逃した魚 ~類 Birthday~

俺がもう少し早く
彼女の魅力に気づいていれば

今、彼女は俺の隣にいたんだろうか…。


『逃した魚』  ~ 類 Birthday ~


ふと気が向いてやって来た非常階段。

「やっぱりいた…」

約束をしてるわけじゃなくても
なんとなくいる気がする日がある。

壁にもたれながら昼寝をしていた彼女。
風になびく彼女のまっすぐな髪。
彼女の風よけになりながら本でも読もうかと
隣に座ろうとして、ふと気づく。

― 涙のあと ―

また司と喧嘩でもしたんだろうか。
それとも司と付き合う事で辛い目にあったんだろうか…。

何があったかなんて知らないけど
彼女が泣くなんて司の事以外じゃ思いつかない。



俺だったらこんな風に1人で泣かせたりしないのに。

司よりあんたを理解してる自信だってあるのに。

司より上手に付き合っていける自信だってあるのに。

だから司なんてやめて俺にすればいいのに…。



そう思う自分がいる一方でちゃんとわかってる。
あんたを泣かせるのは確かに司だけど
その涙を拭って笑顔にしてしまうのもまた司なんだ。

俺じゃない…。
俺じゃあの笑顔は引き出せない。

あんたが俺を好きでいてくれたあの頃に
俺がちゃんとあんたを見ていたら…
あんたの魅力にもっと早く気付いていたら…。

「逃した魚は大きかったよね…」

独りごちる。

あんたと付き合えたらって思うのは嘘じゃない。
司が羨ましくないって言うと嘘になるのかもしれない。

でもどうしてだか悔しくはないだよね。

俺はやっぱりあんたのあの笑顔を見ていられたらそれでいいんだ。
2人を見守っていけたらそれでいいと本気で思える。

「う…ぅん…」
「あ、起きた?」
「え…?あ!花沢類!来てたの?」
そう言って牧野は慌てて目をこすって涙のあとをごまかそうとしていた。

俺はその手をそっと掴む。
「赤くなっちゃうよ。…言いたくないなら何も聞かないから」

「うん………ありがと。」
そう言って牧野は元気なく微笑んだ。

別に言葉はいらない。
何も言わなくてもなんとなく通じ合ってるような心地よさ。

牧野はよく俺の事を「魂の一部」なんて言うけど
俺にとってもそうなんだと思う。

親友というより心友と言う方がしっくりくる。

あんたがまた司の横で笑えるように
後押しするのが俺の役目。



♪~…♪~…

牧野のケータイが鳴ってる。

ケータイを手に持ったものの出ようとはしない牧野。
「…出ないの?司でしょ?」
「……う~ん…」

牧野が迷ってる間にケータイは鳴りやんでしまった。
そしてすぐにまたケータイが鳴り出す。

♪~…♪~…

「…出ないの?もしかして道明寺?」今度は牧野が俺に聞く。
クスッと笑って俺は通話ボタンを押す。

「司?…何か用?」
…用件は想像つくけど。
『牧野…そこにいねぇか?』
やっぱりね…。
俺といるって思うあたりはさすが野性の勘だな。

「いるよ?」
『代わって…くれねぇか?』
珍しく弱気な司。
それじゃあ牧野の涙のわけは司自身にあるのか。

牧野を泣かせるのは司しかいないけど
猛獣と言われる司をここまで弱気にさせるのも牧野だけ。

お互いが唯一無二の存在の2人。

俺は黙って牧野にケータイを渡す。
牧野は嫌そうな顔をしつつも受け取る。

「…何よ」

ムスッとしてそう言う牧野は
まさか彼氏と話してるとは思えないような表情だ。

でも俺は知ってる。

「……うん。……わかったわよ。…だからもういいってば!」

あともう少し。

「……ほんとバカ。ふふっ。次は絶対許さないんだからね?」

ほらね。牧野に笑顔が戻った。
俺がいつまでも見守っていきたいその笑顔。

電話を切って俺にケータイを返す牧野に
「解決したんだ?」そう聞くと
「うん。心配かけてごめんね?」と答える。
「いいよ。あんたのごめんとありがとうは聞き飽きてるから」
「うん、でもありがとう」
そう言って牧野はケラケラ笑う。

「じゃあ、あたし行くね」
そう言うと牧野は校舎に入って行った。


逃した魚は大きかった…。


俺がそう思うように
いつかはあんたにもそう思ってもらえるような男になるよ。


だけどもう少し…

あともう少しだけ、あんたを好きでいようと思うんだ…。


~fin~



★あとがき★
初の類目線、いかがでしたでしょうか?
司とはまた違う形の愛が伝わっていればいいんですが…。
類はやっぱりつかみどころがなくて難しいです。
でもそんな類が好きです(//∇//)

そして「あきら→月」に続いて
「類→非常階段」の単純妄想…。
もう笑ってやってください(^^;)
この調子だと12月に総二郎の短編を書くとしたら
テーマは「一期一会」とか言うんですよ。
もう先に予告しておきます(笑)



