GOOD LUCK 12

「せ~んぱいっ♪
 専務とどんな一夜を過ごしてきたんですか?」

翌朝、出社したあたしに
桜子は朝の挨拶もそこそこにそんな事を言う。


『GOOD LUCK』   第12話



専務が用意してくれた服にも着替えたし、

「行くとこ一緒なんだからいいだろ、別に」
と車に乗せようとしてくる専務も振り切って時間だって
わざわざずらして何食わぬ顔で出社したのに。

「どうしてわかった?って聞きたそうですね」
そう言われてコクコクと頷く。

「服を見ればすぐわかりますよ」
「へ?なんで?」

「先輩にこんなにセンスのいい服を選べるわけないです」
あまりに可愛く笑うから
すごく失礼な事を言われているのについ絆される。

……それに絆されなくても
そこについては言い返せないような気もするし。

「はぁぁ…」
とため息を漏らして反論を諦めたあたしの肩をトントンと叩くと

「…で?専務ってお上手でした?」
なんて事を耳打ちして聞いてくる。
「バッ…!何言ってんのよ!」
思わず桜子の口を両手で塞いで周りをキョロキョロと見渡す。

「…何って。そんなの当然の流れじゃないですか?」
逆にあたしの反応の方がおかしいとばかりに小首をかしげる。

「そ、そんなんじゃないからっ!」
「…え?まさか本っっ当に何もなかったんですか?」

「当たり前でしょっ!
 大体あんた、専務の事好きなんでしょ?
 それなのに泊まったりして普通なら怒る所じゃないの?」
「だから言ってるじゃないですか。
 私は付き合ってもないのに縛ったりしませんよ。
 むしろ…その状況でシてない方がガッカリなんですけど」
そう言うとつまらなさそうにため息をついて去って行く。



それから仕事をしながらも桜子の思考回路をたどるけど
好きな人が友達と一夜を過ごしたっていうのに
どうやったらあんな楽しそうな反応になるのか…。

「……ダメだ。理解できない」
脳内が混乱するばかりでデスクに突っ伏すと

「何が理解できないの?」
そんな声に顔を上げると
隣のデスクのイスの背もたれを
抱きしめるようにして座る類がいた。

「類っ!」
「や。久しぶり」
ニコッと笑う顔は相変わらず王子様のようで
頭の上にあるはずのないクラウンすら見えてきそうだ。

「何してるの?」
「司の秘書になったって聞いたから。
 …お祝い?慰め?どっちかわかんないけど
 牧野の顔見るついでに仕事しに来た」
とにっこり。

「お願いだから仕事のついでにあたしにしてくれない?」
今これ以上理解できない事が増えると熱が出そうで
小さくため息をついてみたけど
類はやっぱりそんな事聞いてないみたいな態度だ。

類は大学の頃、桜子と一緒にF4専用テラスに連れて行かれるうちに
なんかわかんないんだけど空気が合う…っていうのかな?
4人の中では唯一仲良くなれた。

だから当然、あたしが専務が苦手だって事も知ってる。

「大丈夫?」
心配そうにあたしを覗き込む類にクスッと笑う。

「ありがと。大丈夫だよ。
 ちょっとね専務の事誤解してたのかもって思ってるの」
「へぇ。仲良くなったんだ?」

「仲良く…ってわけじゃないけど。
 そんなに怖い人じゃないのかもなぁ…って?」
「よかったね」
そう言ってあたしの髪を撫でようとした類の手が止まった。

不思議に思って視線を上げると
いつのまに秘書課に来ていたのか
不機嫌そうな表情を浮かべた専務が類の腕を掴んでいた。




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GOOD LUCK 13

鋭く類を睨みつける専務の視線は
昨日怖くないと思ったのにやっぱり少し怖いかも。

「痛いよ、司」
だけど睨まれているはずの類は
特に驚くでもなく静かに腕を振り払った。


『GOOD LUCK』   第13話



西田を連れて会食から戻ってきてみれば
類の秘書が1人で歩いているのを見て
嫌な予感がして来てみればやっぱりじゃねぇか!

