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Regret 前編

「本年も大変お世話になりました。
 来年も何卒よろしくお願いいたします」

商談相手との会食後、別れ際にそう言われて
もうそんな時期なのかと車に乗り込む前に空を見上げた。


『Regret』   前編




__4年後迎えに行きます。

その約束を果たしてやれなかったあの日、
オレはあいつを手放した。

あいつに与えてもらった物は
そのどれもがかけがえのないもので
あいつがいなけりゃ今のオレがねぇのは確かだ。

だが逆に
恋人らしい事もろくにしてやれないまま
4年も待たせた上に
約束すら守ってやれなかったオレは
あいつに何を与えてやれたのだろうか。

オレがいなけりゃ
会う事さえもままならない恋愛なんてせずに
あいつが言っていたような
“ありふれた幸せ”ってやつを掴んでたはずだ。

約束の日から2年も経っちまった今年の春、
オレは漸く東京に日本支社長として帰ってきた。

時々アポもなしに押しかけてくる
総二郎たちの話を聞いてる限りじゃ
あいつは今もこの東京の空の下にいる。

それが嬉しいのか苦しいのか
自分でも答えが出せないまま、結局会う事は出来ずいた。


「久しぶりに日本で迎える年末はいかがですか?」
前に座っていた西田にそう問われ
「…年末だって事も忘れてた。
 どうりでくそ忙しいわけだよな…」
とここ1週間ほどろくに寝てない事に気付いて顔をしかめる。

そんなオレの文句とも愚痴ともとれる言葉に
口元を少しだけ緩ませた西田は
「申し訳ございません。
 ですが、本年度の業務はこれで終了となります。
 久しぶりの日本で過ごされる年末年始をゆっくり過ごされてください。
 私も実家にてたまには親孝行して参りたいと思います」
なんて事を口にした。

「…あ?
 これで終了って…休み何日あんだよ?」
「3日までの予定となってますので、明日から6日間でしょうか?」

「6日…」
NYに飛んでからこんなにまとまった休みなんて取れた事もねぇ。
それを急に休みだって言われたって
どうリアクションをとればいいのかさえわかんねぇぞ。

「今年も残すところあと3日です。
 どうぞ、悔いのない一年をお過ごしください。
 私はもう少しだけ業務が残っておりますのでこちらで失礼します」
それだけ言うと、西田は車を降りる。

悔い…

後悔なんてオレには縁のない言葉だと思ってた。
でも今、その言葉に当てはまる物が1つだけある。

あいつの手を離した事が唯一の後悔。
だがそれも2年も前の事で今さらどの面下げて…

あいつがオレを待っててくれてるはずもねぇのに。

そこまで考えてその思考を
吐き捨てるように大きく息を吐くと
シートに体を沈みこませた。

……違うな。
オレがいない所で幸せになってる
あいつを見るのが怖ぇだけだ。

そうだ。
何を怖がってる。

たとえあいつはそうじゃねぇにしても
オレにとっちゃ
あいつのいねぇ毎日に意味なんてねぇって
そんなわかりきった事…それこそ今さらだろうが。

怒鳴られようが殴られようが
あいつが待ってねぇっつーなら
こっちから追いかけりゃいいだけの話じゃねぇか。




 
いつも応援ありがとうございます♡

★つくしちゃんBD企画なのにつくしちゃん出てこない…
   でもちゃんとつかつくなので!それでお許しを~っっ(笑)★

Regret 中編

追いかけようにも今のオレは
あいつがどこにいるのかなんて知らねぇ。

少し迷って、
ポケットからケータイを取り出すと電話をかけた。


『Regret』   中編


普段はケータイの意味をなさねぇほどに
繋がらないこの番号を選んだのは
認めたくはねぇが
結局、こいつに聞くのが一番早ぇと思ったから。


10コールくらいした頃、ようやく
『……何?』
と面倒くさそうな声が聞こえた。

「…おぅ。類か?」
『俺のケータイにかけたんだからそうでしょ』

「…なんだよ機嫌悪ぃな。
 なぁ、お前さ。…牧野の連絡先知らねぇ?」
『…司から電話なんて
 珍しいと思ったらやっぱりそんなとこ?』
電話の向こうで小さく息をつく。

