First love 7

今まで抑えつけていた気持ちは
どんどんデカくなって
自分でも戸惑うくらいだった。

とりあえず、牧野に会いてぇな…。


『First love』   第7話



オレはあきらの家に来ていた。
「…司?どうしたんだよ」突然の訪問に驚くあきら。
「…いや。近くまできたからよ」
「ふーん?」

「お前がオレん家来るとか珍しいよな?
 何か用事でもあったんじゃねーの?」とあきら。

確かにそうだ。オレはあきらの家は苦手だ。
何が苦手って、まずこのメルヘンとか言うのか?どこもかしこも
ピンクだったりうさぎやクマだったり甘ったるいったらありゃしねぇ。
そして何より…あきらの母ちゃんが苦手だ。
テンション高けぇし、怒ると泣きだしたりして面倒くせぇし…。
だからオレは出来るだけこの家には近づかないようにしていた。

でも…昨日あいつらと話していた流れで、
牧野が今日家庭教師の日だと知った。

カフェテラスで会ってから、当然ながら会ってねぇ。
オレと牧野には接点がねぇんだからよ。

あきらの家が面倒くせぇ…と思う以上に
牧野に会いたかった…それだけだ。
でもそんなカッコ悪りぃこと言えるかよ…。

「別に。暇だったから寄っただけだろ」
とそっけなく答える。

しばらくすると牧野がやってきた。
「こんにちは…?」
何故か疑問形で挨拶をする牧野。
ちょっと首をかしげてる仕草でさえかわいい。
オレに挨拶してんのかと思うだけでニヤけそうになる。
だけどそれを表に出さないように
「…おぅ」とだけ答える。

「早えーな、牧野。ちょっとこっち寄ってくか?」
あきらの言葉にオレは心の中でナイス!とガッツポーズをする。
…が。
「ううん。遠慮しとく。絵夢ちゃんと芽夢ちゃんも待ってると思うから」
とさっさと行ってしまった。
あんな双子一生待たせとけばいいだろうが!
オレらの誘いをあっさり断るなんてお前くらいなもんだぞ!
心の中で叫んでも、牧野に聞こえるはずもない…。

3時間後、牧野が双子と一緒にダイニングに来る。
オレを見て一瞬固まりながらもあきらの母ちゃんに促され席につく。

オレの隣で飯を食う牧野…。
どれを食べても美味そうで、オレまで食欲がわくような気がする。
だけどデザートだけは無理だ。
あきらの母ちゃんの作るデザートは
特にクソ甘いモンばかりでとても食えねぇ。
オレは牧野が食べ終わった所を見計らって自分の皿を横に滑らせる。
「…食えよ」
最初はいらないと言ってきたが、甘いモンが苦手だと言うと
遠慮なく、とか言いながら美味そうに食う。

美味そうに食う牧野が可愛くてそのまま言葉にすると
「美味そうじゃなくて、ほんとに美味しいのよ」と答える。

オレを目の前にしてもやっぱり飾らないこいつが可愛くて
「…そうかよ」と言うオレは自然と笑っていたと思う。
だけど次に自分の事を「貧乏人」だと言って笑う牧野。
そんな事はとっくに知っていた。
バイトをしながら独り暮らししてるくせに
努力家で成績もよくて特待生で。

お前を知れば知るほどオレはお前にハマってく。

でも勝手に調べたような内容を
知ってるなんて本人に言えるはずもなく
「貧乏人なのか?」と聞き返した。
自然に聞き返したつもりだったのに
何故か牧野はフンと鼻を鳴らす。

…なんだよ、怒ってんのか?何を怒ってんだよ。
今まで他人に気ぃ使った事なんかねぇからわかんねぇ…。

そのまましばらく牧野の様子を探っていると
怒ってるわけじゃなさそうだ、と安心するも
そろそろ帰ると言いだした。

自然な流れであきらが送るとあいつの鞄を持つ。

おい…まさかいつもあきらが送ってんのか?
それってもしかしなくても2人きりじゃねぇかよ…。

焦ったオレは慌てて
「俺もそろそろ帰る」と立ち上がっていた。






★本日と明日は0:00の『First love』の他に
 12:00に2話編成の短編を入れたいと思います。
 思いつきのお話ですが、よろしければそちらも覗いていただけると嬉しいです★
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春の嵐 前編

