★坊ちゃんハッピーバースデーo(>∀<*)o★誕生日当日の朝。
窓の外を見れば
すでにエントランスを先頭に車列が出来ていて
ババァが降りてきたゲストを笑顔で迎えている。
その光景から視線を逸らしため息をついた。
『already in love』 第16話毎年毎年繰り返される
心底くだらねぇオレの誕生日パーティ。
いつ戻ったのかは知らねぇが
ババァの意識はすでにゲストへと向き
主役であるはずのオレの前にはまだ現れていない。
別に今さらババァからの祝いなんていらねぇが
誕生日なんてただの口実に過ぎねぇなら
最初から向こうで自分の誕生日パーティでもすりゃいいのに
それでもオレをダシに使い、わざわざ日本で開くのは
あくまでも一族の結束をアピールするためだ。
「…けっ。反吐が出るぜ」
独りごちた所で時計を見れば
もうすぐ10時になろうとしている。
ハッキリ言ってパーティなんざどうでもいいし
オレが招いたわけじゃねぇんだ。
永遠に待たせておけばいいと思っているが
ババァに捕まっちまったら最後。
しばらく身動きが取れねぇ。
あいつは一体いつになったら
オレの所へ来るんだ?
確かにクッキー焼くって言ったよな?
オレは日付が変わったその瞬間から
待ってるっつーのに一体いつになったら来るんだ!
『何か欲しい物とかないですか?』
牧野にそう聞かれて
思い浮かんだのは牧野本人だったが
さすがに口にする事はなかった。
あいつの態度を見てる限り
どこをどう取ろうと、
どれほどポジティブに受け取っても
オレを男として意識してるとは思えねぇし。
まさか忘れてんじゃねぇだろうな?
ふとそう頭に浮かんでしまえば
居ても立っても居られず
足早に牧野の部屋を目指して進んでいけば
廊下の柱に片手をついて項垂れるあいつの姿を見つけた。
その反対の腕にはリボンのついた包みを抱えている。
…用意出来てんならさっさと持って来いよ。
なんて心の中で悪態をつきながらも
無意識にホッと息をついていた。
近づいてみれば
なんだか知らねぇがため息なんかついて
「どうしよ…」
だなんて独り言まで漏らしている。
何かあったのかと耳を傾けてみれば
「誕生日プレゼントに車って…マジ?」
だとか
「坊ちゃんってほんとに坊ちゃんなんだ…」
だとか聞こえてくる。
大方、ゲストの持ってきたプレゼントを見て
尻込みしてるってとこか?
「おいっ!」
「へ?…うわっ!ぼ、坊ちゃん!?」
完全に自分の世界へとトリップしていた牧野は
慌てて手にしていた包みを背中へと隠した。
「お前いつになったらクッキー持ってくる気だ?」
「えーっと、そのぉ…。
なんか、失敗?しちゃって。
また作り直してから改めて渡そうかな、なんて?」
わかりやすいにも程があるほどに
忙しく視線を泳がせしどろもどろに話すこいつに
呆れを通り越して思わず笑っちまいそうになるのを
なんとか堪えると後ろに隠した包みを素早く奪う。
「あっ…!」
慌てて取り返そうとするこいつの手を避けながら
包みを開けて中を見る。
するとそこには
なんとなくオレに似てるような気もする
顔のクッキーがいくつも入っていた。
「へぇ?わりとよく出来てんじゃね?」
そのうちの1つを手に取り眺めてから口へと運ぶ。
「そ…そうですか?」
「あぁ。味も悪くはねぇし。
これのどのあたりが失敗なんだ?」
「えっとぉ…」
「まぁ、オレはもっとカッコいいか」
「…へ?」
「これオレじゃねぇの?」
「そのつもり…っていうか
結構似てるって思ってたんですけど?」
少し勢いを取り戻し言い返してくるこいつに
「だったら貰っていいんだよな?」
ニヤリと笑いながら言えば
言葉に詰まってから、しぶしぶ頷いた。
「っつか何もったいぶってんだよ」
「別にもったいぶってたわけじゃ…」
困ったような顔をするこいつが言いたい事はわかってるが
オレにしてみればそれは的外れもいい所。
「今日来てる奴らが
何を持ってきたかなんて知らねぇが
その中で一番嬉しいプレゼントは間違いなくこれだ」
「…いいですよ、そんな気を使わなくても」
「わかってねぇな。
オレのために用意されたプレゼントはこれだけなんだよ」
「…?
何言ってるかちょっとわかんないんですけど」
怪訝そうな顔で首を傾げるこいつが理解出来ねぇのは
こいつだけが他の奴らとは違うから。
「今日届くプレゼントなんて形だけだ。
オレのために用意した奴なんて1人もいねぇよ。
誕生日だなんて体のいい口実なだけで
普段は日本にいねぇババァに会うのが目的なんだよ」
こいつに説明してもきっと全ては理解出来ねぇだろう。
実際、プレゼントを渡してくる本人は
秘書か誰かに適当に用意させただけで
下手すりゃ何を贈ったかさえ知らねぇ奴もいるはずだ。
「だから、これ以外のプレゼントなんか
オレにとっちゃ全部その辺のゴミと変わんねぇし
こんなパーティなんてウザってぇだけだ」
「坊ちゃん…」
どうしてだかオレより悲しそうな顔で見上げてくる牧野は
しばらく言葉を失っていたが
「ちょ、ちょっと待って下さいね!」
何かを思いついたようにポケットを探り出すと
メモ帳とボールペンを取り出し、何かを書き始めた。
それからどれくらい待ったか。
「…よしっ。こんなとこかな?」
なんて1人で納得したかと思えば
今の今まで何かを書いていたそのメモをオレに渡してくる。
小さく畳まれたそのメモを開いてみれば
「…何でも言う事聞きます券?」
4つに区切られたスペースにそれぞれそう書かれていて
花や星のイラストが散りばめられていた。
「皆さんが持ってくるような
高級な物は買えないですけど。
あたしが出来る事でしてほしい事がある時は
1枚渡してくれたら何でも聞き入れますっていう券です」
どこか得意気にそう言うこいつに思わずプッと吹き出す。
「何でもいいんだな?」
確認するように聞いてみれば頷きかけてから
「ハッ…!エッチな事はダメですよ?」
なんて人を変態のように睨んでくる。
「バカかっ!んな事わかってんだよっ。
そういうのは無理やりしたって意味ねぇだろうが」
__正直言えば一瞬頭をよぎったのは確かだが。
それより面白ぇ事を思いついた。
切り取り線に沿って
丁寧に1枚ちぎるとこいつに渡すと
きょとんと首を傾げた牧野に言ってやる。
「今日のパーティ。お前も出席な。
オレのパートナーとして隣に立ってろ」
いつも応援ありがとうございます♡★なんとか誕生日に滑り込み〜っ。
でもパーティが終わるのはいつになる事やら…(o_o ;)★