明日からは「First love」の続きに戻ります。
明日はやっと司視点のお話になります。

漸く司がごそごそと気になる動きを始めたばかりのこちらのお話も
まだまだ序盤ですがよろしければまた覗いてやってくださいませ。


管理人 koma





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マイ・ワールド ~類 短編~

「ありえないっつーのっ!!」

クククッ…。
確かにあり得ないよね。
非常階段であんな大声出してる女なんてさ。


『マイ・ワールド』   ~類 短編~


今考えてみれば
牧野は最初から他とは違っていたのかもしれない。

正直に言うと
司たちが赤札貼った奴らなんてたくさんいるはずなのに
牧野以外には1人も顔も名前も思い出せない。

それくらい俺は他人に興味なんてなかったはずだった。
俺の世界には静しかいなくて。
いつも一緒にいる司たちだって
別にいなけりゃいないで不自由はなかったように思う。

それなのに気が付くと
非常階段で牧野が近づいてくる足音が聞こえると
嬉しくなって自然と笑ってる自分がいた。


本当は最初から気付いていたのかもしれない。

俺はあんたを好きになるって。

だからきっと避けたんだ。
静が全てだったそれまでの世界が崩れるのが怖くて。

手に入れる前からあんたを失う事が怖くて。

それまでずっと1人だったから。
誰かと繋がってしまうのが怖かった。

俺が好きなのは静だけ。
俺の世界に他の存在はいらない。

それなのにあんたは…

『花沢類!』

何度も何度も俺を呼んで笑うから。
その度に俺の心は簡単に引き戻されるんだ。


気がついたら
あんなに必死に守ろうとしてた世界はあっけなく崩れ去って

でもだからと言って静が消えた訳でもなくて。
新しい俺の世界の中心にいるのはあんただけど

あんたの周りには静もあいつらもいて、みんな笑ってた。

静だけしかいなかった世界だって
あの頃の俺にとっては全てで…とても大事だったけど。

時々、うるさいと思う事もあるこの世界は
今の俺に合ってるって思う。

今の俺の世界はあんたの笑顔が全てだから。
たとえ、その笑顔が俺に向けられた物でなかったとしても
俺はあんたの笑顔をずっと守っていきたい。





「…い…!…ったら!……類っ!こらっ起きろ!!」

目を開けると牧野が俺の顔を覗き込んでいた。

「…なに?」

「何?じゃないでしょ
 またこんな所で寝て!風邪ひくよ?」
そう言って頬を膨らませてる牧野。

一番守りたいのはやっぱり笑顔なんだけど
そういう顔も全部守っていきたいんだよね。
あんたの表情で無くなればいいと思うのは泣き顔だけ。

笑って、怒って、拗ねて。
コロコロ変わる表情をずっと見ていたい。


だからさ。

牧野の手を握って出来るだけ近づいて
その大きな瞳を覗き込むようにまっすぐ見つめる。

「じゃあ牧野があっためてくれればいいよ」

「な…何言って…!ふざけないでよ、もうっ!!」
ぶくくっ…。
そうやってすぐ真っ赤になって固まってるその顔もきっと守ってみせるよ。



~ fin ~


★あとがき★

類はやっぱり思考回路が難しくて
他の3人とは違う肥料がいるのか
なかなか妄想の芽が出ません…|ω・`)

「類つく」を解禁してしまえば
また色々とお花の咲きようもあるんでしょうが
私の妄想畑ではどうしても司が
そのお花をへし折り続けるのです(;´д`)アカーン!

かと言って、類が他の女を愛するのはイヤだ。
…な私。

そんなワケで
「何考えてるかわかんない類+つくしに片思い」縛りが
解けない私の妄想畑では類の短編はすごく難しいです。

でもいつか司をぎゃふんと言わせるために
司には築きえない
類とつくしの絆みたいな物を書いてやろうと思います(笑)


F4祭り、これで以上となります。
お付き合い頂いた皆さま、ありがとうございました♪

楽しんで頂けていれば幸いです(*^-^*)



管理人 koma



いつも応援ありがとうございます♡

恋 ~類 ver.~

さすがに学生の時みたいに
頻繁に集まる事はなくても

人より忙しいはずの俺たちは
時々は休みを合わせて集まる事をやめはしない。
それはやっぱり会いたい人がそこにいるから。


『恋』   ~類 ver.~




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Y・D・K

大学に進学しても
俺はあの非常階段に行く。

日当たりがどこよりも良くて
昼寝にぴったりだし。…牧野もいるし。


『Y・D・K』


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愛 ~類 ver.~

★こちらはCP不確定で行ったF4祭り
    「恋」シリーズ『恋 ~類 ver.~』の続編です。★




「相変わらず何もない部屋だねぇ」

あのまま答える間も与えられずに連れて来られたあんたは
俺の部屋を見渡してのん気な声でケラケラ笑いながら言う。



『愛』   ~類 ver.~


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