プロミス 5

道明寺とご飯を食べてから2週間。

今日は道明寺邸でみんなと
約束の鍋をする事になった。


『プロミス』   第5話


道明寺邸に来るのも10年ぶり。
通された部屋に入ると、懐かしい顔が揃っていた。

「牧野!久しぶりだな」と美作さん。
「しばらく見ねぇ間にちょっとは女らしくなったんじゃねぇ?」
と、あたしをまじまじと見てくるのは西門さん。

道明寺もそうだったけど、
2人もまた大人になってさらに魅力を増していた。
ほんと神様って不公平だわ…。

「ご無沙汰しております」とわざとらしくお辞儀をすると

一瞬、呆気にとられたような顔をしてから
「うげぇ。らしくねぇ事すんじゃねぇよ。気持ちわりぃ」
とゲラゲラ笑う2人に
「…やっぱり?」とあたしもつられて笑う。


「つくし~~!!遅いよ!」と後ろからタックルしてきた滋さんに吹き飛ばされる。
「…毎度毎度でツッコむ気にもなりませんが
 とりあえず先輩、大丈夫ですか?」と桜子が手を差し出してくれる。
「いてて…もう滋さんっ!普通に挨拶してよ」と抗議すると
「えへへ~。ごめんごめん」と舌をペロっと出す。

「ククッ!あんたすごい吹き飛んでたよ」と
後ろでその様子をソファに座って見ていた花沢類が笑っている。

あたしの高校時代はかなり特殊だったと思うけど
それでもこうやってブランクがあっても会った瞬間に
まるで時間が戻ったように打ち解けられるのは不思議だ。


「皆様お待たせいたしました。こちらへどうぞ」
そう使用人の方に案内されてダイニングに移動すると、
道明寺もちょうど来た所みたいだった。

テーブルを見るとお鍋の準備がすでに整っている。

あたしはあいつの元に寄って行って
「あたしやらなくて良かったの?」と聞いてみる。

「あ?あぁ。人数が多くなっちまったからな。
 約束の鍋はまた今度2人でやろうぜ?」なんて事を言う。

「あんたね…。まぁ、あたしも
 どっちが食べたいかって言われたらシェフの鍋の方がいいけどさ。
 でももう鍋って季節でもないのにいいの?」
とため息をつく。

「いいんだよ。約束は約束だろ。
 オレはお前と2人でやりたいんだよ。
 たとえあいつらでも邪魔されたくねぇからな」
と真剣な顔つきで言うこいつが
10年前のまだ幼さを残すアイツと重なる。

そう言えば
昔から良くも悪くもストレートな愛情表現する奴だったよね。


それからみんなで鍋をつつきながら
お互いの近況なんかを話す。


「へぇ~。牧野は弁護士かよ、似合ってんじゃん」と西門さん。
「俺のとこの顧問弁護士にでもなってもらうかな」
と美作さんが言うと
「ダメだよ。なってもらうなら俺が先。
 だけど何回頼んでもやってくれないんだもん」
花沢類が美作さんを牽制する。

