嘘のようなホントの話 19

家を出る前に
こんなに鏡をチェックしたのはいつぶりだろう?

道明寺とのデートの朝。
何度もどこかおかしな所がないかチェックしたりして
浮かれている自分を自覚していた。


『嘘のようなホントの話』   第19話


どこに行きたいと聞いたオレに
『前に2人で行った所があったらそこがいい』
なんて言ってきた牧野。

そう言われて
考えてみれば遠距離になってから
デートらしいデートはしてなかったと今さら気が付いた。


何時間も待たされた嫌な記憶がある初デート。
遅れるな、と言いながらも
気がついたら、わざと早めの時間に来ちまってた…。

そんなオレがいる時計広場では
待ち合わせをしていた恋人たちが落ち合っては
仲良さそうに手を繋いで歩いて行く。


『…すぐ夫婦が嫌なワケじゃないけどさ。
 ……せっかく遠距離じゃなくなったんだから
 もっと恋人っぽい思い出だって作りたいじゃん…』

そういやあいつが記憶を失う前に
すぐにでも結婚してぇと言ったオレに
そんな事を言っていたのを思い出す。

でも結局、日々の忙しさを理由に
待ち合わせしてどっかに出かけたりしてなかったな…。

あいつはもっと普通にこういうデートとかしたかったんだろうか…。


そう思うとさすがにオフだし最小限にしたとは言え
すぐ近くにSPがいるオレを見て牧野がどう思うのかと
そんな事が今さら気になって

「牧野には気づかれねぇようについて来い」
と指示を出して離れさせた。

とりあえずこれでいいか、と小さく息をついた所で



「うそ…道明寺?早いね」
そんな声に顔を上げると、

ワンピースを着た牧野が小走りで寄ってきた。

…やべ。すげぇ可愛い。
手が出せねぇ状況でこれって軽い拷問だろ。

いや…。
デートならちょっとくらいはいいのか?
これだってオレのためにお洒落してきたんだろ?

そんな事を考えながらぼーっと牧野を見つめていると
「…道明寺?」
首をかしげながらオレの顔の前で手を振ってやがる。

それにハッとして
時計を見ればまだ15分前で。

「お前こそ。早ぇじゃん」
「だって…わざわざ遅刻するなって言うからさ、
 何かこの後、予約してる所でもあるのかな…って」

「ククッ…。別にそんなんじゃねぇよ。
 お前は記念すべきオレとの初デートに
 大遅刻してきやがったからな。釘刺してやっただけだ」
「えぇっ?そうなの?
 あたし、時間にはルーズな方じゃないと思ってたんだけどなぁ」
そう首をかしげながらもゴメンね、とか言ってるこいつは
まさか何時間も雪の中で待たせたなんて思ってねぇだろうな。

「…で?この後ってどこ行ったの?」
そう聞かれてどう答えたものかと考える。

あの時、こいつが時間通りに来てれば
オレにはオレなりのプランだってあった。

だけど昔のデートがそのまましてぇなら
一晩エレベーターに閉じ込められなきゃなんねぇ。

ある意味インパクトはあるかもしれねぇが
ハッキリ言ってまた首にネギを巻かれるなんてごめんだ。

「…お前、昼は何か食ってきたのか?」
とりあえずそう聞いてみる。

「朝ご飯が遅かったから食べてないよ。道明寺は?」
「食ってねぇ。じゃあとりあえず軽く何か食いに行くか」
そう言ってこいつの手を握って歩き出した。




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嘘のようなホントの話 20

結局、飯を食ってる時に
話の中で出た映画を観に行くことになった。

当然のように貸し切ろうとしたら怒られ、
店員に勧められるままカップルシートとかいう席で観た。


『嘘のようなホントの話』   第20話


「面白かったね」
「まぁまぁだな」

正直、映画なんかより
オレの隣でうまそうにポップコーンを頬張ったり、
映画の内容に合わせてコロコロ変わる表情だったりする
こいつの方に夢中で内容なんて全然覚えてねぇ。

