Blunt 18

あれから3日。

牧野はあれ以来バイトを休んでいるらしく
オレの執務室には顔を出さなかった。


『Blunt』   第18話



結局、あのUSBを盗んだのは
いつかオレが振った、顔も覚えてねぇ秘書だった。

あの日、たまたま荷物の整理をしに秘書課に来ていた時に
牧野を探しに行くために鍵もかけずに出て行ったオレを見ていて
デスクに置きっぱなしにしたUSBを見つけ
フラれた腹いせにオレを困らせてやろうと盗んだらしい。

動機が動機だけに幸い情報を悪用まではしておらず、
無事に手元に戻って来た事もあって後処理は西田に任せた。

つまり…
今回の件は自分で撒いた種であって、
恨みを買うような振り方をしたのも、鍵をかけ忘れて出て行ったのも
全部オレの責任で、あいつは一切関係なかった。

やっぱりあいつじゃなかった。
ホッとすると同時にあの時の泣き顔が浮かぶ。


「せめて謝罪くらいはなさった方がよろしいと思いますよ」
そう言ってデスクに仮眠室の鍵と珈琲を置く西田。

3日前までこれは牧野の仕事だった。

「……わかってる」
そうは言ったものの…

真面目なあいつがバイト休んでまで
ここに顔を出さないって事は
オレの顔なんて見たくもねぇって事だろ?

気持ちを自覚する前なら
多少バツが悪いにしろ、あいつの家にでも行けてたと思う。
だけど、今は。
あいつに拒絶されるのが怖ぇ…。

拒絶されないにしても、
あいつが類と付き合ってる以上はオレは失恋決定なわけだし
顔も見たくねぇほど嫌われちまってんなら
このまま会わないのもアリなんじゃねぇかとさえ思う。

そう思ったそばから、あいつの珈琲が飲みたいと思う自分がいて
西田が淹れたやっぱりどこか何かが違う珈琲を飲みながら

「はぁぁ・・・」
深いため息をついた。



「あれ?牧野もう帰っちまったのか?」
そう言いながら入ってきたのは総二郎。
その後ろにはあきらと類も。

「なんだよ。飯でも誘おうと思ったのによ。電話してみっか?」
とあきらがケータイを取り出して電話もかけるも
「出ねーな、あいつ…」
と肩を竦めている。

「…で?どうして司はそんな顔してるわけ?」
と気がついたら類がオレの顔を覗き込んでいた。







「…バカじゃねぇの、お前」
「いくらなんでもそれはひでぇよ」
「牧野、かわいそう…」

西田に
「ご自分でどうにも出来ないのであれば
 皆さんにご相談されてみるのもいいんじゃないですか?」
そんな事を言われて
類の手前、自分の気持ちは伏せたまま、USBの事だけを話した。

その結果、オレの前には心底呆れた顔を並べた3人がいる。

「少し考えりゃ…いや考えなくても
 あいつがそんな事するはずねぇってわかんだろうが」
ため息をつく総二郎の横で
「まさかこのまま謝らないつもりじゃないよね?」
と類。

「わかってるけどよ…。
 あいつがここに来ねぇって事は顔も見たくねぇんだろ?」
バツが悪くて視線をそらすオレ。

「そりゃ、それだけの事をしたんだからな。
 だからって謝らないって理由にはなんねーだろう」
とあきらはすぐにでも謝りに行けと言う。

「……じゃあ手紙。
 手紙書くからよ。類、お前渡してくれねぇか?」
直接謝った方がいいのはわかってるが
拒絶されるのを考えると勇気が出ねぇ。
だからせめて文章で謝ってから…と思ったオレに

「は?なんで俺?自分で渡しなよ」
と類は怪訝な顔をする。

「なんで…って。お前ら付き合ってんだろ?」


オレの言葉に3人はしばらくポカンとしてから

「こいつ…マジでバカだ」
「…だな。ここまでとはさすがに思わなかった」
と総二郎とあきらがガクッと頭を垂れて

「あのね、司。…俺、牧野と付き合ってなんかないから」
と類には深いため息をつかれた。




いつも応援ありがとうございます♡
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Blunt 19

バイトを休んで今日で3日目。
いい加減体調不良の言い訳は通じない。

明日はさすがに出なきゃいけない…かなぁ。


『Blunt』   第19話


今日も休ませてくれと言ったついでに
いっそクビにしてくれてもいいと言ったあたしに主任は
「いつも無理聞いてもらってるんだから気にしなくていいのよ。
 それに専務の執務室担当がこんなに続いたのも
 牧野ちゃんが初めてだもの。クビになんかできないわ」
と笑いながら答えてくれたけど…。