「類てめぇ、
 人の会社で好き勝手動いてんじゃねぇよ。
 あっちでお前んとこの田村が青い顔して探しまわってたぞ」
どうせこいつには何言っても無駄だと
小さく息をついて言えば

「えっ…!
 仕事終わってから寄ってくれたんじゃなかったの?」
と牧野は目を丸くする。

「まだだよ。言ったじゃん。
 牧野の顔見るついでに仕事しに来たって。
 こっちが終わらないと仕事なんか出来ないでしょ?」
ニコッと笑って首をかしげる仕草に
牧野はうっかり頷きそうになった首をブンブンと振る。

「ダメでしょっ!ほらっ!立って」
そう慌てて立ち上がって
類の手を取ろうとする牧野を止めたのは
オレの機嫌がどんどん悪くなってる事に気が付いている西田。

「私から田村さんに引き継ぎますので。
 牧野さんは会議の資料の準備をお願いします」
そう言うと類を田村の所へと案内して行く。
「もうっ…」
類を見送って小さく息をつくこいつ。

「…お前も知ってる奴だからって
 部外者を入れてんじゃねーよ。あんなの追い返せ」
軽く握った拳を牧野の頭の上にポンと乗せると
「はい、すみません。
 気がついたら隣にいて…え、えっと…資料取ってきます」
少し視線を泳がせてからそそくさと出て行く。


……面白くねぇ。

仮にだ。オレが気がついたら隣にいた…
なんて事があったらお前絶対ひっくり返るだろうが。
それが類だとうっとり見惚れてたりすんのかよ。

F4が嫌いだったはずの牧野が
どうしてだか類にだけはすぐに懐いていた…。

おまけに普段なら他人を寄せ付けない類も
オレが惚れてんのも知ってるくせに牧野にはやたらと絡む。

かと言ってお互い恋愛感情は抱いてねぇようだが
オレにしてみればイチャついてるようにしか見えねぇんだよっ。


「…こんな所で何なさってるんですか?」
後ろから聞こえた声に振り返ればそこには三条の姿。

「また先輩に逃げられたんですか?」
「…んなわけねぇだろ」
クスクスと笑うこいつの挑発に乗るかと
踵を返してその場を離れようとすると

「じゃあ、花沢さんに取られちゃいました?」
そんな声に足を止めて振り返る。

「……てめぇか。類をここに寄こしたのは」
「人聞きの悪い事言わないで下さい。
 私はお客様に先輩の居場所を聞かれて
 ただそれに丁寧にお答えしただけですわ」

「邪魔してぇのか、協力してぇのかどっちなんだよ」
「別にどちらでも。
 それに一晩共にしておいて手も出さないなんて
 協力の有無以前に道明寺さん自身の問題だと思いますけど?」

「てめぇと牧野を一緒にすんじゃねぇよ。…あいつはなぁ」
そういう女じゃねぇと続けようとした言葉は
「もしかして道明寺さん…不能なんですか?」
なんて失礼極まりない言葉に遮られる。

「…バッ!んなわけあるかっ!!」
オレがどんだけ我慢してたと思ってんだよ。

せっかくあいつがオレを怖がらなくなってきたっつーのに
あそこでビビらせるような事なんてしてみろ。
今度オレに近づいて来んのはいつになんのかわかんねぇだろ。

そこまで考えて深くため息を漏らしたオレを三条またクスッと笑う。

「冗談ですよ。男としては本当にどうかと思いますけど。
 先輩を攻略する方法としては懸命な判断だったんじゃないですか?」
無言で睨みつけるオレに怯むはずもない三条は

「ま。頑張って下さい」
にっこりと笑うと持ち場へと戻っていった。


…クソッ。
まんまと挑発に乗っちまったじゃねぇかよ。




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GOOD LUCK 14

資料室から戻ってくると

扉は閉ってたから内容までは聞こえなかったけど
秘書課の中に桜子と専務が話してるのが見えた。


『GOOD LUCK』   第14話


何の話してるのかまではわかんないけど
桜子すごく楽しそうだし、専務も…珍しく顔を赤くしてるような?

