ちょっと待った! 1

4年であいつを迎えに行くつもりで
NYに行ってから2年目の春。

オレはあいつと別れて
別々の道を歩いて行くことを選んだ。



『ちょっと待った!』   第1話


オレがNYに行ってから
あいつと会えたのは静の結婚式の時だけ。

地下の小さな教会で2人だけで誓った気持ちに嘘はなかった。


だけど、2年目の春、
オレは気づいちまった。


「会いたい」も「寂しい」もあんま言わねぇお前だけど
そう思ってないワケじゃねぇって
ちゃんとわかってたはずなのに。

大学とバイトの合間に
オレのために礼儀作法やら語学やらいろいろと
教養を身につける事をババァに強制されてても
弱音を吐くどころか感謝してると言ったお前。


「大丈夫」「まだ頑張れる」「辛くなんてない」
テレビ電話の向こうで小さく微笑むお前。


「弱さ」と「甘え」を隠したその顔を
オレはいつからお前の笑顔だなんて思い込んでいたんだ。

お前の笑顔はそんなんじゃなかったはずだ。
そんな偽物の笑顔をさせるまで
オレは一体何をしてたんだ…。


学業と仕事の両立でいっぱいいっぱいだった。
忙しかった、時間がなかった。
お前だってたまには甘えてくれたらよかった。

そんなの全部言い訳で。

お前の気持ちがオレにあることに
安心して調子に乗ってたに過ぎない。


だから解放してやる…。


別れを切り出した時も
あいつは泣かなかった…。

「……わかった。今までありがとう、道明寺。
 これからは遠くであんたの幸せを祈ってるよ」

偽物の笑顔でそう言ったお前。
最後の最後までオレはお前にそんな顔をさせて、
何も言ってやる事も出来なかった。



あいつと別れて5年、NYに来て7年目の春。

オレは結局一度も日本に戻ってねぇ。
行く機会なら何度かあったが、
あいつのいる日本に帰るのが怖かった。

あいつが手の届く所にいたら
また性懲りもなくお前を追いかけそうで…。



移動中、通りかかったどこかの公園に
桜が咲いてるのが目に入った。

普段ならそんな物に気を取られたりしねぇのに、
見てしまうのは、いつかお前がお花見をしたいと
言っていたのを思い出してしまったから。


お花見も、お祭りも、紅葉狩りも、初詣も
あいつは季節ごとに
オレにはよくわからねぇ事をやりたいとよく言っていた。
オレはその願いを1つも叶えてやる事もなかったな。

花見ぐらいしてやればよかったな…。
どうせ花見って言ってもあいつは
花より団子とかいいながら食ってばっかなんだろうけどな…。
何でも美味そうに食べるお前を見てるのも好きだった。


お前は今年、誰かと花見に行ったか?


なぁ、お前はちゃんと笑ってんのか?

オレが大好きだったはずのあの笑顔でよ…。



西田がオレに1通の招待状を渡してきたのは
そんな時だった。




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ちょっと待った! 2

西田が持ってきた招待状は
結婚式の招待状だった。

類と…あいつの結婚式……。


『ちょっと待った!』   第2話



そうか…あいつ、類と……。

いや、類が諦めなかったんだろうな。
オレと別れたあいつを
類が放っておくワケがねぇ。


類ならあいつを幸せにしてくれる。
他の誰か顔も知らねぇような奴に取られるくらいなら
類の方が良いに決まってる…。
これでよかったんだ…。

そう思い込もうとする一方で、
胸が締め付けられて息苦しくなる。


類と並んでる姿なんて見れるわけがねぇ。
笑って祝福なんて出来るはずがねぇ…。

だけど、お前は幸せになれ。
オレも遠くでそれを祈ってる。



「欠席で返事出しとけ」
そう言って西田に招待状を返すと

「それはなりません。複雑な心境はお察ししますが
 ご結婚されるのが個人的にも親しい間柄である類様ですし、
 花沢物産の結婚式に道明寺として欠席など許されません」

そう言って、調整したスケジュールを見せてくる西田。

「おい…。これはなんだ?」

そのスケジュールは結婚式のあと4日間の休暇があった。
仕事をするようになって、こんなに休みがあった事はねぇ。

「はい。西門様たちより出来れば式の後、数日ほど
 休暇を合わせたいとご要望がございまして。
 せっかく久々に帰国されるのですし、この際ゆっくりされるのもいいかと」

オレが休ませろって言っても無理だと言いやがるくせに
なんであいつらが言えば休みの調整ができるんだよっ。
お前は一体誰の秘書だっ!!