その専務の執務室担当を辞めたいって言ったらどうするんだろう。
時間が開けば開くほど行きづらくなるのはわかってるんだけど
今はまだ専務に会うのが怖い。

出会った時と同じような冷たい瞳してたな…。

そう言えば、USBって見つかったのかな。
3日後って言ってたから会議、今日だったんだよね。

…まだ見つかってなかったら
あたしが盗ったって思ってる…よね。

「はぁぁぁぁ…」

その時インターホンが鳴って、
ぼーっとした頭のままドアを開けたあたしの目の前には
視界がそれでいっぱいになるほど大きなバラの花束。

「……?」
とりあえずバラしか見えなくてきょとんとしていると
花束の向こうから

「…悪かった」
と聞きなれた声がする。

花束を避けるように覗き込んでみれば
そこに立ってたのはやっぱり専務で。

「……何、やってるんですか?」
あまりに唐突すぎて意味が解らない。
「何って…。謝ってんだろ。
 USB…お前じゃなかった。疑って悪かったよ…許してくれ」
と、バツが悪そうに言う専務。
どうやらあたしへの疑いは晴れていて
それを謝りにきた…らしい事はわかったけど。

「…で、このバラは?」
大きな花束指さして聞いてみると
「あ?女は花が好きなんだろ?
 …もしかして違うのか?くそっ…あいつらっ…」
チッと小さく舌打ちをする専務。

あいつら…ってたぶんあの3人だよね。

よくわからないけど、じゃあこの花束はお詫びの印って事?
「これ…あたしに?」
そう聞いてみるとコクッと頷いて花束を差し出してくるので
「あ、ありがとうございます…。
 あ、でもどうしよ。こんなにたくさん入る花瓶がない」
持つのがやっとなほど大きな花束を
受け取りながら辺りをキョロキョロしていると

「……じゃあ飾れるだけ飾って
 残りはオレの執務室に置いておくからお前が世話しろ」
「執務室…ですか?」
意外な提案にきょとんとすると
「…まさかこのまま辞める気じゃねぇよな?
 いや、違う…そうじゃなくて…オレが嫌なんだよ。
 辞めないでくれ……毎日オレに珈琲入れてくれよ」
「……」
「ダメか?もう許せねぇか?」

…何かそれってプロポーズみたいじゃない?
ほら。バラの花束持って、毎日味噌汁作ってくれ。
みたいな?

そう思うと
専務がそういう意味で言ってるんじゃないってわかってても
なんだか笑いがこみ上げてきて

「…専務があたしを信用してくれるなら、続けます」
クスクス笑いながら答えてしまった。
「あぁ。2度とお前を疑ったりしねぇ。
 誰かが疑ってもオレはお前を信じる
 なぁ…許してくれるのか?」
不安そうに念を押す専務にもう一度頷けば

「…よし。ここに飾る分、抜き取れ」
そう言われて、数本だけ抜き取って、花瓶に飾る。
ただアパートの部屋には似合わないな、と苦笑いしてしまった。

「出来たか?」
後ろから声をかけてきた専務に頷くと
あたしの手を取ってアパートの階段を下りて行く専務。
そのまま、車に乗せられて静かに走り出した。

「……え?どこに行くんですか?」
意味がわからなくてキョロキョロしてると
「オレのマンション」
と当たり前のように答える専務。
「へ?どうしてですか?」
「珈琲入れてくれよ」
「は?」
「今日の分、飲んでねぇ。
 つーか、もう3日も飲んでねぇよ」
拗ねた顔してそんな事を言う専務に
笑いがこみ上げてきてケラケラ笑いながら
「はいはい、わかりました」
そう答えていた。