「あのね。あんた達くらいの会社の規模なら
 優秀な顧問弁護士がいくらでもいるじゃない。
 あたしみたいなペーペーに務まるわけないでしょ!」

「でもつくしー。私個人の弁護についてって言っても断るじゃない」
と滋さんまで頬を膨らませる。

「だって滋さん個人的に弁護士が必要な事なんてないでしょ?
 それに相談くらいならお茶しながら聞けるし必要ないじゃない」
とため息をつく。

「もうっ。相変わらず欲がないんだからっ」
と滋さんは納得いかない様子。

そんな話をしているうちに鍋のシメまでたっぷり味わって満腹。

食後はお酒を飲みながら、それぞれ散らばって
あたしは滋さんと桜子と。
久々に揃ったと言っていたF4も固まって何やら話し込んでいた。




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プロミス 6

滋たちと話している牧野は
すげー楽しそうにケラケラと笑っている。

そう言えばあいつ、オレの前では
怒ってるかため息ついてばっかでまだあんな風に笑ってねぇな…。



『プロミス』   第6話



「で?司はいつから牧野をまた追っかけ始めたんだ?」

滋たちと話している牧野をぼんやり見ていたオレに
総二郎とあきらが2人でニヤニヤしてやがる。


「漸く司にも女の影が、と思ったら結局牧野だもんな」とあきら。
「よくもまぁ、そんだけ1人の女に執着できるよな」と総二郎。
「うるせぇよ…」

しょうがねぇだろ。
どうやったってオレはあいつ以外考えられねぇんだからよ。

あいつを迎えに行く事に文句を言わせねぇだけの力を
手に入れるのにこんなにかかっちまっただけだ。

「で?肝心の牧野はどんな調子なんだよ」とあきら。
「10年経ってもオレを邪険にする女はあいつしかいねぇよ」
とオレが愚痴ると、2人は苦笑いを浮かべる。

「そういや類とはどうなってんだよ。たまには会ってたんだろ?」
と総二郎がオレがあえて触れてなかった扉を遠慮なく開ける。

類を見ていればわかる。
こいつもまだ牧野を諦めてなんかねぇ。

あきらと総二郎は高校卒業以来会ってなかったらしいが
類だけは未だに連絡を取り合っていた。

あの時だってそうだ。
何もしてやれなかったオレとは違って
NYまであいつを迎えに来て
不甲斐ないオレに殴りかかってきた。

オレがあいつを遠くから想っていた10年。
類は誰よりも近くで寄り添っていたんだろう…。


ソファに横になって目を閉じていた類は
総二郎の言葉に面倒くさそうにチラッと目を開けて

「……俺はとっくにフラれてるよ」
とため息をつく。

その言葉に安堵するオレ。
まさかとは思ってはいたが、
あのパンツの男が類だって可能性も当然あった。

認めたくはねぇが、類はオレが危険視する唯一のライバルだ。

誰が相手であろうと、絶対に譲る気はねぇが
それが類となるとそう簡単にはいかなくなっちまう。

まだパンツの男がどんな奴かもわからねぇが
とりあえず類じゃねぇとわかっただけでも
オレにとっては収穫だ。

しかしそのライバルは
オレの心が緩んだ所を見透かすように

「だからって司にライバルがいないわけじゃないよ?
 牧野にはずっと好きな人がいるみたいだからね…」

とヘビー級のボディブローをくらわせてくる。

それってもしかしなくてもパンツの男だろ。
あの奥手の牧野が部屋に泊めて、結婚も考えるくらいだ。
そりゃそんな浅い気持ちだと思ってはなかったが
あえてそこを言わなくてもいいんじゃねぇのか?

肩を落とすオレを横目に

「おい類、それって牧野に彼氏がいるって事か?」と総二郎。
「さぁね」
とさらっと答える。

「その男、牧野ん家にも出入りしてるし
 結婚情報誌まで買ってるくらいだから当然付き合ってんだろ」
オレが不貞腐れながら愚痴れば

「おいおい。マジかよ。司、どうすんだよ?」とあきらが身を乗り出す。

「どうもしねぇよ。あいつに今男がいようが、
 それは10年放っておいたオレが悪りぃんだから仕方ねぇ。
 どんな手を使ってでもそいつから牧野を掻っ攫うまでだろ」
とため息をつくと

「ふーん?悪かったとは思ってるんだ?」
と類がオレを見る。

あの時感情のままに牧野を抱きしめていたとしても
またババァに邪魔されて、
結局はあいつを手に入れられなかったと思う。
そうならないための10年だ。

だけどそれはオレの都合であって
いつ迎えに行けるかもわからないのに
オレを待っててくれとは言えなかった。

「あぁ。あの時の選択が間違ってたとは思ってねぇが
 NYまで来てくれたあいつをあんな風に追い返して
 寂しい思いをさせたのは悪かったと思ってんよ」
オレがそう言うと類は