「この後どうする?
 前は映画なんてみてなかったんだよね?」
そう聞いてくるこいつに時計を見てみれば5時だった。

ちょうど大遅刻したあいつがやっと来たぐらいの時間か。
よくもまぁ、4時間も雪ん中待ってたよな、オレ…。

あの頃はケータイなんて便利なモンもなくて
すっぽかされたと思うより何かあったんじゃねぇかとか
そっちが心配で、あいつの顔見た瞬間
怒りよりも安堵がデカかったのを覚えてる。

「…道明寺?疲れちゃった?」
気がついたら牧野が心配そうにオレの顔を伺っていた。
「いや。買い物でも行こうぜ。服でも買ってやる」
「え?いいよっ!
 それより前に行った所に行こうよ?」
と相変わらず理由もなく何かを買ってもらう事を嫌がるこいつに
「ばーか。前もこんな感じだったんだよ」
そんな嘘をついて無理やり買い物に行く。


数時間後。
「……道明寺。このデートって
 前にしたのと全然違うでしょ?こんなハズないもん」
と帰りの車の中で訝しげな顔をするこいつの横には紙袋の山。

普段、頑なにプレゼントを断る牧野に
色々買ってやれるチャンスだと前も行った店だと嘘をついては
似合いそうな物を片っ端から買ってやったが…

つい嬉しくて、さすがにやりすぎたか。

「バレちまったな。
 いいじゃねぇか。あん時はまだ高校生で今は社会人だ。
 ガキくせぇデートをそのままなんてしてられねぇだろ。
 自分の稼いだ金で好きな女にプレゼントして何が悪ぃんだよ。
 それに本気でそのままのデートしてぇなら、今日は泊まりになるぞ?」
もちろんエレベーターの中で。とは言わない。

「はっ!?それこそ嘘だよ!」
牧野は何を想像してんだか顔を真っ赤にさせる。
「悪いがコレは嘘じゃねぇ。
 お前がその気ならオレはかまわねぇぞ?どうする?」
ニヤッと笑いながら言えば
「いい!いいです!」
と慌てて首をブンブンと振る。

全力で拒否してんじゃねぇよ。ちょっと傷つくだろうが。
そうは思いながらも笑いがこみ上げる。

牧野は高校生の自分がお泊りデートなんて
いくら記憶がねぇと言っても信じられねぇんだろう。
頭を抱えてブツブツと言っている。

「ククッ…!何想像してんのかは知らねぇが
 別に何もなかったからな?
 熱出しちまったオレを看病してくれただけだ」
オレがそう言うと
ホッとしたようにため息をついてから
「…道明寺、初デートで熱出したの?」
とクスクスと笑いだすこいつ。

だから、エレベーターに閉じ込められたのも
熱出したのも全部お前のせいだっつーの!
…まぁそれはもういいけどよ。


「次はいつデートすんだ?」
話題を変えようと聞いてみれば
「道明寺の方が忙しいんだから合わせるよ。
 って言うかさ、次のデートはどこに行ったの?」
そう聞かれて思い返してみてゾッとした。

次って…
TOJの後のクリスマスデートじゃねぇ?
ガキ連れで動物園なんて行かされたよな、確か。

思わず眉をしかめたオレに
「え?そんな嫌な思い出なの?」
と不安そうに聞く。
「…動物園行ったんだよ」
視線をそらしながら言えば

「動物園っ!久しぶりかも。
 …ってどうしてそれでそんな顔してんの?
 もしかして動物苦手だとか?」
そう言いながらオレの顔を覗き込んでくる牧野に
小さく舌打ちを返す。

「…高校生の時も苦手なのに付き合ってくれたの?
 だったら無理に行かなくていいよ。
 そのデートは飛ばしちゃおう。ね?」
「…お前は行きてぇか?動物園」
「え?うん、まぁ…動物好きだし?
 でも無理しなくていいよ。
 デートなんだから2人が楽しい所に行こうよ」
「行きてぇなら行こうぜ。
 オレはお前が楽しんでればそれでいいんだしよ」
そう言って髪をクシャッと撫でてやると
「うん…ありがと」
と嬉しそうに笑った。





