魔法の言葉 13

遠くの方で聞こえていた声は
だんだんこっちに近づいてくる。

オレはその声が近づく度に
心拍数が上がるのを感じていた。


『魔法の言葉』   第13話


「今日は何を教えてくれるの?」
「昨日お肉だったから鯖の味噌煮なんてどうですか?」
「味噌煮?味噌汁みたいなものかしら?」
「いえ!味噌味の煮物です。違いで言うと
 汁物と煮物なんですけど…って説明難しいなぁ…」
「なんでもいいわ。作ったらわかるでしょ?」
「そうですね。ふふっ…。お口に合うといいですけど…」
「大丈夫よ。貴方が教えてくれる料理はどれも美味しいわ」

そんなワケわかんねぇ会話が英語と日本語で交わされていて
それを通訳が訳しているようだった。

っつーか。内容なんてどうでもいい。

この声…。
会長の言ってる天使って…まさか。

そんな事があり得るのか…?

オレがそんな事を考えながらドアから目が離せずにいると
その会話の声はドアのすぐそこまで来ていて

「お客様が来てるようだから、挨拶だけしていきましょ」
「あ。じゃああたし先にキッチンに行ってます」
「あなたも一緒でいいのよ」
「え…でもあたし英語もろくにできないのに。
 大事なお客様に失礼になっちゃうんじゃ…」
「大丈夫よ。お客様も日本人なんだから」

そんな会話の後にドアが開く。

会長の奥さんの後ろから
部屋を遠慮がちに覗いたのはやっぱりあいつで。

オレを見つけてすげぇ驚いた顔して
「ど…道明寺っ!なんでっ!?」
とでっけぇ瞳が落ちるんじゃねぇかって程見開いていた。

なんであいつがここにいるのか。
どうしてオレに連絡の1つもよこさなかったのか。
近づいてくる声を聞きながら考えていたのに
姿を見た瞬間、
そんな事はどうでもよくなって、駆け寄って抱きしめた。

離れてたのはほんの3週ほどなのに。
まるで永遠かのように長かった…。

無事がわかるまでは生きた心地がしなくて。

無事だって聞いたって
この目で、この手で、確かめるまでは安心出来なくて。

誰といるのか、
そいつは牧野が好きなのか、とか
それとも牧野がそいつを好きなのか、とか

もう2度とお前に会えねぇんじゃねぇかとさえ思った。

「勝手に帰って行方不明って何だよそれ
 どんだけ心配したと思ってんだよ…。冗談じゃねぇよ…」
オレが吐き出すように呟いた言葉に

「うん…ごめんね」
と小さく答える。 
「いや。お前は謝んな。悪りぃのは全部オレだ。
 んな事より怪我したっつったな?
 ちゃんと顔見せろ。どこも何ともねぇのか?」
そう言ってあいつの顔を両手で包み込んで上を向かせる。

「うん…ちょっと頭打っちゃっただけで怪我も大した事なかったし
 おじさんが良くしてくれたから何ともないよ」
そう言って小さく笑うこいつの瞳には涙が滲んでいた。

「やっぱり君が会いに来た大切な人と言うのは
 司君の事だったんだね…つくし」
と会長がオレ達の後ろから声をかけてくる。

「おじさん…どうして?」
牧野は会長の方を見てきょとんとしている。

「驚かせてごめんよ。つくし。
 だけど楓社長に息子と会わせてやってほしいって
 頼まれてどうしても断る気にはならなくてね…」
と会長が言う。

「道明寺のお母さんが…?どうしてそんな事…」
「司君、さっき楓社長から渡された物にきっと
 その答えが書いてあるんじゃないのかな?」
そう言われて、
ポケットに入れていたさっきの手紙を牧野に渡す。

牧野はそっと広げてその中身を見て
じわっとまた涙を滲ませる。

その涙にオレは慌てて
「あのババァッ!また余計な事書いてあんだろっ!」
そう言って牧野から手紙を奪って読む。


『牧野さん
 あなたは少し教養がなさすぎるわ。
 
 英語で日常会話もできないようでは
 とても司の相手として認められないの。
 そこは理解して頂戴。
 タマに講師の手配を頼んでおくので
 あなたにその気があるなら
 教養を身につける努力をする事ね。