「司が反省してなかったら邪魔してやるつもりだったけど
 今のお前にだったら負けたって思ってもいいから
 応援してあげよっかな」
とクスっと笑った。






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プロミス 7

類がオレを認めてくれた。

別に類の許しなど必要ないとは思ってるが
アイツをずっと見守ってくれていた親友のその言葉が
オレの大きな力となるのもまた事実だ。



『プロミス』   第7話



あの後、類は寝ちまうし、総二郎とあきらはそれぞれ
女に電話だとか言って、なんとなく1人になったオレ。


「道明寺さん、先輩の部屋に行ったらしいですね?」

聞こえた声に振り返ると三条の姿。
そのまま俺の正面に腰を落とす。

「お前はパンツの男見たことあんのか?」
オレが聞くと、

「パンツの男?何ですか、それ」と首をかしげる。

「あいつの部屋に干してあったんだよ。男モンの下着が」
そう言うと、納得したようにあぁ、と頷く。

「もちろんありますよ?男の方に使うと
 失礼な表現かもしれませんが、なんというか可愛い方ですわ」
とにっこりと笑う。

その顔には、少なからずパンツの男に対する好意が見てとれる。
こいつが認める男ならそれなりの男だと言うことか…。

だが、そのパンツの男のポジションを狙うオレにとっては
こいつの笑顔が悪魔の微笑みにしか見えねぇ。
三条。お前、黒い羽と尻尾でも生えてんじゃねぇの?

そんな事を思ったのが悪かったのか、

「なになにー?2人が話してるなんて珍しー!滋ちゃんも入れてよ」
と能天気そうな悪魔がもう1人増えた。

「滋さん、先輩はどうしたんですか?」
三条の言葉にオレも部屋を見渡すがあいつの姿がねぇ。

「ん?なんかね。せっかくだから
 タマさんにも挨拶してくるって行っちゃった」
と滋が答える。


「タマさんの所ならしばらくは帰ってきませんね…。」
と言葉を切ってから

「単刀直入にお聞きしますが、
 道明寺さんは10年も先輩を放っておいてどうして今さら?」
そう言った三条の瞳の奥が光っている。

普段はクールだが、牧野を本当に大事に思っているこいつ。
NYで冷たく追い返して傷つけておきながら、
結婚を考えるような相手と付き合っているあいつの幸せを
今さら振り回そうとするオレが許せねぇんだろうな…。

「そうだよ!向こうで彼女にフラれて寂しいからとか
 そんな理由だったら、さすがの滋ちゃんも許さないよ!?
 それにつくしには誰よりも幸せになってもらうんだからね!」
と滋まで一緒になってオレを責めだした。

三条はともかく。滋、お前はちょっと黙ってろ。
あいつを幸せにすんのはオレだ。
パンツの男になんか渡してたまるかよ。

「お前らからすれば今さらかもしれねぇが、
 オレはこの10年、牧野を忘れた事は一瞬もねぇ。
 あいつを手に入れるためにはどうしても必要な時間だったんだよ」

オレの言葉に滋は「司パワーは健在だねぇ!」
とか言いながらケラケラ笑っていたが
三条は納得いかなかったのか、

「…そうですか。だったら道明寺さん。
 先輩の寝室には入らない方がいいと思いますわよ?」
と意地悪な視線をオレによこす。

寝室と言えば牧野が入るのを拒否ってたあの部屋だろ。

「……なんでだよ」
オレが不機嫌に聞き返すと

「滋さん、ベッドサイドのアレ。
 道明寺さんが見たら泣いちゃうと思いません?」
と今度は滋に意味深な視線を送る。

滋はその視線を受けてしばらく考え込んでいたが、
何か思い当ったように、手をポンと叩く。
「ベッドサイド…?あぁ!アレね!
 うんうん。アレは泣くよね。司なんか、たぶん大号泣だよ!」
と、そんな事を言う。

「男として好きな女性の前で泣くなんて
 カッコ悪い所を見せたくないのであれば
 ベッドサイドには近づかない方がいいですわ」
とニマっと笑う三条の後ろに今度こそ黒い羽と尻尾が見えた。


オレが泣くほどのアレってなんだよ…。

まさかあいつ、結婚はまだ先みたいな事いいながら
実はパンツの男に婚約指輪でももらってんのか…?
それを大事に飾ってやがったりすんのか?