いつも応援ありがとうございます♡

★どうせならプロポーズしちゃえばよかったのに(笑)★

Blunt 20

牧野が戻ってきてすっかり元通り。

ただ…そう。
あまりにも元通りすぎるんだ。



『Blunt』   第20話


「専務、珈琲です」
あいつが今日も掃除を終えていつもの珈琲を
デスクに置いてくれる。
「あぁ。サンキュ」

前と変わった事と言えば
あいつが帰る前にバラの花瓶の
水替えをするようになった事くらいか。


今日も花瓶を抱えてあいつが戻ってきた。
あいつは花瓶を置いてからしばらく
バラを嬉しそうに眺めるのが最近の日課だ。


「なぁ…」
オレが声を出すと同時に扉が開く。

「まーきの」
「あ、花沢類!美作さん、西門さんもこんにちは」
とあいつは振り返ってあいつらに挨拶をする。

こいつらがこうやって度々牧野に会いに来るのも
前と一緒で元通りだ。

「なんだそのバラ」
あきらが牧野の前にある花瓶を見て首をかしげる。

「専務にもらったんだけどね。
 あんまりにも大きくて家の花瓶じゃ入りきらなくて。
 飾りきれなかった分はここに置かせてもらってるの」
と牧野が答えれば

「お前そんなデカいバラの花束持って行ったのか?」
とオレの方を見て総二郎がゲラゲラ笑っている。

なんだよっ!
お前らが女の機嫌取るなら
花くらいは持って行けって言ったんだろーが。

「あたしは嬉しかったよ?
 それに家でもここでも見れるから得した気分」
と笑う牧野は可愛い。

ほらみろ。結果的に喜んでんだからいいじゃねぇか!
こういうのは足らねぇより余るくらいの方がいいんだよっ。


「で?今日は何だよ」
オレが不機嫌に言うと
「ん?牧野の想い人の話でも聞こうと思ってよ。
 類から聞いたぜ?お泊りしたらしいじゃねぇかよ」
とニヤニヤしながら牧野の頭をポンポンと叩く総二郎に
「は?ちょっと!!何言ってんの!?」
と牧野は慌ててやがる。



あの日。

自分は牧野と付き合ってないと言った類に
ついあからさまにホッとしたせいで
オレがあいつを好きだって事までバレちまった。

「お前が鈍すぎるだけだろ。
 …マジで今頃自覚したのかよ」
「わかってねぇのはお前と牧野くらいだ」
と笑う総二郎とあきらの横で

「でも牧野、好きな奴いるよ?」
と類がさらっと言いやがった。

「……どんな奴だよ?」
聞きたくねぇが、聞いておかない事には
あいつの好みってやつもわかんねぇ。

少なくとも今のところオレは顔も見たくねぇほど
嫌われてるんだからマイナススタートだ。
なんとか取り戻さなきゃならないなら
好みくらいは知っておいても損はねぇはずだ。

それなのに
「さぁ?そんなの本人に聞けばいいでしょ?」
類は知らん顔してやがるし
「カッコいいっつってたぞ」
「笑った顔が好きだとか言ってたか?」
と総二郎たちもゲラゲラ笑うだけで
牧野の好きな奴が誰でどんな奴かは教えてくれなかった。



ムッとしたまま黙っている間にも
牧野は総二郎の口を塞ごうとピョンピョン飛び跳ねてる。

「類には話してんだからいいじゃねぇかよ。
 俺にもそのお泊りの話聞かせろって。
 美味いモンくらい食わしてやっから。な?」
「うるさいっ!!ここで言わなくてもいいでしょうがっ!」

その光景ですらじゃれてるようにしか見えないオレは
イライラが募る。

それにお泊りって何だよ。
そいつとは旅行まで行くような仲なのかよ…。

「司も聞きてぇよなー?」
と総二郎が牧野をあしらいながらオレに尋ねる。

そんなの聞きたくねぇよっ!!
そう答える前に

「専務に話せるわけないでしょ!!」
と牧野が総二郎のわき腹を殴りながら答える。

なんだよ。
類には話してオレには話せねぇって言うのかよ。

オレは西田に内線をつなぐ。
「おい。この後の予定って何かあったか?」
『…いえ。急ぎの案件はございませんので
 明日、少し残業して頂くかもしれませんが問題ありません』
「わかった。じゃあ後は任せる」
受話器を乱暴に置くと
総二郎に纏わりついている牧野の腕をとれば
あいつは驚いてオレを見上げる。