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鬼の居ぬ間に洗濯 ~side 田中~

本当はこの日。
帰りに送ってくなんて言って2人きりになれたら

告ってみようかな…なんて思ってたんだ。


『鬼の居ぬ間に洗濯』   ~side 田中~


あまり事務所の飲み会には参加しない牧野。

だからと言って人付き合いが悪いわけじゃなく
むしろ誰よりも気さくで輪の中心にいるような気さえする。

前に一度不参加理由を聞いてみると
「あー。あたしお酒弱くって…」
と困ったように笑って答えた。

そう言ってたように前に1度参加してた飲み会は
1杯だけ飲んだらあとはウーロン茶を飲んでいた。

それでもその頬はほんのり赤くて
いつもより少し陽気になったように見えた彼女は可愛くて。

もっと近づきたい。なんて思った。

だけど、牧野はいつも仕事が終わると
さっさと帰ってしまってなかなかそのチャンスがない。


そんなある日。
事務所のグループLINEで持ちあがった飲み会。

『1次会だけ参加します』
といつも不参加の牧野から飛んだ吹き出しに
心の中で小さくガッツポーズ。


飲み会の日。
1杯だけ…と言ってた牧野に
先輩はこれなら度数も強くないから大丈夫!と
アルハラで訴えられそうな勢いで牧野にカクテルを勧める。

だけど牧野自身カクテルの甘い味は好きなのか
「あ。これ美味しい~!飲みやすい~!」
とジュースみたいにガブ飲みしてた。

案の定30分くらいで酔いが回ったらしい牧野は
普段では考えられないくらい甘えた感じになって
先輩に抱き着いたりしてる。

その姿の可愛いのなんのって……。

もうこれは絶対告白する!
そんでダメでもいつか絶対彼氏になってやる!

そう思ったその気持ちは

「田中。マッキーには
 彼氏がいるんだから手ぇ出しちゃダメだからねっ!」
そう釘をさして電話しに席を外した先輩に
あっさりと打ち砕かれてしまった。

今まで一度だってそんな浮いた話を聞いた事がなかったから
てっきりフリーなんだと思ってた。

「彼とは長いの?」
別に聞きたくないけど
話しの流れで聞いてみれば

「はいっ。かれこれ高校からです」
と初めて見る嬉しそうに笑う顔が悔しくて
「へぇ…長いね。……飽きない??」

そう、聞いてしまったのはきっと
マンネリしてる彼氏ならちょっとはチャンスあんのかな…なんて。
我ながら情けないとは思いつつも最後の悪あがき。

だけど牧野は
「全っ然!高校からって言っても
 ついこの間まで別れ別れだったんですよぅ。
 それにあいつのやる事っていっつも
 あたしの想像の上を行くんで未だに慣れないくらいですっ」
とケラケラ笑う。

その声に周りも反応して色々聞いてくるみんなに
嬉しそうに彼氏自慢をしてる牧野を見て
本当にその彼が好きなんだと思い知らされた。

イケメンで一途な男なんていないと野次る言葉に

「でも、信じられないくらい
 マッキーにだけベタ惚れの超絶イケメンなんだよね~。これが…」
そうため息をつきながら戻ってきた先輩の後ろから
すげぇオーラのある男性が入ってきた。

その人は牧野しか見えてないような態度で
俺と牧野の間に割って入るとドカッと腰を落として

牧野の酔っぱらった様子を確認すると小さくため息をつく。

周りは全員、突然入ってきたその人に注目しているのに
牧野だけは先輩に懐いていて後ろに座った事に気付いてさえいない。

「……っていうか、あれ道明寺 司じゃねぇ?」
誰かが小さく呟いた言葉でその人の正体を知る。

「え…まさか。牧野ちゃんの彼氏って…」
敢えてそうじゃないと思い込もうとしていた俺の後ろで
誰かがそんな事を言って俺にとどめを刺す。

その間も牧野は楽しそうに彼氏自慢をしている。

「ほぉ…?じゃあそのケータイが家にあって
 お前がこんな所で酔っぱらってんのはどういう事か説明してみろ」
そう言って初めて後ろを振り返った牧野は
しばらくしてから大きな瞳が落ちるんじゃないかってくらいに瞬かせた。



「ふざけんじゃねぇっ。帰るぞっ!!」
まるで米俵のように牧野を軽々と担いで道明寺 司が出て行く。

しばし呆然となる会場には

「ぎゃああっ!放してーっ」
そんな牧野の声が聞こえてきて

「……だ、大丈夫なんですか、アレ。
 ほら…束縛してるっぽいし……その、殴ったりとか?」
あまりにも手荒な扱いと叫び声に不安になって
道明寺 司の事も知ってるらしい先輩に聞いてみれば