もしかしてあの2人ってばいい雰囲気なのかな?

なーんだっ。
この感じだったら
わざわざあたしが専務の好みなんて聞かなくても
勝手に付き合い始めちゃってるかも。

「ふふふっ。邪魔しないように先行ってよ」



高校の時に桜子が専務に告白したって言った時は
理解してあげられなくて凄く反対したなぁ…

だってそうでしょ?
いくらお金持ちで顔がいいからって
あんなムチャクチャな男と付き合わなくても
桜子ならもっといい人がいると思ったんだよね…。

でも…桜子はあの頃から気づいてたのかも。
専務がそんなに悪い人じゃないって。

それに比べてあたしは…。

桜子みたいにいつも自分を磨いてアンテナ張ってないと
そういうのってやっぱり見抜けないのかなぁ…。

「はぁぁ…。恋したいなぁ」

気が付けば長い間、
恋愛どころか恋すらしてない事に気付いて
今さらながら己の枯れっぷりに深くため息をついた。

『あっという間に女として終わっちゃいますよ』

桜子に言われた言葉が今さら身にしみる。
合コンなんてとか言わずに行っとけばよかったかなぁ。

「…情けない」
「何が情けねぇんだ?」

後ろから聞こえた声に振り向くと
専務が入って来ていた。

「え、えっと…あ!資料が1つ足りなくてっ!」
まさか専務相手に、気付いたら枯れてました。なんて
言えるはずがなくて逃げるようにさっき来たばかりの
用もない資料室へ戻ってきた。


資料が足りないなんて口実なんだから
目当てのファイルなんてないんだけども。

それななのにわざとらしく
「えーっと…」
とか言いながら棚とにらめっこしてるのかと聞かれれば。

何故かその棚にひじをついて
「あったか?」
なんて言いながら隣に立って
あたしを見おろしている専務のせいだ。

「い、いえ…。あれ?おかしいな…」
居たたまれなくなって手元の資料を確認するフリをしてから
「あ…。忘れたと思ったらありました。…スミマセン」
ごまかすように笑ってくるーり…とゆっくり踵返すと

「……逃げんの禁止っつったよな?」
そんな声とともに肩に置いた手を引き寄せて
あたしは完全に捕まった状態だ。

「逃げてたわけではなくて…」
「避けてたとかヘリクツ言うんじゃねぇぞ?」

「いや、本当に専務から逃げようと思ったわけじゃ…」
「じゃあわざわざ忘れてもねぇ資料探しに来る理由はなんだ?」

「うっ…」
言葉に詰まりながらも、
答える事の出来ないあたしをじっと見ていた専務は

「言うまで会議遅らせるか」
そんなとんでもない事を言うと
あたしを捕獲していた腕をパッと放して近くにあったイスに腰を落とす。

やばい…。
専務はやるって言ったらやる。

腕時計を確認すれば、予定の時間まで20分をきってる。
あたしのせいで遅らせるなんてあり得ない…。

諦めたように小さくため息をついたあたしを見て
専務はニヤりと笑う。

「本当に専務を避けたとかじゃないんです
 その…ただただ自分が情けなかっただけで
 そんな事を専務に愚痴るわけにもいきませんし…
 でも結局、時間取らせただけになっちゃってすみませんでした」
肩を落としてペコリと頭を下げると

「…そうか」
納得したように立ち上がった専務を見て
会議は遅れる事なく行えそうだとホッと胸を撫で下ろした、その瞬間。

「よし。近いうちにまた飯行くか」
「……へ?」

「部下の悩みを聞いてやるのも上司の務めだろう?」
そう言いながらあたしの頭をポンポンと
慰めるみたいに撫でるとあたしの返事も聞かずに資料室を出ていった。





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★本日バタバタなので、明日はお休みかもしれません…ごめんなさーいっ(>_<)★

