SMILE 1

もしも…。
もしもまた、もう1度巡り会えたなら。

今度こそお前を離さない…。


『SMILE』   第1話



約束の4年で日本に帰ってきて3年ほどは
何の障害もなく牧野との付き合いも順調だった。

思えばあの時が1番穏やかで幸せだったかもしんねぇな…。

牧野も社会人になって仕事にも慣れてきて
そろそろ改めて結婚を申し込もうと思っていた矢先…

親父が再び倒れた。

高校の時に倒れた時はオレはまだまだ無力だったが
日本支社長になった今はそれなりに力をつけ、
あの時ほどの打撃はなかったにしろ
やはり親父の影響力はいまだに大きく、経営はゆっくりと傾いて行く。

そうなれば重役狸の間で囁かれ始めるのがオレの政略結婚だ。

__ふざけんじゃねぇ。
牧野以外と結婚なんてありえねぇっつーんだよ。

寝る間も、あいつと会う時間も惜しんで
仕事に打ち込んだが、それでもこの状況を打開するには
まだまだ時間がかかりそうだった。

そんなある日だった。
珍しくあいつの方から会いたいと言われ
時間を作ってみれば別れを告げられた。

「あんたは…あんたのやるべき事をやって。
 すぐには無理でもいつかちゃんと幸せになって?
 あたしも自分のするべき事をやって幸せになるから…」
そう言って無理に笑うあいつの瞳は
いつかのあの大雨の時と同じ瞳で…

__いや、
あの時よりもどこか強い瞳をしていて
こうなったら頑固者のお前は
たとえそれが本心じゃなくとも
何を言ったって聞き入れやしねぇんだろう。

そもそもこいつにこんな事言わせてんのが
全部オレのせいだって事も痛ぇほどわかってて
だからと言って今こいつに未来を約束してやれる
言葉をかけてやることもしてやれないオレは
黙ってあいつの言葉を受け入れるしかなかった。



あれから5年。
牧野を失って仕事しかする事がなかったオレは
財閥の危機は何とか乗り越える事も出来た。

牧野じゃねぇ誰かが妻になるなんて耐えられねぇと
これまでに何度か持ち上がった
政略結婚なんてふざけた話だけは阻止した。

「俺が言うのも何だがな。
 牧野さんとはもう連絡は取りあってないのか?」
「これまで会社のためによくやってくれました。
 だから、そろそろご自分の幸せも考えてごらんなさい」
そんな珍しくいかにも親らしい言葉をかけてくる両親も
あの時のオレ達が別れを選んだ事に負い目を感じてはいるんだろう。

2人が言うように
今ならあいつを妻に迎える事に何の問題もねぇ。

だけどあれから5年だ。

高校3年の時に4年待たせて、
今度は5年もかかっちまった。

それに、今回は前のように
再会を約束した別れとは違う。
あいつはオレを想って自分から身を引いたんだ。

頑固なあいつがオレが迎えに来る事を期待して
今でもオレを待ってるなんて
都合よく考えるにはあまりに時間がかかりすぎた。

『自分のするべき事をしっかりやって幸せになるから』

その言葉通り、あいつなら
しっかり地に足つけて前を向いて歩いてるはずだ。

もしかしたら、もう他の男と結婚してたっておかしくねぇ。

それを今さらオレが出て行って
「やり直してくれ」なんてどの面下げて言えるんだ?

だからオレからあいつを探す事はしないと決めた。


それでもふとした時に聞こえた声が
お前の声に似てる気がして振り返っちまったり

移動中に見える景色の中にその姿を求めて凝視してみたり

お前を見つけるために
オレの細胞はいつでもアンテナを張ってる。


だから、牧野。
今度オレとお前がまたどっかで
出会うような事がもしもあったなら…

そん時はまた全力でお前を追いかけてもいいか?




いつも応援ありがとうございます♡
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SMILE 2

会食が入っていたこの日。

都心から少し外れた
落ち着いた雰囲気の小さな料亭にオレはいた。


『SMILE』   第2話


邸とビル群とを行き来するだけの生活のせいだろうか。
部屋から見える隅々まで手入れされた庭の緑は
普段見慣れた無機質な色とは
あまりに対照的で少しだけ眩しくも感じた。

そう言えばあいつも
部屋に小さな植物を飾っては
『緑が部屋にあると癒されるよね~』
なんて言ってたな…。

お前の部屋には今も小さな植物とか置いてんのか?