 伝言、まだ伝えてないわ。
 だから自分で直接言いなさい。

 司を頼みます。   

                   道明寺 楓 』


読み終わったオレは牧野に視線を移して
あの時、本当に言いたかった言葉を言ってやる。

「牧野。一緒に日本に帰るぞ」




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魔法の言葉 14

「一緒に日本に帰るぞ」

オレの言葉に涙を堪えながら頷く姿に
あの時にどれだけ傷つけたのかと胸が締め付けられた。


『魔法の言葉』   第14話


「さっきまでの司君とはまるで別人ですね」
と会長がオレを見て笑ってるのに気付いて

「すみません。失礼しました」
と頭を下げる。
「いや、いいんだよ。
 僕としては今の君の方がよっぽど好感が持てるよ」
そう言って今度は牧野の方を見ると

「バカな息子って言うからどんな人かと思ってたけど
 こんな素敵な青年が後継者なら
 道明寺が私の物になる日は永遠に来なさそうだね…残念だな」
と意味わかんねー事を言いながら笑いだして
「えっ…!おじさんっ!それ言っちゃダメ!」
と牧野は涙もひっこめて慌てだす。

「…おい。…バカな息子って
 まさかオレの事じゃねぇだろうな?」
「え…いやぁ…何の事だろうね?ははは…」
そう言って明らかに動揺しているこいつを羽交い絞めにしてやると
「離して~!」と暴れ出す様子に
会長と奥さんもクスクスと笑っていた。


「またいつでも遊びにおいで」
「私たちはもうつくしちゃんを娘同然と思っているから。
 こっちに来る事があったら必ず顔を見せてちょうだい。お願いよ?」
そう言って会長夫妻は牧野にオレと帰るように促すと

あいつも会長と奥さんも涙目になって何度も
「ありがとう」と言いながら
会長と奥さんと抱き合っている姿を見ていると
こいつがここでどれだけ大切にされていたか感じさせた。



その後、
牧野を連れて類のマンションに帰ると

「ほんとあんた人騒がせだね。…でも無事でよかった」
と類はさりげなく牧野を抱き寄せて額にキスをしやがった。

「類っ!てめぇ何しやがるっ!!」
オレは慌てて牧野を自分の後ろに隠すが
そんなオレを押しのけて顔をのぞかせるこいつは

「花沢類!なんでNYにいるの?」
とキスされた事よりそっちが気になるらしい。

「あのね。友達が異国で行方不明になってたんだよ?
 心配するのは当たり前でしょ。俺だけじゃなくて総二郎たちも
 あんたが連絡してくるまではこっちで探してたんだからね?」
とさすがの類も呆れ顔だ。


翌日。
プライベートジェットで日本に戻ると
邸にはどこで聞きつけたのかあいつらが来ていて
人の家で勝手に「おかえりパーティ」なる物を開いていた。

「つくし~~!」と滋が抱き着く横で
「お前、マジでその失踪癖なんとかしろよな?」
「そうだぞ。いい加減しろってんだ」
とあきらと総二郎がため息をつく。

「えへへ…。ごめんごめん。
 頭打ったせいで2週間くらい記憶が飛んじゃってて
 なんでNYにいるのかもわかってなかったんだよね…」
と牧野がNYでの出来事を説明し始めた。

「は~…そんな事があったのかよ」
「お前の周りって妙に大物が集まるよな…」
と総二郎たちは会長の名前を聞いて驚く。

「でもでも!そのおかげで
 司のお母さんも許してくれたって事でしょ?」
「そうですよね。“司を頼みます”なんて
 これは条件付きとは言え認めたも同然って事ですよね?」
滋と三条も手紙を読みながらうんうんと頷く。

それからは好き勝手に散らばって飲むこいつら。
その輪の中心で楽しそうに話す牧野を
オレはただ見つめていた。




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魔法の言葉 15

あいつらの隙を見て
「牧野…ちょっとこっち来い」

そう言ってオレはこいつの手を引っ張って適当な部屋に移動する。


『魔法の言葉』   第15話


「何?勝手に抜けて大丈夫なの??」
そう言って首をかしげるこいつ。
「勝手にパーティやってんのはあっちだろ。構うかよ」

2人でソファに腰を下ろして
オレはこいつの方に体を向けて
隣のこいつの体もオレの方に向けた。

それからNYであんな態度を取ったワケも話すと
あいつは涙目になりながら黙って聞いていた。

「お前がいなくなったって言われた時、
 マジで心臓止まるかと思った…。
 あんな形で追い返して本気で後悔した。
 本当はすげぇ嬉しかった…ありがとな。
 それなのにあんな事言って傷つけて悪かった…許してくれ」
オレが頭を下げると
あいつはしばらく黙ったまま何も言わない。

やっぱりもう許してくれねぇの…?
お前の中ではオレとの事はもう終わっちまったのか?
そう思って少し頭を上げて牧野の様子を伺ってみると

「……」
でっかい瞳をパチクリさせて固まっていた。

恐る恐る声をかけてみる。
「…おい?」
すると、オレの声にハッと気が付いたように
「…あ、ごめん」と一言。

ごめん、ってなんだよ。
やっぱりお前…
オレに愛想尽かしちまったのか…?