だとしたらさすがに泣くかもしれねぇ…。

…あの寝室に何があるんだよ。
この後いくら聞いても、この悪魔たちは教えてはくれなかった。





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プロミス 8

あいつらと鍋をしてから1ヶ月。

オレは時間を見つけては
毎日のようにLINEを送るが
相変わらずアイツは既読スルーってやつだ。


『プロミス』   第8話



はぁぁぁぁ。

最近のあたしはケータイを見てはため息だ。

普通これだけ無視されたら諦めたりしないもんなのかな?
温室育ちのお坊ちゃんのくせに
どうしてあいつはこんなに打たれ強いんだろうか。

どうして無視してるあたしの方がまいってるんだっつーの。

それでも、本気で拒否するつもりがあるのなら
番号を変えるなり、ブロックするなりできるのに
それをしないあたしは、一体どうしたいんだろう。

10年前のようなあんな悲しくて寂しい思いはもうしたくない…。

だからアイツの気持ちには応えないつもりなのに。
気が付くとアイツからのLINEを待ってる自分がいる。

アイツの気持ちに応える勇気もないのに
突っぱねきれないなんて。

あたしもズルいな…。


そんな事を思ってるとまたケータイが鳴る。

ケータイを見るとLINEじゃなくて、着信で。
かけてきたのは道明寺じゃなくて弟の進だった。

なんだ、進か…。

なんて、相手が道明寺じゃないと
無意識にガッカリしてる自分に気が付いたのも最近で。

「もしもし?進?」
『あ。姉ちゃん?今家にいんの?』
「いるけど…。どうしたの?」
『友里が残業でまだ上がれないらしくて。
 だから終わるまでの間ちょっとそっち行ってもいい?』

友里ちゃんと言うのは、進の彼女。
進にはもったいないくらいの可愛い子であたしとも仲がいい。
あたしの家の近くにある友里ちゃんの会社まで
迎えに行ったはいいけど、今日はまだ仕事が終わらないらしい。


10分後。

「急にゴメンな」と進。
「いいよ。珈琲でいい?」
と聞くとなんでもいいと頷く。

「あ、そう言えば姉ちゃん。
 こないだ友里のトコに入った空き巣、捕まったらしいよ」

3ヶ月前、友里ちゃんが家に帰ると部屋が荒らされていて
進が慌てて駆けつけると言う事件があった。
幸い友里ちゃんに怪我はなく、被害もそんなに大きくはなかったが、
それ以来、進は時間がある日は家まで送って行っているらしい。