「オレもその話、じっくり聞いてやるよ」

オレの言葉に牧野は困ったような顔で真っ赤になった。




いつも応援ありがとうございます♡

★付き合ってないって言いながら好きな人がいる発言の類。
  …嘘は言ってないもんね(笑)これくらいのイジワルなら許されるはず( *´艸`)★

Blunt 21

「で?旅行はどこ行ったんだ?
 っつーか、お前バイトしながらいつの間に行ったんだよ」
あたしの横でさっきから専務が
お泊りについて聞き出そうとあれこれ聞いてくる。

もうっ。西門さんが変な事言うから妙な事になっちゃったじゃないっ!


『Blunt』   第21話



「聞いてんのか、おい」
「……聞いてますけど、答えません」
「なんでだよ。類には話したんだろ?」
「…専務には話せません」

そんなあたし達のやり取りを見ながら
ニヤニヤ笑っている3人をひと睨みしてみても

「教えてやればいいじゃねぇか」
「そうだよ。楽しかった~って言ってやれ」
と西門さんと美作さんは面白そうに言ってるし

「…そうなのか?」
と専務は何故かムッとしている。

「…楽しむとか楽しまないとかじゃなくて」
…っていうかそもそも看病されてただけで旅行でもないし。

お泊りの事だけなら誤解は解けるかもしれないけど
専務はあくまでも好きな人と泊まった、と思ってるわけで。
…まぁ、そこは違わないんだけどさ。

あぁ~、もうっ。ややこしいな。
どっちにしても、それを本人に言えるわけないでしょうが!

どう切り抜けたものかと深いため息をついていると
「司、牧野困ってんじゃん。いい加減にしなよ。
 そんな事してると今度こそ辞められちゃっても知らないから」
と花沢類が助け舟を出してくれた。

花沢類の言葉にチッと小さく舌打ちをした専務は
「わーったよ。でもいつか聞くからな?」
そう言いながらあたしの髪をくしゃっと撫でる。

話すも何も寝てて何も知らないあたしより
よく知ってるのは専務でしょっ。

…なんて言えれば楽なんだけどなぁ。

「って言うかなんで専務が…」
あたしの言葉を遮るように
「お前、それやめろ」
専務が言葉を被せてくる。

「それ、ですか?」
「あとそれも、だ」
やめなきゃいけない事が増えたっぽいけど
さっきから“それ”ばっかりで全く意味が解らない。

「お前、オレの名前知らねぇのか?」
「…知ってますけど」
「じゃあちゃんと名前で呼べ。
 こいつらは名前なのにどうしてオレだけ役職なんだ」

そんな専務の言葉に
「そういやそうだな。司だけ専務だよな」
「まぁ間違っちゃいねぇけど…
 プライベートでも専務ってすげぇ距離感じるよな」
と2人がまたケラケラ笑いだす。

「あと敬語もやめろ」
「……どうしてですか?」
「……」
「ちょっと専務っ」
「……」
「??」
今度はいきなり無視?と首をかしげると

「牧野。敬語やめて、名前で呼ぶまで
 たぶん返事しないつもりなんだと思うよ」
花沢類がクスクス笑いながら教えてくれる。

「そんな事、急に言われたって…」
チラッと専務を見てみると
向こうもチラチラとこっちを見ていて
何でもないような顔してるけど期待してるのは見え見えで。

「じゃ、じゃあとりあえず敬語やめ、る」
あたしが言うと満足そうに笑いながらこっちを向く。

「ど…道明…寺?」
首をかしげながら言ってみると
「…呼び捨てかよ」
とククッと笑いながら答える。

「あ!すみませんっ…道明寺さんでした」
慌ててペコっと頭を下げる
「まぁ、本来なら呼び捨てなんか許さねぇけどな。
 お前は特別だ。道明寺でいいから専務も敬語も禁止だぞ?」
そう言いながら嬉しそうに笑う。