GOOD LUCK 15

「部下の悩みを聞いてやるのも上司の務めだろう?」
確かにオレは牧野にそう言った。

飯に誘う口実になるなら何でも良かったからな。
…だけど、これは想定外だぞ。


『GOOD LUCK』   第15話


あれから数日経ったある日。
オレは牧野をなんだかんだと言いくるめて飯に行く約束を取り付けた。

そこまではいい。むしろ完璧だ。

だけど先に駐車場に降りて、
牧野を待っていたオレの前に現れたのは
牧野の後ろにくっついてきた三条と類の2人。

「……なんだてめぇら」
頬をひくつかせるオレに

「私も悩みがあるんですよ。
 専務が可愛い部下の相談に乗って下さるって伺ったもので」
と白々しく落ち込んだフリをしている三条。
「牧野とご飯行こうと思ったら司と約束してるって言うから。
 ついでに俺の悩みも聞いてもらおうかな?
 司はオレの上司じゃないけど幼なじみで親友だし?」
とふわわ…と興味なさげに欠伸をかましながら類。

牧野をチラッと見てみれば
「す、すみません…。
 一応、私1人じゃ決められないし
 また今度3人で…って断ったんですけど」
と小さくなってやがる。

クソッ!
こんな事なら一緒に出るのはさすがにまずいとか
ゴチャゴチャ言ってたあいつに合わせずに拉致ってこりゃよかった!



そんなわけで
悩みを聞いてやるなら個室の方がいいかと
予約しておいた店の個室のテーブルには

オレの前に座る牧野と、その隣に類。
そしてオレの隣には三条が座っている。

この席順だっておかしいだろうがっ!!

4人がけのテーブルに最初に座ったオレ。
当然その後ろの類はオレの隣に座るのかと思えば
向かい側に座る。
「あ?お前はこっちでいいだろうが」
この時点で嫌な予感しかしなかったオレは類に声をかけたが
「やだよ。司の隣なんて窮屈そうだもん」
とメニューを開く。

「先輩、先に座って下さい」
と三条に促された牧野は空いた2つのイスを
交互に見てから案の定、類の隣に座りやがった。


牧野と類は相変わらずイチャついてやがる。

「牧野、それ美味しそう。ちょっとちょうだい」
「え?いいよ。はい」

「ん。美味しい」
「ね。美味しいよね」

そんな光景をイライラしながら見ていると

「私たちもやります?」
なんてクスクスと笑う三条は無言で睨みつけてスルーする。

「んな事より、お前ら何か悩みがあんだろ?とっとと言え!」
んで、とっとと帰れっ!そんな言葉はなんとか飲み込んで
一応オレ自身口実にした手前、
どうせろくでもねぇ悩みなんだろうこいつらに聞けば

「私はなかなか素敵な彼氏が出来なくて…
 道明寺さん、どこかに素敵な男性いらっしゃいません?」
と甘えた声を出す三条。

「俺も最近忙しくて眠れてないんだよね…」
と気だるそうに答える類。

「三条、だったらこいつやるから持って帰れ。
 で、類。眠ぃっつーならこんな所来てねぇで帰って寝ろ!」

2人まとめて解決してやったんだから帰れとばかりに
顎をしゃくってやると

「やだよ。俺にだって選ぶ権利くらいあるでしょ」
と類はプイッと顔をそむけて
「花沢さんも素敵なんですけどねぇ…。
 どちらかと言えば専務みたいなタイプの方が好みです」
とにっこり笑ってやがるだけで2人とも席を立つ気配はねぇ。