それでもオレはお前だけは失えねぇんだ
お前の気持ちが離れたっつーなら取り戻すしかねぇ。

オレの気持ちだけはちゃんと伝えておこうと
「牧野っ!…」
俯いた顔を上げて声を出すと同時にあいつの声が重なる。

「あんたが頭下げたりするからビックリしちゃった。
 文句くらい言おうと思ってたのに…。
 しょうがないな、もう。…許してあげるよ。
 あたしも心配いっぱいかけたしさ。お互い様だよね」
そう言って写真でも撮っておけばよかった、とクスクス笑う牧野。

「で?あんた、今何か言いかけてなかった?」
と首をかしげてるこいつ。

…今さら何て言えばいいんだよ。
まぁいいや。お前が許すって言って笑ってくれるなら何でもいい。

「いや…。それはもういい。
 それよりこれ…返しとくぞ」
そう言って土星のネックレスをこいつの首につけてやると

「あ!コレ!どうしてここに?
 盗られちゃったと思ってたのに!」
「そのスリがこれを売ろうとして、
 質屋から連絡が入ったんだよ。それで…」
聞いておきながらオレが説明するのもろくに聞かねぇで
大事そうに土星を触って
「無事だったんだぁ…よかったぁ」とか言ってるこいつ。

それはオレのセリフだっつーの…。
お前にもしもの事があったりしたら
それが形見になっちまうトコだったんだぞ…。

オレがどんな気持ちでそれ持ってたかお前わかってんのか…?

「お前の行方がわからなかった間
 マジで生きた心地しなかった…。
 もともとオレが悪りぃんだけどよ…
 あんな怖えー思いはもうたくさんだからな」
そう言って抱きしめるとこいつも腕を回してくれた。

その細せぇ腕の温かさに
漸く本当の意味でお前がオレの所に戻ってきた気がして
迂闊にも泣きそうになった…。




数日後。

知らねぇ番号から電話がかかってきて
不審に思いながらも出てみるとそれはババァからだった。

『わたくしです』
「…わたくしって誰だよ」
『……楓です。
 くだらないことを言ってる時間はないので用件だけ言うわ。
 高校を卒業したらこっちの大学に通いなさい。
 いずれ牧野さんをあなたの婚約者として発表すれば
 一般家庭の出身だと言う事で
 彼女に対しての風当りが強くなるのは目に見えています。
 その日が来るまでにあなたは彼女を守れるだけの力をつけなさい。
 それがあなた達の事を認める条件よ。
 では…牧野さん…いえ、つくしさんにも宜しくお伝えして』

言いたい事だけ言って切れた電話。
考えてみれば、ババァからかかってきたのなんて初めてじゃねぇの?

「けっ。んな事言われなくてもわかってんだよ…」
そう言いながら
今かかってきた番号を「ババァ」と登録するオレ。

翌日、それを牧野に話すと

「ババァ…って。あたしでも楓さんって登録してるのに…」
とため息をつきながら言う。
「あ?お前何でババァの番号知ってんだよ」
「あたしにもかかってきたのよ。
 邪魔してたのは財閥のためだとか、色々言ってたけど…」
そう言ってクスクス笑いだすこいつ。

「…何笑ってんだよ」
「うん?きっと“ごめんね”って言ってたんだろうな…って思ったらさ。
 ちょっとあんたのお母さんの事カワイイなって思ったの」
「お前…散々嫌がらせ受けてきたくせに
 よくそんな事言えんな…。お人よしも大概にしろっつーの」
そう言って牧野の額を弾いてやる。