★思いつきのお話です。2人は付き合ってる設定で…よろしくです★





あいつと喧嘩して1週間。

そろそろ牧野不足が深刻化してきたオレに
あいつはとんでもねー爆弾を放り投げてきた。


『春の嵐』  前編



1週間前。



珍しく旅行用パンフレットを見ている牧野。
「なんだよ。どっか行きてぇの?」
こいつがどこかに行きたがるなんてめったにねぇ。
どこでも連れてってやろうと覗きこむオレ。

「え?あぁ。違う違う。今度ね、会社の慰安旅行があるんだよね♪
 だから自由時間に回れそうな所チェックしてるの」
のんきに答える牧野。

「お前…それ行くつもりなのか?」
「へ?当たり前じゃない。みんな行くんだもん」
「みんなって…当然男も含まれてんだろ?」

そっからは散々だった。
オレが他のヤローがいるなら行かせないと言えば
会社の行事にまで口を出すなだの、なんだの
あいつはブチ切れて帰っちまってそのまま音信不通。



そして今に至る。


♪~…♪~…
牧野からの着信に、オレはほくそ笑む。

あいつからかけてくるって事はあいつが折れて
慰安旅行には行かねぇって言うって事だ。

喧嘩した後、電話をかけてきた方が折れて、仲直り。

今までだったらそうだった。


「…なんだよ」
嬉しさを隠してあくまでも不機嫌に出る。
『どうしても慰安旅行行っちゃダメなの?』

妙に静かな牧野の声。
そんなに行きたかったのか?

でもオレとしては他のヤローがいるのに
泊まりなんて考えられねぇ。

「あぁ。許せねぇな」
『……わかった』

これで今回はオレの勝利だ。
そう思って思わず口角を上げたオレにあいつが続けた言葉は

『…道明寺のそういう所がもう我慢できない。
 あたしは遊びで旅行に行くんじゃない。
 これだって仕事の付き合いの一環なの。
 それが受け入れられないならしょうがないよね。
 あたし達、別れよう。』

そんな別れの言葉だった。



その数時間後、オレは総二郎達を呼びだす。

「急に呼び出すんじゃねぇよ。もう学生じゃねぇんだぞ、オレら」
「どうせ牧野と喧嘩してこじらせてんだろ?
 お前がさっさと謝っちまえばいいだけだろうが」

「…うるせぇよ」
普段ならここで文句を言い返すオレが頭を垂れてるのを見て3人が顔を見合わす。

「…ほんとに何かあったわけ?」と類言うと2人もソファに腰かける。


それからこいつらに全部話したオレ。

「慰安旅行くらいいいじゃねぇかよ。」
「気持ちはわからんでもないが、会社の行事に口出すのはまずいんじゃねぇ?
 お前だって女の秘書もつれて出張行ったりするだろう?」
「牧野が愛想尽かしてもしょうがないね」

と3人ともオレが悪いと言う。
お前らは風呂上りでいい匂いさせてる牧野の色気も
寝起きで無防備な牧野の可愛さも知らねぇからそんな事が言えるんだ。

あんな姿、他のヤローに見せてたまるかよ…。
あれは全部オレだけが知ってればいい姿なんだよ…。

そんな事を考えて、不貞腐れるオレに

「しょうがないな、もう。
 とりあえず明日、俺が牧野に話聞いてきてあげるから」
類がため息をつきながら言う。

「……それって2人っきりでかよ?」
軽く睨みながら言うオレに類の奴は

「だったら司も来れば?でも司がいるせいで
 牧野が興奮して、もっとこじれても俺は知らないよ?」
なんて恐ろしい事を言う。

「そうだな。牧野を落ち着かせるには類が一番だ」とあきら。
「お前だってどうにかして欲しいから呼んだんだろ?
 だったらここは類にまかせて大人しくしてろ」と総二郎。

「はぁぁぁ…。わーったよ」

こんな時にまで嫉妬を抑えられない程
お前に惚れてるっつーのに。

お前は慰安旅行と引き換えに
オレをあっさり切り捨てて平気なのかよ…。


その後酒を飲んでも飲んでも酔えねぇオレ。
この日ほど自分の酒の強さを恨んだことはねぇ。







★後編は明日の12:00に~。
 って言っても勘のいい方には展開はバレバレですかね~(^^;)★

First love 8

なんだか不思議な状況になってしまった…。

なんであたし美作さんと道明寺司と
3人で車に乗ったりしてるんだろうか…。


『First love』   第8話


美作さんがエスコートしてくれて車に乗ると、
あたしの後から何故か道明寺司まで乗ってくる。

それには美作さんも驚いたようで、
「なんだよ、司。酒飲んでたっけか?
 お前が乗ってきた車どーすんだよ」と声をかける。
「あ?後で取りに来させれば別に問題ねーだろ」
「…まぁいいけどよ。先に牧野送るからな?」
「あぁ…」