そんな思いに浸っていると

「いやぁ、お忙しいのに
 辺鄙な所を指定して悪かったね。
 道明寺さんをご招待するには小さすぎるかと思ったんだけどね
 最近贔屓にしてるこの店の物以外食べる気にならんのだよ」
オレより少し遅れて入って来た狸ジジィは
機嫌よさそうにべらべらと喋りながら正面に座る。

ジジィの要望に合わせて
食事は後回しにして先に仕事の話を済ませる事になった。

仕事の話が済めばオレはここに用はねぇし
食事に少し付き合った所で西田に合図をすれば
体よく断りを入れてこの場から逃げられるはずで
オレとしてもそっちの方が都合がいい。



「いやぁ、有意義な取引になりそうだよ。
 道明寺さんと組む事にして正解だったな」
「…恐れ入ります」

「料理は私に任せてもらってもいいかね?」
「勿論です」
何が出てきたってそんなのどうでもいい。

しばらくして運ばれてきた料理に
満足そうに手をつけるジジィに合わせ
膳の隅にあった小鉢に
オレも付き合い程度に箸をつけた…。

「……っ」
口に運んだと同時に思わず言葉に詰まった。

「…どうです?ここは美味いでしょう?」
そんなオレを見て満足そうに笑みを浮かべる。

確かに美味ぇ。
っつーか味を感じるのが久しぶりだった。

すぐに帰るつもりだったのに
結局どうでもいいジジィの話に付き合いながら完食していた。



それからと言うもの、
あのジジィとの会食はもちろん、
オレも何かとこの料亭に通うようになった。

それでわかったのは
美味ぇと感じる時もあれば何も感じない時もあって
そして美味ぇのはいつもメインじゃねぇ小鉢に入ってるような料理だ。


まさか……な。

ただの期待だとも思える可能性が頭に浮かぶと同時に

「いつもご贔屓にしてくださってありがとうございます」
女将が挨拶へとやってきた。

「…女将。この小鉢の料理を作ったのは誰だ?」
小鉢を指さして聞いてみれば

「まぁまぁまぁっ!
 何かお気に障るような事でもございましたでしょうか?」
なんて慌てた様子でオレの機嫌を伺う。
「あ、いや。そうじゃねぇ…美味いと思っただけだ。
 でもいつも今日作った奴が作ってるわけじゃねぇだろ?」
オレの言葉にホッとしたように胸を撫で下ろした女将。

「左様でございましたか。
 うちはご覧のとおりの小さな店ですので
 従業員みんなで助け合っておもてなしをさせて頂いております。
 今日の小鉢は仲居の他に厨房の補佐をしてる者が担当しております」
女将のその言葉にオレの中で期待が大きくなる。