「うっせぇ。
 いいから知ってるのか知らねぇのか答えろよ」
『そりゃ知ってるけど…今日は牧野予定入ってるよ?』

ただでさえ年の瀬なんだ。
さすがに暇なわけはねぇと思ってた。

それに予想はしてたが
相変わらずこいつらの距離は
今日の予定をさらっと答えられるほどに近いのかと思うと
考えてもしょうがねぇとわかっていてもため息が漏れる。

「何時になってもかまわねぇ。
 メープルのBARで待ってるって伝えてくれてねぇか?」
連絡先を教えろ、でもよかったが
こっちの番号は変わってねぇのに
かけてこないのは、つまりそういう事なんだろう。

『あそこって何時までやってたっけ?』

BARは確か1時くらいまではやってたはずだ。

それより遅くなるなら
さすがに今日会うのは無理か?
…っつーかそんな遅くまで何してんだよ。

「…そんなに遅くなんのかよ」
『んー…わかんない。
 でもお酒飲むと牧野寝ちゃうし
 一度寝たらいつも起こすの結構時間かかるんだよね』
そんな類の言葉に
思わず眉がピクッと動いた。

「……ちょっと待て。
 牧野の予定ってなんだよ」
嫌な予感がしながらも一応聞いてみれば
『ん?俺とご飯行くんだけど?』
と予想通りの答えが返ってくる。

「あぁ!?
 だったら最初からそう言えっつーのっ!
 なぁ…それまた今度にしてくれねぇか?」
てっきり仕事か何かだと思ってたのに
よりにもよって類と飯って何だよっ!

『…やだよ。
 俺だって今日行くために
 珍しく仕事頑張ったんだからね』
なんてとても責任ある立場の人間の言い草とは思えない
駄々っ子のような声にガクッと頭を垂れる。

でもまぁ…
今年は何故か年末年始の休暇なんてモンを与えられたが
オレだっていつもだったらこんな時期に
誰かと飯に行く時間を確保するのは簡単じゃねぇ。

どっちから誘ったのかなんて知らねぇが
類だって秘書にこき使われながらも
なんとか時間を確保したんだろう。

仕方ねぇ、とここは折れてやる事にした。

「…はぁぁ。わーったよ。
 じゃあ、せめて早めに切り上げてくれ。
 あと酒もあんま飲ませるな。
 あいつと話がしてぇんだ。……頼む。」
ため息をつきながら言う。

『…しょうがないな、もう。
 じゃあ21時にはそっちに送ってあげるよ』
「あぁ…サンキュ」

『え?司がお礼言った?…キモチワル』
なんて失礼な事を言いながら
電話の向こうでククッと笑った類はそのまま電話を切った。




 
いつも応援ありがとうございます♡

Regret 後編

20時半。

仕事じゃねぇ時に
何をすればいいのか思いつかなくて
結局かれこれ2時間、1人で飲んでいた。


『Regret』   後編



__ピロンッ。

とLINEを告げたケータイを見てみれば

『もうすぐそっち着くよ』
なんて類からのメッセージ。
「いつもの個室にいる」
と返しておく。

もうすぐあいつに会える…。
最初に何て言えばいい?