「この後どっか行くの?だったらあたし1人で帰れるしいいよ?」
よくよく考えれば道明寺司は美作さんに会いに来ていたはずだ。
あたしを送ることで2人の邪魔になるのだったら申し訳ない。
今乗ったばかりの車から降りようとすると
「いいから乗ってろ」と腕を掴んで座らせる。
そして美作さんも
「別にそんなんじゃねーから気にすんな。
 それに送ってねー事が後でバレたらシメられんのはオレだ。」

こうして結局3人で車に乗り込むことになった。


車が走り出してから、なんとなく無言が続く。
そりゃそうだろう…どういう組合せなんだっつーの。
共通の話題なんて見つかるはずがない。

「…なぁ」
突然隣に座っていた道明寺司が声をかけてくる。
「なに?」
何を言いだすのかと思えば
「オレん家にも家庭教師に来い…よ」
そんな事を言いだすこいつ。

「え?道明寺さんの所にも弟さんか妹さんがいるの?」
「いや…いねぇけど」
「…?じゃあ誰の家庭教師に行くの?」
あたしが聞くと、こいつはしばらく考え込んで
「……オレ…か?」と一言。

……ぷっ。
こいつ無口だと思ってたけど、こんな冗談言う人だったの?
しかも花沢類と同じような冗談だ。

「あはは。なんであたしが道明寺さんに教えるの?
 花沢類と言い、道明寺さんと言い、変な冗談言うんだから」
あたしが笑いだすと、急に不機嫌な顔になるこいつ。

「その道明寺さんっつーの、やめろ
 類は呼び捨てなのに、どうしてオレはさん付けなんだ」
と眉間にしわをよせている。

「へ?呼び捨てがいいの?でも道明寺司って長いし呼びづらいんだけど…」
心の中では勝手に呼び捨てにしてるけど。
さすがにそれを口に出すのは気が引ける…。

「だったら司って呼べばいいだろ」とチラッとこっちを見る。
「え!やだよ!そんな呼び方してるのバレたら周りに何言われるか…」
あたしがそう言って拒否するとまた眉間のしわが深くなるこいつ。

「じゃあ…道明寺…じゃダメ?」
こいつを呼び捨てにするだけでもとんでもないような気がするけど
名前よりは苗字の方がいくらかマシだろう。
それにこいつを呼ぶことなんて機会も少ないだろうし。

「あぁ…それでいい」
とりあえず満足したらしい道明寺にホッとする。

それにしても呼び捨てにしてほしいなんて…変な奴。
普通ならあたしは年下だし敬語使えとか
馴れ馴れしくすんなとか言うんじゃないの?

意外と気さく…なのかな?