「「「………」」」
状況がわかってねぇ牧野を除いたオレらの間に
牽制し合った微妙な空気が流れる。

「あ、じゃ、じゃあ…
 専務の好きなタイプってどんな人ですか?」
静まり返った空気に耐えかねたのか
話題を変えようとしたのか牧野がそんな事を聞いてくる。

タイプ…?
んなもんねぇよ。強いて言うならお前だ、お前。

だけどそれを伝えるにはまだ早ぇ。

だから
しばらく考えたオレはこう答えてやることした。


「…オレのために目腫らして泣いてくれる女」




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GOOD LUCK 16

少しでもオレを意識するきっかけになればいいと
オレは牧野をまっすぐ見つめて言ってみたが

肝心のこいつはしばらくきょとんとしてから
やっぱり伝わらなかったのか不思議そうに首をかしげた。


『GOOD LUCK』   第16話


オレにとっては運命の出会いだったとしても
牧野にとってみればあんなの
ただ街でタチの悪ぃ酔っ払いを見かけたにすぎねぇんだ。

もしかしたら
あの時の男とオレが同一人物だって気付く以前に
そもそもがあいつは覚えてねぇって可能性だって十分ある。


「…司ってさ。
 泣かす前提で女と付き合うの?」
何食わぬ顔でサラッとそんな事を言ったのは類。
「それも目が腫れるほど…って。
 道明寺さん、どいう性癖をお持ちなんですか?
 女性としてそんな顔をさらすなんてあり得ないんですけど…」
と三条まで怪訝な顔つきでオレを睨みつける。

「バッ…!そういう意味じゃねぇよ!」

それじゃまるでオレが女泣かすのが趣味みてぇじゃねぇかよっ!

「…そういえば。
 牧野って泣いたらすっごい腫れるよね?」
「えぇ。動物のドキュメンタリー見た翌日なんてひどかったですよ
 メイクでごまかすの本当に大変だったんですから。」
慌てるオレをスルーしてそんな事を言う2人に

「なっ…。ほっといてよっ!」
と牧野は真っ赤になってやがる。

オレはお前が泣いたらそのでっけぇ瞳が
腫れるらしいってのは知ってるが
実際には見た事ねぇぞ…。

三条はともかく、類にもその顔見せたのかよ…。

いつ泣いたんだよ…っ!
オレだけ何も知らねぇみたいですげぇムカつく。

イライラを募らせるオレにかまう事なく類は続ける。


「…牧野。気を付けなよ?」
「へ…?気をつけるって何が…?」

「…司に泣かされるかもよ、あんた」
「えっ…!!」
ギョッとしてる牧野に追い打ちをかけるのは三条。

「そうですよね。
 うっかり目が腫れる事もバラしちゃいましたし…。
 ご自身の欲求を満たすために先輩の泣き顔を見たがるかも…」
心配そうに言ってからオレを睨む。

余計な事ばっか言ってんじゃねぇよっ!
んな事してまたこいつがオレから逃げるようになったら
どうしてくれんだっっ!

「牧野っ!ち、違ぇからなっ?」
変な誤解だけは避けたいと慌てるオレに
「…ふふっ。わかってます」
と困ったように笑うから、
思わず前のめりになったまま動きが止まる。

「あ?」
「だって専務が言ったのは
 自分のために泣いてくれる人で
 その人を泣かしたいわけじゃないですよね?」
その通りだと頷く。
わかってんじゃねぇか、牧野。

「当たり前だ。
 オレは愛した女は全力で守るぞ」
これだってもちろん牧野に言ったんだが
オレの言葉にパチクリと何度か瞬きをしたかと思えば

「…へぇ。ちょっと意外でした。
 専務って恋愛とか興味なさそうっていうかクールに見えてたので。
 …いいなぁ。専務の恋人になる人ってきっと幸せなんでしょうね」
と、まるでその幸せな恋人になる可能性の中に
自分を全く入れてなさそうな言い方でニコニコしてやがる。

悪くは思われてねぇんだから否定するのはおかしくて…
かと言って安易に肯定しちまうと
牧野は恋愛対象外になっちまいそうな微妙な表現に
どう答えればいいのか固まっているオレの隣で