「良かったじゃない!
 友里ちゃんもこれで少しは安心できるね」
あたしが珈琲を渡しながら言うと

「うん。でも俺はやっぱりまだ心配だけどね」
進は珈琲に口をつけながら答える。


それから30分ほど話していると
家のインターホンが鳴った。

「あれ?あんた友里ちゃんに直接ココに来るように言ったの?」
と聞くと、

「そんなワケないだろ。
 友里のヤツ、終わったら連絡しろって言っておいたのに…」
そう文句を言いながら玄関に向かう進。

「とりあえず上がってもらいなさいよ。
 今、友里ちゃんの分の珈琲も用意するから」
あたしも立ちあがってキッチンに向かう。

マグカップを出したところで

「ね、ね…姉ちゃんっ!!」
と進があたしを呼ぶ声がする。

「なにー?いいから友里ちゃんもあがってもらいなさいよ」
キッチンから声をかける。

「い、いいから!早く!ちょっと来てよ!」
進の慌てた声に何事かと
漸くあたしも玄関に向かう。

するとそこには
「よぉ。弟。久しぶりだな」
そう言って、進の頭をポンと叩く道明寺がいた。




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プロミス 9

いい加減、無視されるのも堪えてきて
あいつの顔を見たくなったオレは怒られるのも覚悟で

とりあえず機嫌取りにケーキでも買って
あいつの家に向かう事にした。


『プロミス』   第9話


ドアを開けたのが男だとわかった時
パンツの男が出て来たのかと、思わず胸倉を掴んだら
「ちょっ…何で!?…えっ!?」
そのどこか聞き覚えのある声によぉく見てみると
見知った奴だと気付いて手を離す。

「悪ぃ…人違いだ。
 よぉ、弟。久しぶりだな」
そう言ってポンと頭に手を乗せる。
まだまだ子供で可愛い奴だったこいつも
背もずいぶん伸びてすっかり大人の男に成長していた。

「どどどど、どう、道明寺さんっ!!」
弟はオレを見てパニくっていた。

そこに牧野が出てきて
姉弟で同じ顔をして驚いてやがる。…面白れぇ。

「ちょっと!あんた何しに来たのよ!」
牧野はオレを追い返そうとしていたが、

「とりあえず上がって下さい!狭い所ですが!」
と弟は通してくれた。
やっぱお前は可愛い奴だ。

結局、弟に根負けしてオレを部屋に入れた牧野は
上がり込んだ上に腹が減っただのと言うオレに
ブツブツ文句を言いながらも何か作りにキッチンに向かう。

「元気だったか?弟」
オレが話しかけると満面の笑みで頷くこいつ。

「はい!道明寺さんもお元気そうで。
 ……っていうか、なんでまたこんな所に?」
「あぁ…。お前の姉ちゃんを迎えに来た」
そう言うと、どことなくアイツに似た顔で
真っ赤になっている弟。

どうせなら牧野がこの顔してくれたらいいんだけどな。

「…お前は当然、パンツの男に会った事あんだろ?
 どんな奴だよ。オレ程じゃなくてもいい男なのか?」
結婚考えるくらいの付き合いなら弟に会わせてねぇはずがない。
どんな奴なのか探りを入れようと聞くと

「パンツの男?なんですかそれ」
ときょとんとする弟。

オレはバルコニーを指さして
「アイツがパンツ洗ってやってる男だよ。
 しょっちゅうここに泊まりに来んのか、そいつは」

すると、目を丸くした後、笑いだす弟。
「あはは!それオレのですよ。
 泊まりに来てるワケじゃないんですけど
 女の独り暮らしに見えないように干しとけって言ったんです」

そう言って話しはじめた弟の話をまとめるとこうだ。

彼女の家に空き巣が入ってから、
姉ちゃんである牧野の事も心配になった弟は
せめて洗濯物に男物の下着くらい混ぜて
防犯しとけと、自分の下着を数点持ってきたそうだ。

オレにしてみれば
そんな子供騙しみたいな方法の
どこが防犯になんのか
さっぱり意味がわかんねぇが、
弟に言わせれば一般的な方法らしい。


「だって姉ちゃんがもし、空き巣と鉢合わせなんかしちゃったら
 絶対逃げないで立ち向かおうとすると思うんです。
 最近の空き巣は凶器持ってる事だってあるのに…
 怪我なんかしたら…って思うと心配で」
そう言って呆れた顔でため息をつく弟。