「えぇ?あぁ。大丈夫、大丈夫。
 惚れた弱みって言うの?
 荒っぽい所はあるけど、あれでも牧野の忠犬なのよ。
 なんだかんだで主導権握ってんのは牧野の方なんだから」
ケラケラ笑いながら答える先輩に

「はぁ…。ならいいんですけど」
と廊下の方をチラっと見ながら言った俺に
「田中こそ…大丈夫なわけ?」
そう返されて首をかしげると

「…失恋。ヤケ酒なら付き合ってあげてもいいよ?」
そう言ってニヤっと笑った顔に
俺の気持ちまでお見通しだった事に驚いた。

「……お願いしますっ!」
そう言ってジョッキを持って先輩と乾杯しなおした。


週明け。
出勤してきた牧野は
事務所のみんなに彼氏の事をからかわれて真っ赤になっていた。

だけどそれでもちょっと幸せそうに笑った彼女の顔を見て
自分が入り込む隙間は1ミリもないんだと少し胸が痛んだけど

牧野が幸せなら…うん。仕方ないかな。



~ fin ~


★あとがき★

嬉しいおかわり要請に調子に乗って
鬼の居ぬ間に洗濯。田中さん視点です♪

この田中君。実は…。
「ツンデレ彼氏」の田中君です。
(だからなんだって言われても何もありませんが。笑)

それとつくしの先輩さん。
こんなに絡んでくるなら名前くらい
つけとけばよかった。と後悔しました(^_^;)
書きにくいのなんのって(笑)

司に乱入された事務所の同僚さん達は
さぞ驚いた事でしょうね~(笑)


この番外編、思いのほか反響があり
好評だったようで嬉しいです(*^^*)

そんな嬉しさだけで
思いつきと勢いまかせに書き上げた
番外編の番外編(笑)

お楽しみ頂けていれば幸いです♪



管理人 koma




いつも応援ありがとうございます♡

嘘のようなホントの話 21

あれから何度か道明寺とデートを重ねた。

動物園はサファリになって、その次は遊園地だった。
…やけに空いてると思ったら両方貸切だったけどね。


『嘘のようなホントの話』   第21話


道明寺との時間が増えれば増える程
会社で見る顔とはまた違った一面なんかも見えてくる。

仕事は意外にも?真面目で
道明寺HD日本支社を背負ってる姿は
経営の事なんて何もわからないあたしから見たって
誌面でカリスマだと騒がれるのも納得だ。

たまにあたしが入った事にも気づかずに
書類に集中してる姿なんかは

不覚にも見惚れるほどカッコいい。

だけど支社長としての道明寺しか知らなければ
あたしはきっと道明寺をもっと知りたいとは思わなかったと思う。

こうやってデートをしてる時の道明寺は
なんて言うのか、すごく甘くて…。

まるで普通の会話をしてるみたいに
「好きだ」とか「愛してる」とか言ってくる。

どこでも言うから恥ずかしい時もあるし、
バカじゃないかと思う事も正直あるんだけど
まっすぐで嘘のない道明寺の言葉は
1つ1つがあたしの胸にストンと落ちてくる。

まだ道明寺への気持ちが恋だとか
そういう風に呼べるかどうかはわからない。

だけど…。

道明寺の何気ないしぐさに反応するあたしの体が
記憶を失う前はあたしも
道明寺が好きだったと言ってるような気さえしてくる。

そう思うってしまうほど、仕事では見せない
子供っぽい笑顔だったり
単純でバカな所だったりが
いちいちあたしの心臓をドキンと鳴らす。


そして4回目になった今日のデートは
海を見に行って、レストラン行って…
夜景を少し見たら最後はメープルのスイート…。

「なんか急に大人っぽいデートだね?
 これってもう大人になってからだったりするの?」
そう聞いてみると
「ん?あぁ、まだ高校だぞ。
 これは、あの頃遊びまくってた総二郎のプランなんだよ」
「西門さん?」
「なかなか進展しないオレらにしびれ切らして
 デートさせようとカマかけてきやがった。
 それにオレらは、まんまと嵌っちまったってワケだ」
と道明寺は小さくため息をついた。

西門さんプラン、と聞いて妙に納得。
だから最後がホテルな訳ね。

中身はどうあれ、あれだけフェロモンダダ漏れの男に
こんなにスマートなデートなんてしてもらっちゃったら
そりゃ女の子なんてイチコロでついて来ちゃうでしょうよ。

…エロ門め。
高校生からこんな乱れた生活してたのか。
1000人斬りとか言ってたのも
あながち嘘だとは言い切れない気がしてきた…。

大きな窓際に立って眼下に広がる綺麗な夜景を見ながら
そんな事をぼんやり考えた所で思考が停止する。

……。

…あれれ?