「「プッ…」」
と、同時に小さく吹き出す、2人を鋭く睨みつけた。




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GOOD LUCK 17

オレをバカにしたように笑っていた三条は

「でも先輩が恋愛トークなんて珍しいですね?
 もしかして、気になる男性でも現れたんですか?」
なんて事を言い出した。


『GOOD LUCK』   第17話


三条の言葉にギクッと肩を揺らしたこいつは
「あ、あたしの事はどうでもいいでしょ?」
なんて苦笑いしてやがる。

…なんだよ、その反応。
マジで誰かいんのか?誰だよ、そいつ。

「いいわけあるか。人の事聞いておいて
 自分だけ黙ってようなんて虫がよすぎんだろうが。」
吐け、と顎をしゃくって言ってやる。

「や…。別に好きな人とかいないですよ?ただ…」
「ただ…?なんだ」

「い、いえっ…!
 やっぱりこれはさすがに専務に話すような事じゃ…」
言いかけたくせに
首をブンブン振ってオレには言えねぇとか言いだすこいつ。

…まさか、こいつの悩みって恋愛相談なのか?

「じゃあ、私が聞きます」
そう言うと三条は席を立って、部屋の隅へと牧野を連れて行くと
自分にだけ話せとばかりに耳に手を添える。

その光景をじっと見るオレを
チラチラと気にしながらも三条に耳打ちをする牧野。

牧野の悩みを聞いたであろう三条はニマッと悪い顔で笑う。

「なぁんだ、先輩っ。私と一緒じゃないですか。
 だから合コン行きましょうって言ったのに…
 待ってたって彼氏なんか出来るわけないんですよ?」
「ちょ…っ!!なんで言っちゃうの!」

クスクス笑いながら話す三条の口を慌てて押さえてるけどよ。
遅ぇよ。バッチリ聞こえたっつーの。

そんな牧野の手を振り払って
「だって私、聞くとはいいましたけど
 それを口に出さないなんて約束してませんもの」
悪びれる事なく言ってのける三条に、牧野はガクッと頭を垂れる。

「…へぇ。牧野、彼氏欲しいんだ?」
諦めたように席についた牧野に類が首をかしげる。

「や…。彼氏っていうか…枯れてるな、って?」
「…枯れてる?どういう意味?」

「んー。ふと…恋とかしてないなって…
 仕事は楽しいし、毎日充実してるんだから
 別に悩んでるってワケでもないんだけど、さ…」
居心地悪そうに話す牧野。

恋がしてぇならオレとすればいいし
彼氏が欲しいならオレが今すぐにでもなってやるっつーの。

大体、オレはお前に恋して何年経ってると思ってんだ。
いい加減気付いてくれたっていいんじゃねぇの?


「…まぁ、でも。
 先輩が恋をする気になっただけでも前進ですかね。
 放っておいたらお婆さんになるまでぼーっとしてそうでしたから」
ため息をつきながらそんな事を言う三条を
牧野は何か言いたげに睨んでいるが、
結局何を言ったところで言い負かされると思ったのか黙った。