「う…うん?」
そんな事がどうして嬉しいのかよくわからないけど
そうやって笑ってくれるなら…ま、いっか。




いつも応援ありがとうございます♡

Blunt 22

専務の事を道明寺と呼ぶようになって
敬語もやめて、1週間が過ぎようとしていた。

最近の道明寺はとにかく様子がおかしい。


『Blunt』   第22話


道明寺に専務呼びと敬語を禁止された翌日。
いつも通りバイト中に専務と呼んで敬語で話すと
「お前…昨日の事忘れたのか?」
とあからさまに不機嫌な顔をされた。
「バイト中はちゃんとけじめ付けなきゃダメだと思います」
「オレがいいっつってんだからいいだろ」
「ダメです!」

そんなやりとりをくり返すあたし達を隣で見ていた西田さんが
「牧野さん。専務がいいとおっしゃってますのでどうかその通りに」
とため息をついて、あたしにだけ聞こえるように
「専務の機嫌がいいと私も助かります。
 ここは私のためとも思って、お願い出来ないでしょうか?」
なんて言われたらもう断る理由すら見つからなくて
ただの清掃バイトのスタッフが
天下の道明寺HDの専務を呼び捨てにしてタメ口をきく。
そんな奇妙な環境にもすっかり慣れてきた。



そして今日もいつもの珈琲ブレイク。

「お前、今日のそれ何飲んでんだ?」
応接ソファなのにわざわざ隣に座る道明寺が
あたしのグラスを覗き込んでくる。

まぁ、隣に座るのは前からなくもなかったけど
最近は必ずと言っていいほどこの位置だ。

「これ?キャラメルマキアートだよ」
あたしが答えると
「……類がたまに飲んでるやつか」
なんて言いながらグラスを凝視してくるから
「……味見してみる?」
なんて聞いてみると頷くから
「じゃあ、ストローもう1本持ってくるね」
そう言って立ち上がったあたしの腕を掴んで
「これでいい」
そう言って何のためらいもなく
あたしの使っていたストローで一口飲んだ。

……驚いた。
何気に潔癖な所があるからそんな事しないと思ってた。

「……クソ甘ぇな。お前はこれが美味いのか?」
と眉をしかめながらあたしにグラスを返してくる。
その光景を呆然と見ていると
「あ?なんだよ?」
と不思議そうに首をかしげるから
「ううん。なんでもないっ」
慌ててグラスを受け取った。

いつもの珈琲ブレイクが終わって
あたしがグラスを片づけ始めると

「おい、牧野」
道明寺はあたしを呼びとめる。
「……なに?」
一応聞き返してみるけど、
次に出る言葉はもうわかってたりする。

「お前この後…」
「今日はもう帰るだけ!」
道明寺の言葉を遮るように答えれば
「そうか…。ならいいんだ」
と安心したようにデスクに向かう。

実はここ最近、
あたしがカップを片づけ始めると
バイトの後の予定を聞いてくる道明寺。

予定があると答えれば
どこに行くのだの、誰と行くのだの。
果ては何時に帰るだの。
その姿はまるで思春期の娘を持つ父親のようで。

あたし、そんなに危なかっしいの?

かと言って、予定がないと答えたところで
今日みたいにホッと安心したようにするだけで
どこかに誘われる訳でもないし。

……べ、別に期待してるわけじゃないけどさ。

「じゃあまた明日ね」
あたしが声をかけると
「おぅ。気をつけて帰れよ。フラフラすんじゃねぇぞ?」
と優しく笑う。

そう言えば笑顔も増えたよね…。
最近やたら機嫌いいとか…?大きな仕事まとまったとか??

「はいはい。わかってますよっ」
道明寺の笑顔が見れるのは嬉しいんだけど
今まで仏頂面が基本だったからまだ慣れなくて
思わず赤面しそうになる顔を見られないように
もう少しその顔を見ていたい気持ちを抑えて執務室をあとにする。

執務室を出て、秘書課に行くと西田さんの姿。

「お疲れ様でした」
あたしが声をかけると
「はい、ありがとうございました。今日も聞かれましたか?」
クスッと笑いながら聞くのは西田さんも
道明寺のあの謎の質問を知っているからだ。