牧野の事を“つくしさん”と呼ぶようになったババァに
ババァの事を“カワイイ”と言う牧野…。


『私はね、彼女達は今はお互い嫌いだと言い合ってるけどね。
 案外いいコンビになるんじゃないかと思ってるんですよ』


ふと思い出した会長の言葉が
あながち間違っちいねぇのかもしれないと
そんな事を思った…。


~ fin ~



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★あとがきはコチラ

「魔法の言葉」あとがき & 次回からは…

「魔法の言葉」

最後までお読み頂きありがとうございます。

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The one 1

「つくしちゃんっっっ!!」

「椿さん。お久しぶりで……ぐえっ。く、苦しいです…」


『The one』   第1話


あたしの言葉を聞いて
慌てて腕をほどいてくれる椿さん。

椿さんとは街で偶然知り合ってから
普段海外を飛び回っている彼女が
日本に帰ってくる度に連絡をくれて会っている
あたしのお姉さんのようなお友達。

「…ごめんなさいね?私ったらつい…」
会う度についつい突進&抱きつき攻撃をしてくる
椿さんはシュンとしている。
これも毎回の恒例みたいなもの。

「いえ。もう慣れちゃいました。
 それに苦しいだけで嫌じゃないですよ?嬉しいです」
あたしが言うと椿さんはホッとしたようににっこり笑ってくれる。

椿さんと出会った時はそのオーラから
どこかのお嬢様なのかなとは思ったけど
まさかあの道明寺HDのご令嬢だなんて思いもせずに
この邸に連れてこられた時は眩暈がした。

「つくしちゃんに似合うと思ってたくさんお土産買ってきたのよ。
 いつものお部屋に置いてるからあとで見て頂戴ね?」

椿さんは帰国の度に山のようなお土産を買ってきてくれるのだけど
独り暮らししてるあたしのマンションには
とても入りきらない量で…。
受け取れないと言うと、邸にあたしの部屋を作ったと言う…。

強引と言うか、なんと言うか…。
お金持ちの考える事って、まったく。

「椿さん…いつも本当にありがたいんですが
 あたし使う機会もないですから、お気持ちだけで十分です」
あたしが苦笑いしながら言うと

「あたしがしたくてしてる事だから
 つくしちゃんが気にする事ないのよ!
 あなたみたいな妹がいたら楽しいだろうなって
 本気で思ってるんだから!」
と頬を膨らませる。

本当に綺麗な顔してるのに
これだから、どんなに強引でも憎めない椿さん。

「あたしも椿さんを本当のお姉さんみたいに思ってますよ?
 …って全然似てないから申し訳ないけど」
あたしが言うと椿さんは涙目になってあたしを抱きしめる。

「あぁ…なんて可愛いの!うちのバカ弟とは大違いっ!」
「…司さん、でしたっけ?」

「そう。バカだけどね。
 今回の帰国もその弟が日本支社の支社長になるから
 そのパーティに顔出さなきゃいけなくなったからなのよ…」
とため息をつく。
「へぇ~…。それはおめでとうございます。
 若くして支社長なんて優秀なんですね?」
あたしの言葉に椿さんは盛大なため息をつく。

「え…何か変な事言いました?」
「優秀ねぇ…。ま、仕事ではそうかもしれないわね。
 姉の欲目で言えば可愛い所もあるけれど
 それでも人間としてはダメよあんなの。
 つくしちゃんはああいう男に引っかかっちゃダメよ?」
と力説してくる。

「あはは…。何だかわかりませんけど
 少なくともあたしと司さんが
 どうにかなるなんてあり得ないですから大丈夫ですよ~」
ケラケラ笑うあたしに

「あの子がもう少しまともだったら
 つくしちゃんオトして嫁にもらえって言うのにな…
 そしたら本当に妹になってもらえるのに…残念だわ」
と本当に残念そうにため息をつく。

と、そこに
「つくし…よく来たね」
と入って来たのはタマさん。

「タマさん!お久しぶりです!」
そう言ってかけよるとタマさんも笑ってくれる。
「あんたって子は椿お嬢様が連れてこないと顔見せないんだから
 出かけ先であんたが来てるって聞いて急いで帰ってきたんだよ…」
「当たり前ですよ!気軽に遊びに来れるような所じゃないです!」
と笑うあたし。