「じゃあ、牧野はどんな人がタイプなわけ?」
「え?」
今度は類から聞かれて首をかしげる。

「恋するなら相手がいるでしょ?」
「そうですよ。今度は
 先輩のタイプの男性を集めて合コン開きましょ」

楽しそうに牧野に詰め寄るこいつら。
類はともかく、三条は黙ってろ。
合コンなんか連れて行きやがったらマジでぶっ殺すぞ。

でも…こいつの好みは聞いてみてぇな。
そう思って考え込んでいる牧野に意識を集中させてみれば

「んー……。一緒にいて安らげる人、かなぁ?」
とひねり出したわりには
すげぇ曖昧な答えが返ってきた。






いつも応援ありがとうございます♡

GOOD LUCK 18

「……専務」
「あ?気に入らね?」
「あ、いえっ!すごく嬉しいです!ありがとうございます」
「おぅ。気にすんな」

そんな会話をするあたしの手の中には
色とりどりのキャンディが入った小さくて可愛いポット。


『GOOD LUCK』   第18話


類と桜子も一緒に食事に行って以来、
専務は会食なんかで外出したりした時は
何故か帰りにお土産を買ってくるようになった。

もちろんお土産なんていらないって言ったんだけど
そうしたら今度はあたしも一緒の外出の時に
デパ地下に連れて行かれて

「好きなの選べ。お前はどんなのが好きなんだ?」
なんて、まるであたしがお土産が気に入らなくて
断ったとでも思ってそうな態度で何軒もお店を回らされた。

そういう事じゃなくて…。
ただでさえ専務が手掛けてるプロジェクトも大詰めで
寝る間も惜しんで仕事してるくらい忙しいはずなのに。

どうして急にお土産?
それも甘いお菓子ばかりだ。

ついには西田さんにまで
「専務のお気持ちですので。
 遠慮せず、ありがたく受け取っておきましょう」
なんて部下のあたしが上司の西田さんにペコリと頭を下げられて
居たたまれない気分になった。

でも…そうか。
専務がいかに気持ちよく働けるか考えるのも秘書の務めだよね。
お土産もらう事が仕事になるなら有り難く頂いておこう。

西田さんの言うとおり、
あたしが素直に喜べば専務は機嫌よさそうなんだよね。

でも…ちょっとしたブームみたいなものなのかと思ったら
毎日とはいかなくても、もう1ヶ月以上、このお土産は続いている。

あたしも残業くらいはしてるけど
土日は休ませてもらってるのに専務は全然休んでなくて…。

あたしとしてはやっぱり
お土産買う時間があるなら早く帰ってきて
仮眠室だってあるんだし少しでも休んでほしいんだけどな…。



「今日はキャンディですか?
 その入れ物も可愛いですね」
昼休みになって
秘書課に戻ったあたしに声をかけてきたのは桜子。

「うん。ほんと何なんだろうね?
 …あ。よかったら桜子も1つ食べる?」
そう言って前に差し出すと

「いえ。ダイエット中ですし、
 専務のお気持ちを無駄にするのも悪いですから」
「お気持ち…?」

「ここまで来ると、いじらしい程の努力ですよ。
 先輩があんな事おっしゃるから
 どうにか先輩の癒しになろうと必死なんですよ」
「え?あたし何か言ったっけ?」
専務があたしを癒したがる理由に
思い当る節がなくて首をかしげる。

「……」
「え?え?何??
 それとも、あたしそんなに疲れて見えるの?
 だから甘い物ばっかり買ってくるの?」
休み返上で働いている専務より疲れた顔をしてたのかと
頬に手を当ててショックを受けるあたしを黙ったまま見ていた桜子。

「……はぁ。
 なんだかさすがに可哀そうになってきましたわ」
と、あたしよりもショックそうに額に手を当てた桜子は
ため息をついて続ける。

「先輩はお土産が迷惑ってわけじゃないですね?」
「え…うん。
 申し訳ないな、とは思うけど…美味しいし」
コクリと頷けば桜子もよろしい、と頷く。

「先輩が心配してるのは
 専務の方こそ疲れてないのかって事ですよね?」
「そうっ!そうなのよ。
 買い物する時間あるなら
 早く帰ってきて仮眠でも取った方が…って」
うんうん、と大きく頷くと桜子はふぅ、と1つ息をついて

「だったら、お土産のお返しをして差し上げたらどうですか?」
なんて事を言い出す。

「お返し?」
「そうです。先輩のことですから
 貰ってばかりなのもどうせ腑に落ちないんですよね?」
「うん…でも。
 あたしが専務に返せる物も思いつかなくてさ。
 甘い物食べないって言ってたし…」