あぁ…。
あいつなら悲鳴を上げる前に絶対殴りかかる。
弟の心配はもっともだ。


それよりも、だ。

…パンツの男は弟だった。


『もちろんありますよ?男の方に使うと
 失礼な表現かもしれませんが、なんというか可愛い方ですわ』

オレの頭の中にあの悪魔の笑顔が浮かぶ。
クソッ…。
あいつ…知ってやがったな。

確かに弟を一言で表現しろと言われれば「可愛い」と言うかもしれねぇ。
オレだって部屋に通してくれたこいつに
さっきそう思っちまったくらいだからな。

『嘘は申し上げておりませんわ』

オレの頭の中の悪魔がまたそう笑った気がした。

だが…。
パンツの男は弟でも
結婚を考えるような男がいる事には違いねぇんだよな。

まぁ、でも…。
この部屋にその男が
泊まってるってわけじゃなかっただけでも…。

オレにとっては喜ばしい事で
今日ここに来て良かったと自然と口元が緩む。



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プロミス 10

牧野が作ってくれた飯を運んでくる。

パンツの男が弟だってわかって
少し機嫌のいいオレは
前食った時よりこいつの飯が美味く感じた。


『プロミス』   第10話



「それにしても道明寺さんみたいな人が
 姉ちゃんの作ったご飯食べるなんてシュールな光景ですよね」
と弟が本当に不思議そうに見ている。

「お前は食わねぇのか?」
オレを見てるだけで弟は全然食ってねぇ。

「はい。俺、彼女の仕事が終わるの待ってるだけなんで…」
と話しはじめたところで弟のケータイが鳴る。

「あ、すみません。ちょっと失礼します。
 もしもし?終わった?……うん。今姉ちゃんとこ。
 じゃあ迎えに行くからちょっと待ってて」
そう言うと電話を切って、

「すみません。道明寺さん。
 僕はこれで失礼しますので、ごゆっくり
 …ってここ俺ん家じゃないんですけど」
とにっこりと笑う。

「おう。またな」と返事をすると
ペコっと頭を下げて立ち上がって
部屋を出ようとした所で振り返る。

「そうだ、姉ちゃん。あれ買っといてくれた?」

「あぁ、うん。でもこれ重いよ?持って帰れるの?」
そう言って弟に渡していたのは…あの結婚情報誌。

「うわ…ほんとだ。何だコレ、辞書みたい。
 ま、鞄にはなんとか入るしいいや。サンキュー姉ちゃん」



目の前で繰り広げられる2人のやり取りを
固まったままじーっと見つめるオレは空中で箸も止まったままだ。


じゃあまた、とか挨拶を手短に済ませて
彼女を迎えに行った弟を、玄関まで見送っていた牧野が
部屋に戻ってきて何事もなかったように飯を食い始める。


「…おい」
オレが固まったまま声を出すと

「何?おいしくない?」
と首をかしげる。
「いや。美味いけどよ…ってそうじゃねぇよっ!」

「…?なによ大きな声出して」
牧野は俺の声が大きくなった事に驚いている。

「弟も結婚考えてんのか?」
オレが聞くと、コクンと頷く牧野。

「友里ちゃんのトコに空き巣が入った話聞いたんでしょ?
 それ以来、進ったら出来るだけ送ってあげてるんだけど、
 やっぱり毎日ってわけにもいかないじゃない?
 で、そんな時に、帰る家が一緒だったらな…って思ったんだって。
 だからってすぐ結婚するって訳じゃないんだろうけどさ。
 ただ、ああいう雑誌って女性が買うイメージあるでしょ?
 それであたしに買っといてって頼んできたのよ」

そう言って弟が結婚を考えてる事を教えてくれた牧野。
…それはいいと思うんだけどよ。

「で?お前も弟にあてられて
 彼氏と結婚してぇとか思うようになったのか?」
オレが言うと、首をかしげる牧野。

「彼氏?結婚?何の話してんの、あんた」
とそんな事を言うこいつ。

「あ?お前結婚したいと思えるほどの彼氏がいんじゃねぇのかよ」
オレは箸を置いて詰め寄る。

すると牧野は
「彼氏?あたしに?いないわよ、そんなの。
 彼氏がいる身であんたみたいなのを
 何度も部屋に上げたりするわけないでしょ!」
と盛大なため息をついた。