あたしが首をかしげていると
前で運転をしていた美作さんがクスクスと笑いだす。

「ククッ。なるほど、そう言う事か…」
と1人で勝手に納得して肩を揺らしている。

「…?なにがそういう事なの?」
あたしが聞いても美作さんも答えてくれないし
「…チッ」
道明寺はバツが悪そうに舌打ちをしていた。


車を降りたあたしは前を覗き込んで
「美作さん、送ってくれてありがと」と挨拶をする。
「おぅ。またな」美作さんは軽く手を上げる。

一応後ろも覗いて
「道明寺、も…おやすみ」と声をかけると
「…おぅ。またな」と答える道明寺。
「…?う、うん」


また、があるのかどうかわらからないけど…
そんな言葉を飲み込みながら
あたしは美作さんと道明寺を乗せた車を見送っていた。



春の嵐 後編

翌日。

俺は牧野の仕事が終わる頃を見計らって
会社の前で出てくるのを待つ。


『春の嵐』  後編


会社から出てきた牧野が、俺の姿を見つけて走り寄ってくる。
「花沢類?どうしたの、こんな所で」
「牧野とご飯食べたいなと思ってさ」

俺がそう言うと、いつも急だよね、とか言いながらケラケラ笑っている。

なんていうか…
彼氏と別れた翌日にしては思ってたよりも元気じゃない?あんた。

牧野が好きそうな店をチョイスして
2人で食事を楽しむ。

「そういえば慰安旅行ってどこ行くの?」
「え?あぁ。あいつに聞いたの?
 熱海だよ。まぁあたしは今回パスする事になっちゃったけどね~」

さらっと言った言葉に俺が首をかしげる。

「何?あんた、結局は旅行行かないの?」
「あれ?聞いたんじゃないの?
 まぁ、すっ…ごくムカつくんだけどね。
 アイツがああいう奴だってわかってて付き合ってるワケだし。
 それにこの事話したら同期の子も
 女の子だけでまた行こうって言ってくれたし、もういいかなって」

牧野の行動が解せない。

司の嫉妬を受けとめて
慰安旅行を諦めたのであれば
なぜ別れ話なんて事になったのか。

他の所で司が地雷踏んだって事…?

「じゃあ司があんたにフラれたってのは何が原因?」

お手上げだとばかりに、疑問をそのまま牧野にぶつける。

すると
「え?あぁ、それね」とクスクス笑う牧野。

「花沢類、昨日って何月何日だったっけ?」
急にそんな突拍子もない質問をしてくる牧野。

「何日って…今日が2日だから4月1日でしょ?
 ……って、あぁ。なんだ、そっか」
口に出して気が付いた。

4月1日はエイプリルフールだ。
嘘をついても許される日。
別れ話は嘘って事か。

「うふふ。そう言う事♪
 ただアイツの言い分を受け入れるのも癪だったからさ。
 そのためにわざわざ電話するのも昨日まで待ってたんだからね!」
得意気に言っている牧野を見ながら

嘘だなんて夢にも思わずに、酒を煽っていた司を思い出して
ほんの少しだけ不憫に思う。

「司に言ってあげなくていいの?
 あいつエイプリルフールなんて一生気付かないと思うよ?」
そもそも司がそんな事を知ってるとも思わない。

「いいのいいの。たまには懲りればいいんだよ。」
そう言って頬を膨らませる牧野も
慰安旅行に本当はすごく行きたかったんだろう。

「本当にいいの?昨日はすごい荒れっぷりだったよ?
 今さら嘘だったなんて言ったら、あんた大変な事になるんじゃない?」
その俺の言葉に牧野の笑顔が固まる。

「え?そんなにひどかったの?」
牧野が心配そうに聞く。
「そりゃもう。酔えないからって強い酒ばっか飲んで総二郎とあきらにも絡んで…
 って事はあんた、司だけじゃなくてあの2人にも怒られるかもね」

「う~……どうしよう」と頭を抱える牧野に
オレはクスッと笑って提案をしてみる。
「いっそ俺と逃げちゃう?…熱海あたりに?」

すると牧野も
「ちゃんと匿ってくれるんでしょうね?」
なんて笑って聞いてくる。
「もちろん」
「じゃあアイツが許すって言うまで隠れてようかな~」
なんて牧野が言うと、


「慰安旅行の次は類と旅行だと?
 そんなのオレが許すわけねぇだろうが!」


後ろから地を這うような低い声が聞こえる。

「やっぱりついて来てたんだ?」
俺がそう言った時にはもう牧野は司に羽交い絞めにされていて。

「てめぇマジでふざんけんなっ!
 エイプリルフールかなんか知らねーけどなっ
 ついていい嘘と悪い嘘ってモンがあるだろうがっ!!」
「ぎゃああああ!離してっ!」
牧野はどうにか逃れようと暴れているが、司が離すわけがない。

「そういう事なら事前に俺たちには言っとけっつーの」
総二郎が牧野の額をピンっと弾く。
「オレなんか司に殴られてあざ出来てんだぜ、ホラ」
とあきらが二の腕を見せる。

「うぅ…ごめんなさい」
2人に素直に謝る牧野。

「こいつらよりまずオレに謝るのが先だろうがっ!」
そう青筋を何本も浮かべて怒鳴りながらも
死刑宣告にも似たあの言葉が嘘だとわかって
安堵を隠しきれない司は牧野の髪にキスを落としている。