「だったらお弁当でどうですか?」
そう言って桜子が指さしたのは
デスクの上に出したあたしのお弁当箱。

「お弁当?」
「えぇ。専務は食事を抜かれる事も多いですし、
 激務の上にそんな食生活じゃいつ倒れても不思議じゃありません」

「…でもあたしが作るお弁当って庶民の味だよ?
 専務の口に合うはずないよ…むしろ迷惑だと思うけど」
「そんな事ないですよ。
 私は先輩のお弁当好きですし。
 あ。何だったら私の分も作ってくれてもいいですよ?」
そう言ってニッコリと笑う。

「…あんた、専務利用して自分がお弁当欲しいだけじゃない?」
「あら。そこまで意地汚くないですわ。
 あくまでも私は専務のついでで結構ですよ?」
調子よく笑う桜子に小さく息をつく。

でも…作ってみようかな。
いらないって言ったらあたしが2つ食べればいいもんね?





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GOOD LUCK 19

「…本日のスケジュールは以上です」
「…チッ。今日はずっとここに缶詰かよ」

外出する予定がないと知って
牧野に土産を買って来れねぇじゃねぇかとため息を漏らす。


『GOOD LUCK』   第19話



__一緒にいて安らげる人。


いくらオレだって
あいつのタイプに自分がハマっているとか
そんな都合よくは思ってなかったけどよ。

よりにもよって「安らぎ」ってなんだ。

それってオレとは正反対じゃねぇのか?

顔見ただけでビビられてるオレは
どうすりゃお前に安らぎを与えられる?


あの食事以来ずっと考えているが
これといった答えが見つからなくて
なんとか絞り出したのがこの土産作戦だ。

あいつ、何か食ってる時は幸せそうだし
特に甘いモンが好きなのか目がキラキラしてやがるからな。


「あと、本日は12時より昼休憩を1時間設けます」
西田がスケジュールに付け加えるように言った言葉に首をかしげる。

「あ?1時間も必要ねぇだろ。
 …っつーか昼休憩がそもそもいらねぇよ」
「昼食はどうされます?」
「いらね」
お前、いつもそんな事聞かねぇだろ。
普段なら適当につまめるモン持ってくるか抜くかのどっちかだ。

「……だ、そうです。牧野さん」
オレの答えをそのまま隣に立っていた牧野に伝える。
それこそ言わなくても聞こえてんだろうが。

「かしこまりました」
西田の言葉にそう答える牧野はどっか影を落としてて…

「……?
 なんだよ。昼に何かあんのかよ?」
不思議に思って聞いてみたが
「いえっ!何でもありません」
とペコッと頭を下げたかと思うと書類を取りに出て行った。

「……お前、何か知ってんだろ。吐け」
「知ってはおりますが、
 牧野さんから口止めされてますので」

「気になって仕事になんねぇぞ」
吐くまでは何もしねぇとばかりにイスにふんぞり返ってやれば
あいつが出て行った扉を気にしながらもコホンと1つ咳をすると

「どうやら牧野さんは専務にお弁当を作って来られたようで…」
ポツリと呟く。

「弁当…?あいつがオレにか?」
予想もしてなかった言葉に思わず身を乗り出した。

「しかし、残念ですね。
 専務は昼休み返上で業務に励まれるそうなので」
「あぁ!?食うにきまってんだろ!」

理由はわかんねぇが
あいつがオレに作ってきたんだろ?

そのあまりの突拍子のなさに
なんとなくあいつ以外の誰かの意思が働いてる気もするが…。

いや、いい。
たとえこれが何かの罠だろうが
オレはあいつの弁当を絶対に食うぞ。

クッソ…。
西田の奴、こういう事なら先に言っとけよ。
うっかり食わねぇって言っちまったじゃねぇかよ。

あいつの事だ。
ただやっぱり食うって言うだけじゃ素直には応じねぇんだろう。

しかも今日食わなかったら2度と作ってこねぇ気さえする…。

「…チッ。仕方ねぇ。
 出来るだけ早く午前の分終わらせるぞ。
 いいか、西田。1時まではオレは昼休憩だからな!」

あいつの弁当があるなら1時間じゃ短ぇよっ。
1分でも早く終わらせてあいつの弁当食ってやる。




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