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プロミス 11

パンツの男は弟で、
結婚を考えてんのもまた弟で。

牧野に結婚を考えてる彼氏なんていなくて…。



『プロミス』   第11話



唐突すぎる展開に
パニくる頭をゆっくり整理して質問をする。

「彼氏がいねぇのはわかった。
 でもお前、ずっと好きな奴はいるんだよな?」

類が言ってた。
牧野には長い間好きな男がいると…。
あの時オレはてっきりそれがパンツの男で彼氏だと思ってた。

オレの質問に、こいつは頬を赤く染める。
そして、
「い…いるよ。もう随分前に
 1回フラれてちゃってるし今さらだけどね…」
とそんな事を言う。

もしかしたら好きな奴がいるっつーのも
勘違いなんじゃねぇかと思ったオレの淡い期待はあっさりと打ち砕かれる。


フラれてもまだ諦められねぇ程なのかよ。
お前にそこまで想われて落ちねぇヤツなんているのかよ。

クソッ…!

どこのどいつだよ。
牧野をフったとかふざけた事しやがった怒りと、嫉妬で
…ぶっ殺してやりてぇ、と本気で思う。

牧野は照れ臭いのか、
お茶を取ってくるとかなんとか言ってキッチンに
パタパタと慌てて走って行く。


今考えれば、この時のオレは
もうどうにでもなれとヤケを起こしていたんだと思う。

立ち上がって、あの部屋のドアを静かに開ける。
そこはやっぱり寝室で、
壁側にベッドと、その横にライトを置いてるチェストがある。

三条が言ってたベッドサイドってあれか?
でもその上にはライトだけで他には何もねぇ。

近づいてみると引き出しが1つ付いていて
オレは迷わず、そのチェストの引き出しを開けた。


またオレの頭の中で悪魔が笑う。

『だから見ない方がいいって忠告しましたのに』 と



引き出しの中身にそっと震える手を伸ばす。

そこに入っていたのは…

オレが昔あいつにやった土星のネックレスと、
いつかあいつと見た野球の試合の記念ボール。
書くだけ書いて出される事のなかったらしい
何通ものオレ宛ての未発送のエアメール。

オレは1枚1枚そのエアメールを開く。

そのエアメールには
『約束はちゃんと守ってね。待ってるから』
『英徳を卒業して、国立の大学に受かったよ』
『弁護士になれたよ』
などなど、近況を話す内容の物がたくさんと、

一番下に隠すように置かれていたエアメールには
『やっぱり好きだよ、道明寺』
そんな文字を上からペンでグチャグチャと
かき消したような手紙が入っていた。

読み終わったオレは
片手でこいつのエアメールを握りしめて、もう一方の手で顔を覆ってた。

あいつをフッたふざけた男。
ぶっ殺してやりてぇのは…

10年前のオレだ。

そこに、
「ちょっと!道明寺こっちは入らないでって言っ…
 って!!ああああんた!何してんのよっっ!!」
と慌ててオレからエアメールを奪う。

そのまま逃げようとするこいつを捕まえて抱きしめる。

しばらくすると、オレの異変に気付いたのか
腕の中で暴れていた牧野が動きを止めた。


「……泣いてるの?」
小せぇ声でそう聞いて顔を上げようとするが
オレはそれを拒むようにさらに強く抱きしめてやる。

「…あん時、傷つけて悪かった。
 寂しい思いをさせて悪かった。
 …10年も待たせて悪かった。
 これ全部その時に読みたかった。
 お前がオレを想ってくれててすげぇ嬉しい。
 オレもお前が好きだ。…愛してる」


オレはゴチャゴチャな感情の中から言葉を拾い上げて
腕の中に閉じ込めた牧野に
それをひとつひとつ、ただ伝えてやる事しかできなかった。





いつも応援ありがとうございます♡

プロミス 12

牧野はじっとしたまま
オレの言葉を黙って聞いているが

時々鼻をすすっていて、
こいつも泣いているようだった…。



『プロミス』   第12話



「なんでオレがこの間、お前に鍋作らせなかったかわかるか?」
そう言うと、しばらくしてから小さく首を振る牧野。

「お前に鍋作ってもらっちまったら、約束がなくなちまって
 お前に会う口実がなくなると思うと怖かったからだ。
 正直に言うと、お前がオレに振り向いてくれるまで
 あの約束をどうにか先延ばしにする事ばっか考えてた…」