あたしも道明寺に連れられるままついて来ちゃったけど
これって……そういう事になるわけ?

そりゃもう子供じゃないし
ついて来た時点でそう捉えられても
文句なんて言えないことくらいはわかってるつもりだけど…

…って言うか高校生のあたしはここからどうしたんだろ。

そもそも
その頃のあたし達は付き合ってたんだろうか?


いやいやいやっ。
それよりもこれからどうしたらいいんだろ…。
もし道明寺がそういうつもりだったら?

どうする?あたし…どうするべき?

その時後ろから道明寺があたしを抱きしめてきた。

「……何考えてる?」
頭のすぐ上から聞こえてくるその声は
やっぱりすごく甘くて余計に頭の中が沸騰しそうになった。





いつも応援ありがとうございます♡

嘘のようなホントの話 22

窓から景色を見てはしゃいでいた牧野。

だが、しばらくすると
思わず笑っちまいそうになるほど
静かになって窓に張り付いたまま固まっていた。


『嘘のようなホントの話』   第22話


相変わらず警戒心の欠片もねぇ、ボケボケ女。

どうせ今頃になって
密室で男と2人っきりって状況に焦ってんだろ?

あまりに警戒バリバリでも傷つくけどよ。
相手がオレじゃなくてもキョトキョトついて行くんじゃねぇかと
思うと無性にムカついてくる。

だからちょっと苛めてやろうと
後ろから抱きしめて
「……何考えてる?」
そう聞いてみれば
「べ…別に…」
と一言だけ答えると体をガチガチにさせて固まってる。


あー。やべぇな…。

やっぱやめときゃよかった。
こうやって抱きしめたのなんて久しぶりすぎて
こいつがいっぱいいっぱいになってんのわかってても
腕をほどいてやれそうにねぇ。

体の大きなオレには小さすぎるようにも思えるのに
どうしてだかこいつの体は
オレの腕の中にぴったり収まって抱き心地は最高で。
オレのために作られたんだとさえ思える。

そんな事を考えていると
おずおずと牧野が顔を上げる。

その顔は困りきっていて
「どうしたらわかんねぇ」って書いてあるみてぇだった。

牧野の体をくるっと回転させて
オレの方を向かせると
ただでさえ赤い顔がますます赤くなる。


「オレが何考えてるか、わかるか?」
そう言って顔を近づけると
小さく肩を揺らして目をぎゅっと瞑る。

そのまま額にわざとチュッと音を立ててキスを落とせば
ビックリしたみてぇに
瞑ってた目を開けてパチクリさせてやがる。

「…なんだ?
 ちゃんと唇にキスしてほしかったのか?」
そう言って意地悪く笑ってやると
「ち…ちがっ…!」
途端に腕の中で暴れ出したこいつ。
「…わかってっよ。
 お前が嫌がる事はしねぇ。
 そりゃ、色々してぇのはやまやまだけどな。
 お前の気持ちがオレに追いつくまで
 待っててやるからしたくなったらお前から迫って来い」
そっと腕を放して髪をクシャッと撫でる。

「とりあえず、飲みなおすか?」
ミニサーバーから酒を取り出して
牧野に渡してソファに座ると
「あ、ありがとう…」
と受け取って向かいのソファに向かいかけて
足を止めるとオレの隣にちょこんと腰を落とした。

てっきり今ので警戒されただろうと
思っていたオレにとって、それは意外な行動で
思わず頬を赤くしたままの牧野を見つめていると
手に持ってる酒をグイッと一気に流し込み始める。