「なぁ、女将。その担当者
 もしかして……牧野って名前じゃねぇか?」
そう聞いたオレの言葉に特に表情を変えるでもなく

「牧野…ですか。
 そういう名前の従業員はうちにはおりませんねぇ」
と不思議そうに首をかしげた。





いつも応援ありがとうございます♡

SMILE 3

★ドカン!と爆弾投下します。ご注意下さいませ。(´□`。)★


女将の受け答えに
特に変わった様子は見られなかった。

だが…
どうしても何かが引っかかって
オレは帰ったふりをして裏口に車をつけた。


『SMILE』   第3話



もちろんこんなの
オレが勝手に期待してるだけで
ただの勘違いだって可能性は高い。

ただ…女将の立場として
従業員のプライバシーを守るために
嘘をついたんじゃねぇか、とか

オレに気付いた牧野が
女将に口止めしてたんじゃねぇか、とか

理由をこじつけては
ここにあいつがいる事を望んでる自分がいる。



車も通れなさそうな狭い道路にある
料亭の裏口を脇道に停めた車から見張る事、数十分。

裏口の扉が開いて
アイツが…牧野が出てきた。

__なんだよ、やっぱりお前じゃねぇかよ。

それでもすぐに車を降りなかったのは
ムカつく事に出てきたのが1人じゃなかったから。

「つくし」
あいつの後ろから出てきた男。
道路に出た牧野は聞こえた声に振り返る。

「俺も出来るだけ早く帰るからよ」
「ううん。こっちは気にしないで」
親しげに会話をする2人を見ながら

出て行って声をかけるかどうか迷ってると
2人の足の間から何かが飛び出してきた。
それと同時に「あっ!」と牧野が素早く手を伸ばす。

「航ちゃんっ!1人で行っちゃダメでしょっ」
「きゃーっ」
牧野に抱き上げられて
ケタケタと嬉しそうに笑ったのは小せぇガキ。

降りようと暴れるガキの動きを
「よ…っと。また重たくなった?
 やっぱり男の子はどんどん大きくなる気がする」
とか言いながら牧野は慣れた様子で上手く封じている。

「航太。パパ今日は一緒に帰れねぇんだからな?
 つくし怒らせたって、かばってやんねぇぞ?」
ククッと笑って航太と呼ばれたそのガキの頭を撫でる。

「あたしが怒ったら怖いみたいじゃない?」
「…そうじゃねぇの?
 すみれもママは怒ったら鬼みてーって言ってたぞ?」

「ち・が・い・ま・すぅ~!ねー?航ちゃん?」
「ねー」
「なんだよ。航太はそっちの味方かよ」
文句を言いながらもクスッと笑うと

「すみれにも保育園のお迎え行けなくて
 悪かったって謝っといてくれ。じゃあ、あと頼むな」
「ん。颯太も頑張って」
そんな挨拶を交わすと男は中へ戻っていき、
牧野はガキを降ろすと今度は手をつないで
ガキのペースに合わせるようにゆっくりと歩き出す。