「だから…約束がなくなっちまう前に、
 ……またオレと約束をしねぇか…?」

オレが力を緩めると、
そっと顔を上げた牧野の瞳はやっぱり濡れていた。


「2度と寂しい思いはさせねぇ。
 ずっとお前だけを愛し続ける。
 絶対お前を幸せにする。
 この3つをお前に約束する…。
 だから。…俺と結婚してくれ。牧野」

すると牧野は…

「…やだ。」

そう一言い放ちやがった。


別に自信があったわけじゃねぇ。
こいつは昔からオレの思う通りになんかならない女だ。

だが…いくらなんでもそんな簡単に断るとは思ってなかった。
そんな即答するほどオレと結婚すんの嫌なのかよ。

もう手紙を読んでる時点で泣いちまってるから
今さらカッコ悪りぃとか関係ねぇかもしれないが
また涙が溢れてくるオレ。

するとこいつは小せぇ手でオレの涙を拭って

「1つめは絶対守って。破ったら許さない。
 2つめは…しょうがないからあたしも約束してあげる。
 だけど、3つめの約束が気に入らない。
 あたしは誰かに幸せにしてもらおうなんて思ってないし、
 あんたにも幸せになってほしいの。
 どうせだったら…2人で幸せになるって約束してくれなきゃ、やだ」
そんな事を涙を溜めた瞳のままで言う。

涙腺っつーのは一度崩壊したら
自分じゃ制御できねぇんだって初めて知った。

もう自分でもなんで泣いてんのかわかんねぇよ…。

「あぁ…幸せになろう。2人で」
オレがそう言うと、あいつは漸く笑顔で頷いてくれた。

お前と再会してから、初めてオレに向けた笑顔は
オレとの人生を選んでくれた笑顔だった。
オレはその顔を一生忘れねぇと思う。






あれから3日。
あいつはいきなりあたしの荷物を運び出させて、
勝手に新しいマンションに引っ越しさせた。

そのマンションはやっぱりというか、なんというか…。
「なんで独り暮らしでこんな広い部屋がいるのよ…」
そうため息をついて呟くあたしに

「あ?誰がお前だけの部屋だっつったんだよ。
 オレも一緒に住むに決まってんだろ?」
なんて事を言う。

「はぁ?そんな事聞いてないんだけど!?」
あたしが抗議すると、
あいつは頭に片手をポンと乗せて少し屈んで目線を合わせてくる。

「約束1つめ。“寂しい思いはさせねぇ”
 お前、これ絶対守れって言ったよな?
 結婚するつってもいろいろ準備もあるしよ。
 その間お前に独り暮らしなんかさせて万が一にも
 夜中にお前が寂しくなったりしたらどうすんだよ。
 破ったら許さねぇんだろ?だったらずっと一緒にいるしかねぇよな?」
なんてオレ様全開な顔で笑う。


その日は2人で約束の鍋をつついた。

漸く果たされた約束。
10年前はそれが2人の最後になると思っていた
少し切ない約束だった鍋は2人のスタートの鍋になった。

これからはわざわざ約束なんてしなくても
毎日同じ家に帰って、一緒にいられる。

それにあたし達にはまた新しい約束がある。
守るのに一生かかるこの約束がある限り、
あたし達はきっと離れたりしない。


~fin~




いつも応援ありがとうございます♡


★あとがきはコチラ~★
プロフィール

koma

Author:koma
管理人komaの
くだらない妄想の世界へ
ようこそいらっしゃいました。

基本テイストとしては
ラブコメ風味の
ゆる~いつかつく道を
突っ走っております。

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落書きにどハマり中♡
 
おかげで執筆が
進みません…(笑)
 
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