「おいっ!そんな一気に飲むな」
レストランでも少し飲んでるこいつは
すでにほろ酔いのはずで。

目がトロンと重たそうだったから
部屋に移動したくらいだ。

だから別に寝落ちすんのはかまわねぇが
こんな飲み方したら悪酔いするに決まってる。

そんなオレの制止も無視して
結局飲みほしてしまったこいつは
突然ソファの上でくるっと体の向きをオレに向けて
呆然とするオレを見上げる。

その目は完全に据わっていて、
真っ赤な顔してオレを睨み付けている。

さっきの事で
何か文句でも言われんのかと思ったら
ふぅぅ…っと息を大きく吐いて

「…べ、別にちょっとビックリしただけで…
 道明寺を嫌だとか怖いとか、
 そんな風に思ってないよ…?
 でも…まだ…自分でもよくわかんなくて。
 もうちょっと…
 ちゃんと考えるから…もうちょっと…待っ…て…」

そう勝手にまくし立てると
最後はころんとオレの胸に倒れこんできて
すぅすぅと寝息を立ててやがる。

落ちちまったこいつをそっと抱き上げて
ベッドに運んでやる。

「…そんな事言うために
 無茶な飲み方してんじゃねぇよ」
ため息をつきながらも
口元は緩くカーブを描いていて
「おやすみ…」
そう言いながら、唇にそっとキスを落とした。




いつも応援ありがとうございます♡
 

嘘のようなホントの話 23

翌朝、あたしは当然二日酔い。
頭はガンガンするし、体は重いし。
顔はむくんでボロボロだったわけだけど…。

そんなあたしの隣には何もかも完璧すぎる男。
もう、何て言うか…消えたいくらい情けなかった。


『嘘のようなホントの話』   第23話



とりあえずシャワーを浴びに行って
自分の姿を鏡で見た時は
百年の恋も一気に覚めるならこんな姿見た時だな…
なんて思ってしまうほど
女としてはあり得ない姿で…。

そんなあたしのボサボサの髪をクシャッと撫でて
「そんな無防備に可愛い顔してっと襲っちまうぞ?」
なんて甘い顔で言えちゃうあいつは
絶対目が悪いんだと思う。

それとも自分が完璧すぎると
美的センスもおかしくなってしまうものなんだろうか?

そんな事を考えながら
シャワーから上がると
いつの間にか着替えも用意してくれていて
とりあえずそれを着て部屋に戻る。

「これ…ありがと」
そう言うと
「おぅ。…って、まだ髪乾いてねぇじゃん」
そう言ってドライヤーを持ってくると

あたしをソファに座らせて
「お前の髪、綺麗だな」
なんて言いながら乾かしてくれる。

その手つきがなんとなく慣れているようで
もしかしたら記憶を失う前も
こうやって髪を乾かしてもらった事があったのかな
…なんて思う。


土曜日だったこの日、
あたしは休みでも支社長の道明寺はそうはいかないらしく
部屋で一緒に朝食を食べた後は

「あ~…マジで行きたくねぇな」
なんて言いながら本気で拗ねた顔をする道明寺と
ホテルで笑って別れた。


自分のマンションに戻ってきて
道明寺にちゃんと家に着いた報告と
デートのお礼をメールすると
すぐにケータイが鳴って着信を知らせる。

ちょうどこれから会食だとかで
オレも楽しかった、とか
朝食ったからもう食えねぇ、とか
二日酔いひどかったらちゃんと医者に行け、とか
オレ以外にはキョトキョトついて行くな、とか
言いたい事だけ言うともう時間だとかで切れてしまった。