「はい…。ほんと何なんでしょうね?」
ため息をつくあたしに
「専務の上を行く鈍さですね…」
西田さんが小さく呟いた言葉が聞き取れなくて

「え?」
と聞き返してみても
「…いえ。専務は牧野さんがいないと
 仕事にも身が入りませんからね。万が一にでも
 どこかの誰かに奪われたら、と思うと心配で仕方ないのでしょう」
「あはは。そんな大げさな~。
 掃除なんて誰がしてもそんなに変わりませんよ。
 でも清掃スタッフ冥利につきますね。
 明日からも頑張りますっ!ではお疲れ様でした!」
ペコッと頭を下げて出て行ったあたしが閉めたドアを見ながら


「……これは手強い」
とため息まじりに呟いた言葉も当然聞いていなかった。





いつも応援ありがとうございます♡

★やっぱりつくしちゃんも鈍かった~!★

あとのまつり ~side 桜子~

★『あとのまつり』の桜子視点です。
   CP〈あきら×桜子〉になります。苦手な方はご注意くださいませ★



「調子乗ってんじゃないわよ!」

こんなの日常茶飯事で
ほんとにどうって事なかったのに…。


『あとのまつり』   ~side 桜子~



私に絡んでくる女は大体
私が整形だという事を攻撃材料にしてくる。

だから何だって言うの?

見た目を変える事で
自信が持てて、自分らしくいられるんだし
第一私の見た目が変わった事で
あなた達に迷惑なんてかからないでしょう?
それに美しさを保つための努力だって怠ってないわ。

それでも
親にもらった体に、病気でもないのにメスを入れて
両親の面影がどこにも見つからない程変えてしまった事に
ほんの少し罪悪感は持っていた。

『美しさを金で買って何が悪いのよ!』

先輩のこの言葉はあたしを救ってくれた。
整形だと知った上で私を初めて認めてくれた人。


「その顔だって作り物のくせに!」
あの頃の孤独な私はもういない。私には私を認めてくれる人がいる。

あなた達にわかってもらおうなんて
こっちだって思ってないわ。

「黙ってないで何とか言いなさいよ!」

あ〜…うるさい。
もうそろそろいいかしら…。
そっちこそ調子に乗ってんじゃないわよ。

その醜くてうるさい口を塞いでやろうと
反撃に出ようとした時、

「桜子?こんな所にいたのかよ。牧野が探してたぞ?」
美作さんが声をかけてきた。

美作さんの登場に態度をコロッと変えて
さっきまで罵倒してた私を友達だとにこにこする顔に吐き気さえ覚える。


「…助けて頂いてありがとうございます。
 でもあんなの日常茶飯事ですし、私は大丈夫ですよ?
 今もどうやって黙らせてやろうかと考えていた所だったんですから」

そう言った私に余計なお世話だったかと苦笑いを浮かべながらも
テラスに誘ってくれるのは、私を心配してくれてるんだと思う。

気遣いがさりげなくて、優しい人。
でもこの人の空気は意地を張って生きてきた私には
温かすぎて困惑するから本当は少し苦手。

今だって、ほら。

テラスへの誘いを断った私に
「そか。…じゃあな。あんま敵作んなよ?」

そう優しい瞳で微笑みながら
まるで安心させようとするみたいに
大きな手で頭をポンポンと優しく撫でて行くから

張りつめてた何かが緩んで涙が溢れそうになる。

あんなの…本当に何て事ないのに。
私には先輩たちがいるから大丈夫なのに。


するとテラスに向かったはずの美作さんが戻ってきて

「……これも余計なお世話か?」
そう言ってフワッと抱きしめて、また頭をポンポンと撫でる。

わかってるなら放っておいてくれたらいいのに。
最後まで意地を張らせてくれたらいいのに。

「…やっぱり…美作さん優しくなんかないですっ…ぐすっ」

わかってて戻ってくるなんてひどい。
今そんな事されたら頼っちゃうじゃない。


温かすぎて苦手だって思ってたこの空気だって
意地を張ってないと

本当は好きだって…って気付いちゃうじゃない。




〜 fin 〜




★あとがき★

「あとのまつり」の桜子視点
いかがだったでしょうか?