「あっ、あんたは別よ!そもそもあんたが
 無駄に嫉妬深すぎるのが悪いんだからねっ!!」
「うるせぇっ!それだけオレ様の愛が深いって事じゃねぇか!
 お前は黙ってただ愛されてばいいんだよっ!!」
「な、な…何恥ずかしい事大声で言っちゃってんのよ!」
顔を赤くして固まる牧野。
「お前にはオレがどんだけお前を愛してるかっつーのを
 これから嫌ってほど教えてやるからな!?覚悟しやがれ!」

そう言うとより一層顔を真っ赤にして暴れる牧野を
担いで店を出て行った司。

「やれやれ…あいつらいつになったら落ち着くんだよ。」
「人騒がせにも程があるだろ、まったくよぉ」
総二郎とあきらがため息をついてオレの横に座る。

「あの2人はたぶん一生あんな感じだよ、きっと」
そんな俺が言葉に

「確かにあいつらが静かになった方が怖えーかもな」
「あぁ。騒いでくれる方がこっちもまだ対処しようがある」
そう言って2人は笑う。


あの後牧野がどんな目に合ったのかは知らないけれど。
2ヶ月後、2人で熱海旅行に行ったと
俺にお土産を渡してくる牧野は嬉しそうに笑っていた。







★あとがき★


せっかくエイプリルフールなので、
私好みの司を奈落に突き落とすおバカな話でも、と(笑)
昨日の時点で気づかれていた方もいらっしゃったのではないかと思います。

ほんとは1話にしたかったんですが
相変わらずの文章力でまとめきらずに2話になってしまいました(^^;)
前半は司視点、後半は類視点で
どっちのカテゴリに入れようか迷うところですが
とりあえずまだ空っぽだった司カテゴリに入れておきます。




管理人 koma

First love 9

「司、この後ちょっと付き合えよ?」

予想はしていたが
やっぱりあきらに捕まった…。


『First love』   第9話


結局オレの家に行くことになって車を走らせる。

玄関を入った所で
「おかえりなさいまし。西門様と花沢様がお待ちですよ」とタマが出迎える。
「あ?なんだよこんな時間に」とオレが言うと
「オレが呼んでおいたに決まってんだろ」とあきらがニヤりと笑う。

部屋に入れば総二郎と類が
人の部屋で勝手にくつろいでいる。
「なんだよあきら、面白い事って」と総二郎。
「俺眠いんだけど…来なきゃ後悔すんぞって…何?」と類。

オレはため息をついて、
「なんでこいつらまで呼んでんだよ」とあきらを睨む。
「まぁまぁ。今まで女に興味持たなかった司が恋に落ちたんだ。
 親友としては乾杯したくもなるだろうよ。」とあきらが言えば

「は?マジかよ司、女できたのか?」
と総二郎が身を乗り出すその隣で
「…何か嫌な予感しかしない」類がボソッと呟く。

それからオレは洗いざらい全部吐かされた。

「まさか司が一目惚れとはなぁ…」とあきら
「しかもあの牧野とか言う平凡な女だろ?」
そんな総二郎の言葉にイラっとして反論しようとすると、
「牧野はその辺の女とは違うよ」と類に先を越される。
ムスッとするオレを横目に
「確かにF4に興味はねぇわ、そのくせ類と司をオトすわ
 双子は完璧に見分けるわ、すげー女って事は確かだな」とあきらは笑う。

その言葉で思い出す。
類は牧野が好きだった…。
いや、諦めたっつってもまだ好きなのかもしれねぇ…。

「類…オレはもう遠慮しねぇぞ」
1度は付き合ってると思いこんで鍵をかけた想いだが、もう無理だ。
そんな思いを込めて類をまっすぐ見る。

「…はぁ。やっぱ来なきゃよかったかな。
 まさか司と恋敵になるなんてね…」とため息をつく類。
「類…お前やっぱり、まだ牧野の事…」
好きなのか、と聞こうとすると
「好きだけど、今は付き合いたいとかは思ってないよ」と聞く前に答えられる。

「「…は?」」
言ったのはオレじゃねぇ。あきらと総二郎だ。

「どういう意味だよ」オレが聞く。
「そのまんまだよ。そりゃ自分の手で幸せに出来るなら嬉しいけど
 たぶんそれは俺じゃない。牧野が一番幸せになれる場所で
 笑ってられるなら俺はそばで見守ってるだけでいいって事」

意味がわかんねぇ…。
好きなら好きで、そいつの全部が欲しいっつーのが恋だの愛だのじゃねーのか?