……最後に「愛してる」と言うのは忘れずに。

ケータイを当てていた耳が熱い気がして
そっと押さえる。


『オレが何考えてるか、わかるか?』
そう言って顔を近づけてきた時、
キスされると思って思わず目を瞑った。

だけど、その予想とは違って
額に感じた感触に目を開けて道明寺を見ると
あたしを優しく見下ろしている瞳と視線がぶつかった。

『…わかってっよ。
 お前が嫌がる事はしねぇ』
そう寂しそうに笑った道明寺の表情は
あたしの胸の奥の方をぎゅっと握って苦しくなった。

違う。違うよ…。

嫌だったんじゃない。
怖かったんじゃない。

自分の下心が見透かされたみたいで恥ずかしかっただけ。

『…なんだ?
 ちゃんと唇にキスしてほしかったのか?』

道明寺がそう言った時、
初めてそれを期待していた自分がいた事に気が付いちゃったから。


あたし…道明寺にキス、してほしかったんだ。


次のデートの時はちゃんと言おう。

……あたしも道明寺が好きだって。





いつも応援ありがとうございます♡

嘘のようなホントの話 24

「ペットショップに野球観戦?」
そう思わず聞き返すのは無理はない。

あたしだって道明寺には
あまりに似合わなさすぎると思ったもん。


『嘘のようなホントの話』   第24話



「へぇ~。支社長が庶民派デートねぇ」
「意外だな」
麻衣と小出君もやっぱりそう思うらしい。

この間、次のデートはどこに行ったのかと聞いたあたしに
「飯食って…街ん中ブラブラしながら
 ペットショップに入ったり、野球観戦したりか?」
とあまり言いたくなさそうに話した道明寺。

「やっぱり、ペットショップも苦手とか?」
そう聞いたあたしに
「…うっせぇ。
 お前が行きたいって言うから付き合ってやったんだよ」
とフイッと視線をそらす。

行きたくないなら黙っておくとか
嘘の行先を告げちゃうとかしたとしても
どうせあたしにはわからないのに…。

こういう正直な所がやっぱり好きだな…。
なんて事を思ってクスッと笑う。

きっと、嫌ならやめとこうって言っても
あたしが行きたいって言った場所だからと
連れて行ってくれるんだろうな。

「へへ…」
「笑ってんじゃねぇよ」
そう怒ってるようでも
瞳が優しい事に気が付いたのも最近だ。

だけど。
考えてみれば道明寺は
あたしが階段から落ちて病室に駆けつけてくれた時から
ずっとこうやって見守ってくれてた。

もし以前のあたし達が付き合ってたのなら
きっといっぱい傷つけたんだろうし
そんな冷たい恋人なんてさっさと見捨てて
次の恋をしようと思えばそんなの簡単に出来たはず。

それでもあたしのそばにいてくれた道明寺の
気持ちが嬉しくて…。

一度気付いてしまえば
どうして今まで意識せずにいられたのかと
不思議に思えるほど道明寺の事で頭がいっぱいになる。




そんなある日の昼休み。
今日は道明寺は会食だから社食には来ない。

だけどそれがわかってても
気持ちを自覚した途端、
心のどこかで会いたいと思ってしまうあたしは
2人と会話しながらも、入口をチラチラと気にしてしまう。

そんなあたしをニヤっとした顔で見る麻衣は
「で?支社長とはどこまでいったのよ?」
なんて聞いてくる。

「へっ!?」
「へ!?じゃないわよ。
 付き合ってないって言ったって
 男と女がこれだけデートしてるんだもん。
 ちょっとくらい何かあったって不思議じゃないでしょう」
と、話を促してくる麻衣。

「……ないよ。何も」
返ってくる言葉が想像に容易くて声が小さくなる。

「「はぁ!?」」
その予想通り2人が声を揃えて怪訝な顔つきになる。

「…あたしの気持ちが追いつくまで待つって……」
さすがに居たたまれなくなって
お味噌汁をぐるぐるとかき混ぜながら答えると

「はぁぁぁぁ…。支社長、男だな
 俺だったら、真似できる自信ないわ…」
と小出君は頭を抱えて
「って言うより可哀そうすぎるよ。
 中学生じゃあるまいし。
 何度もデートしてる相手とキス1つできないなんて」
と麻衣はガクッと落としていた顔を上げると

「そんな事してたら他の女に
 掻っ攫われても知らないよ!?
 隣に立ちたい人なんて腐るほどいるんだからね!?」
そうキッと睨みつけられて

「わ…わかってる。
 だから、次はちゃんと言おうって思ってる、よ…」
そんなあたしの言葉に深いため息をつくと

「…ま。気持ちを自覚しただけでも進歩かな?
 次のデートの後の報告、楽しみにしてるからね」
とニッと笑った。




いつも応援ありがとうございます♡

独り言。

ども。
管理人のkomaです。

いつも私のくだらない妄想にお付き合い頂きありがとうございます♪


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Author:koma
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ようこそいらっしゃいました。

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ゆる~いつかつく道を
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