それからタマさんも加わって女3人で
話していると、突然部屋の扉が勢いよく開いた。


「姉ちゃんっ!いつの間に帰って来てたんだよ!?」
そう言ってそこに立っていたのは
顔だけは椿さんによく似たクルクル頭の長身の男…。



道明寺司…。最低最悪のあたしの天敵のような男。





いつも応援ありがとうございます♡

The one 2

珍しく仕事が早くに終わって邸に帰ると使用人から
姉ちゃんが帰って来てると聞く。

なんだよ!今日帰ってくるなら
事前に言ってくれてもいいじゃねぇか。


『The one』   第2話



「司。ノックぐらいしたらどうなの?
 お客様だって来てるのに失礼でしょ」
と姉ちゃんの言葉に視線を移すと

「…お邪魔してます」
と一瞬だけこっちを見て
ペコッと頭を下げるとスッとオレから視線をそらす女。

「司は初めてだったかしら?
 紹介するわね。牧野つくしさん、
 あたしの命の恩人で大事なお友達なのよ」
と姉ちゃんが言えば、

「何でも街で、椿お嬢様が貧血で倒れそうだった時に
 つくしが助けてくれたそうで…。
 だからいつもSPをつけて下さいと申してますのに
 このお転婆お嬢様には困ったもんですよ…」
とタマが姉ちゃんをジト目で睨んで続ける。
「つけてたわよ!だけど
 買い物に夢中になってたら
 いつの間にかはぐれてたんだもの…
 女の足について来れないSPが軟弱すぎなのよ…」
と姉ちゃんが珍しくバツが悪そうにしてるトコを見ると
マジでヤバかった時にこいつが助けたって事か。

「…世話になったみてーだな?」
オレが言うと、
「あ~…いえ。あたしも貧血よく起こすから
 体調悪そうなのも見てればわかるし、
 そう言う時の対処方も知ってただけで…」
とまるでオレじゃなくて姉ちゃんとタマに応えるように
こっちを見もせずに答える。

だけどそれを気にしてるのはオレだけのようで
「でもきっとあれは
 私とつくしちゃんが出会う為の運命だったと思うの」
と姉ちゃんはニコニコしていて

「まぁ、確かに。あの件がなければ
 あたしもこうしてつくしと話す事なんてなかったですけどね
 でも、いくら悪気がないとは言え、
 SPを無意識に撒くようなお転婆はほどほどにして下さいな。
 お嬢様に何かあったらあたしゃ心臓が止まってしまいますよ」
とタマまで呆れながらも頷いている。

それからしばらく話しながら
さりげなく牧野に話を振ってみても
牧野は相変わらず
姉ちゃん達に答えるような態度で全然こっちを見ねぇ…。

まるでオレがここにいるのを無視してるようで
気に食わねぇ…。

「牧野…お前仕事は何してんだ?」
と今度こそこっちを見ろ、と思いながらオレが言うと

「弁護士さんよ」
と答えたのは…突然現れたババァ。

「お母様!早かったのね?」
そう姉ちゃんが驚くのも無理はねぇ。

ババァがこんな時間に邸にいるなんて
いつ以来だ……って初めてなんじゃねぇの?

「牧野さんがいらしてるって聞いてね。
 ちょうど近くにいたから
 先日のお礼も兼ねて寄ったのよ。すぐにまた社に戻るわ」
そう言って牧野のすぐそばに来て

「この間はお休みだったのに申し訳なかったわね。
 あなたの言うとおりにしておいて正解だったわ。
 事務所を通してちゃんと相談料も請求して頂戴ね」
「いえ!そんな! お話の中でちょっと出た事に
 あたしが勝手に答えただけなので気にしないで下さい。
 お役に立てたなら良かったです」
とさすがの牧野もババァ相手だと緊張するのか
立ち上がって手をブンブン振っている。

「あ?ババァも牧野と知り合いなのかよ」
オレが言うと

「娘が世話になったのよ?当たり前です。
 そのお礼に伺った際に私も親しくなってね
 つい、仕事の事まで話しこんでしまって
 弁護士の立場からアドバイスを頂いたのよ」
と普段「鉄の女」と呼ばれる人物と同一人物なのかと思うほど
柔らかい表情を牧野に向けるババァ。
 

それからしばらく牧野と話してババァは
また食事でも、とちゃっかり約束もとりつけて部屋をあとにする。


その間もやっぱりこいつは
俺と目を合わそうとはしなかった。




いつも応援ありがとうございます♡

The one 3

話もひと段落したところで
「そろそろお土産も見てもらおうかしら~」

姉ちゃんはそう楽しそうに言うが、
土産らしい物はこの部屋に見当たらない。


『The one』   第3話


「あ?土産なんてどこにもねぇじゃん」
オレが言うと、

「ここにはね。つくしちゃんの部屋に置いてあるのよ」
と訳わけんねー事を言いだす。

そんなオレの疑問を察したタマが呆れた顔して
「椿お嬢様が帰国の度に土産を大量に買ってくるんですが
 あまりの多さにつくしの家には入りきらなくて
 受け取ってくれないって泣きつくもんだから
 この邸に有り余る部屋の1つをつくしの部屋にしてしまえば
 いいんじゃないかって提案したんですよ。
 それ以来ますます土産の量が増えちまって
 もうすぐ2つめの部屋を用意するはめになりそうな勢いですがねぇ…」
とタマがため息をつく。