「航ちゃん、晩ごはん何しよっか?」
「んー…っね…」
考え始めるガキにクスッと笑って顔を覗き込むと

「「カレー」」
と声を揃える。

「あははっ。だと思った。
 航ちゃんいつもカレーしか言わないんだもん」
ケラケラと笑う牧野を見上げたガキは
「カレー」
ともう一度言うと嬉しそうに笑う。

「はいはい。わかりました。
 野菜たっぷりのカレーにしようね」
「あいっ!」
2人で楽しそうに笑い合って角を曲がっていった。


その光景をただただ
黙って見ていたオレはしばらく動けなかった。


あぁ…。
そうか。そういう事か。

女将は嘘なんてついてねぇし
あいつが口止めしてたってわけでもねぇ。

あいつは…もう牧野じゃねぇのか。

あの男と結婚して…ガキも産んで。

幸せ…そうだったな。





いつも応援ありがとうございます♡

★ドカーン!皆さん、息出来てます…(^_^;)?
  ちなみにつくしちゃん記憶喪失ではないですよ~♪★

SMILE 4

「牧野にガキ?あいつ結婚してたのかよっ」

たまには付き合えと総二郎たちに呼び出されて
こいつらなら何か聞いてんのかと思ってこの間の事を話した。


『SMILE』   第4話


話を聞いてみれば
こいつらもオレと別れてから牧野には会ってねぇらしい。

「類、お前も知らなかったのか?」
あきらがソファで横になる類に聞けば
面倒くさそうに片目だけ開けて

「……知ってたらお祝いくらいしてるよ」
と拗ねた声を出すこいつも
平然を装ってはいるがそれなりに動揺してるらしい。


「お前のガキ……っつー事はねぇよな」
と総二郎。
「…にしては小さすぎんだよ。
 近くで見たわけじゃねぇが大体2歳くれーだった」

姉ちゃんとこのガキが少し前に4歳になった。

オレらが別れてしばらく経った頃に妊娠して
『つくしちゃんにもお祝いして欲しかったわ』
なんてうるせぇくらいに愚痴ってたからよく覚えてる。

あれがもしオレとのガキなら死ぬほど嬉しいが…。
牧野が産んだのがオレの子だったとしたら
4、5歳くらいじゃねぇと計算が合わねぇ。

小さくため息をついたオレに

「2歳か…そりゃちょっと小さすぎるな」
とあきらは慰めるみてぇにオレの肩をポンと叩いた。

「で?どうすんだ?
 あっちは結婚してガキまでいるんだ。さすがに諦めるんだろ?」
そう総二郎に聞かれて思わず視線を逸らした。


あいつが今幸せに暮らしてんなら
オレにそれを邪魔する権利なんてあるはずがねぇ…。

「…わーってっよ。
 あいつの生活を壊すような真似はしねぇよ」
ふてぶてしく答えたオレに
苦笑いを返す総二郎とあきら。

類は…と視線を送ってみれば
とっくにふて寝してたらしい。


そうだ。
あいつの生活を壊すわけにはいかねぇ。

わかってる。
わかってんだけどよ、そんな事。


ただ頭ではわかっていても
心は全く納得してねぇのもまた事実で。


オレと別れたお前が不幸であればいいと
そんな風に思ってたわけじゃねぇ。

オレが惚れた唯一の女なんだ。
どこにいたって幸せに笑ってねぇと許さねぇ。

オレだってついこの間までは
お前の幸せを心から願ってた。


だけどよ…。

お前、オレがどれほど嫉妬深い男だったか忘れたのか?
お前の視界に男がいるだけで気にくわねぇんだぞ。

追わせてもくれねぇなら
のこのことオレの前に出てくんじゃねぇよ。

せっかく見つけたのに
オレがお前と手に入れたかった
絵にかいたような幸せな家族を他の男と築いてんじゃねぇよ。


せめてお前だけでも幸せなら…
そんな風にずっと願ってきたはずなのに。


……悪ぃ。
やっぱりオレはお前の幸せを
笑って祝福するなんて、まだ出来そうにねぇんだ。





いつも応援ありがとうございます♡

SMILE 5

あいつには直接会わないままでも
あの料亭に顔を出す事はやめられなくて

機会を見つけては通ってるうちに
すっかり常連になっちまった。


『SMILE』   第5話


別に常連になった事で不都合があるわけじゃねぇ。

最近じゃ女将も
オレに出す分には極力
あいつが作ったモンを出してくれるし

オレが今まで会食に使ってたいかにもなランクの店と比べ
こじんまりとしていてアットホームなこの料亭は
相手の意表をかなりついてるのか
年食った頭でっかちのジジィどもには特に
ウケが良いらしく、商談もスムーズに進んだりもする。

問題なのはそこじゃねぇ。

確か女将はあいつは仲居もやりながら
厨房の補佐に入るとかそんな事言ってなかったか?

って事は仲居が主な仕事なんだろ?

裏方ならまだしも、
これだけ通ってりゃさすがにあいつだって
オレが来てる事くらい気付いてるはずだ。
それなのにどうして1度も顔を合わせねぇんだっ。


…あいつ、絶対わかってて避けてやがるっっ!


今さらオレの顔なんか見たくねぇのか、
結婚した事を後ろめたいとでも思ってんのか
どういうつもりで避けてんのかは知らねぇけどよ。


お前はオレの射程圏内にすでに入ってんだぞ?
逃げ切れるとでも思ってんのかよ。


そっちがその気なら…と
オレは今度は裏口の真ん前の壁に背を預けて
あいつが出てくんのを待つ事にした。


どれくらい待ってたかわかんねぇが
扉の向こうから話し声が聞こえてきて
段々近づいてくると、開いた扉からこの間と同じ顔が揃って出てきた。

オレに気付いた途端に固まってやがる牧野に気付くと
ガキを抱っこしていた男もオレをじっと見た。

そしてガキはオレを指さして
「るるる~…いいっちょ!」
なんて意味がわかんねぇ事言いながら
何が楽しいのか知らねぇがキャッキャッと笑う。

男はガキの指を手で押さえて
「人を指さしちゃダメだろ。
 ほら、お兄さんにごめんなさいは?」
と小さく叱って、オレにペコッと頭を下げた。

父親に叱られてシュンとしたガキは
「…めーちゃっ!」
と謝ったのかどうかわかんねぇが
父親を真似るように頭をペコッと下げた。

が、今度はそのまま頭を上げねぇ。

その光景を黙って見てると
「…道明寺。いいよって言ってあげて」
と牧野に言われ

「…いいよ」
で、いいのか?と牧野に視線を送ると同時に
「あいっ!」
と勢いよく顔を上げて笑ってやがるガキ。

……。
ダメだ。意味わかんねぇ。


怪訝な顔をするオレにクスッと笑うと
「颯太。ごめん、先帰ってて?
 あたし、こいつと少し話してから帰るから」
と男の肩をポンと叩く。

「…大丈夫か?」
そう心配そうに聞いてる所を見れば
オレが元カレだって事くらいは知ってんのかもしれねぇな。

「ん。大丈夫。
 見た目こんなだけど、悪いヤツじゃないからさ」
とか失礼な事を言うと、旦那を見送った。






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