いくら久しぶりだと言っても
あんまり堅苦しいのはダメだ。
オレとあいつの間に壁なんていらねぇはずだ。

そんな事を考えながら画面をなんとなく眺めているうちに
とんでもねぇミスに気付いちまった。

「……やべぇ。
 今日ってあいつの誕生日だったのかよ」
頭を抱えて独りごちる。

そうか…。
だから類の奴も
絶対邪魔が入らねぇように仕事詰めて
あいつを祝ってやるつもりだったのか。

毎日が時間との戦いで、
今日が何月何日の何曜日かどころか
下手すりゃ昼か夜かさえ曖昧な日々だった。

あいつ飯は食ってきたんだよな?
だとすれば今からじゃ
せいぜいケーキくらいしか用意できねぇぞ、おい。

それでもあいつは
文句なんて言わねぇと思う。
「ありがとう」
って笑って美味そうに食うんだろう。

でもそれじゃオレの気がすまねぇ。

もう一度やり直したい。
2度とお前を手放したりしない。

それが伝えられるような何かじゃねぇと…。




「……久しぶり。元気だった?」
類に連れられてやってきた牧野は
オレの所に来ると聞かされてなかったのか
部屋に入って目が合った瞬間でっけぇ瞳を
落っこちるんじゃねぇかって程に見開いてししばらく固まっていた。


「あ。そうだ。
 支社長になったんだよね?おめでとう」
「お?…おぅ」

送るだけ送った類はさっさと帰っちまって2人きり。

牧野の左手に指輪がねぇ事にホッとしたり
別れた時よりまた綺麗になった理由を
勝手にあれこれ想像してムッとしたり
さっきから感情が忙しくて落ち着かねぇ…。

オーダーしておいたケーキが運ばれてくると
「え?覚えててくれたの?ありがとう」
なんて美味そうに食う。

そうやって好き嫌いもなく
何でも美味そうに食うお前を見てるのが好きだった。

これから先もこうやって
一番近くでお前を見ていてぇんだ。

「わり…。言い訳するわけじゃねぇが
 さっき今日が28日だって気付いてよ。
 だから、それしか用意してやれなかったんだ」
「そうなの?
 でも十分だよ、ありがとう」
きょとんとした顔で首をかしげる。

「いやそれじゃオレの気がすまねぇ。
 なんかとびきりのモンはねぇかって考えたんだけどよ。
 でもお前は金で買えるモンは喜ばねぇだろ?」
「へ?うん…まぁね。
 あんたが買う物っていちいちとんでもないからねぇ」

「だからオレの人生まるごとやるよ」
「……は?」

「で、来月にオレの誕生日あるだろ
 その時にお前の人生まるごとくれよ」
オレがたどり着いた答え。
それはこれから先の人生を全部お前に捧げる事だ。

「…バカじゃないの、あんた」
「おぅ。でもお前が思ってるほどバカじゃねぇぞ?
 オレの誕生日まで34日ある。
 その間にもう一度オレの事を好きにさせてみせる」

自信満々に言いきったオレを
しばらく黙って見ていたこいつは
わざとらしいくらいに大きなため息をつく。

「やっぱバカだ。
 思ってた以上に大バカだよ、あんた。
 もう一度好きになるなんて絶対無理だから」
呆れたような顔で言われて
一瞬心臓が止まったような気がした。

いい返事が聞けると思ってたわけじゃねぇが
まさか即答でそんな言葉が返ってくるなんて事も思ってなかった。

「……」
何も言い返せないオレをまたじーっと見てたこいつは
困ったようにクスッと笑う。

「…だってあたし、
 あんたを好きじゃなかった時期ないもん。
 “まだ”好きなんだから
 “また”好きになるなんて無理に決まってるでしょ」
バーカ、と最後に声に出さず口の動きだけで伝えると

何事もなかったかのようにケーキを頬張り始めた。


~ fin ~



 
いつも応援ありがとうございます♡

Regret ~side つくし 前編~

★こちらのお話は『Regret』の続編になります★


「…だってあたし、
 あんたを好きじゃなかった時期ないもん。
 “まだ”好きなんだから
 “また”好きになるなんて無理に決まってるでしょ」

最後にダメ押しでバーカと口パクで言ってやった。


『Regret』
   ~side つくし 前編~




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Regret ~side つくし 中編~

お正月休みが明けたら
やっぱり道明寺は忙しそうだったけど
仕事の合間を見つけてはうちに寄ってくれる。

「前はこういう事もしてやれなかったからな
 今度は普通に恋人みてぇな事もしてぇんだ」
なんて事を言葉以上に甘い顔をして言うから困る。


『Regret』
   ~side つくし 中編~






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