この邸にこいつ用の部屋…?
そんなもん聞いた事もねぇぞ…。

嬉しそうに牧野の手を引いて
その牧野部屋とやらに行く姉ちゃん達になんとなくついて行くと
姉ちゃんの私室の近くに設けられたその部屋のクローゼットは
服や鞄に靴、装飾品が綺麗に整頓されていて
ここだけで店が開けそうなくらいの量だった。

その一角に今回買ってきた分だと思われる
まだ手つかずの箱の山がある。

「椿さん…またこんなに買ってきて…」
と牧野はその山を見て、ガクッと頭を垂れている。

「あら、これでもずい分減らしたのよ?」
と姉ちゃんはそんな牧野に構うことなく
1つの箱を開けて出してきたドレスを
牧野に合わせて「やっぱり似合う!」満足そうに微笑む。

こうなったらもう完全に姉ちゃんのペース。
フィッティングルームに入っては
あれこれと着せ替え人形よろしく次々と着替えさせられている牧野。

その様子を入口の近くで立ったまま黙って見ているオレとタマ。

「姉ちゃん、楽しそうだな。…牧野はどうなのかわかんねぇが」
オレがボソッと呟くと

「えぇ。つくしは申し訳ないってそればっかりだけど
 椿お嬢様はつくしを本当の妹のように可愛がってるからね。
 つくしもその愛情を感じているから
 困惑はしてても邪険には出来ないんだろうね…。優しい子だよ、本当に」
とタマも困ったように笑う。

「あぁ…そうだな」

考えてみれば
あいつは昔からそうだったな…。

オレが牧野をぼーっと見ていると

「つくしが気になりますか?」
とタマ。
「あ?なんだよそれ」
「いやね。椿お嬢様のお友達とは言え、
 坊っちゃんが初対面の人間、それも女性に
 こんなに構ってるのは初めて見るような気がしたんでね…」
そう言ってニヤっと笑う。

「あ?誰が初対面…」
そう言いかけた所で

「司!これどう?やっぱりつくしちゃんにピッタリよね?」
と姉ちゃんがオレの前に牧野を突き出す。

姉ちゃんによって全身コーディネートされた牧野は
確かによく似合っていて…マジで綺麗だと思った。

だけど…。

「ちょっ…椿さんっ!」
と目の前に立って向き合っていても
やっぱりオレと目を合わせようとしないこいつにイラつく。

だからつい…

「いいんじゃねぇの?
 貧乏人のお前には一生かかってもできねー贅沢だろ?」
と自分でもガキくせぇと呆れるほどの悪態をつくオレの言葉に

「司っ!!あんたって子はぁぁぁ!!」
と今にも蹴りが飛んできそうな姉ちゃんを止めたのは

それよりも早く、
ドスッ!と鈍い音と共にオレの腹に打ち込まれた1発の強烈なパンチ。

「あたしは確かに貧乏人だけどね!
 あんたみたいに性根が腐ってるよりはずっとマシよ!」
と漸くオレに視線を向けて怒鳴りつけた牧野。

相変わらず的確に鳩尾を打ってくる
こいつの拳は強烈で息もままならない程苦しいが。

こいつが少しも目をそらさずに
まっすぐオレを見てる事にどこか喜びさえ感じる。

そんな牧野に抱き着いて
「つくしちゃん!よくやったわ!!
 そうよ。こんなバカ放っておいて行きましょ?」
とまた牧野を連れて奥に行く。

「…今のは坊っちゃんが悪いですよ。
 いい歳なんですから女性の扱いくらい覚えてくださいな」
「あぁ…わかってるつもりだったんだけどな。
 ……どうやら大きな勘違いだったみてぇだな」
オレの言葉に
呆れたように盛大なため息をつくタマ。


仕方ねぇだろ。
オレも今思い出したんだよ。


あいつが狂暴だって事も。

とっくに忘れたつもりだったこの想いもな。






いつも応援ありがとうございます♡

独り言。

ども。管理人のkomaです。

いつも私のくだらない妄想にお付き合い頂き、ありがとうございます。


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Author:koma
管理人komaの
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ようこそいらっしゃいました。

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ゆる~いつかつく道を
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