その後オレは総二郎に電話をする。

『おう、司か?』
「オレの貴重な休みを勝手に使ってんじゃねぇよ」
『お前が全然顔見せねぇからだろ?それにこんな事でもねぇ限り
 休み合わせるられる事なんてねぇんだしよ、たまにはいいじゃねぇか』
「4日も休み取って何するつもりだよ」
『ん~?別に計画は立ててねぇけどよ。
 あきらと3人どっかの別荘でも選んで独身同士楽しもうぜ?』

総二郎の言葉にハッとする。
そうか、3人って事は類はいねぇんだよな。
結婚式の後はあいつと新婚旅行にでも行くって事か…。

どうしても出席が避けられないのであれば
その後仕事なんて身が入るワケがねぇんだし、
気晴らしにこいつらと過ごすのも悪くねぇか。

「わーったよ」
『オレらだって暇じゃねぇのに休みを取るんだ。感謝しろよ?
 元カノと親友の結婚式に出て傷心のお前に付き合ってやるんだからよ』
そう言ってゲラゲラ笑っている総二郎に
「うるせぇっ!」
怒鳴りつけて電話を切ってやった。


こうして嫌々ながらも7年ぶりに日本の土を踏んだオレ。


念のためと早めに帰国をしたオレがゆっくりできるはずもなく
日本でも出来る仕事をちゃっかり持って来ていた西田にこき使われて、
自由になったのは結婚式前日の夕方だった。


その日は独身最後の類も交えて久々にF4で集まる事になった。
待ち合わせた店に行くと総二郎とあきらの姿。

「ほんと久しぶりだな、司」と総二郎。
「お前ちょっと痩せた?ちゃんと食ってんのか?」とあきら。

「…類は?」
見渡しても類の姿がねぇ。

「あぁ。さっきもうすぐ着くって連絡あったぞ」とあきら。
「女は女同士で集まってるらしいから
 滋んとこに花嫁送ってから来るって言ってたからな」
と総二郎の言葉に胸が詰まる。

花嫁…。
もともと結婚式のために帰国してんだから
わかってたはずなのに…その言葉が思ってた以上に重い。

その時、

「あれ?司ももう来てたの?早かったね」

そう言って現れたのは明日のもう1人の主役、花婿の類だった。




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ちょっと待った! 3

「明日のために
 特別にエステして差し上げますわ」
「そうだよ!飛びきり綺麗にならなくちゃ!
 題して“類君悩殺大作戦☆”だよ、つくし!!」

そう言った2人に連れられて
あたしは全身をピカピカに磨き上げられる。


『ちょっと待った!』   第3話



「ねぇ…やっぱり前日になって
 こんな慌てて磨かなきゃいけないような女よりも
 隣に立つのにふさわしい人なんていっぱいいると思うんだよね…」
あたしがため息をつきながら言うと

「何言ってんの、今さら!
 類君につくしじゃなきゃダメって言われて頷いてたくせに~」
と滋さんはニヤニヤしている。

「ほんとですよ。
 そう思うなら直前にバタバタしないで済むように
 ちゃんと準備してればよかったんですよ、先輩っ。
 元は悪くないのに…手入れしてあげなきゃもったいないですよ!」

明日そのまま準備できるからと、2人に誘われて
チャペルのある滋さんの家所有のホテルのスイートに
3人で泊まる事になっていた今日、
エステティシャンとなった桜子に体を磨かれ、
ネイルもキレイに仕上げてもらった頃、部屋のベルが鳴る。

「明日のドレス届いたよ
 わぁ~♪やっぱりつくしに似合うと思うな、コレ♪」
そう言って滋さんはドレスを広げる。

「う~ん…どうだろうねぇ?」とあたしは首をかしげる。
正直、あたしよりも滋さんや桜子の方が
100倍似合う気がしてならないのだ。

「先輩ったら…もしかしてマリッジブルーってやつですか?」
と桜子が意地悪に笑いながら言うと
「やだー!そうなのー?」
と滋さんまでケラケラ笑いだす。

「ち、違っ…!!」
そんなあたしの否定の言葉も無視して

「明日のためにお酒と、夜更かしはあんまりダメだけど
 つくしの緊張が解けるように今日は少しだけ付き合うからさ」
そう言って、シャンパンと、軽いおつまみを持ってきた2人に流されて
結局日付が変わる頃まで話に花を咲かせていた。