オレが納得してねぇ事もわかってるだろう類は
「だから俺に遠慮する必要はないよ。
 だけど…牧野を泣かしたりするようなら、黙ってないからね?」
語尾を強調するようにオレに鋭い視線を向けた。

「オレはあいつの笑った顔が見てぇんだよ。泣かすわけねぇだろ。」
類の言ってる事はよく理解はできねぇが、
とにかく遠慮はいらねぇって事だろ?

オレは牧野を手に入れるぞ。


……。


…ってどうやりゃいいんだ?

「おい。牧野と付き合うには何をしたらいいんだ?」
そんなオレの言葉に

「まぁ…初恋だからな」とあきら。
「お兄さんが一から教えてやるよ」と総二郎。
「牧野の鈍感さをナメちゃだめだからね?」と類。

3人が呆れかえった顔を向けていた。



First love 10

「とりあえず…
この日は家庭教師で牧野いるから、いつでも来いよ」

そう言ってあきらは牧野のシフト表ってやつを見せてくれた。


『First love』   第10話



確かに現時点ではオレと牧野に接点なんかねぇ。
せいぜい顔見知り…
いや。呼び捨てで呼び合う仲なんだからもうダチだよな?

それでも会うとすれば大学内で偶然会うか、
あきらの家に来る日に合わせるかしかねぇ。

「そんな待ち伏せみたいなまどろっこしい事してねーで
 電話して飯でも誘って約束取り付ければいいだけだろ?」
面倒くせぇとうんざり顔の総二郎に
「司…牧野のケータイ聞いたの?」と類が続ける。

「…聞いてねぇ」
そう答えるオレに総二郎は「何やってんだ」とツッコむ。

しょうがねぇだろ。今までそんな事聞いたことねぇんだよ。
今までなら聞いてもねーのに番号を無理やり渡してくる奴ばっかだったし
そもそも誰かのケータイ番号を知りたいと思ったのだって初めてだ。


「類、お前なら知ってんだろ?教えてやれよ」そういう総二郎に
「…やだよ。勝手に教えたりしたら牧野絶対怒るもん」
と類はプイッと顔をそむける。

「F4にケータイ知られて怒る女なんているのかよ」
「牧野にF4っていう肩書なんて通用しないよ。」
「ケータイくらいでゴチャゴチャ言わねーだろ」
さらに食いつく総二郎に類もイラついている。
「じゃあ総二郎が自分で電話かけてみれば?
 でもオレ怒られるのやだからあきらに教えてもらいなよ」と類。

その言葉を聞いて、よしやってやる。とあきらから番号を聞いて
そのまま電話をかける総二郎。
オレたちにも聞こえるようにスピーカーにする。

『……もしもし?』
知らない番号からかかってきたからか、ちょっと不審そうな声の牧野。
「おぅ。牧野か?オレだよ。オレ」
と総二郎は軽く返す。
『…どなたですか?』さらに声が低くなる牧野。

「声でわかんねぇ?西門だよ。西門総二郎」
『あぁ…こんばんは。…ってなんでこの番号…』
「あきらから聞いたんだよ。
 これ、オレの番号だから登録しとけよ。今度みんなで飯でも行こうぜ?」
とさりげなく飯に誘うあたりはさすが総二郎っつーとこか。

『……美作さんもそこにいるの?』
「いるよ。代わるか?」
そう言ってあきらに話せと目配せをする総二郎。

「牧野?なんだ?」あきらが答えると
『ちょっと!なんで勝手に教えてるの!?信じらんないっ!』
耳がキーンとなるほど怒鳴る牧野に
オレらは全員耳をふさぐ。
「べ…別に番号くらいいいじゃねぇかよ」
あきらがビビりながらも言うと
『いいわけないでしょ!まったく!人の個人情報なんだと思ってんのよ!』
そう言うと牧野は電話を切ってしまった…。

「だから言ったでしょ?
 知らないよ?牧野は怒ったら怖いんだからね」と類。
「マジでありえねー女だな…」と総二郎は冷や汗をかいて
「オレはとんだとばっちりじゃねーかよ」とあきらは頭を抱えている。