最初はこのコンビ、
私の中ではあまりピンとこないCPだったんです。

と、言うのも
もともと、つくしに密かな想いを
抱いているっていう本家の方のストーリーに
引っ張られてるって言うのもありますが
本文でもチラッと触れたように
桜子が深い入りしないようにバリア張ってそうだなぁ…と。

でも妄想してるうちに
その壁さえ取っ払ったら
なんだかんだいいコンビ…?なんて( *´艸`)

無意識に頭ポンポンしちゃうだけで
その壁を取っ払っちゃうあきらもすごいですが(笑)

それよりなにより
毒吐いてない弱い桜子…好きなんです(//∀//)

気が付けば
しばらく短編アップしてなかったなーっと
「Blunt」も書き終わって時間が出来たので
サクッとそんな桜子を書いてみました(*^^*)

楽しんで頂けていれば幸いです♪


管理人 koma



いつも応援ありがとうございます♡

Blunt 23

カタカタカタ…パチンッ
「あぁ~…クソッ!!」
さっきから何度タイプミスしてるかわかんねぇ。

「…少し落ち着かれてはどうですか?」
そんなオレに西田はため息をつく。


『Blunt』   第23話


今日もあいつにバイトの後の予定を聞いた。

聞いた所でどうなるわけでもねぇ事くらいわかってるけど
あいつがどこで何してるのか気になるんだからしょうがねぇだろ。

あいつは大体まっすぐ帰るか、
女友達と飯に行くとか、大学に戻って課題するとか
類たちに拉致られて行くか…
今までなら、まぁそんなところだった。

それなのに…

「今日?和也君と和也君の実家に行くの」
とケロッとした顔して言いやがったあいつ。
「あ゛?」
思わず低い声が出た。
和也って…牧野の幼馴染だとか言ってたあいつだろ。

「和也君の従妹の子がね、久しぶりに遊びにきてるんだって。
 前会った時は中学生だったから。大人っぽくなってるんだろうなぁ」
楽しみーとか嬉しそうに言ってるけど…知るかよそんな事。

あいつはお前が好きだって言ってたんだぞ?
そんな男の家にのこのこ遊びに行ってんじゃねぇよ!

…かと言って彼氏でもねぇのに行くなとか言えるはずもなくて
渋々見送ってかれこれ3時間。

あいつは今頃和也の家にいんのか?
密室で2人きりとかになってねぇだろうな?

これで落ち着いてられるはずがねぇだろうがっ!!




その日の夕方。
あいつらが飯でもどうだと誘いにきたのを見た西田に
「このまま続けても効率も悪そうですし、
 本日は皆さまと息抜きでもなさって来てください」
なんて言われて
オレはこいつらと馴染みのBERで飲む事になった。

話を聞いたこいつらは
「…だったら、さっさと告っちまえばいいじゃねぇか」
「そうだ。いつまで片思いして遊んでるつもりだ?」
「もたもたしてたら、誰かに取られちゃっても知らないから」
なんて好き勝手ぬかしやがる。

牧野には他に好きな奴がいるんだぞ?

それなのに、オレが告ったからって
オレと付き合うような女じゃねぇって事くらい
お前らだってわかってんだろうが!

「…もっと距離縮めて、ちゃんとオレを見て欲しーんだよっ」
不貞腐れるオレに
「牧野はちゃんと見てんだろ」
「あぁ。肝心なとこだけピントずれてっけどな」
「ピントずれてんのは司も一緒じゃない?」
と訳わかんねー事ばっか言ってくる。

ちゃんとオレを見てる上で
脈ナシだっつーなら、それこそ絶望じゃねぇか。


「そんなに気になるなら電話でもしてみれば?
 もう10時前だし いい加減、家に帰って来てるでしょ?」
なんて言う類。

「そうだな。無事に家についてりゃ少しは安心すんだろ?
 あ~…待てよ?もしかしたら和也の家に泊まってるかもなぁ。
 幼馴染なら家族ぐるみで仲良いんだろうし、
 つい遅くなって、そのまま泊まってって~ってなってもおかしくねぇな」
と総二郎が言えば
「司、それはやべーよ。
 急がねぇと手遅れになるかもしれねぇぞ?」
とあきらも反応する。

…泊まる?あいつが和也の家にか?

やべーって何がやべーんだよ。
まさかあいつの好きな奴って和也なのか?
だったら両想いになっちまうじゃねぇか。

好きだって言われたら、付き合っちまうのか?