「しっかし、まさか類が一番乗りだとはなぁ」と総二郎。
「ほんとだよ。まさか類には負けねぇと思ってた」とあきらも笑う。

相手が牧野じゃなきゃ、類はこんなに早く身を固めたりしなかっただろう。
そう思って黙っているオレに

「司、本当にいいの?」
と聞いてくる類。
何が、とは言わない。

「……幸せにしてやってくれよ」
そう心にもねぇ言葉を返すオレは
どんな顔してんだろうな。

しばらく沈黙が続いた。

「ま…まぁまぁ。しんみりすんのはここまでにしようぜ
 明日はめでたい席なんだからよっ」
とあきらがオレの肩を叩く。
「…あぁ。わかってる」と頷いて
乾杯をし直すオレら。


その会話の中で、あいつが弁護士になった事を聞く。
オレと付き合っていた頃に
学んだ教養が役に立ってると言っていたらしい。

「今じゃ英語なんてペラペラなんだぜ、あいつ」
「英語だけじゃなくてフランス語なんかも話すから
 なんとなく似合わねーなって笑ったら殴られたんだぞ」

「それはあきらが笑うからでしょ。
 あれだけ話せるようになるのにすごく努力してたんだからね」


あいつらの会話の中に出てくる牧野と、
オレの記憶の中の牧野が交差する。

オレと離れた5年間で
変わった所、変わってねー所、
その一つ一つに心がざわつく。



5年経ってもやっぱりオレの気持ちは何も変わってなくて。
出来る事なら今でもあいつをこの手で抱きしめたい。


だけど…あいつは明日、類の妻になる。




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ちょっと待った! 4

-翌朝-


朝早くから起きて、メイクをしてくれた
桜子の手によって完璧に仕上がっていたあたし。


『ちょっと待った!』   第4話



「いや~…あたしゃ、あんたが魔法使いに見えてきたよ」
鏡を覗き込みながら呟くあたしに

「私これでも売れっ子ですからね。当然ですわ」
と桜子も出来に満足気だ。

「つくしは元々可愛いよ!
 あたしのお嫁においでよ、つくし~!」
と滋さんが抱き着こうとするのを、
桜子がドレスが乱れると止めている姿に苦笑いする。


「準備出来た?」
そう言ってノックと共に入ってきたのは
白のタキシードをビシっと嫌味なほど着こなした類。

「ちょうど今終わった所です。
 花沢さん、どうです?私の自信作ですわ」
とあたしを類の前に突きだす桜子。


「うん。牧野、綺麗だよ」
そう言って微笑む類。

「こうやって見るとほんと王子様みたいだよね」
滋さんが言うように、
ほんとに絵本から出てきたようなその姿に
ついつい見惚れていると

「惚れちゃう?」
と覗き込むようにしてくる類の顔のアップに
反射的に顔が真っ赤になるあたしは

「バ…バカ言わないでっ!」
そう言って腕で押し返すのが精一杯だった。






「おい、ほんとにここですんのか?」

そう言ったオレの目の前にはホテルの中にある小さなチャペル。
最上階で天窓も付いていて開放的な造りではあるが
収容人数を考るととても花沢物産が式をするような場所には見えねぇ。

そう思って尋ねたオレにこいつらが
正式なお披露目なんかは別にパーティを開く予定で、
今日の式はオレたちだけのごくごく小さなものだと言う事を
今さらになって教えてきやがった。

「牧野が嫌がるって類がこうしたんだよ」
確かにあいつは大々的に披露宴なんて嫌がるだろうな…。

だけどよ…。
だったらオレはそのお披露目パーティってやつの方に出れば
何もここに来なくても良かったんじゃねぇの?