女に慣れてるはずの総二郎とあきらがこのザマだ。

一筋縄じゃいかねー女。
…おもしれぇ。それでこそオレの惚れた女だ。

「わかった。ケータイくらい自分で聞けばいいんだろ?」
とオレが類の方を見て言うと
「そういうこと。」類は頷く。

さっそく明日にでも大学で捕まえてみるか…
そう考えるオレを見透かすように

「ちなみに目立つ所で声かけても嫌がるからね?」と続ける。
「…あぁ。わかってるよ…」
ほんとにわかってる?と類は怪しみながら首をかしげている。

とにかく今日わかった事は
総二郎の言うとおりにするとロクな事にならねぇって事だ。
あいつを当てにしてるとオレまで嫌われちまう事は間違いねぇ。

牧野の事を教えてもらうなら類が一番頼りになる。

仮にも恋敵でもある類に教えを乞うのは少し癪だが
牧野を手に入れるために手段なんて選んでられねぇ。

「…他に牧野にしちゃいけねぇ事ってあんのか?」
そう聞くオレに

「う~ん…別に怒ったりはしないと思うけど
 意味もなくプレゼントとかしてもまず受け取ってくれないかな?」
と答える類。

やべぇ。聞いてなかったら何か渡そうとしたかもしれねぇ。
プレゼントって女口説くときの基本じゃねーのかよ。

「…だったらあいつは何だったら喜ぶんだ?」
しちゃいけねぇ事よりこっちを教えてもらった方がありがたい。

「…さぁ?それがわかれば俺だって苦労しないよ。
 いつもそんな事?っていうような小さな事ばっかりを喜ぶからね、牧野は」
そう言うと類は眠いとか言いだして寝てしまった。

類は類で当てにならねーな、おいっ!




First love 11

『目立つ場所で声をかけるな…』

だったらどこならいいんだ?
そう考えたオレはある場所を思い出す。


『First love』   第11話



非常階段。
オレがいつも遠くから見ていたこの場所。

ただ、いつ来るのかわかんねぇから朝からずっと待っている。
時間はそろそろ昼休み。
今日はもう来ねーのかと思い始めた時、
階段を上がってくる足音がする。

「わわっ!ビックリした!道明寺?何してんの?」
ようやく現れた牧野は俺に驚いてやがるが
こいつから話しかけてきたって事はやっぱりここならいいんだな?

「いや…なんとなく、な」
まさか自分を待ってたなんて思わねぇんだろうな…。
「ふ~ん?あたしはここでお弁当食べようと思ってさ」
そう言う牧野の手には弁当が入ってると思われる袋が握られている。

そのままオレの横にちょこんと座った牧野。

たぶんこいつにとってそれに深い意味なんてねぇんだろうけど。
わかっていてもオレの胸は高鳴る。
「食べてもいい?」と何故かオレに確認を取る牧野は
聞いておきながらすでに弁当を広げ始めていた。

「……なんだそれ?」
あいつの弁当の中身は見た事ねぇもんばっかだ。
「あぁ~。あんた達にとっては不思議なモンばっかだろうね」と笑う。
こいつが笑うだけでオレの心に暖けぇモンが広がる。

が、次の一言にオレの心はざわつく。
「花沢類も最初は不思議そうにしてたよ。
 でも食べさせてみたら意外とイケるって言ってくれたんだよ」
類はこいつの弁当食ったって事かよ…。
「…類だけズリぃ」
口に出すつもりはなかったのに気がついた時には出ていた。
しまった、と口に手を当てるオレ。

そんなオレをしばらくポカンと見ていた牧野は
「これでいいなら食べる?あ、でも予備のお箸がないや…」
どうしよう、とか言ってる牧野が持ってる箸を奪って、
「これでいい」と一口食べる。

「……うめぇ」食った事のない牧野の料理は
どう表現するのが正しいのかはわかんねぇが、
正直にうまいと思った。

「ほんと?よかった」そう言って笑う。
箸を返すともういいの?とか言いながらそのまま食べ始める牧野。

やっぱりそれだってこいつは何気なくやってんだろうけど。

オレが使った箸を何の躊躇いもなく使うってことは
少なくとも嫌われてはねぇって事だよな?
情けねぇが、そんな事を嬉しいと思ってる自分がいる。

「なぁ…今度でいいからまた食わせてくれよ」
ダメもとで頼んでみると
「うん、いいよ。1個作るのも2個作るのも変わんないし」
とあっさり承諾する牧野。

「あ?オレの分まで作ってくれんのか?」
味見させてくれりゃ十分だと思ってたオレ。
「あ、1個丸々はいらなかった?あはは、そうだよね…」
そういう言う牧野に慌てて
「いや、そこまでしてくれると思わなかっただけだ。
 作ってくれんなら食う。…いや食いてぇ」
そう言うと、牧野はうん!とまた笑う。