あ~…クソッ!
やっぱり行かせるんじゃなかったっ。
オレ以外の奴とあいつが付き合うなんてそんなの耐えられねぇよ!

オレは慌てて
ケータイを取り出してあいつに電話をかけた。




いつも応援ありがとうございます♡

Blunt 24

『……道明寺?』

何度かコール音が続いた後、
のんきなアイツの声が電話の向こうから聞こえる。


『Blunt』    第24話



「牧野か?…今、どこだ?」
恐る恐る聞いたオレに

『家だよ?』
その答えにホッと息をついたのも束の間。

『…ずっ。どうした、の?』
あいつの声が上ずってる事に気が付いた。

「おまえ…。もしかして泣いてんのか?」
『へ?あぁ…うん。ちょっとね…ずびっ』
電話の向こうでちょっと待ってとか言いながら
電話を置いて鼻をかむ色気のねぇ音を聞きながらも
声しか聞こえないこの状況がもどかしくなる。

『…ごめん。で?どうしたの?』
「……すぐ行くからちょっと待ってろ」
『え?道明寺?行くって…』
あいつが何か言ってるのも聞かないで電話を切ると
オレは店を出て車を呼ぶとアイツの家に急いだ。

なんで泣いてんだよ…。
和也が何かしやがったのか?
だったらあいつぶっ飛ばしてから行くか?

いや、まずは泣いてるあいつが先だよな。


あいつのアパートについてベルを鳴らせば
中からトントンと軽い足音が聞こえてきて
ガチャリと開きかけたドアを強引に開けると
「わわっ…ちょっと急に開けないで」
とあいつがバランスを崩しながら出てきたのを抱きしめてやる。

「1人で泣いてんじゃねぇよ…。オレ呼べよ」

オレだってお前を泣かせた事はあるから
他人の事を言えた立場じゃねぇかもしれないが

お前にはいつでも笑っててほしくて。

その為だったら
八つ当たりでも愚痴でも何でも聞いてやるから。
泣きやんで笑うまでこうやって抱きしめててやるから。

1人でなんて泣くな…。

そんな事を思いながら強く抱きしめてると
腕の中でじっとしていたこいつがそっと顔を上げて

「え?道明寺も見たかったの?
 えっと…ごめん。誘えばよかったね…」
とそんな事を言いだす。

「……何の話してる?」
とりあえずこいつが今は泣いてない事にホッとしつつも
話が読めなくて首をかしげる。

「何のって…花沢類に借りたDVD見たかったんでしょ?
 道明寺が恋愛映画に興味あるなんて知らなかったから…」

意外そうな顔をしてるこいつに嫌な予感しかしねぇ。

「…お前なんで泣いてた?」
「なんでって…DVD見て?すっごく切なくて素敵なお話で…
 ってこれから見るなら、話さない方がいっか。
 ちょっと待ってね。今DVD取ってくるから…」
そう言って腕の中から抜け出して部屋の中に入ろうとする
こいつの腕を掴む。

「てめ…紛らわしい泣き方してんじゃねぇよっ。
 和也に何かされたのかと思って心配したじゃねぇか!」
「へ…?」
急に声が大きくなったオレに
きょとんとした顔を向けるこいつを見てると
張りつめてたモンが一気に緩んでくる。

「はぁぁぁ…まぁいいや。何もなかったんなら」
その場にしゃがみ込みながらため息をつくと
こいつも同じようにしゃがんだ。

「もしかして…あたしが泣いてると思って来てくれたの?」
とやっとオレがここに来た理由を理解するこいつ。
「あたりめーだろ」
「あ…ありがとう…」
そう言って小さく笑うこいつ。

こいつのきょとんとした顔も、笑顔も、泣き顔さえも
全部オレだけの物だったらいいのに…。

さっき和也と付き合っちまうと思った時、すげぇ焦った。
お前がオレじゃねぇ誰かと付き合うなんて考えられねぇよ。

1回嫌われてるからとり返してからとか、
もっと距離つめてオレを知ってもらってからとか、
ちんたらやってる場合じゃねぇ。

「牧野…。オレはお前が好きだ」

知ってほしいなら、こうやって言葉で伝えんのが
一番早いに決まってる。






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