そう思ってるオレを見透かすように
「今お前が帰ったら牧野が気にするだろ?」
「男ならここまで来てじたばたするな」
総二郎たちにそう言われて、
結局オレはこの小さなチャペルの最前列に座らされている。

「司ー!久しぶりじゃんっ!」
と滋の能天気な声。

「道明寺さん、ご無沙汰しております」
と三条も隣で頭を下げる。

類と牧野を待つチャペルの中には
オレたち5人と…カメラマンが数人いるだけ。

「あれは?」
カメラマンを指さして小声で聞くオレに

「あぁ。滋が絶対忘れられない式になるから
 ちゃんと記録に残しておくって張り切ってたな」とあきら。
「写真はアルバムにして、ビデオは編集して
 牧野にプレゼントするんだって言ってたぞ
 お前も記念に滋に頼んで作ってもらえば?」と総二郎。

忘れられねーならなんで
写真やビデオに残しておく必要があるんだ。

オレにとっても忘れられねー式になるだろうが
残しておきたいなんてこれっぽっちも思わねぇよ。
人の結婚式の記録なんているわけねぇだろ。

そんな事を思って不貞腐れていると
チャペルのドアが開かれて

静かに振り向くとそこには
スポットライトを浴びて
仲良さそうに並んで立つ類とあいつの姿があった…。



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ちょっと待った! 5

5年ぶりに見たあいつは
息を飲むほど綺麗になってて…。

やっぱりさっき帰るべきだったと後悔した。


『ちょっと待った!』   第5話


類とバージンロードを歩いてくる牧野は
緊張からか時々不安そうに類を見上げている。

その度に類は優しく笑って、何か小さく囁いて
あいつを落ち着かせているようだ。

その姿があまりに自然に見えて、
5年と言う月日の重さを感じたオレは
2人を直視しないようにするのが精一杯だった。



オレの気持ちなんて無視して式は進んで行く。


誓いの言葉を読み上げるあいつの声は
5、6歩も歩けば手が届きそうな所にいるのに
どこか遠くで聞いてるようなそんな感じで全然耳に入ってこない。

続いて指輪の交換をする2人。
まだ緊張してんのか、あいつの動きは固かったが

困ったように笑ったその顔から目が離せなくなった。


『それではここで、一生を共にしていただく、ご新婦のベールをお上げいただき、
 永久(とわ)の愛を込めまして、誓いのキスを交わしていただきましょう。』

そう司会が誓いのキスが宣誓すると
2人は向かい合って類が牧野のベールをめくった。

あいつから見て類の後方にはオレらF3の姿。
ベールが上げられて、
ゆっくり目を開けた牧野の視線が泳いで
5年ぶりのあいつと目が合った。


あいつは今、オレに気付いたみたいに
すげぇ驚いた顔をして、すぐに類の方を見た。

その顔はまさに
「なんで道明寺がいるの?」って顔だ。

オレがいたのがそんなに意外かよ。

まぁ西田に言われなければ欠席するつもりだったからな。
一応新郎の親友という事で招待状を寄こしたこいつだって
ずっとNYから帰って来る事もなかったオレが
この場に来るとは思ってはなかったんだろう。

「ちょ…ちょっと待って、類…」

あいつが囁く声はオレにも聞こえたのに
類はまるで聞こえなかったみたいに
あいつの肩を抱き寄せ、誓いのキスを急かすように顔を近づける。

類の体にあいつが隠れる瞬間。
あいつは確かにオレの方をもう一度見た。

その目が助けてって言ってるように見えたのは気のせいか?


わかってる…。
オレはあいつを縛りつけて
あんなつまんねぇ笑顔をさせた男だ。

わかってる…。
別れを切り出したのだってオレだ。

わかってる…。
あいつには類の方がきっとふさわしい。

わかってる…。

わかってる…。


だけど。

あいつは類の横でだって
あの大好きだった笑顔なんかしてねーじゃねぇか。

類の横でさっきから困った顔して笑ってるあの顔は
オレがさせてた偽物の笑顔と大して変わらねーじゃねぇか。

どっちにしろ、そんな顔するんだったら
類じゃなくオレのそばにいてもいいじゃねぇか。

こんな土壇場になって「ちょっと待って」って言うほど
迷ってんなら結婚なんてやめりゃいいじゃねぇか…!


そんな事を考えたのが先だったか、
体が動き出したのが先だったかは自分でも定かではないが、

気が付いた時には類を押しのけて
あいつを抱きしめいていた。


「オレ見て焦るくらいなら結婚なんかすんじゃねぇよ。
 …類なんかに渡してたまるかよ。
 オレ以外の男と永遠の愛なんて誓ってんじゃねぇよ…」

オレの声は情けなくも震えていたと思う。

だけど…別れて何年経ってても。
今さらこんな事言う資格なんてねぇって言われても…。


これがオレの本音で。
どうしたって譲れるわけねぇんだ…。




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