「じゃあ今度作ってくるね!」
弁当を食べ終わった牧野は
次の抗議があるとか言って行ってしまった…。

しまった…。

あいつの弁当に気を取られて
ケータイ聞きそびれたじゃねぇかよ。
今度っていつだ?
それをどうやって聞けばいいんだ…。

あぁ…クソッ!
自分に腹が立ってしょうがねぇ。



First love 12

牧野からケータイを聞きそびれて2日。

今日はあいつは家庭教師の日だ。
あきらの家にでも行って今日こそ聞き出すか…。


『First love』   第12話



とりあえずあきらに電話するかと思っていると
オレのケータイが鳴る。

『司?』電話の相手は類だ。
「なんだよ」
類がかけてくるなんて珍しい。
『牧野が司に連絡してくれって言うから』
牧野という単語だけで簡単にテンションが上がるオレ。

「牧野が?…ってかそこにいるのか?」
それって2人きりでか?そう思うと今度は急にムッとするが
次の瞬間そんな事も吹き飛ぶ。

『牧野が司のケータイ教えてほしいって言うんだけど
 そのまま教えようとしたらちゃんと本人の了承をとれって言うからさ』

まさかあいつから聞いてくれるなんて思わなかった。
了承も何もいいに決まってんだろう。

「牧野に代われ」
別に用事はねぇが、声が聞きたい。

『……もしもし?』牧野が受話器の向こうに出る。
「オレのケータイなんか聞いてどうしたんだ?」
オレの事好きだから、とか言わねーかな。
なんて考えるオレは頭のネジがどっか緩んでるのかもしれねぇ。

『うん。この間お弁当作るって約束したでしょ?
 いつがいいのか聞こうと思ったら、番号知らないって気づいて。
 番号教えるの嫌だったら花沢類に連絡取ってもらうけど…』

嫌なわけねぇだろ。むしろずっと知りたかったのはこっちだ。
ニヤける口元を必死に抑えて
「お前だったらかまわねーよ。いつでもかけてこい」
そう言ってやる。
『じゃあ切ってからすぐあたしのケータイから一回コールしとくね。』
ありがとうとか言いながら切った電話がすぐに鳴る。

オレはその番号を大事に保存する。
それと同時にlineにも牧野が友達になったと通知が出る。
何かメッセージを送った方がいいのか悩んでいると

『お弁当明日とかはどう?急すぎる?』

とアイツからメッセージが届く。
「大丈夫だ」と返す。

それって明日あいつに会えるって事だろう?

『わかった。じゃあ昼休み、非常階段でね』

また非常階段かよ、とプッと吹き出しながらも
「了解」と返しておく。

明日アイツに会える。
そんなささいな約束を交わすだけで
オレの胸は躍ってるなんてあいつは知らねぇんだろうな。




翌日。


非常階段にやって来たオレの顔には青筋が浮かんでいた。

「はい。これ道明寺の分」
そう言って牧野がオレに弁当を渡してくる。

それはいい。とてつもなく嬉しい。
だけどだ…

「で、こっちは花沢類ね。中身は一緒だけど」
そう言って類にも弁当を渡している。

「なんで類も一緒なんだよ」
そう愚痴るオレに
「だって、昨日道明寺にお弁当作るって話したら
 花沢類も食べたいって言うんだもん」
とケロっとした表情で言う牧野。

可愛い…。その顔も可愛いけどよ。
2人きりだと思ってたオレの期待はどうしてくれんだよ…。

そう思って類を睨みつけるも、
「司?食べないの?」とこっちもケロっとした顔をする。
牧野はともかく、お前はぜってぇわざとだろうがっ。

オレがイライラしていると、
牧野が自分のせいだと思ってんのかだんだん不安そうな顔つきになる。
それだけで急に焦燥感に襲われるオレ。

どんだけコイツにまいってるんだよ。

気を取り直して、さりげなくアイツの隣に座って弁当を広げると
安心したのか、「召し上がれ」と笑った。

2人きりじゃねぇのは気に食わねぇが
お前が隣で笑ってるならそれでいいかとも思う。

あいつが作ってくれた弁当は
どのおかずもやっぱり食った事ねぇモンばっかだったが
やっぱりいつも食う飯より美味い気がした…。



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